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第二章:救助を待つ
第二章:救助を待つ 15
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「いや、わかんない。何かドアに引っかかってるみたいでうまく開かないんだよね。何だろ?」
「開かない? 外に何かあるってこと?」
先程開けたときは、ドアは問題なく開いたし外側は風で飛ばされたきた雪が薄く積もっているだけだった。
まさか本当に動物が近づいてでもきていたのかと疑うあたしをよそに、
「ちょっと待って。今確かめてみる」
と開けた隙間から恐る恐る顔を出した奈子は、外へ出したその首を僅かに下へ向けた途端、
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
今まで一度も聞いたことのない絶叫をあげ、逃げるように後退しあたしの側まで駆け寄ってきた。
「ちょっと、いきなり何? どうしたの?」
「どうされました、釜石さん?」
強い力でしがみ付いてくる奈子の背へ、あたしは驚きながら手を回す。
悲鳴に驚いたオーナーたちも、何事かといった様相であたしたちに近づいてきた。
チラリとそちらを見れば、悲鳴が聞こえたのだろう、リビングから出ていったばかりの沢岸さんと千谷真さんも慌てた様子で引き返してきたのが確認できた。
「そ、外……。ドアのすぐ向こうに、人が倒れてた」
震える声で告げ、奈子はあたしを掴む手に更に力を込める。
「人が? まさか、こんな豪雪の日にここへ辿り着ける人なんかいないはず……」
いくらお調子者の奈子でも、さすがに今の状態を見れば嘘や冗談を言っていないことは容易にわかる。
その奈子の様子に困惑した表情を浮かべたオーナーが、慎重な足取りで僅かに開かれたままのドアへと近づいていった。
そのまま押すようなかたちでドアの隙間を広げると、上半身を乗り出すようにして外を確認する。
「――矢津さん!?」
そして驚いたようにビクリと身体を反応させると、慌てたような声を出しながら、ドアの反対側へと姿を消してしまった。
「おい、誰か来てくれ! 希伊子は警察へ連絡を! 矢津さんが亡くなってる!」
叫ぶようなオーナーの声が聞こえ、沢岸さんと千谷真さんが弾かれたようにしてオーナーの元へと駆け出す。
希伊子さんと名取さんは、目を大きくしたまま固まって動かず、ドアの方を凝視していた。
視線の端を、彩也子さんが慌てたように移動するのが見えた。
「あなた!?」
ドアへと駆け寄り、躊躇いもなく外へと飛び出す。
沢岸さんが押し留めようとするかのように動いたが一瞬遅く、彩也子さんはドアの向こうを覗き、口元を押さえながら悲痛な声を響かせた。
「…………」
そんな非日常的な光景を呆然としながら眺めていたあたしは、
「――希」
握り締めたままでいたP.Uから発せられたイデアの声で、ハッと意識を現実に引き戻す。
「大丈夫かしら? 顔色が優れないわ」
少し心配そうに表情を強張らせるようにしてあたしを見上げるイデアへ小さく頷き、「大丈夫」とだけ答え隣で震える奈子の頭を見やる。
そんなあたしの行動に合わせるようにして、イデアも奈子へ瞳の向きを変えると、俯く奈子の横顔を覗くようにしながら声をかける。
「ねぇ、奈子。あのドアの向こうには、本当に矢津 哲平さんがいたの?」
特に相手の心境を慮る様子もない、淡々とした問いかけだった。
「開かない? 外に何かあるってこと?」
先程開けたときは、ドアは問題なく開いたし外側は風で飛ばされたきた雪が薄く積もっているだけだった。
まさか本当に動物が近づいてでもきていたのかと疑うあたしをよそに、
「ちょっと待って。今確かめてみる」
と開けた隙間から恐る恐る顔を出した奈子は、外へ出したその首を僅かに下へ向けた途端、
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
今まで一度も聞いたことのない絶叫をあげ、逃げるように後退しあたしの側まで駆け寄ってきた。
「ちょっと、いきなり何? どうしたの?」
「どうされました、釜石さん?」
強い力でしがみ付いてくる奈子の背へ、あたしは驚きながら手を回す。
悲鳴に驚いたオーナーたちも、何事かといった様相であたしたちに近づいてきた。
チラリとそちらを見れば、悲鳴が聞こえたのだろう、リビングから出ていったばかりの沢岸さんと千谷真さんも慌てた様子で引き返してきたのが確認できた。
「そ、外……。ドアのすぐ向こうに、人が倒れてた」
震える声で告げ、奈子はあたしを掴む手に更に力を込める。
「人が? まさか、こんな豪雪の日にここへ辿り着ける人なんかいないはず……」
いくらお調子者の奈子でも、さすがに今の状態を見れば嘘や冗談を言っていないことは容易にわかる。
その奈子の様子に困惑した表情を浮かべたオーナーが、慎重な足取りで僅かに開かれたままのドアへと近づいていった。
そのまま押すようなかたちでドアの隙間を広げると、上半身を乗り出すようにして外を確認する。
「――矢津さん!?」
そして驚いたようにビクリと身体を反応させると、慌てたような声を出しながら、ドアの反対側へと姿を消してしまった。
「おい、誰か来てくれ! 希伊子は警察へ連絡を! 矢津さんが亡くなってる!」
叫ぶようなオーナーの声が聞こえ、沢岸さんと千谷真さんが弾かれたようにしてオーナーの元へと駆け出す。
希伊子さんと名取さんは、目を大きくしたまま固まって動かず、ドアの方を凝視していた。
視線の端を、彩也子さんが慌てたように移動するのが見えた。
「あなた!?」
ドアへと駆け寄り、躊躇いもなく外へと飛び出す。
沢岸さんが押し留めようとするかのように動いたが一瞬遅く、彩也子さんはドアの向こうを覗き、口元を押さえながら悲痛な声を響かせた。
「…………」
そんな非日常的な光景を呆然としながら眺めていたあたしは、
「――希」
握り締めたままでいたP.Uから発せられたイデアの声で、ハッと意識を現実に引き戻す。
「大丈夫かしら? 顔色が優れないわ」
少し心配そうに表情を強張らせるようにしてあたしを見上げるイデアへ小さく頷き、「大丈夫」とだけ答え隣で震える奈子の頭を見やる。
そんなあたしの行動に合わせるようにして、イデアも奈子へ瞳の向きを変えると、俯く奈子の横顔を覗くようにしながら声をかける。
「ねぇ、奈子。あのドアの向こうには、本当に矢津 哲平さんがいたの?」
特に相手の心境を慮る様子もない、淡々とした問いかけだった。
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