電子探偵イデア～殺意に染まる白銀～

第三章：死者が増える

第三章：死者が増える ８

　あたしの言葉を聞いて更に顔を強張らせたオーナーが、足を忍ばせるような慎重な動作で部屋へと近づき――ドアを開いてしまった。

「あ……」

　引き止める間もなく半分以上開かれたドアのせいで、あたしの位置からも中の様子が明確になる。

　開かれたドアの真正面、ベッドよりも手前の位置から垂れ下がる足が最初に見え、それからイデアが言っていた包丁の刺さった腹部、吐血をしたのか僅かばかり口元を血で汚した彩也子さんの顔が、あたしの視界に入ってきた。

　オーナーについて移動していた希伊子さんが、西山さんよりも大きな悲鳴をあげ、あたし同様彩也子さんの変わり果てた姿を見てしまった奈子が、無言で腕にしがみついてきた。

「どうしたんですか！」

　待機させられていたのだろう、今度は千谷真さんと沢岸さんも、希伊子さんの悲鳴に駆け寄ってくる。

「大変だ！　矢津さんの奥さんが亡くなられてる！」

「え!?　うわっ――！」

　室内を覗いた千谷真さんが、宙吊りになる彩也子さんを見て仰け反るように身体を硬直させる。

「ひ、ひとまず奥さんをどうにかしないと……」

　混乱しているのか、オーナーが集まるメンバーを見回しながら歯切れ悪く告げると、千谷真さんの後に控えるようにして立ち止まっていた沢岸さんが、

「あの……それなら僕、脚立持ってきます！　管理室にありましたよね？」

　と小さく手を挙げて答え、リビングの方へ引き返して走りした。

「ああ、頼んだよ！」

　その背中へ大きく頷いたオーナーが、あたしと奈子を見て一度部屋かリビングへ行くよう促してきたため、あたしは素直に頷き奈子を連れてリビングへと逃げるように移動していった。