123 / 173
第四章:矛盾の解明
第四章:矛盾の解明 20
しおりを挟む
あの場にいなかった流森さんだけが、まだ理解しきれていない様子だったが、由奈さんの説明で納得したように頷いた。
「そっか、確かに夜月くんの言う通りだ。うまくいけば、今日の午後くらいには橋が落ちたことに気づいた吉田さんが、警察に連絡してくれそうだね」
「ですよね? 良かった、あたしたちもうすぐ助かるかも!」
部長の同意する意見に身を乗り出すようにして答え、桜は俺たちを見回した。
「夜には救助が来ることだって期待できるかも……って、乃亜ちゃん、どうしてそんな顔であたしを見つめてるの?」
意気揚々と巡らしていた桜の首が、後輩の座る位置でピタリと止まる。
何だろうかとつられて見ると、蓮田は普段ならば常に伏せがちなその瞳を大きく見開き、桜のことを凝視していた。
「いや、乃亜ちゃん……怖いからやめて、それ」
頬を引きつらせる桜と、それをひたすら見つめる蓮田。
数秒後、先に口を開いたのは意外にも蓮田の方だった。
「……先輩、今の閃きはさすがです。おかげで、碧さんが殺害されていたときの矛盾を、はっきりさせることができました」
「え? 矛盾? どゆこと?」
言われた本人は、頭の上にハテナを浮かべるように首を傾げる。
「夜月先輩のおかげで、碧さん殺害に関して引っかかっていたのが何だったのか、やっとわかったんです」
淡々と答えながら、蓮田は静かに視線を床に落とす。
「……ですが、それが本当に正解どうか、もう一度藤守神社を調べなければいけませんし、竜久さんの死体をどうやって移動させたのかもはっきりさせなければ、犯人を追いつめることは難しいかと」
「よくわからないけど、今一度あの神社へ行けば、事件解決のヒントが得られるってことかい?」
蓮田の話を簡潔にまとめ部長が言うと、蓮田は黙ってコクリと頷いた。
「駄目よ、これ以上勝手に行動しようとしないで」
そんな二人のやり取りに、間髪入れずに由奈さんが割り込む。
「さすがに大目に見てあげるのも限界なの。村長が死んじゃったなら、枝橋さんも余計にピリピリしてるでしょうし、わたしも庇いきれなくなるわ」
「でしたら……」
真っ直ぐに部長を見つめ妥協ない口調で言う由奈さんに、反論をこぼしたのは蓮田だった。
「一人でも確かめに行けますので、特に気を遣っていただく必要はありません」
「いや、気を遣ってるとかじゃなくてね、わたしは――」
噛み合わない会話に、由奈さんが焦れた様子を窺わせかけたとき。
入り口のドアが強めにノックされ、廊下から渡辺さんが顔を覗かせた。
「とりあえず、朝食の準備は終わったよ。お腹が空いたならいつでも用意できるよ」
あえて、だと思うがにこやかにそんな言葉をかけてくる渡辺さんのおかげで、由奈さんも一旦口を閉ざざるを得なくなったようだった。
一瞬の間、話を続けるかどうか迷うように口を動かしていた由奈さんは、すぐに諦めたように息をつきコーヒーの残りを煽った。
「食事か。うん、正直僕はまだお腹が空いてはいないけど、たまには早いうちに食べておくのも悪くないかもしれないね。蓮田くんもさ、とりあえず食事を優先して、その間に今後の予定をみんなで立てよう」
「……わかりました」
部長の提案に素直な返事をして、蓮田はそのまま大人しくなった。
そんな彼女の反応に納得してか、部長は一度大きく頷いてから入り口に立つ渡辺さんへ首を向ける。
「そっか、確かに夜月くんの言う通りだ。うまくいけば、今日の午後くらいには橋が落ちたことに気づいた吉田さんが、警察に連絡してくれそうだね」
「ですよね? 良かった、あたしたちもうすぐ助かるかも!」
部長の同意する意見に身を乗り出すようにして答え、桜は俺たちを見回した。
「夜には救助が来ることだって期待できるかも……って、乃亜ちゃん、どうしてそんな顔であたしを見つめてるの?」
意気揚々と巡らしていた桜の首が、後輩の座る位置でピタリと止まる。
何だろうかとつられて見ると、蓮田は普段ならば常に伏せがちなその瞳を大きく見開き、桜のことを凝視していた。
「いや、乃亜ちゃん……怖いからやめて、それ」
頬を引きつらせる桜と、それをひたすら見つめる蓮田。
数秒後、先に口を開いたのは意外にも蓮田の方だった。
「……先輩、今の閃きはさすがです。おかげで、碧さんが殺害されていたときの矛盾を、はっきりさせることができました」
「え? 矛盾? どゆこと?」
言われた本人は、頭の上にハテナを浮かべるように首を傾げる。
「夜月先輩のおかげで、碧さん殺害に関して引っかかっていたのが何だったのか、やっとわかったんです」
淡々と答えながら、蓮田は静かに視線を床に落とす。
「……ですが、それが本当に正解どうか、もう一度藤守神社を調べなければいけませんし、竜久さんの死体をどうやって移動させたのかもはっきりさせなければ、犯人を追いつめることは難しいかと」
「よくわからないけど、今一度あの神社へ行けば、事件解決のヒントが得られるってことかい?」
蓮田の話を簡潔にまとめ部長が言うと、蓮田は黙ってコクリと頷いた。
「駄目よ、これ以上勝手に行動しようとしないで」
そんな二人のやり取りに、間髪入れずに由奈さんが割り込む。
「さすがに大目に見てあげるのも限界なの。村長が死んじゃったなら、枝橋さんも余計にピリピリしてるでしょうし、わたしも庇いきれなくなるわ」
「でしたら……」
真っ直ぐに部長を見つめ妥協ない口調で言う由奈さんに、反論をこぼしたのは蓮田だった。
「一人でも確かめに行けますので、特に気を遣っていただく必要はありません」
「いや、気を遣ってるとかじゃなくてね、わたしは――」
噛み合わない会話に、由奈さんが焦れた様子を窺わせかけたとき。
入り口のドアが強めにノックされ、廊下から渡辺さんが顔を覗かせた。
「とりあえず、朝食の準備は終わったよ。お腹が空いたならいつでも用意できるよ」
あえて、だと思うがにこやかにそんな言葉をかけてくる渡辺さんのおかげで、由奈さんも一旦口を閉ざざるを得なくなったようだった。
一瞬の間、話を続けるかどうか迷うように口を動かしていた由奈さんは、すぐに諦めたように息をつきコーヒーの残りを煽った。
「食事か。うん、正直僕はまだお腹が空いてはいないけど、たまには早いうちに食べておくのも悪くないかもしれないね。蓮田くんもさ、とりあえず食事を優先して、その間に今後の予定をみんなで立てよう」
「……わかりました」
部長の提案に素直な返事をして、蓮田はそのまま大人しくなった。
そんな彼女の反応に納得してか、部長は一度大きく頷いてから入り口に立つ渡辺さんへ首を向ける。
0
あなたにおすすめの小説
小説探偵
夕凪ヨウ
ミステリー
20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。
男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。
そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。
小説探偵、と。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~
水無月礼人
ミステリー
子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。
故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。
嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。
不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。
※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。
【アルファポリス】でも公開しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる