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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 8
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そう。これが蓮田の感じていた違和感の正体。
巨大藤の前で桜が吉田さんの名前を度忘れしていたことがきっかけで、蓮田はこの矛盾に気がついた。
桜がいくら“あの人”と言ったところで、誰もそれが吉田さんだとはわからなかった。
それと同様に、昇さんもまた“梅木さん”だけでは、それが碧さんのことだと断定するのは不可能だったはず。
もしわかるとすれば、それは既に殺された人物が誰なのかを把握する存在。
つまり、犯人ということに繋がってくる。
「……なるほど。確かに言われてみればそうか。悪ぃな、面倒くせぇから嘘ついちまったよ。本当は、碧さんの死体なんか見ちゃいねぇ」
ほんの数秒、何事かを考え込むように目線を下げていた昇さんが、突然ニヤリと笑い顎を上げた。
「本当は別の理由で、死んだのが碧さんだって気がついてたんだ」
「別の理由?」
警戒するような慎重な口調で、桜が訊ねる。
「ああ。渡辺さんが碧さんのことを普段から梅木さんって呼んでるのをな。だから咄嗟に判断できたのさ。ねぇ、渡辺さん? いつも碧さんのこと、名字で呼んでましたよね?」
「え? あ、ああ。うん、確かにそう呼んでたよ。人様の奥さんだし、さすがに下の名前で呼ぶのは気が引けたから」
話を振られ、一瞬驚いた顔をした渡辺さんだったが、すぐに返答して頷いた。
「ってわけさ。どうだ? これなら筋が通るし、問題解決だろ?」
してやったりといった表情で、昇さんは蓮田を見つめ返す。
予想以上にうまい言い訳を返された。
これで少なくとも、相手を追い詰めるためのカードを一枚潰されたことになる。
ここからどう切り返していくかを思案する俺たちを余裕で眺め、昇さんは落ち着いた調子でさらに言葉を続けてきた。
「それによ、お前らよく考えてみろよ。竜久が殺されたはずの時間、俺はほとんどお前たちと一緒にいたんだぜ? 婆さんの部屋に寄って渡辺さんから車の鍵借りに行くときは別に行動したけど、それだけだ。あんな少しの時間じゃ、竜久を殺して巨大藤に運ぶなんて俺にはできねぇ。つか、婆さんの部屋と渡辺さんにも間違いなく俺は会ってるから、お前らと離れた時間にすらアリバイがあるはずだぜ。こんだけ完璧な状態で、俺に殺人なんかできるか?」
竜久さん殺害のアリバイトリック。
これを提示してくることは当然だろうと予測していた。
蓮田、部長、桜、そして俺。全員がそれぞれ視線を交わす。
おそらく、ここが正念場だ。
昇さんにとって、このトリックこそが最大の武器。これを崩せれば、一気に相手を追い詰めることができる。
そして――。
「……残念ですが、そのカラクリも既に見当をつけています」
俺たちは、謎の答えを知っている。
「何……?」
威嚇するように顔を歪めて呻く昇さんを、俺たちメンバー全員で睨み返す。
「今から、全て説明させていただきます。あなたがどうやって完璧なアリバイを作りつつ、竜久さんを殺害し不可能を可能に変えたのか。その方法を」
はったりも何もないただ冷淡に突き刺す言葉を投げつけて、蓮田はその冷めた瞳に昇さんの姿を写しだしていた。
巨大藤の前で桜が吉田さんの名前を度忘れしていたことがきっかけで、蓮田はこの矛盾に気がついた。
桜がいくら“あの人”と言ったところで、誰もそれが吉田さんだとはわからなかった。
それと同様に、昇さんもまた“梅木さん”だけでは、それが碧さんのことだと断定するのは不可能だったはず。
もしわかるとすれば、それは既に殺された人物が誰なのかを把握する存在。
つまり、犯人ということに繋がってくる。
「……なるほど。確かに言われてみればそうか。悪ぃな、面倒くせぇから嘘ついちまったよ。本当は、碧さんの死体なんか見ちゃいねぇ」
ほんの数秒、何事かを考え込むように目線を下げていた昇さんが、突然ニヤリと笑い顎を上げた。
「本当は別の理由で、死んだのが碧さんだって気がついてたんだ」
「別の理由?」
警戒するような慎重な口調で、桜が訊ねる。
「ああ。渡辺さんが碧さんのことを普段から梅木さんって呼んでるのをな。だから咄嗟に判断できたのさ。ねぇ、渡辺さん? いつも碧さんのこと、名字で呼んでましたよね?」
「え? あ、ああ。うん、確かにそう呼んでたよ。人様の奥さんだし、さすがに下の名前で呼ぶのは気が引けたから」
話を振られ、一瞬驚いた顔をした渡辺さんだったが、すぐに返答して頷いた。
「ってわけさ。どうだ? これなら筋が通るし、問題解決だろ?」
してやったりといった表情で、昇さんは蓮田を見つめ返す。
予想以上にうまい言い訳を返された。
これで少なくとも、相手を追い詰めるためのカードを一枚潰されたことになる。
ここからどう切り返していくかを思案する俺たちを余裕で眺め、昇さんは落ち着いた調子でさらに言葉を続けてきた。
「それによ、お前らよく考えてみろよ。竜久が殺されたはずの時間、俺はほとんどお前たちと一緒にいたんだぜ? 婆さんの部屋に寄って渡辺さんから車の鍵借りに行くときは別に行動したけど、それだけだ。あんな少しの時間じゃ、竜久を殺して巨大藤に運ぶなんて俺にはできねぇ。つか、婆さんの部屋と渡辺さんにも間違いなく俺は会ってるから、お前らと離れた時間にすらアリバイがあるはずだぜ。こんだけ完璧な状態で、俺に殺人なんかできるか?」
竜久さん殺害のアリバイトリック。
これを提示してくることは当然だろうと予測していた。
蓮田、部長、桜、そして俺。全員がそれぞれ視線を交わす。
おそらく、ここが正念場だ。
昇さんにとって、このトリックこそが最大の武器。これを崩せれば、一気に相手を追い詰めることができる。
そして――。
「……残念ですが、そのカラクリも既に見当をつけています」
俺たちは、謎の答えを知っている。
「何……?」
威嚇するように顔を歪めて呻く昇さんを、俺たちメンバー全員で睨み返す。
「今から、全て説明させていただきます。あなたがどうやって完璧なアリバイを作りつつ、竜久さんを殺害し不可能を可能に変えたのか。その方法を」
はったりも何もないただ冷淡に突き刺す言葉を投げつけて、蓮田はその冷めた瞳に昇さんの姿を写しだしていた。
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