坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
148 / 173
第五章:幕引きと抵抗

第五章:幕引きと抵抗 6

しおりを挟む
          【4】

 外は晴れているはずなのに、自分たちがいるこの室内はまるで分厚い雲で覆われた曇り空のように、重い空気に沈んでいた。

 人が大勢集まっているのにも関わらず、まったくもって安心感が得られない。

「……」

 全員に見つめられ、忌々しそうに唇を歪める梅木昇。

 両親を亡くしたことをきっかけに、この屋敷へやってきた村長の甥。

 村人たちからの評判はお世辞にも良いものではなく、ほとんどの人から嫌われていた人物であり、今回この村で起きた連続殺人の真犯人。

 そのことを指摘したのは蓮田であり、当然彼女の見当違いという可能性もまだ完全には否定できない。

 しかし、事件の真相として彼女から聞かされた話の内容は確実に彼が怪しい人物であることを物語っており、犯人である確率はほぼ百パーセントなのではないかとミスオカ研メンバー全員が確信している。

 それ故に、今自分たちが置かれているこの状況は、かなりの精神力を必要とした。

 理由はわからずとも、たった数日で人を四人も殺害した悪魔が目の前に対峙しているのだ。

 知らなかったこととは言え、彼と行動を共にしていた時間を思い返すと鳥肌が立ちそうになってしまう。

 時間にすれば、ほんの数秒か。

 部屋に満ちた沈黙を破るように、昇さんはフンッと鼻を鳴らした。

 同時に集まった人たちをざっと見回し、その口元を笑みで歪める。

「……ったく、くだらねぇ。みんなしてこんなとこに押しかけて何のつもりかと思ったら、そんなガキたちの探偵ごっこに付き合ってるんですか? 馬鹿馬鹿しいな」

 呆れた、と言いたげに首を振り、昇さんは枝橋さんに向き直った。

「枝橋さん、あんたもあんただ。まさか、こんな高校生たちの言うこと真に受けてるわけですか? しっかりしてくださいよ」

「別に、ふざけているわけではないですよ。この子たちの話を聞いて、自分なりに正しいと思う判断をしたまでです」

 侮蔑するような昇さんの視線を毅然と見返し、枝橋さんは言い返す。

 ここに至る前に、枝橋さんとは入念に確認のやり取りをした。

 蓮田や俺の思いつきが的外れではないか。どこかに思い込みや間違いが含まれていないか。

 そういったことを一つ一つ確かめ合い、枝橋さんの協力を得るに至ったわけで。

 その後は犯人をおびき出すこの作戦にも、快く手を貸してくれた。

「はっ、いったい何を吹き込まれてそんな旅行に来ただけの学生を買い被ってるのかしらねぇけど、俺から言わせりゃくだらないね。大体、何だって? 俺があの四人を殺した犯人? そんな証拠がどこにあるって言うんだよ?」

 ジロリと、元警察へ向けていた視線を部長へスライドさせ、昇さんは不敵に言い放つ。

 その殺人者からの威圧には微塵も動じる様子もなくニヤリと笑うと、部長はツイッと顎を蓮田へ向けた。

「あなたが犯人だと気づいたのは、蓮田くんです。彼女があなたのある不自然な行動に違和感を持ったから、事件の謎を解くきっかけができたんです。そして、その違和感の正体こそが、あなたが犯人である証拠の一つになっている」

「不自然な行動? 何のことだ?」

 心当たりがないのだろう。

 昇さんは、僅かに眉根を寄せて蓮田の顔を覗く。

「せっかくですし、そこは蓮田くん本人から話してもらおうか。良いかな?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...