77 / 99
第三章:依因家の因果
依因家の因果 25
しおりを挟む
7
昼食は、コンビニでおにぎりと菓子パンを適当に選んで購入した。
お父さんへ渡す本は、少しばかり悩んだけれど料理の本を買うのはやめて、最近流行りらしいアウトドア関連の雑誌と海釣りを特集した雑誌をチョイスしておいた。
ベッド生活が長くなるのなら、少しでも外の雰囲気を感じる内容の本が良いかもしれないと考えての購入だったけれど、結果的にお父さんが喜ぶかどうかは不明だし、喜ばなかったとしても文句を言わせるつもりはない。
何でも良いと言ったのはお父さんだし、これで不満を口に出すようなら、金輪際買い物は引き受けてあげないとでも嫌味を言ってあげよう。
全ての買い物を済ませるのにかかった時間は、おおよそ三十分といったところだろうか。
いい加減、夢愛も病室へ戻ってきている頃だろうと思いながら帰ってきた私を待っていたのは、出かける前と変わらない姿勢でベッドへ横になっているお父さんだけだった。
「ただいま。夢愛は、まだ戻ってきていないの?」
「おかえり。割と早かったな。夢愛のことは見てないよ。てっきり、泉仍と一緒に買い物に行ったと思ってたんだけど、違ったのか?」
「いえ、声をかけようとは思ってたけれど見当たらなかったから。どうせお昼になれば、お腹を空かせて病室に戻るだろうと思っていたんだけれど、勘が外れたわね」
ふて腐れても、空腹には敵わず食事の席には現れる夢愛にしては珍しい反抗だなと、胸中で呻く。
それだけ、お父さんから聞かされた話はショックだったということなのかもしれないが、あまり家族に迷惑をかけてほしくはないという煩わしさを覚えてしまうのがこちらの本音だ。
ただでさえ、家の中が切羽詰まった状況であるというのに、自分勝手な行動で足を引っ張るのは、さすがに少し幼稚だと言わざる得ない。
「参ったわね。これから午後の行動について打ち合わせをしておきたいのに。最悪、私だけであの赤ん坊の霊を鎮めなくちゃいけなくなるかもしれないわ」
恐らくそれほど問題ではないと思うが、手間が増えてしまうことは避けられない。
できる限り時間をかけずに効率よく終わらせたいと思っていたせいもあり、私はつい不満で口元を歪めそうになってしまった。
「いや、それは駄目だ」
そんな私の言動を間近で見て、お父さんが固い口調で反対の意を示してきた。
「言ったはずだろう? あれを甘く見ない方がいい。俺がなんとかするから、泉仍はフォローをしてくれればいいんだ」
「それなら、具体的にどうするつもりでいるのか、お父さんの考えを聞かせてもらえるかしら」
言われた物は、全て買ってきた。
それを袋から取り出しお父さんへと手渡しながら、私はこれから始まるであろう除霊の説明を求めた。
手渡された御守りと封筒を吟味するように凝視して、お父さんは小さく「うん」と納得したような声を漏らし、私を見つめてにこりと笑った。
「良いお札だ。天部神社に行ってきたんだな」
「ええ。どうせなら、力の強い神社の御守りが良いかなと思って」
天部神社は、地元にある神社の中では一番霊的な力が強く、霊験あらたかな場所だ。
敷地内は常に清められ、悪霊の類が近寄ることは一切ない。
そこで買った御守りならば、ご利益的な効果は一番期待できると判断し、言われた通りに家内安全の御守りを購入してきた。
「うん、完璧な判断だ。さすがは泉仍だな。頼りになる」
昼食は、コンビニでおにぎりと菓子パンを適当に選んで購入した。
お父さんへ渡す本は、少しばかり悩んだけれど料理の本を買うのはやめて、最近流行りらしいアウトドア関連の雑誌と海釣りを特集した雑誌をチョイスしておいた。
ベッド生活が長くなるのなら、少しでも外の雰囲気を感じる内容の本が良いかもしれないと考えての購入だったけれど、結果的にお父さんが喜ぶかどうかは不明だし、喜ばなかったとしても文句を言わせるつもりはない。
何でも良いと言ったのはお父さんだし、これで不満を口に出すようなら、金輪際買い物は引き受けてあげないとでも嫌味を言ってあげよう。
全ての買い物を済ませるのにかかった時間は、おおよそ三十分といったところだろうか。
いい加減、夢愛も病室へ戻ってきている頃だろうと思いながら帰ってきた私を待っていたのは、出かける前と変わらない姿勢でベッドへ横になっているお父さんだけだった。
「ただいま。夢愛は、まだ戻ってきていないの?」
「おかえり。割と早かったな。夢愛のことは見てないよ。てっきり、泉仍と一緒に買い物に行ったと思ってたんだけど、違ったのか?」
「いえ、声をかけようとは思ってたけれど見当たらなかったから。どうせお昼になれば、お腹を空かせて病室に戻るだろうと思っていたんだけれど、勘が外れたわね」
ふて腐れても、空腹には敵わず食事の席には現れる夢愛にしては珍しい反抗だなと、胸中で呻く。
それだけ、お父さんから聞かされた話はショックだったということなのかもしれないが、あまり家族に迷惑をかけてほしくはないという煩わしさを覚えてしまうのがこちらの本音だ。
ただでさえ、家の中が切羽詰まった状況であるというのに、自分勝手な行動で足を引っ張るのは、さすがに少し幼稚だと言わざる得ない。
「参ったわね。これから午後の行動について打ち合わせをしておきたいのに。最悪、私だけであの赤ん坊の霊を鎮めなくちゃいけなくなるかもしれないわ」
恐らくそれほど問題ではないと思うが、手間が増えてしまうことは避けられない。
できる限り時間をかけずに効率よく終わらせたいと思っていたせいもあり、私はつい不満で口元を歪めそうになってしまった。
「いや、それは駄目だ」
そんな私の言動を間近で見て、お父さんが固い口調で反対の意を示してきた。
「言ったはずだろう? あれを甘く見ない方がいい。俺がなんとかするから、泉仍はフォローをしてくれればいいんだ」
「それなら、具体的にどうするつもりでいるのか、お父さんの考えを聞かせてもらえるかしら」
言われた物は、全て買ってきた。
それを袋から取り出しお父さんへと手渡しながら、私はこれから始まるであろう除霊の説明を求めた。
手渡された御守りと封筒を吟味するように凝視して、お父さんは小さく「うん」と納得したような声を漏らし、私を見つめてにこりと笑った。
「良いお札だ。天部神社に行ってきたんだな」
「ええ。どうせなら、力の強い神社の御守りが良いかなと思って」
天部神社は、地元にある神社の中では一番霊的な力が強く、霊験あらたかな場所だ。
敷地内は常に清められ、悪霊の類が近寄ることは一切ない。
そこで買った御守りならば、ご利益的な効果は一番期待できると判断し、言われた通りに家内安全の御守りを購入してきた。
「うん、完璧な判断だ。さすがは泉仍だな。頼りになる」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
隣人意識調査の結果について
三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」
隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。
一部、確認の必要な点がございます。
今後も引き続き、調査をお願いいたします。
伊佐鷺裏市役所 防犯推進課
※
・モキュメンタリー調を意識しています。
書体や口調が話によって異なる場合があります。
・この話は、別サイトでも公開しています。
※
【更新について】
既に完結済みのお話を、
・投稿初日は5話
・翌日から一週間毎日1話
・その後は二日に一回1話
の更新予定で進めていきます。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/2:『へびくび』の章を追加。2025/12/9の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/1:『はえ』の章を追加。2025/12/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/11/30:『かべにかおあり』の章を追加。2025/12/7の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
分かりやすい日月神示の内容と解説 🔰初心者向け
蔵屋
エッセイ・ノンフィクション
私は日月神示の内容を今まで学問として研究してもう25年になります。
このエッセイは私の25年間の集大成です。
宇宙のこと、118種類の元素のこと、神さまのこと、宗教のこと、政治、経済、社会の仕組みなど社会に役立たつことも含めていますので、皆さまのお役に立つものと確信しています。
どうか、最後まで読んで頂きたいと思います。
お読み頂く前に次のことを皆様に申し上げておきます。
このエッセイは国家を始め特定の人物や団体、機関を否定して、批判するものではありません。
一つ目は「私は一切の対立や争いを好みません。」
2つ目は、「すべての教えに対する評価や取捨選択は自由とします。」
3つ目は、「この教えの実践や実行に於いては、周囲の事情を無視した独占的排他的言動を避けていただき、常識に照らし合わせて問題を起こさないよう慎重にしていただきたいと思います。
それでは『分かりやすい日月神示 🔰初心者向け』を最後まで、お楽しみ下さい。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年(2025年)元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる