坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第四章:矛盾の解明

第四章:矛盾の解明 37

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「……」

 未練たらしく告げる部長に蓮田は反応をみせず、驚いたような顔で巨大藤を眺めながら、口元を小さく動かしていた。

「どうしたんだい、蓮田くん」

 後輩と藤の木を交互に見やり、部長が問う。

 すると、見開かれた瞳で部長を見つめ、蓮田は静かに一度瞬きをする。

「……みなさん。ひょっとしたら、この事件の謎が解けるかもしれません」

「え……?」

 小さな口から漏れ出した言葉に、全員が息を飲んだように固まる。

「今聞かせていただいた話が間違いでなければ、竜久さん殺害のカラクリを証明する方法が一つあります。この方法を用いれば、容疑者のほぼ全員がアリバイがあやふやな状態になるので、私が犯人だと思っている人物にも犯行が可能になる……」

「今聞いた話って、この人の?」

 部長が自警団の男を示すと、蓮田はあっさりと頷く。

「そうです。碧さん殺害現場での違和感。及び、竜久さん殺害に関するあからさまにおかしな事実。この二つの答えに気づけたおかげで、犯人の正体と竜久さん殺害トリック、そして見立て殺人を実行した理由にも検討がつきました」

「お、おい、ちょっと待てよ蓮田。それじゃお前、この事件の真相が全部わかったって言うのか?」

「全てではありません。……ですが、あと少し証拠を集めれば、犯人を追いつめることも可能かと」

 淀みなく告げる後輩の言葉に、全員が押し黙る。

 さすがに、部長もこんな発言が飛び出してくるとは思いもしなかったか、目を点にして蓮田の顔を見つめていた。

「……え? どうしてわかったの?」

 やがて、最初に口を出したのは桜だった。

「ここに来てからしたことって、竜久さんが倒れてた場所の確認だけだし、後はこの人から話を聞かせてもらっただけだよ? それで見立ての謎まで解けたって……どゆこと?」

 ちんぷんかんぷんな様子で首を捻る桜に、俺も胸中で同意する。

 ここまでの流れのどこをどう解釈していけば、事件の謎が明確になるのか。

 だいたい、目の前に立つ男が話してくれた内容だって――。

「……あ? あれ、これおかしくないか?」

 考えを巡らせていた脳に、前触れもなく閃くものがあった。

 慌てて積まれた藤花を振り返り、さっきの蓮田がしていた行動をフラッシュバックさせる。

「どうしたの、雄治?」

 俺の行動に不審感を覚えてか、桜が問うてくる。

「いや、さっき蓮田があそこの花を掻き分けたときに……」

 言いかけて。

 竜久さんが発見された場所を指差し、俺の腕が固まった。

 頭の奥に、ある考えが浮かぶ。

 ――まさか、そういうことか……?

 竜久さんが消えたトリック。

 それを実現させる方法が一つ、存在することに気づいた。

 恐る恐る、蓮田を見る。

「……」

 そういうことかと、視線で問いかける。

 少女は黙ったまま立っているだけだが、その瞳は俺が辿り着いた仮説に対し、暗黙の同意を示しているように感じ取れた。

 犯人が見立てを実行した理由はまだいまいち曖昧だが、こうではないかという漠然とした憶測は浮かぶ。

「……後ほど、枝橋さんから最終的なお話を聞かせてもらえれば、確信がもてるでしょう。なので、もう私たちは宿に戻っても問題ないと思います」

 数秒間の見つめ合いが終わると、蓮田は何事もなかったかのように部長に首を向け、戻ることを提案した。

「ん? うん。まだ状況が飲み込めないけど、蓮田くんが何かを掴んだって言うなら、きちんと説明もほしいしね」
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