160 / 173
第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 18
しおりを挟む
【7】
「……今回の計画をはっきりと決めたのは、それから少し時間がかかったかな。竜久も馬鹿な奴だったよ。うまくごまかしさえすれば、遺産を山分けしてお互い好き勝手な人生を手にできるなんて、本気で信じやがってよ。村中の電話線切るのを手伝わせて、碧の死体も運ばせたが、あいつにさせたのはそれくらいか。後は、死体のふりして姿消して、周りから怪しまれずに自分だけ先に村から出られると思い込んでたんだろうな。俺にアリバイ作りの道具にされるなんて、想像もしないでよ」
そこまで一気に話をして、昇さんは低い声で笑った。
全員、言葉を無くしてそんな彼を見つめているなか、更に言葉を継いでくる。
「違和感なく血糊を入手するのと、竜久の死体を消して池に沈める理由をごまかすために言い伝えを利用する。……それなりにうまいこと考えたつもりだったんだけどな。こんな予定外のくそガキどもに邪魔されちまうとは、本当に俺の人生空回ってばっかだわ」
正にゴミを見るような目で俺たちを睥睨し、心底うんざりしたようにため息を吐き出す。
「…………最低」
重苦しい沈黙の後に。
ポツリと小声を漏らしたのは、桜だった。
「あ?」
そんな彼女をギロリと睨み、昇さんは顔をしかめた。
「あなたは、本当にそんな信じられないような理由で、人を殺したんですか? お金を独り占めしたいとか、不幸だった人生の元を取るためとか、そんなどうしようもない理由だけで?」
相手の視線に怯むことすら忘れたように、桜は憐れむように昇さんを凝視する。
「当たり前だろ。俺を責めるって言うなら、俺をここまで追い詰めてきた人間全員に文句を言えよ。俺だってまともな、ただ普通の人生を送れてりゃ――」
「そんな馬鹿みたいな言い訳、聞きたくありません」
またも何事かを喋り始めそうになる相手を、ピシャリと牽制する。
「あなたの言ってることなんて、全部自己中心的なわがままばかりじゃないですか。自分で何一つまともな努力もしないで現実から逃げて、全部周りのせいにして。お金が欲しいなら、まともにバイトしようと思わなかったんですか? 周りのみんなが羨ましいなら、素直に自分磨きでも何でもして努力しようと思わなかったんですか?」
何かに弾かれたかのように一息に喋る桜を、流森さんが驚いたように見ているのが視界の端に映った。
俺も横目で幼なじみを一瞥し、彼女が本気で憤っていることを悟る。
「うじうじ卑屈になって、勝手に自分を追い込んで自滅してるくせに他人まで巻き込んで、カッコワル過ぎ」
「……桜くん」
さすがの部長も、表情を強張らせて口を挟んだ。
それがきっかけかどうかはわからないが、そこで桜は口をつぐむ。
それでも、相手を睨む視線だけは、緩めることをしなかったが。
「ふん、大した口を利くもんだな。お前、いっぺんその辺の野郎にレイプでもされて、妊娠くらいしてみろよ。俺みたいに世の中に絶望して、少しは同じ気分を理解できるようになるぜ?」
「――なっ?」
返されてきた最低の言葉に、桜の顔が怒りで青ざめる。
「想像しただけでもきついだろ? 知らねぇ男のもんを無理矢理――」
「もうよしなさい、昇!」
更に汚い言葉を浴びせかけた昇さんを、千賀子さんの一喝が黙らせた。
「……今回の計画をはっきりと決めたのは、それから少し時間がかかったかな。竜久も馬鹿な奴だったよ。うまくごまかしさえすれば、遺産を山分けしてお互い好き勝手な人生を手にできるなんて、本気で信じやがってよ。村中の電話線切るのを手伝わせて、碧の死体も運ばせたが、あいつにさせたのはそれくらいか。後は、死体のふりして姿消して、周りから怪しまれずに自分だけ先に村から出られると思い込んでたんだろうな。俺にアリバイ作りの道具にされるなんて、想像もしないでよ」
そこまで一気に話をして、昇さんは低い声で笑った。
全員、言葉を無くしてそんな彼を見つめているなか、更に言葉を継いでくる。
「違和感なく血糊を入手するのと、竜久の死体を消して池に沈める理由をごまかすために言い伝えを利用する。……それなりにうまいこと考えたつもりだったんだけどな。こんな予定外のくそガキどもに邪魔されちまうとは、本当に俺の人生空回ってばっかだわ」
正にゴミを見るような目で俺たちを睥睨し、心底うんざりしたようにため息を吐き出す。
「…………最低」
重苦しい沈黙の後に。
ポツリと小声を漏らしたのは、桜だった。
「あ?」
そんな彼女をギロリと睨み、昇さんは顔をしかめた。
「あなたは、本当にそんな信じられないような理由で、人を殺したんですか? お金を独り占めしたいとか、不幸だった人生の元を取るためとか、そんなどうしようもない理由だけで?」
相手の視線に怯むことすら忘れたように、桜は憐れむように昇さんを凝視する。
「当たり前だろ。俺を責めるって言うなら、俺をここまで追い詰めてきた人間全員に文句を言えよ。俺だってまともな、ただ普通の人生を送れてりゃ――」
「そんな馬鹿みたいな言い訳、聞きたくありません」
またも何事かを喋り始めそうになる相手を、ピシャリと牽制する。
「あなたの言ってることなんて、全部自己中心的なわがままばかりじゃないですか。自分で何一つまともな努力もしないで現実から逃げて、全部周りのせいにして。お金が欲しいなら、まともにバイトしようと思わなかったんですか? 周りのみんなが羨ましいなら、素直に自分磨きでも何でもして努力しようと思わなかったんですか?」
何かに弾かれたかのように一息に喋る桜を、流森さんが驚いたように見ているのが視界の端に映った。
俺も横目で幼なじみを一瞥し、彼女が本気で憤っていることを悟る。
「うじうじ卑屈になって、勝手に自分を追い込んで自滅してるくせに他人まで巻き込んで、カッコワル過ぎ」
「……桜くん」
さすがの部長も、表情を強張らせて口を挟んだ。
それがきっかけかどうかはわからないが、そこで桜は口をつぐむ。
それでも、相手を睨む視線だけは、緩めることをしなかったが。
「ふん、大した口を利くもんだな。お前、いっぺんその辺の野郎にレイプでもされて、妊娠くらいしてみろよ。俺みたいに世の中に絶望して、少しは同じ気分を理解できるようになるぜ?」
「――なっ?」
返されてきた最低の言葉に、桜の顔が怒りで青ざめる。
「想像しただけでもきついだろ? 知らねぇ男のもんを無理矢理――」
「もうよしなさい、昇!」
更に汚い言葉を浴びせかけた昇さんを、千賀子さんの一喝が黙らせた。
0
あなたにおすすめの小説
小説探偵
夕凪ヨウ
ミステリー
20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。
男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。
そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。
小説探偵、と。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~
水無月礼人
ミステリー
子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。
故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。
嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。
不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。
※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。
【アルファポリス】でも公開しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる