電子探偵イデア~殺意に染まる白銀~

雪鳴月彦

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エピローグ

エピローグ 3

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「あー……はい。近々、動きますよ。今はまだ事件のことで気持ちが落ち着いてないから。少し養生して気持ちを休ませてるところだし」

 痛い所を的確に突かれ、あたしは即座に目を逸らし食事を再開させる。

「まったく、我が娘ながら幸先不安だわ。イデア、あなたもしっかりこの子のこと管理してちょうだいね。ほんと、自分に甘いから」

「ええ。心配しなくとも、希のサポートはしっかりやるつもりよ。任せてくれて問題ないわ」

 目の前で交わされる会話を不本意な気分で聞きながら、あたしは黙々と食パンを口へと運び牛乳で流し込む。

「頼もしいわね。何だか、心強いお姉ちゃんができたみたいじゃない?」

「そう言えば、奈子にも似たようなことを言われたわね。希も私も同じマスターの子供だから、姉妹だろうって。奈子の場合は私が妹になるみたいだったけれど」

「あははは! なるほど、確かにそうだわ。良かったじゃない、希。こんな頼りになる妹ができて。事件だけじゃなくて、就活もサポートしてもらいなさい」

「……何か鬱になってきそうだから、イデアに変なこと吹き込まないで」

 嫌な方向に逸れ始めた話を切り上げるべく、あたしはいそいそとまだ熱い牛乳を飲み干し、P.Uを持って立ち上がる。

「遅れないように、早めに支度しておかなくちゃ」

 言い訳のような独り言を呟きながら皿とカップを片付けるあたしを見上げ、イデアは暫し何かを考えるような間を空けると

「そんなに急がなくても、今日は職業安定所はお休みよ?」

 と、天然なのか狙っているのかわからないことを言いだした。

「行かないよ! 奈子と会う約束だって、今イデアも聞いてたでしょ。やめて、そういうため息漏れるようなこと言うの」

 即座に言い返し、あたしは気を滅入らせながら着替えるために部屋へと踵を返す。

 そんなこちらを面白がるように見て機嫌よく笑うお母さんの声を聞きながら、あたしは

「お母さんも、これ以上イデアに変なことは絶対吹き込まないでよ!」

 とだけ放り投げるように告げ、部屋へと続く階段を駆け上がっていった。



         完
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