病み憑き

雪鳴月彦

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第三章:風岡夏純――①

風岡夏純――①

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 その発端は偶然の事故みたいなもので、晴樹自身、あそこまで大きな事態になるなんて思ってもいなかった。

 高校一年の秋。学校内が文化祭のムードで盛り上がり始めている時期に、いじめのきっかけが生まれた。

 ある日の放課後、クラスの出しものの準備を進めるためほとんどの生徒が居残り作業をしている中で、秋本真美はたまたま床に置いていた茜の腕時計を壊してしまうという出来事が起きた。

 当然、真美本人はその場で謝ったし弁償もすると言ったのだが、茜はそれを当然としたうえで許してやることをしなかった。

 その理由は、真美が壊した時計は茜が晴樹から誕生日に貰ったエルメスの高級腕時計であったため、一括での弁償が不可能な額だったということ。

 普通に買えば三十万以上する腕時計の弁償なんて、一般の高校生にはかなりキツいはずだろう。

 そのことに加え、真美は自分の家が裕福ではなく、月の小遣いから払っていくにもかなりの時間がかかると言い訳を添えた。
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