坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第五章:幕引きと抵抗

第五章:幕引きと抵抗 18

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          【7】

「……今回の計画をはっきりと決めたのは、それから少し時間がかかったかな。竜久も馬鹿な奴だったよ。うまくごまかしさえすれば、遺産を山分けしてお互い好き勝手な人生を手にできるなんて、本気で信じやがってよ。村中の電話線切るのを手伝わせて、碧の死体も運ばせたが、あいつにさせたのはそれくらいか。後は、死体のふりして姿消して、周りから怪しまれずに自分だけ先に村から出られると思い込んでたんだろうな。俺にアリバイ作りの道具にされるなんて、想像もしないでよ」

 そこまで一気に話をして、昇さんは低い声で笑った。

 全員、言葉を無くしてそんな彼を見つめているなか、更に言葉を継いでくる。

「違和感なく血糊を入手するのと、竜久の死体を消して池に沈める理由をごまかすために言い伝えを利用する。……それなりにうまいこと考えたつもりだったんだけどな。こんな予定外のくそガキどもに邪魔されちまうとは、本当に俺の人生空回ってばっかだわ」

 正にゴミを見るような目で俺たちを睥睨し、心底うんざりしたようにため息を吐き出す。

「…………最低」

 重苦しい沈黙の後に。

 ポツリと小声を漏らしたのは、桜だった。

「あ?」

 そんな彼女をギロリと睨み、昇さんは顔をしかめた。

「あなたは、本当にそんな信じられないような理由で、人を殺したんですか? お金を独り占めしたいとか、不幸だった人生の元を取るためとか、そんなどうしようもない理由だけで?」

 相手の視線に怯むことすら忘れたように、桜は憐れむように昇さんを凝視する。

「当たり前だろ。俺を責めるって言うなら、俺をここまで追い詰めてきた人間全員に文句を言えよ。俺だってまともな、ただ普通の人生を送れてりゃ――」

「そんな馬鹿みたいな言い訳、聞きたくありません」

 またも何事かを喋り始めそうになる相手を、ピシャリと牽制する。

「あなたの言ってることなんて、全部自己中心的なわがままばかりじゃないですか。自分で何一つまともな努力もしないで現実から逃げて、全部周りのせいにして。お金が欲しいなら、まともにバイトしようと思わなかったんですか? 周りのみんなが羨ましいなら、素直に自分磨きでも何でもして努力しようと思わなかったんですか?」

 何かに弾かれたかのように一息に喋る桜を、流森さんが驚いたように見ているのが視界の端に映った。

 俺も横目で幼なじみを一瞥し、彼女が本気で憤っていることを悟る。

「うじうじ卑屈になって、勝手に自分を追い込んで自滅してるくせに他人まで巻き込んで、カッコワル過ぎ」

「……桜くん」

 さすがの部長も、表情を強張らせて口を挟んだ。

 それがきっかけかどうかはわからないが、そこで桜は口をつぐむ。

 それでも、相手を睨む視線だけは、緩めることをしなかったが。

「ふん、大した口を利くもんだな。お前、いっぺんその辺の野郎にレイプでもされて、妊娠くらいしてみろよ。俺みたいに世の中に絶望して、少しは同じ気分を理解できるようになるぜ?」

「――なっ?」

 返されてきた最低の言葉に、桜の顔が怒りで青ざめる。

「想像しただけでもきついだろ? 知らねぇ男のもんを無理矢理――」

「もうよしなさい、昇!」

 更に汚い言葉を浴びせかけた昇さんを、千賀子さんの一喝が黙らせた。
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