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第二章:救助を待つ
第二章:救助を待つ 40
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「ああ……やはりそうですか。仕方がありませんね」
できるだけすまなそうな表情を作って頭を下げるあたしへ、オーナーはにこりと笑って頷いてくれる。
「どのみち、夕方には除雪業者の方が来て全て解決です。深刻になる必要はありませんしね。さ、それでは皆さんの所へ戻りましょう」
「はい」
廊下へと促すオーナーへ素直に従い、あたしが歩き始めた瞬間、突然イデアが
「そちらの部屋は、どうなっているのかしら?」
と管理室の更に奥に続く扉を指差しオーナーへと呼びかけた。
「え? ああ、そちらはわたしたち夫婦の寝室です」
一瞬きょとんとなったオーナーが、すぐに笑顔を浮かべて答えてくれる。
「ベッド以外は特に何もない、狭い部屋ですよ。寝るためだけに使っているような――」
「失礼を承知でお願いしたいのだけれど、ほんの少しだけ室内を見させてもらえないかしら?」
話すオーナーを遮るように、イデアは扉を見つめたまま言葉を重ねる。
「え? まぁ、少しだけでしたら」
これにはさすがに困った様子を見せ、オーナーはあたしへどうにかならないかと言いたげな視線をよこす。
いくら何でも、玩具らしき端末に寝室を見せろと言われて、戸惑わない人なんているわけもない。
あたしのために――それこそ遊びに付き合うノリで――話を合わせてくれているのも、空気感でビシビシ伝わってきているため、正直ばつの悪さが半端じゃなかった。
「あの、ごめんなさい。もう本当に、予期しないこと次から次へと喋りだすもので。あたしは大丈夫ですから、イデアにだけチラッと、一秒くらい見せてあげてください。たぶんそれで満足すると思いますし、逆に見せないと夜になっても根に持たれそうでうんざりするんで」
もはや言い訳としか受け取られない言葉を早口で告げ、あたしはソソソッと寝室の扉まで移動する。
あたし自身も何でこんなことさせられてるのかさっぱりわからないが、とにかく嫌なことはさっさと終わらせたい。
「どうぞ」
鍵はかけていなかったようで、オーナーはそのまま扉を開けてくれる。
「すみません。それじゃちょっとだけ」
即座にイデアを前に突き出し、中が確認しやすいように掲げた。
電気が消された室内は、思ったよりも薄暗くて狭かった。
ダブルのベッドと、小さな棚がいくつかあるだけ。
壁にはクローゼットがあるようだが、閉じられているため中はわからない。
部屋に付けられた小窓はあたしたちの使う客室やリビングよりも小さく、これでは風通しも悪そうだなと、そんなことを思った。
「……ありがとう。もう良いわ」
「よくわかりませんが、満足されましたか?」
扉を閉めながら、オーナーはイデアへ問いかける。
「ええ。この部屋の窓からでは、大人が出入りすることはかなり難しいということが確かめられたから、充分役に立ったわ」
「は? 窓、ですか。確かに、あんな小さな窓からなんて、出入りした経験は未だに一度もありませんね」
できるだけすまなそうな表情を作って頭を下げるあたしへ、オーナーはにこりと笑って頷いてくれる。
「どのみち、夕方には除雪業者の方が来て全て解決です。深刻になる必要はありませんしね。さ、それでは皆さんの所へ戻りましょう」
「はい」
廊下へと促すオーナーへ素直に従い、あたしが歩き始めた瞬間、突然イデアが
「そちらの部屋は、どうなっているのかしら?」
と管理室の更に奥に続く扉を指差しオーナーへと呼びかけた。
「え? ああ、そちらはわたしたち夫婦の寝室です」
一瞬きょとんとなったオーナーが、すぐに笑顔を浮かべて答えてくれる。
「ベッド以外は特に何もない、狭い部屋ですよ。寝るためだけに使っているような――」
「失礼を承知でお願いしたいのだけれど、ほんの少しだけ室内を見させてもらえないかしら?」
話すオーナーを遮るように、イデアは扉を見つめたまま言葉を重ねる。
「え? まぁ、少しだけでしたら」
これにはさすがに困った様子を見せ、オーナーはあたしへどうにかならないかと言いたげな視線をよこす。
いくら何でも、玩具らしき端末に寝室を見せろと言われて、戸惑わない人なんているわけもない。
あたしのために――それこそ遊びに付き合うノリで――話を合わせてくれているのも、空気感でビシビシ伝わってきているため、正直ばつの悪さが半端じゃなかった。
「あの、ごめんなさい。もう本当に、予期しないこと次から次へと喋りだすもので。あたしは大丈夫ですから、イデアにだけチラッと、一秒くらい見せてあげてください。たぶんそれで満足すると思いますし、逆に見せないと夜になっても根に持たれそうでうんざりするんで」
もはや言い訳としか受け取られない言葉を早口で告げ、あたしはソソソッと寝室の扉まで移動する。
あたし自身も何でこんなことさせられてるのかさっぱりわからないが、とにかく嫌なことはさっさと終わらせたい。
「どうぞ」
鍵はかけていなかったようで、オーナーはそのまま扉を開けてくれる。
「すみません。それじゃちょっとだけ」
即座にイデアを前に突き出し、中が確認しやすいように掲げた。
電気が消された室内は、思ったよりも薄暗くて狭かった。
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壁にはクローゼットがあるようだが、閉じられているため中はわからない。
部屋に付けられた小窓はあたしたちの使う客室やリビングよりも小さく、これでは風通しも悪そうだなと、そんなことを思った。
「……ありがとう。もう良いわ」
「よくわかりませんが、満足されましたか?」
扉を閉めながら、オーナーはイデアへ問いかける。
「ええ。この部屋の窓からでは、大人が出入りすることはかなり難しいということが確かめられたから、充分役に立ったわ」
「は? 窓、ですか。確かに、あんな小さな窓からなんて、出入りした経験は未だに一度もありませんね」
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