坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第五章:幕引きと抵抗

第五章:幕引きと抵抗 7

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「構いません」

 リーダーに促され素直に頷くと、蓮田は感情の希薄な瞳で昇さんを見やる。

「私があなたへ不審を抱いたのは、碧さん殺害現場での矛盾した認識でした」

「あ? 矛盾した認識?」

 増々意味がわからないと、昇さんはさらに眉間へ皺を作った。

「私と長沢先輩が、鳥居で首を吊られた碧さんを発見したときのことを思い出してください。あのとき、死体を見た長沢先輩は、石段を下り渡辺さんを呼びました」

「……ああ、そういやそうだな。それがどうしたって言うんだ?」

「先輩に呼ばれた渡辺さんは、碧さんが死んでいるのを認識するとすぐにあなたへ車の鍵を渡し、村長たちへ連絡をしてくるよう頼みました。そして、あなたは言われた通りに村長や他の家族、藤美荘の従業員たちへ神社で碧さんが死んでいると伝えた」

 そこで蓮田は流森さんを一瞥する。

 その意図に気づいたらしく、流森さんは小さく頷くと補足するように口を開いた。

「うん、それはあたしも確認してるから間違いじゃないよ。神社で碧さんが死んでるって、慌てたように駆け込んできたの覚えてるし」

「そりゃそうだろ? それを伝えるために急いで戻ってきたんだからよ」

 無意味としか思えない確認に、昇さんの口調が若干荒くなる。

 それを嫌がるように流森さんは目を下に逸らしたが、蓮田は臆する気配もなく平然と話を先に進めた。

「それはわかります。しかし、何故駆け込んできた時点で、被害者が碧さんだと言い切ることができていたのでしょうか?」

「あん? どういう意味だ?」

「……ですから、何故神社で殺害されていたのが、碧さんだとわかったのですか?」

「んなもん、お前らと一緒にあそこにいたんだ。それくらいはーー」

「嘘です」

 反論しかけた昇さんの言葉を、蓮田はピシャリと遮った。

 瞬きすらなく相手を見つめる少女は、あくまで淡々と台詞を吐いていく。

「渡辺さんがあなたへ連絡を頼んだ際、何と言ったか覚えていますか? ……今すぐに戻って誰か人を呼んできて下さい。上で、梅木さんが死んでる。……確か、そう伝えたはずです」

「……そうだったか? で、それがどうした? 特別不審な点なんかないだろ」

「渡辺さんは、被害者のことを梅木さんと呼んでいたんです。それなのにあなたは、梅木家の誰が死んだのかを確認もしない状態で、碧さんと断言していた。これは、おかしいと思います」

「……はっ、何かと思えばくだらねぇ。んなもん、神社からこっちに戻るときに、チラッと死体を見ちまったからわかってただけだ。別におかしな話じゃねぇよ」

 呆れたように苦笑して、昇さんが言い返す。

 しかし、その言い分がでまかせであることは俺でもわかった。

 何故なら、あのとき昇さんはずっと駐車した車の前から動いてはいなかったのだ。

「その言葉も嘘です」

 案の定、即座に蓮田が指摘した。

「あなたは神社に着いてから、一歩も車の前から移動していなかった。それなのに、碧さんの死体を確認するなんてことは不可能です。これは私と長沢先輩の二人で確認したことですが、あの車を停めていた位置からでは生い茂った草木が邪魔をして、碧さんの姿を視界に捉えることは絶対に無理なのです。死体を自分の目で確認するには、石段の手前まで移動するのが大前提。ですから、あなたの言うことは、信憑性がありません」
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