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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 25
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【9】
結局、警察が藤咲村へ到着したのは、翌日の昼を過ぎた頃だった。
あれから、両目を押さえてフラフラしている昇さんと、顔に怪我をした蓮田と再開したのは俺たちが追跡を始めてすぐのこと。
二人の間にどんなことがあったのか、最初は自警団を含めた全員が呆気に取られていたが、治療を受ける蓮田から一通りの事情を説明してもらい状況は把握できた。
正直、蓮田の持ち歩いていた香水が防犯スプレーだったことには驚いたが、それ以上にあの緊迫した状態からあっさりと起死回生を遂げたことになによりも戦慄した。
「うわ、乃亜ちゃん唇切れてるじゃない! 酷い、女の子の顔殴るとか許せないよ。どこまで最低なのあの人!」
と、最初は憤っていた桜でさえ、香水もどきを見てあっさりと黙り込んだほどだった。
簡単に話してもらった内容を一言でまとめるならば、トウガラシの粉末を直接目にかけるのと同じくらいの刺激があるものらしい。
いたずらに噴霧すれば、ちょっとしたテロを起こせるアイテムと言っても過言ではないだろう。
枝橋さんに拘束された昇さんは、村にある空き家に監禁同然に閉じ込められ、二十四時間体制で見張られ続けていた。
そして今、五月二十四日、月曜日。午後一時。
空は今日も快晴で、村に穏やかな光を降らせている。
平和な日常。
何も知らない人間が村を眺めれば、そんな言葉を浮かべるだろう。
梅木家の敷地前、そこに俺たちミスオカ研メンバーは集まり、目の前を行き交う警察の姿を眺めていた。
既に二十人以上が村内に出入りしているのを数えて、そこから先は諦めた。
ここ以外にも、巨大藤や竜久さんが発見された池の方にも、捜査員が入っていることだろう。
「ヘリが来れるなら、もっと早く来てほしかったわよね」
側で腕を組んで立っていた由奈さんが、面白くなさそうな呟きを漏らした。
「仕方ないでしょ。着陸できるポイント探すのに手間取ったそうだし、夜が明けてからじゃなきゃまともに動けなかったらしいよ。吉田さんが異変に気づいたの、夕方だったって話だしさ」
従姉のぼやきに答え、部長がいつもお馴染みのお気楽な笑みを浮かべた。
「まぁ、それはそうかもしれないけどさ」
唇を尖らせる由奈さんを、蓮田がぼんやりと眺める。
さすがに出血は止まっているが、鼻の下に目立つ青あざができてしまっていた。
「それにしても、本当にやりきれない事件だったな。まさかたったあれだけの理由で、殺人を繰り返していたなんて」
そう告げたのは、由奈さん同様俺たちと梅木家の様子を眺めていた枝橋さんだ。
ついさっきまで、到着した警察となにやらやり取りをしていたのだが、どうやら一段落ついたのだろう。
「情けないな。しょっちゅう顔を合わせていた相手なのに、全く前兆を察することができなかった」
「そんな、枝橋さんが悪いわけじゃないですよ」
フォローするように声をかける桜へ苦笑してみせ、枝橋さんは力なく首を振った。
「いや、そういう問題じゃないんだ。……妻との約束を果たせなかったのが悔しくてね」
「奥さんとの約束、ですか?」
「そう」
頷いて、枝橋さんはポケットから財布を取出し、中から一枚の写真を出してみせる。
結局、警察が藤咲村へ到着したのは、翌日の昼を過ぎた頃だった。
あれから、両目を押さえてフラフラしている昇さんと、顔に怪我をした蓮田と再開したのは俺たちが追跡を始めてすぐのこと。
二人の間にどんなことがあったのか、最初は自警団を含めた全員が呆気に取られていたが、治療を受ける蓮田から一通りの事情を説明してもらい状況は把握できた。
正直、蓮田の持ち歩いていた香水が防犯スプレーだったことには驚いたが、それ以上にあの緊迫した状態からあっさりと起死回生を遂げたことになによりも戦慄した。
「うわ、乃亜ちゃん唇切れてるじゃない! 酷い、女の子の顔殴るとか許せないよ。どこまで最低なのあの人!」
と、最初は憤っていた桜でさえ、香水もどきを見てあっさりと黙り込んだほどだった。
簡単に話してもらった内容を一言でまとめるならば、トウガラシの粉末を直接目にかけるのと同じくらいの刺激があるものらしい。
いたずらに噴霧すれば、ちょっとしたテロを起こせるアイテムと言っても過言ではないだろう。
枝橋さんに拘束された昇さんは、村にある空き家に監禁同然に閉じ込められ、二十四時間体制で見張られ続けていた。
そして今、五月二十四日、月曜日。午後一時。
空は今日も快晴で、村に穏やかな光を降らせている。
平和な日常。
何も知らない人間が村を眺めれば、そんな言葉を浮かべるだろう。
梅木家の敷地前、そこに俺たちミスオカ研メンバーは集まり、目の前を行き交う警察の姿を眺めていた。
既に二十人以上が村内に出入りしているのを数えて、そこから先は諦めた。
ここ以外にも、巨大藤や竜久さんが発見された池の方にも、捜査員が入っていることだろう。
「ヘリが来れるなら、もっと早く来てほしかったわよね」
側で腕を組んで立っていた由奈さんが、面白くなさそうな呟きを漏らした。
「仕方ないでしょ。着陸できるポイント探すのに手間取ったそうだし、夜が明けてからじゃなきゃまともに動けなかったらしいよ。吉田さんが異変に気づいたの、夕方だったって話だしさ」
従姉のぼやきに答え、部長がいつもお馴染みのお気楽な笑みを浮かべた。
「まぁ、それはそうかもしれないけどさ」
唇を尖らせる由奈さんを、蓮田がぼんやりと眺める。
さすがに出血は止まっているが、鼻の下に目立つ青あざができてしまっていた。
「それにしても、本当にやりきれない事件だったな。まさかたったあれだけの理由で、殺人を繰り返していたなんて」
そう告げたのは、由奈さん同様俺たちと梅木家の様子を眺めていた枝橋さんだ。
ついさっきまで、到着した警察となにやらやり取りをしていたのだが、どうやら一段落ついたのだろう。
「情けないな。しょっちゅう顔を合わせていた相手なのに、全く前兆を察することができなかった」
「そんな、枝橋さんが悪いわけじゃないですよ」
フォローするように声をかける桜へ苦笑してみせ、枝橋さんは力なく首を振った。
「いや、そういう問題じゃないんだ。……妻との約束を果たせなかったのが悔しくてね」
「奥さんとの約束、ですか?」
「そう」
頷いて、枝橋さんはポケットから財布を取出し、中から一枚の写真を出してみせる。
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