電子探偵イデア~殺意に染まる白銀~

雪鳴月彦

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第二章:救助を待つ

第二章:救助を待つ 43

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「何かしら?」

 特にもったいぶるような間も挟むことなく、あっさりとイデアは姿を現す。

「何かしら? じゃないよ。あれからずっとだんまり決め込んじゃってさ。もう部屋に戻ってきたから、誰もいないよ。そろそろ日中調査してわかったこと、あたしにも教えてよ」

 喋りながらベッドへ移動し、あたしはポスンと座り込みながら言った。

「黙りと言われても、少しでも充電の消費を抑えておこうと考ていただけよ。希たちの会話は全て聞いていたわ」

「何でも良いから、事件に関してわかったことを話して。ずっと気になって仕方なかったんだからね」

 イデアの意味不明な捜査――と呼べるのかも不明だけど――に付き合い、あたしがわかったことは本棚は変化なし、観葉植物は偽物、電話線は人為的に切断されていた、オーナー夫婦の寝室にある小窓からは大人の出入りは不可能、という電話線以外はどうでも良いことだけだ。

 こんな情報だけで、何故イデアは満足できたのか。

 一日考えていたけれど、それがさっぱりわからない。

「わかったことと言われても、それを今ここで説明するのは時期尚早だと思うわ。話を聞いて、希が下手に周囲に警戒心を抱きすぎるのも問題だし、それが原因で犯人に変な疑いを持たれたら身を危険にさらしてしまうもの」

 もやもやするあたしの胸中など知ったことではないみたいで、イデアはその綺麗な緑色の瞳をこちらへ向け、クールな口調で言ってくる。

「は? 犯人にって……イデアまさか犯人がわかったとか言わないよね?」

 引っかかるような発言をサラリと含んだその言葉を聞き逃すわけもなく、あたしは驚いた気分で問い質す。

「言わないわ。まだ確証がないし、たぶん時間が経てば嫌でも証拠が出てくるから、犯人が捕まるのはそのときでしょうね」

「証拠が出てくる? 何で?」

「さぁ。あくまで私の仮説よ。このペンションで発生した事件の犯人は、恐らくは警察に捕まることを想定して計画を立てているんじゃないかしら。電話線を切断したりしているのは、あくまで犯行を遂行するまでの時間稼ぎが目的というのが、現時点での私の予測」

「い、いやいや。余計わかんない。結局どういうことなのよ?」

 ただでさえわからないことを更にややこしくして説明してくるイデアに、若干イラつきそうになりながらあたしがしつこく問うも、

「全てがわからない段階で説明をするのも、無意味だわ」

 と小さく首を振りながら、澄ました台詞を返してくるだけで、一向に事件については話をしてくれようとはしない。

「あんな協力させといて、それはあんまりだよ……。せめてもう少しないの? 話せそうなこと。実は奈子の命も危ないとかさ」

「おいこら」

 椅子に腰かけあたしたちのやり取りを眺めていた奈子が、聞き捨てならんぞと言いたげに睨んでくる。

「そうね。奈子の命はどうかわからないけれど、このペンションにいる犯人は、それなりに計画を立てた上で今回の犯行を実行しているわ。口論などによって衝動的にとか、行き当たりばったりに殺人を犯す愉快犯でないことは明確ね」
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