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第二章:救助を待つ
第二章:救助を待つ 14
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普段とは違う気候のせいで風邪でもひいてしまったのか。
仮にそうだとしても、行方がわからなくなる理由とは全然関係がなさそうではあるが。
「うーん? それじゃあ、夜中にどこかへ行ったってことになるのか。外出した形跡がないなら、中にいるはずだよなぁ。一度、従業員全員で空き部屋をチェックしてみようか。と言っても、使ってない部屋は鍵かけてるから入れるはずもないんだけど……」
釈然としない雰囲気をまとわせたまま首を捻るオーナーに、沢岸さんが手を上げ
「それなら、僕と千谷真くんで確認してきますよ。オーナーたちは食事の準備を進めないと、お客さんたちの朝食が遅れちゃいますし」
と、自ら捜索を名乗りでた。
「ああ、そうかい? 確かにその方が効率は良いな。千谷真くん、お願いできるかな?」
「ええ、それくらいなら。すぐ終わるでしょうし」
沢岸さんの提案にオーナーはすぐ頷き、千谷真さんも快諾する。
「ついでに、どこか鍵の開いてる窓がないかも全部チェックしておいて。ないとは思うけど、玄関以外から外に出たってことも考慮はしないといけない」
「わかりました」
首肯して、沢岸さんは千谷真さんへ行こうという合図であろう目配せを送る。
そうして、二人が並ぶようにリビングを出ていこうとした正にそのとき――。
「……?」
あたしは、すぐ近くで何かが落ちるような、微かな音を耳にした。
何だろうと思い周囲を見回すも、特に変化が起きた兆しはない。
「どしたん、希? 何か探してる?」
「ううん、そういうわけじゃないけど、今何か変な音しなかった?」
不審な動きをしてしまったせいか、不思議そうにあたしを見てきた奈子へそう告げると、奈子ではなくイデアの方があたしの質問に答えてきた。
「聞こえたわね。重いものが下へ落ちた音だと思うわ。音の大きさから推測して、ここから大体五メートルくらい離れた位置。さっき希たちが開けていたあのドア付近のはずよ」
「え? ドア? そこの?」
裏口へ出られるドアを小さく指差し、あたしは訊き返す。
見たところ、ドアの近くには何も落ちていたりはしていない。
「特に何もないじゃんね。あれかな? 屋根の雪が落ちたとか」
奈子も、大したことじゃないだろうといったリアクションでドアの方を向き、そんなことを言ってきた。
「そうかしら? 雪が落ちる音とは、音質が異なるような気がしたけれど」
だけど、イデアは奈子の言うことに納得ができなかったようで、釈然としない様子をみせ首を傾《かたむ》ける。
「音質って……そこまで判別できるのかい。しょうがないなぁ、イデアちゃんが気になってるなら、ちょっくら確かめてあげるわよ。ただしあれよ? ドア開けた途端、鹿みたいなの側にいたらわたしでかい声出すからね?」
「恐いこと言わないでよ」
立ち上がりドアへ歩いていく奈子の背へ呻いて、あたしは成り行きを見守る。
先程掛けたばかりの鍵をまた外し、奈子がそっとドアを押し開き始めると、
「……ん? あれ?」
不意に奈子が素のリアクションをみせ、ドアを僅かに開いたまま動きを止めてしまった。
「どうしたの?」
何だろうと訝しみつつあたしが声をかけると、奈子は首だけで振り返りドアを指差す。
仮にそうだとしても、行方がわからなくなる理由とは全然関係がなさそうではあるが。
「うーん? それじゃあ、夜中にどこかへ行ったってことになるのか。外出した形跡がないなら、中にいるはずだよなぁ。一度、従業員全員で空き部屋をチェックしてみようか。と言っても、使ってない部屋は鍵かけてるから入れるはずもないんだけど……」
釈然としない雰囲気をまとわせたまま首を捻るオーナーに、沢岸さんが手を上げ
「それなら、僕と千谷真くんで確認してきますよ。オーナーたちは食事の準備を進めないと、お客さんたちの朝食が遅れちゃいますし」
と、自ら捜索を名乗りでた。
「ああ、そうかい? 確かにその方が効率は良いな。千谷真くん、お願いできるかな?」
「ええ、それくらいなら。すぐ終わるでしょうし」
沢岸さんの提案にオーナーはすぐ頷き、千谷真さんも快諾する。
「ついでに、どこか鍵の開いてる窓がないかも全部チェックしておいて。ないとは思うけど、玄関以外から外に出たってことも考慮はしないといけない」
「わかりました」
首肯して、沢岸さんは千谷真さんへ行こうという合図であろう目配せを送る。
そうして、二人が並ぶようにリビングを出ていこうとした正にそのとき――。
「……?」
あたしは、すぐ近くで何かが落ちるような、微かな音を耳にした。
何だろうと思い周囲を見回すも、特に変化が起きた兆しはない。
「どしたん、希? 何か探してる?」
「ううん、そういうわけじゃないけど、今何か変な音しなかった?」
不審な動きをしてしまったせいか、不思議そうにあたしを見てきた奈子へそう告げると、奈子ではなくイデアの方があたしの質問に答えてきた。
「聞こえたわね。重いものが下へ落ちた音だと思うわ。音の大きさから推測して、ここから大体五メートルくらい離れた位置。さっき希たちが開けていたあのドア付近のはずよ」
「え? ドア? そこの?」
裏口へ出られるドアを小さく指差し、あたしは訊き返す。
見たところ、ドアの近くには何も落ちていたりはしていない。
「特に何もないじゃんね。あれかな? 屋根の雪が落ちたとか」
奈子も、大したことじゃないだろうといったリアクションでドアの方を向き、そんなことを言ってきた。
「そうかしら? 雪が落ちる音とは、音質が異なるような気がしたけれど」
だけど、イデアは奈子の言うことに納得ができなかったようで、釈然としない様子をみせ首を傾《かたむ》ける。
「音質って……そこまで判別できるのかい。しょうがないなぁ、イデアちゃんが気になってるなら、ちょっくら確かめてあげるわよ。ただしあれよ? ドア開けた途端、鹿みたいなの側にいたらわたしでかい声出すからね?」
「恐いこと言わないでよ」
立ち上がりドアへ歩いていく奈子の背へ呻いて、あたしは成り行きを見守る。
先程掛けたばかりの鍵をまた外し、奈子がそっとドアを押し開き始めると、
「……ん? あれ?」
不意に奈子が素のリアクションをみせ、ドアを僅かに開いたまま動きを止めてしまった。
「どうしたの?」
何だろうと訝しみつつあたしが声をかけると、奈子は首だけで振り返りドアを指差す。
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