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プロローグ
プロローグ 2
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人はおろかペットすらいない部屋の中、ブツブツと喋る自分の姿はさぞ気持ち悪く見えることだろうと想像しニヤリとしそうになりながら、あたしはのそりと立ち上がり冷蔵庫へと向かう。
そして、二日前に買っておいたモンブランを食べようと冷蔵庫へ手をかけた瞬間、
「ん?」
ピンポンと軽快な音が家の中へ響き、来客が訪れたことを知らせてきた。
日中のこの時間、我が家へ訪問する人など滅多にいないはずなのだが。
「……誰だろ。せっかく甘いひとときを過ごそうとしてるのに。居留守で良いかなぁ」
何かしらの勧誘業者か、はたまた新年の挨拶回りで訪れた親戚か。
(親戚なら、普通事前に連絡してから来るよね? ってことは、面倒な業者か宗教の勧誘とかかな)
都合の良いことを適当に考え、無視してしまおうとするあたしの対応を阻止するように、インターホンは何度もしつこく鳴らされ続ける。
「結構しつこいなぁ……」
一分間ほど耐えて様子を窺っていたが、最終的にはお前はリズムゲームのハードモードでもプレイしているのかと突っ込みたくなる程の連打をされ始め、
「ああもう、鬱陶しい!」
根負けしたあたしは、わざとドスドスと足音を立てながら玄関へと向かい、チェーンは外さぬまま若干乱暴にドアを押し開けた。
「留守です!」
「いや、いるじゃん」
噛み付くように言い放ったあたしの言葉に、臆する気配もなく言い返してくる聞き慣れた声。
「ん? ……あれ? 奈子じゃん。どうしたの急に。宗教か何かの押し売りかと思っちゃった」
ドアの隙間から覗いてくる顔を認識し、あたしの中に膨れていた警戒心とイライラが一気に萎んで消え失せる。
家の前に立っていたのは、高校時代からの友人で今は同じフリーター仲間でもある釜石奈子。
百四十二センチの小柄な身体に、ショートボブの茶髪。
黙っていればモテるけど、結構お金や食べ物に意地汚いところがあるせいで彼氏ができても長続きしない残念な子だ。
「押し売れる物があるなら、是非とも押し売りして稼ぎたいけどね。生憎、売れる物もないよ。あ、お菓子は買ってきたよコンビニで。百円のやつ」
「ああ、うん。ありがと……ふぁ!?」
差し出された袋を受け取るためチェーンを外してドアを全開にしたあたしは、奈子の後ろに見知らぬ男が立っていることに気づき、思わず馬鹿みたいな声を上げて上体を仰け反らせてしまった。
「あ、どうも。鴨川急便です。お荷物をお届けに参りました」
その男は、居心地の悪そうな笑みを浮かべてそう名乗ると、手にしていた小さな小包みを胸の前で掲げて見せてきた。
「あ、この人もわたしと一緒のタイミングでここに来たんだよ。諦めて帰ろうとしたんだけど、絶対いるからちょっと待ってって引き止めてた」
ケロッとした口調で告げてくる奈子をジロリと睨み、あたしは
「……先に言ってよ、そういうの」
と小声で毒づきながら宅配業者の人を先に玄関へと招き入れた。
そして、二日前に買っておいたモンブランを食べようと冷蔵庫へ手をかけた瞬間、
「ん?」
ピンポンと軽快な音が家の中へ響き、来客が訪れたことを知らせてきた。
日中のこの時間、我が家へ訪問する人など滅多にいないはずなのだが。
「……誰だろ。せっかく甘いひとときを過ごそうとしてるのに。居留守で良いかなぁ」
何かしらの勧誘業者か、はたまた新年の挨拶回りで訪れた親戚か。
(親戚なら、普通事前に連絡してから来るよね? ってことは、面倒な業者か宗教の勧誘とかかな)
都合の良いことを適当に考え、無視してしまおうとするあたしの対応を阻止するように、インターホンは何度もしつこく鳴らされ続ける。
「結構しつこいなぁ……」
一分間ほど耐えて様子を窺っていたが、最終的にはお前はリズムゲームのハードモードでもプレイしているのかと突っ込みたくなる程の連打をされ始め、
「ああもう、鬱陶しい!」
根負けしたあたしは、わざとドスドスと足音を立てながら玄関へと向かい、チェーンは外さぬまま若干乱暴にドアを押し開けた。
「留守です!」
「いや、いるじゃん」
噛み付くように言い放ったあたしの言葉に、臆する気配もなく言い返してくる聞き慣れた声。
「ん? ……あれ? 奈子じゃん。どうしたの急に。宗教か何かの押し売りかと思っちゃった」
ドアの隙間から覗いてくる顔を認識し、あたしの中に膨れていた警戒心とイライラが一気に萎んで消え失せる。
家の前に立っていたのは、高校時代からの友人で今は同じフリーター仲間でもある釜石奈子。
百四十二センチの小柄な身体に、ショートボブの茶髪。
黙っていればモテるけど、結構お金や食べ物に意地汚いところがあるせいで彼氏ができても長続きしない残念な子だ。
「押し売れる物があるなら、是非とも押し売りして稼ぎたいけどね。生憎、売れる物もないよ。あ、お菓子は買ってきたよコンビニで。百円のやつ」
「ああ、うん。ありがと……ふぁ!?」
差し出された袋を受け取るためチェーンを外してドアを全開にしたあたしは、奈子の後ろに見知らぬ男が立っていることに気づき、思わず馬鹿みたいな声を上げて上体を仰け反らせてしまった。
「あ、どうも。鴨川急便です。お荷物をお届けに参りました」
その男は、居心地の悪そうな笑みを浮かべてそう名乗ると、手にしていた小さな小包みを胸の前で掲げて見せてきた。
「あ、この人もわたしと一緒のタイミングでここに来たんだよ。諦めて帰ろうとしたんだけど、絶対いるからちょっと待ってって引き止めてた」
ケロッとした口調で告げてくる奈子をジロリと睨み、あたしは
「……先に言ってよ、そういうの」
と小声で毒づきながら宅配業者の人を先に玄関へと招き入れた。
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