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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 4
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ひょうひょうとした笑みをその顔に貼り付け、不敵にこちらを見つめてきている。
「先に白状しちゃいますと、千賀子さんを一人にするように提案したのは僕です。あなたを誘き出すために。ついでにもう一つ言っちゃうと、もうほとんど全員が、村長たちを殺した犯人があなたであると気づいています。僕たちが全て、話してしまいましたから。その証拠に、ほら」
少年は、部屋の中に入りながら廊下を手で示す。
それを合図に、待機していたのであろう他の学生や藤美荘の従業員たちも部屋の中へと入ってきた。
こちらを見つめるその顔は、いずれも困惑しているのかどこか強張っているように感じる。
「どうして……」
最後に部屋へ入ってきた梅木千賀子が、信じられないという風に声を漏らしてこちらを凝視してきた。
「どうしてあなたがこんなことを……?」
悲痛な老婆の呻きが、室内に響く。
「千賀子さんにはたった今、状況を説明しました。ちょうどここへ戻りかけていたところを掴まえて、引き止めたんですよ」
やんわりとした笑みが、また自分を見つめてきた。
「再度言います。もう、ここにいる全員が理解しているんです。今回、この村で起きた連続殺人の真犯人があなただということに」
「……」
馬鹿な、という思いが脳内を埋め尽くす。
自分が犯人ということが、どこで明るみになったのか。まったくもって想像がつかない。
どこかでミスをおかしていただろうか。
引きつる頬を無理矢理固定して、相手の出方を見定める。
「正直、驚きましたよ。あなたが梅木家の人たちを殺していたなんて」
部屋の入り口を塞ぐようにして立つ枝橋が、こちらを睨み声をだす。
「そうですよね。僕たちもびっくりしましたよ。蓮田くんから事件の真相を教えてもらったときには、さすがにこの人が犯人だなんてちょっと信じられませんでしたし」
「あたしもです。だってこの人……」
孝介の相槌に続けるように言葉を繋げてきたのは、桜とか言う名の少女。
そのすぐ隣には、この少女と仲の良い雄治とかいう青年が付き添っていた。
「で、でも……間違いってことはないのかい?」
自警団たちに混じって部屋に入ってきていた渡辺が、おずおずと声をあげる。
「きみたちの勘違いで犯人だと思い込んでいるだけとか、そういうことはないのかな? 今だって、単に千賀子さんを心配してここにきただけとか……」
「おいおい、渡辺さん。それはさすがにないだろう。たった今、俺は襲われかけたんだぜ? 心配して様子見にきたやつが、こんなことするかよ」
奪い取ったロープを掲げて、自警団の男は渡辺の言葉を遮る。
「いや、それは千賀子さん以外の人が入ってきたから、咄嗟にってことも……」
「まぁ、この状況だけでやり取りをするなら、渡辺さんの言い分もわからなくはないですけどね」
澄ました様子で首肯して、孝介は渡辺の台詞を受け入れる。
「でも……」
しかし、すぐに否定の接続詞を加えると、くるりと後輩である蓮田の方へ振り向いた。
「残念ながら、この人を犯人と言い張る証拠は他にもちゃんとあるんですよ。僕の優秀な後輩たちが、それを証明してくれましたし」
蓮田という少女は、視線を逸らすことなくずっとこちらを見つめ続けていた。
その視線は獲物に焦点を定めた獣のように鋭く、目を合わせると居心地の悪さを覚えてしまう。
だからと言って、この程度で動揺などしてはいられない。
ただひたすら落ち着くようにと自分に言い聞かせ、少年たちの話に耳を傾ける。
「他にも、証拠があるのかい?」
眉を寄せる渡辺へまた頷き、孝介はこちらを真っ直ぐに見返してきた。
「ありますとも。この人が梅木家の四人を殺害した真犯人だっていう、いろいろな証拠が。……ここでもう、全部暴露しちゃいますけど、構いませんよね?」
「……暴露って言われても、こっちには思い当たるような伏しは何もないんだけどな」
努めて冷静さを装い、そう言葉を返す。
だが、相手はどうなるものでもなかった。
「とぼけたってもう駄目ですよ。あなたの逃げ道はありません」
掛けた眼鏡の奥で、孝介の瞳が細まる。
「観念して、罪を認めてください。……梅木昇さん」
単なる錯覚だろうか。
そう言ってこちらの名前を呼んだ少年の声は、ほんの一瞬だけ感情の消えた冷淡な響きを含んでいるように聞こえた。
「先に白状しちゃいますと、千賀子さんを一人にするように提案したのは僕です。あなたを誘き出すために。ついでにもう一つ言っちゃうと、もうほとんど全員が、村長たちを殺した犯人があなたであると気づいています。僕たちが全て、話してしまいましたから。その証拠に、ほら」
少年は、部屋の中に入りながら廊下を手で示す。
それを合図に、待機していたのであろう他の学生や藤美荘の従業員たちも部屋の中へと入ってきた。
こちらを見つめるその顔は、いずれも困惑しているのかどこか強張っているように感じる。
「どうして……」
最後に部屋へ入ってきた梅木千賀子が、信じられないという風に声を漏らしてこちらを凝視してきた。
「どうしてあなたがこんなことを……?」
悲痛な老婆の呻きが、室内に響く。
「千賀子さんにはたった今、状況を説明しました。ちょうどここへ戻りかけていたところを掴まえて、引き止めたんですよ」
やんわりとした笑みが、また自分を見つめてきた。
「再度言います。もう、ここにいる全員が理解しているんです。今回、この村で起きた連続殺人の真犯人があなただということに」
「……」
馬鹿な、という思いが脳内を埋め尽くす。
自分が犯人ということが、どこで明るみになったのか。まったくもって想像がつかない。
どこかでミスをおかしていただろうか。
引きつる頬を無理矢理固定して、相手の出方を見定める。
「正直、驚きましたよ。あなたが梅木家の人たちを殺していたなんて」
部屋の入り口を塞ぐようにして立つ枝橋が、こちらを睨み声をだす。
「そうですよね。僕たちもびっくりしましたよ。蓮田くんから事件の真相を教えてもらったときには、さすがにこの人が犯人だなんてちょっと信じられませんでしたし」
「あたしもです。だってこの人……」
孝介の相槌に続けるように言葉を繋げてきたのは、桜とか言う名の少女。
そのすぐ隣には、この少女と仲の良い雄治とかいう青年が付き添っていた。
「で、でも……間違いってことはないのかい?」
自警団たちに混じって部屋に入ってきていた渡辺が、おずおずと声をあげる。
「きみたちの勘違いで犯人だと思い込んでいるだけとか、そういうことはないのかな? 今だって、単に千賀子さんを心配してここにきただけとか……」
「おいおい、渡辺さん。それはさすがにないだろう。たった今、俺は襲われかけたんだぜ? 心配して様子見にきたやつが、こんなことするかよ」
奪い取ったロープを掲げて、自警団の男は渡辺の言葉を遮る。
「いや、それは千賀子さん以外の人が入ってきたから、咄嗟にってことも……」
「まぁ、この状況だけでやり取りをするなら、渡辺さんの言い分もわからなくはないですけどね」
澄ました様子で首肯して、孝介は渡辺の台詞を受け入れる。
「でも……」
しかし、すぐに否定の接続詞を加えると、くるりと後輩である蓮田の方へ振り向いた。
「残念ながら、この人を犯人と言い張る証拠は他にもちゃんとあるんですよ。僕の優秀な後輩たちが、それを証明してくれましたし」
蓮田という少女は、視線を逸らすことなくずっとこちらを見つめ続けていた。
その視線は獲物に焦点を定めた獣のように鋭く、目を合わせると居心地の悪さを覚えてしまう。
だからと言って、この程度で動揺などしてはいられない。
ただひたすら落ち着くようにと自分に言い聞かせ、少年たちの話に耳を傾ける。
「他にも、証拠があるのかい?」
眉を寄せる渡辺へまた頷き、孝介はこちらを真っ直ぐに見返してきた。
「ありますとも。この人が梅木家の四人を殺害した真犯人だっていう、いろいろな証拠が。……ここでもう、全部暴露しちゃいますけど、構いませんよね?」
「……暴露って言われても、こっちには思い当たるような伏しは何もないんだけどな」
努めて冷静さを装い、そう言葉を返す。
だが、相手はどうなるものでもなかった。
「とぼけたってもう駄目ですよ。あなたの逃げ道はありません」
掛けた眼鏡の奥で、孝介の瞳が細まる。
「観念して、罪を認めてください。……梅木昇さん」
単なる錯覚だろうか。
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