霊媒姉妹の怪異事件録

雪鳴月彦

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第三章:依因家の因果

依因家の因果 25

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 昼食は、コンビニでおにぎりと菓子パンを適当に選んで購入した。

 お父さんへ渡す本は、少しばかり悩んだけれど料理の本を買うのはやめて、最近流行りらしいアウトドア関連の雑誌と海釣りを特集した雑誌をチョイスしておいた。

 ベッド生活が長くなるのなら、少しでも外の雰囲気を感じる内容の本が良いかもしれないと考えての購入だったけれど、結果的にお父さんが喜ぶかどうかは不明だし、喜ばなかったとしても文句を言わせるつもりはない。

 何でも良いと言ったのはお父さんだし、これで不満を口に出すようなら、金輪際買い物は引き受けてあげないとでも嫌味を言ってあげよう。

 全ての買い物を済ませるのにかかった時間は、おおよそ三十分といったところだろうか。

 いい加減、夢愛も病室へ戻ってきている頃だろうと思いながら帰ってきた私を待っていたのは、出かける前と変わらない姿勢でベッドへ横になっているお父さんだけだった。

「ただいま。夢愛は、まだ戻ってきていないの?」

「おかえり。割と早かったな。夢愛のことは見てないよ。てっきり、泉仍と一緒に買い物に行ったと思ってたんだけど、違ったのか?」

「いえ、声をかけようとは思ってたけれど見当たらなかったから。どうせお昼になれば、お腹を空かせて病室に戻るだろうと思っていたんだけれど、勘が外れたわね」

 ふて腐れても、空腹には敵わず食事の席には現れる夢愛にしては珍しい反抗だなと、胸中で呻く。

 それだけ、お父さんから聞かされた話はショックだったということなのかもしれないが、あまり家族に迷惑をかけてほしくはないという煩わしさを覚えてしまうのがこちらの本音だ。

 ただでさえ、家の中が切羽詰まった状況であるというのに、自分勝手な行動で足を引っ張るのは、さすがに少し幼稚だと言わざる得ない。

「参ったわね。これから午後の行動について打ち合わせをしておきたいのに。最悪、私だけであの赤ん坊の霊を鎮めなくちゃいけなくなるかもしれないわ」

 恐らくそれほど問題ではないと思うが、手間が増えてしまうことは避けられない。

 できる限り時間をかけずに効率よく終わらせたいと思っていたせいもあり、私はつい不満で口元を歪めそうになってしまった。

「いや、それは駄目だ」

 そんな私の言動を間近で見て、お父さんが固い口調で反対の意を示してきた。

「言ったはずだろう? あれを甘く見ない方がいい。俺がなんとかするから、泉仍はフォローをしてくれればいいんだ」

「それなら、具体的にどうするつもりでいるのか、お父さんの考えを聞かせてもらえるかしら」

 言われた物は、全て買ってきた。

 それを袋から取り出しお父さんへと手渡しながら、私はこれから始まるであろう除霊の説明を求めた。

 手渡された御守りと封筒を吟味するように凝視して、お父さんは小さく「うん」と納得したような声を漏らし、私を見つめてにこりと笑った。

「良いお札だ。天部あまべ神社に行ってきたんだな」

「ええ。どうせなら、力の強い神社の御守りが良いかなと思って」

 天部神社は、地元にある神社の中では一番霊的な力が強く、霊験あらたかな場所だ。

 敷地内は常に清められ、悪霊の類が近寄ることは一切ない。

 そこで買った御守りならば、ご利益的な効果は一番期待できると判断し、言われた通りに家内安全の御守りを購入してきた。

「うん、完璧な判断だ。さすがは泉仍だな。頼りになる」
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