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放課後の約束
放課後の約束
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「わかった。俺も気になってた本あるし、ちょうどいいや」
「ありがとう。それじゃあ、放課後校門の前で待っててくれる? わたし保健委員の当番でやらなきゃいけないことがあるから。たぶん、すぐ終わると思う」
申し訳なさそうに手を合わせる有紀。
「ああ、了解。待っとくよ」
「ごめんね、なるべく早く済ませるから」
「気にする必要ないだろ。別に有紀が悪いわけじゃないんだし」
「うん、ありがと。雄くんって昔から――」
「ちょっと有紀ー! 加藤先生が話あるからすぐ職員室に来てほしいってー」
有紀が何かを言いかけるのに被せるように、クラスの女子が廊下から声をかけてきた。
「あ、うん。わかった。すぐ行くから」
相手の女子に手を挙げて答え、有紀は困ったよう俺に苦笑を見せる。
「ごめん、ちょっと行ってくる。また後でね」
「おう」
小さく手を振って教室を出ていく有紀。その姿が見えなくなると同時、桜が口をへの字に曲げながら文句を呟いてきた。
「何か、雄治と白峰さんって仲良しだよね」
「ん? そりゃそうだろ。あいつとは小さい頃からずっと一緒だったから、なんていうか家族に近いような、そういう存在なんだよ」
「確か、幼なじみって言うんだっけ?」
食べ終えたおにぎりの包装を丸めながら、桜はつまらなそうな顔をする。
「ああ、そうだ」
いろいろとこの世界の知識を増やしているのだから、そういう人間関係についても認識はしているはずだ。
それでもいちいちこんなことを訊いてくるというのは、俺や有紀の中にあるプライベートな情報には触れていない、ということなのだろう。
ある意味で町全体を支配しておきながら、変なところで律義な悪魔だ。
――プライバシー丸裸にされないことだけは、ありがたいけどな。
「ねぇ?」
ついっ、と手元に落としていた視線を上げて、桜がこちらを見つめる。
「あたしも幼なじみになれば、雄治はもっとちゃんとあたしの言うことを聞いてくれる?」
「……は?」
いきなり突拍子もないことを言われ、一瞬頭の中の機能がマヒしてしまう。
「……だって雄治、白峰さんとの約束はあっさり受け入れるんだもの。それって幼なじみだからなんでしょう?」
しばらく呆然と桜を見つめていたが、やがてその拗ねたような態度にピンとくる。
つまるところこの悪魔、
「……お前、焼きもち妬いてるだろ?」
「だってー!」
図星だったらしい。
桜は両手を小刻みに振りながら、不服そうに頬を膨らませた。
「あたしのお願いはすっぽかしたり渋ったりしたくせに、白峰さんの時は快諾するんだもん、納得できないじゃない!」
「だもんって、子供かお前は」
あまりにくだらない内容に呆れながら、深々とため息を吐き出す。
「あのな、お前と有紀との頼みは根本的に難易度が違い過ぎる」
左腕で頬杖をつきながら、俺は桜に指を突きつけた。
「帰りに寄り道するだけの話と、悪魔の記憶を戻す方法見つける話。どう考えたって前者の方が受け入れやすいだろうが」
「ん~……、じゃあ言い方変える」
「あ?」
「今日の放課後、寄り道して記憶探すから付き合って?」
「そういうことを言ってんじゃねーよ!」
スパンッと机を叩いて怒鳴ってみるが、大した効果も得られない。
桜は怖じ気づく様子など微塵もなく、ふてくされた態度を続ける。
「あーあ、記憶無くして困ってる人より買い物優先かぁ」
「人じゃねーだろお前は」
呻くように呟く俺の声に重なるように、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ほれ、授業始まるぞ。席に戻っとけ」
「……うるさい馬鹿雄治。バーカ」
追い払うように手を振りながら言うと、桜は小学生の捨て台詞並みの言葉を残し自分の机に歩いていく。
「……どっちが馬鹿だよ」
長い髪を揺らしながら歩き去るその背中へ俺は呆れ返った視線をぶつけ、睡眠不足によるあくびを噛み殺した。
「ありがとう。それじゃあ、放課後校門の前で待っててくれる? わたし保健委員の当番でやらなきゃいけないことがあるから。たぶん、すぐ終わると思う」
申し訳なさそうに手を合わせる有紀。
「ああ、了解。待っとくよ」
「ごめんね、なるべく早く済ませるから」
「気にする必要ないだろ。別に有紀が悪いわけじゃないんだし」
「うん、ありがと。雄くんって昔から――」
「ちょっと有紀ー! 加藤先生が話あるからすぐ職員室に来てほしいってー」
有紀が何かを言いかけるのに被せるように、クラスの女子が廊下から声をかけてきた。
「あ、うん。わかった。すぐ行くから」
相手の女子に手を挙げて答え、有紀は困ったよう俺に苦笑を見せる。
「ごめん、ちょっと行ってくる。また後でね」
「おう」
小さく手を振って教室を出ていく有紀。その姿が見えなくなると同時、桜が口をへの字に曲げながら文句を呟いてきた。
「何か、雄治と白峰さんって仲良しだよね」
「ん? そりゃそうだろ。あいつとは小さい頃からずっと一緒だったから、なんていうか家族に近いような、そういう存在なんだよ」
「確か、幼なじみって言うんだっけ?」
食べ終えたおにぎりの包装を丸めながら、桜はつまらなそうな顔をする。
「ああ、そうだ」
いろいろとこの世界の知識を増やしているのだから、そういう人間関係についても認識はしているはずだ。
それでもいちいちこんなことを訊いてくるというのは、俺や有紀の中にあるプライベートな情報には触れていない、ということなのだろう。
ある意味で町全体を支配しておきながら、変なところで律義な悪魔だ。
――プライバシー丸裸にされないことだけは、ありがたいけどな。
「ねぇ?」
ついっ、と手元に落としていた視線を上げて、桜がこちらを見つめる。
「あたしも幼なじみになれば、雄治はもっとちゃんとあたしの言うことを聞いてくれる?」
「……は?」
いきなり突拍子もないことを言われ、一瞬頭の中の機能がマヒしてしまう。
「……だって雄治、白峰さんとの約束はあっさり受け入れるんだもの。それって幼なじみだからなんでしょう?」
しばらく呆然と桜を見つめていたが、やがてその拗ねたような態度にピンとくる。
つまるところこの悪魔、
「……お前、焼きもち妬いてるだろ?」
「だってー!」
図星だったらしい。
桜は両手を小刻みに振りながら、不服そうに頬を膨らませた。
「あたしのお願いはすっぽかしたり渋ったりしたくせに、白峰さんの時は快諾するんだもん、納得できないじゃない!」
「だもんって、子供かお前は」
あまりにくだらない内容に呆れながら、深々とため息を吐き出す。
「あのな、お前と有紀との頼みは根本的に難易度が違い過ぎる」
左腕で頬杖をつきながら、俺は桜に指を突きつけた。
「帰りに寄り道するだけの話と、悪魔の記憶を戻す方法見つける話。どう考えたって前者の方が受け入れやすいだろうが」
「ん~……、じゃあ言い方変える」
「あ?」
「今日の放課後、寄り道して記憶探すから付き合って?」
「そういうことを言ってんじゃねーよ!」
スパンッと机を叩いて怒鳴ってみるが、大した効果も得られない。
桜は怖じ気づく様子など微塵もなく、ふてくされた態度を続ける。
「あーあ、記憶無くして困ってる人より買い物優先かぁ」
「人じゃねーだろお前は」
呻くように呟く俺の声に重なるように、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ほれ、授業始まるぞ。席に戻っとけ」
「……うるさい馬鹿雄治。バーカ」
追い払うように手を振りながら言うと、桜は小学生の捨て台詞並みの言葉を残し自分の机に歩いていく。
「……どっちが馬鹿だよ」
長い髪を揺らしながら歩き去るその背中へ俺は呆れ返った視線をぶつけ、睡眠不足によるあくびを噛み殺した。
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