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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 23
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「これ以上逃げたところで、あなたにプラスになることなどありません。おそらく、時間稼ぎすらできないでしょう」
「……どうしてそう思う?」
いちいち話に付き合うつもりはなかったが、訊いてみる。
「あなたが立てる計画は、はっきり言って杜撰です。穴が多すぎて話になりません。所詮、あなたという人間に、今回の計画は荷が重すぎたのです。だから、私たちにも犯行が見抜かれる」
そこで一度言葉を止め、蓮田は間を空ける。
時間にすれば、ほんの二秒くらいか。
そんな短い間の後に吐かれた蓮田の台詞に。
「……それくらいのことも自己判断できないほど、あなたは馬鹿なのですか?」
昇は、一瞬で激昂した。
「――この野郎っ!」
腕を振り上げ、殴りつけるようなかたちで蓮田の顔面にナイフの柄を叩きつける。
鈍い音と感触があり、蓮田の頭が揺れる。
衝撃で一瞬意識が飛んだか、ガクリと少女の足から力が抜けた。
昇は離すことなく掴み続ける襟を引きつけ、膝を付く前に体勢を維持させた。
「もういっぺん言ってみろよ? その能面ヅラ切り刻むぞこの野郎!」
口の中と鼻を怪我したか、蓮田の口元付近が血で赤くなる。
それでも、蓮田のポーカーフェイスは変わることがなく、僅かに焦点のブレた瞳を昇に戻した。
「どこまで人をおちょくりゃ気が済むんだ! クソガキ覚悟しとけよ、逃げ切った暁にはその辛気臭せぇ人格、ぶっ壊れるまで犯して――あ?」
感情のままに暴言を吐く昇の眼前に、突然見慣れぬ物が突き出された。
小さな小瓶に入れられた、薄紅色の液体。
まるで香水のようにも見えるそれが、蓮田が常に持ち歩くポーチの中に常備されている物だということを、昇は知らない。
「何だ?」
あまりにも近くに掲げられ、つい寄り目になりながら頭を引こうとした刹那――。
「馬鹿丸出しな言葉はもう聞き飽きた」
少女の冷たい声を引き金にするように、小瓶の先から中に入った液体が噴出された。
「――っ! いっでぇぇぇぇ!」
直後、液体を顔に受けた昇は両目を押さえて悲鳴をあげ、そのまま地面へとうずくまった。
まるで殺虫剤を噴射された虫のようにもがく昇を見下ろし、蓮田は手にしたままの小瓶をポーチにしまう。
「……自作した防犯スプレー、念のためにといつも持ち歩いているんです。しばらくはまともに目を開けることができないかと思いますが、自業自得と思っておいてください」
いつもの淡々とした口調の奥に、敵意を滲ませ蓮田は呟く。
「ちくしょう……! こんなことしてただで済むと思うなよ!」
両目を手で覆いながら、昇は苦痛に表情を歪める。
両者の優劣は、一瞬で入れ替わっていた。
「……今のあなたに、私をどうこうできるとは思えません。申し訳ないですが、私は村へ戻らせていただきます。目の痛みが和らぐまでに数十分はかかるはずですので、その後の行動は好きなようにしてください。もっとも――」
つまらなそうに話ながら、蓮田はくるりと昇に背を向ける。
「あなたが再び視力を取り戻す前に、拘束されるのがオチでしょうけど……」
そう最後に言い捨てて。
もうここにいる理由もないという風に、蓮田はその場を離れはじめた。
「……どうしてそう思う?」
いちいち話に付き合うつもりはなかったが、訊いてみる。
「あなたが立てる計画は、はっきり言って杜撰です。穴が多すぎて話になりません。所詮、あなたという人間に、今回の計画は荷が重すぎたのです。だから、私たちにも犯行が見抜かれる」
そこで一度言葉を止め、蓮田は間を空ける。
時間にすれば、ほんの二秒くらいか。
そんな短い間の後に吐かれた蓮田の台詞に。
「……それくらいのことも自己判断できないほど、あなたは馬鹿なのですか?」
昇は、一瞬で激昂した。
「――この野郎っ!」
腕を振り上げ、殴りつけるようなかたちで蓮田の顔面にナイフの柄を叩きつける。
鈍い音と感触があり、蓮田の頭が揺れる。
衝撃で一瞬意識が飛んだか、ガクリと少女の足から力が抜けた。
昇は離すことなく掴み続ける襟を引きつけ、膝を付く前に体勢を維持させた。
「もういっぺん言ってみろよ? その能面ヅラ切り刻むぞこの野郎!」
口の中と鼻を怪我したか、蓮田の口元付近が血で赤くなる。
それでも、蓮田のポーカーフェイスは変わることがなく、僅かに焦点のブレた瞳を昇に戻した。
「どこまで人をおちょくりゃ気が済むんだ! クソガキ覚悟しとけよ、逃げ切った暁にはその辛気臭せぇ人格、ぶっ壊れるまで犯して――あ?」
感情のままに暴言を吐く昇の眼前に、突然見慣れぬ物が突き出された。
小さな小瓶に入れられた、薄紅色の液体。
まるで香水のようにも見えるそれが、蓮田が常に持ち歩くポーチの中に常備されている物だということを、昇は知らない。
「何だ?」
あまりにも近くに掲げられ、つい寄り目になりながら頭を引こうとした刹那――。
「馬鹿丸出しな言葉はもう聞き飽きた」
少女の冷たい声を引き金にするように、小瓶の先から中に入った液体が噴出された。
「――っ! いっでぇぇぇぇ!」
直後、液体を顔に受けた昇は両目を押さえて悲鳴をあげ、そのまま地面へとうずくまった。
まるで殺虫剤を噴射された虫のようにもがく昇を見下ろし、蓮田は手にしたままの小瓶をポーチにしまう。
「……自作した防犯スプレー、念のためにといつも持ち歩いているんです。しばらくはまともに目を開けることができないかと思いますが、自業自得と思っておいてください」
いつもの淡々とした口調の奥に、敵意を滲ませ蓮田は呟く。
「ちくしょう……! こんなことしてただで済むと思うなよ!」
両目を手で覆いながら、昇は苦痛に表情を歪める。
両者の優劣は、一瞬で入れ替わっていた。
「……今のあなたに、私をどうこうできるとは思えません。申し訳ないですが、私は村へ戻らせていただきます。目の痛みが和らぐまでに数十分はかかるはずですので、その後の行動は好きなようにしてください。もっとも――」
つまらなそうに話ながら、蓮田はくるりと昇に背を向ける。
「あなたが再び視力を取り戻す前に、拘束されるのがオチでしょうけど……」
そう最後に言い捨てて。
もうここにいる理由もないという風に、蓮田はその場を離れはじめた。
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