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プロローグ
プロローグ 6
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大袈裟に仰け反るようなオーバーリアクションをしてみせた奈子は、そのままベッドに倒れ込むんじゃないかと思うギリギリのところで身体を静止させ、そのまままた身体を元に戻してきた。
「でもまぁ、良いでしょう。面白くなかったら、奢ってあげる。面白くなかったらね。その代り一緒に行くってことで良いんだよね? 決定するよ?」
「うん、良いよ。考えてみたら、服はいつでも買えるけど旅行はそうもいかないもんね。こういう効率の良い判断ができる辺り、あたしもちゃんと大人になったんだなって思うよ」
長野行きを了承する自分を納得させようと、無理矢理自画自賛みたいなことを言ってみるあたしに、奈子は
「ちゃんとした大人は毎朝キチッと会社へ行って、働きアリみてぇにお勤めを果たすもんですぜお嬢」
と茶化す口調で、鬱になりそうなことを返してきてくれた。
「そんな言い方されると余計に就活したくなくなるからやめてほしい」
「お? 余計にってことは元からしたくない気持ちがあったんだね。わかってたけど」
モチベを下げながら呻くあたしにサラリと返し、奈子がまたお菓子を一つ口の中へ放った。
そして、もはやこちらの話は終わりだというように、あたし宛に届いた小包みを指差す。
「んで、それ何? そろそろ開けようよ。わたしもう気になって気になって仕方ないんだけど」
「……いきなり家に来て、個人的に届いた荷物早く開けようとかさ、冷静に考えるとかなり厚かましいよね」
なんかもうどうでも良いや的な気分に浸りながら、あたしはどかしたばかりの子包みをテーブルへ置き改めて伝票に目を向ける。
当然、届け先はあたしの家で受取人もあたしの名前が書かれている。
送り主の欄には、お父さんの名前と乱雑な字の英語で書かれたよくわからない住所が記載されていた。
正直、英語と数学と歴史が大っ嫌いだったあたしには、まともに読めるものではないと即座に判断し、段ボールに張り付けられた紙テープを一気に剥がした。
それを見た奈子が、ワクワクした様子であたしに身体を密着させてくる。
「大きさからして、財布とかかな? お父さんお金持ちなんでしょ? ブランド物の財布とかならあり得そうじゃん」
「そんなのプレゼントするようなタイプじゃないよ、お父さんは」
適当な相槌を返しながら箱を開け、緩衝材を取り除いていく。
「ん……? 何だろこれ。スマホ?」
そうして、箱の中に収められていた平べったい赤い板のような物を取り出したあたしは、それを包んでいたビニールを外してしげしげと観察した。
赤いデザインのスマホ。
パッと見はそんな風にしか思えない。
厚さは五ミリくらい。片面が液晶画面になっていて、当然だけど今は真っ黒で何も映し出してはいない。
箱の中には専用の充電器のような物も入っており、間違いなく通信機器の類であることは間違いなさそうな感じがした。
「最新機種? どこのメーカーよ?」
あたしよりも顔を近づけ、食い入るように電子機器を見つめる奈子に首を傾げてみせながら、あたしは「さぁ。何も書いてないね」と短く言葉を返した。
「でもまぁ、良いでしょう。面白くなかったら、奢ってあげる。面白くなかったらね。その代り一緒に行くってことで良いんだよね? 決定するよ?」
「うん、良いよ。考えてみたら、服はいつでも買えるけど旅行はそうもいかないもんね。こういう効率の良い判断ができる辺り、あたしもちゃんと大人になったんだなって思うよ」
長野行きを了承する自分を納得させようと、無理矢理自画自賛みたいなことを言ってみるあたしに、奈子は
「ちゃんとした大人は毎朝キチッと会社へ行って、働きアリみてぇにお勤めを果たすもんですぜお嬢」
と茶化す口調で、鬱になりそうなことを返してきてくれた。
「そんな言い方されると余計に就活したくなくなるからやめてほしい」
「お? 余計にってことは元からしたくない気持ちがあったんだね。わかってたけど」
モチベを下げながら呻くあたしにサラリと返し、奈子がまたお菓子を一つ口の中へ放った。
そして、もはやこちらの話は終わりだというように、あたし宛に届いた小包みを指差す。
「んで、それ何? そろそろ開けようよ。わたしもう気になって気になって仕方ないんだけど」
「……いきなり家に来て、個人的に届いた荷物早く開けようとかさ、冷静に考えるとかなり厚かましいよね」
なんかもうどうでも良いや的な気分に浸りながら、あたしはどかしたばかりの子包みをテーブルへ置き改めて伝票に目を向ける。
当然、届け先はあたしの家で受取人もあたしの名前が書かれている。
送り主の欄には、お父さんの名前と乱雑な字の英語で書かれたよくわからない住所が記載されていた。
正直、英語と数学と歴史が大っ嫌いだったあたしには、まともに読めるものではないと即座に判断し、段ボールに張り付けられた紙テープを一気に剥がした。
それを見た奈子が、ワクワクした様子であたしに身体を密着させてくる。
「大きさからして、財布とかかな? お父さんお金持ちなんでしょ? ブランド物の財布とかならあり得そうじゃん」
「そんなのプレゼントするようなタイプじゃないよ、お父さんは」
適当な相槌を返しながら箱を開け、緩衝材を取り除いていく。
「ん……? 何だろこれ。スマホ?」
そうして、箱の中に収められていた平べったい赤い板のような物を取り出したあたしは、それを包んでいたビニールを外してしげしげと観察した。
赤いデザインのスマホ。
パッと見はそんな風にしか思えない。
厚さは五ミリくらい。片面が液晶画面になっていて、当然だけど今は真っ黒で何も映し出してはいない。
箱の中には専用の充電器のような物も入っており、間違いなく通信機器の類であることは間違いなさそうな感じがした。
「最新機種? どこのメーカーよ?」
あたしよりも顔を近づけ、食い入るように電子機器を見つめる奈子に首を傾げてみせながら、あたしは「さぁ。何も書いてないね」と短く言葉を返した。
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