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夜の訪問者
夜の訪問者
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「気になること?」
珍しく歯切れの悪い言い方をする桜を、俺は怪訝な面持ちで見つめ返す。
「今日、本屋に行ったでしょ?」
「ああ、行ったな。それが?」
「実はあの時、ずっと嫌な視線を感じてたの」
「視線?」
「うん。どう言えば良いのかな、とにかくすごく不快な感じがした。敵意って言うより、もっと別の……」
そこで、桜は一度言葉を考えるように黙り込む。
「うーん……、ごめん、うまく言えない。とにかく、何か凄く嫌な気配だった」
敵意じゃないけど、嫌な気配。
「……?」
桜の告げたその言葉を、俺は頭の中でイメージしてみる。
「それって……、あれか? いじめっ子がいじめる相手を見てる時みたいな」
いじめるというのは、基本的に悪意や憎悪ではないと俺は思う。むしろ自分より弱い相手、遊び道具を見つけたことへの喜び。
一種の狂喜みたいなものか。
それを説明すると、桜は納得したように何度も頷いた。
「そう、それ。まさにそんな感じ。ピリピリした殺気とは違って、ねっとりしたような嫌な感覚」
本屋にいた時のことを思い出したか、顔をしかめて桜は言葉を吐いた。
「白峰さんもいたからなるべく普通に振る舞っていたけど、何だったのかなあれ」
「心当たりとかないのか?」
「あるわけないでしょ。この世界に知り合いなんかいないし、あたしに意識を向けてくる人なんて――」
言いかけて、桜の口が止まった。そのまま、考え込むかのように視線を床に落とす。
「……どうした?」
しばらく待っても反応がなかったためそっと声をかけると、桜は恐る恐るといった風に言葉を再開してきた。
「今思ったんだけど、ひょっとしてあたし以外にも、異世界から紛れ込んでる存在がいたりしないかな?」
「え?」
「だから、あたしと同じように、別の世界からこっちに来てる何者かがいたりするのかなって」
「……」
桜の話す内容に、俺は暫し声を出すことを忘れる。
桜の他にも異世界からやってきた何者かがいる。そんな可能性、考えてもいなかった。
だけど、現に桜がここに存在する以上、あり得ない話と切り捨てることはできない。
「それ、何か思い当たる節でもあるのか?」
俺が問うと、桜はさぁ、と言いながら首を振る。
「思い当たるも何も、記憶がないんだからどうしようもないじゃない」
「……その記憶が無くなってることが、既に誰かの仕業ってことは?」
思いつきをそのまま述べる。
「まさか」
そんな俺の言葉を桜は鼻で笑い、自信に満ちた口調で即座に否定した。
「あたしの記憶を誰かが消したんだとしたら、それはあたしと同じ能力を持つデモンってことになる。仲間同士でそんなことをするなんて、絶対にあり得ないわ」
「いや、わからんだろ。そっちの世界は詳しくないけど、仲間内で喧嘩になったとか、誰かが裏切って攻撃してきたとかさ」
そういうことが起きた可能性だって、ありそうな気がする。
「喧嘩くらいならわかるけど、それで仲間の記憶を消すような悪魔はいない」
そういうルールだから。
最後にそう付け加え、桜はリンゴジュースを一口喉に流し込んだ。
「ルール?」
当然意味がわかるはずもなく、俺はすぐに疑問符を投げかける。
珍しく歯切れの悪い言い方をする桜を、俺は怪訝な面持ちで見つめ返す。
「今日、本屋に行ったでしょ?」
「ああ、行ったな。それが?」
「実はあの時、ずっと嫌な視線を感じてたの」
「視線?」
「うん。どう言えば良いのかな、とにかくすごく不快な感じがした。敵意って言うより、もっと別の……」
そこで、桜は一度言葉を考えるように黙り込む。
「うーん……、ごめん、うまく言えない。とにかく、何か凄く嫌な気配だった」
敵意じゃないけど、嫌な気配。
「……?」
桜の告げたその言葉を、俺は頭の中でイメージしてみる。
「それって……、あれか? いじめっ子がいじめる相手を見てる時みたいな」
いじめるというのは、基本的に悪意や憎悪ではないと俺は思う。むしろ自分より弱い相手、遊び道具を見つけたことへの喜び。
一種の狂喜みたいなものか。
それを説明すると、桜は納得したように何度も頷いた。
「そう、それ。まさにそんな感じ。ピリピリした殺気とは違って、ねっとりしたような嫌な感覚」
本屋にいた時のことを思い出したか、顔をしかめて桜は言葉を吐いた。
「白峰さんもいたからなるべく普通に振る舞っていたけど、何だったのかなあれ」
「心当たりとかないのか?」
「あるわけないでしょ。この世界に知り合いなんかいないし、あたしに意識を向けてくる人なんて――」
言いかけて、桜の口が止まった。そのまま、考え込むかのように視線を床に落とす。
「……どうした?」
しばらく待っても反応がなかったためそっと声をかけると、桜は恐る恐るといった風に言葉を再開してきた。
「今思ったんだけど、ひょっとしてあたし以外にも、異世界から紛れ込んでる存在がいたりしないかな?」
「え?」
「だから、あたしと同じように、別の世界からこっちに来てる何者かがいたりするのかなって」
「……」
桜の話す内容に、俺は暫し声を出すことを忘れる。
桜の他にも異世界からやってきた何者かがいる。そんな可能性、考えてもいなかった。
だけど、現に桜がここに存在する以上、あり得ない話と切り捨てることはできない。
「それ、何か思い当たる節でもあるのか?」
俺が問うと、桜はさぁ、と言いながら首を振る。
「思い当たるも何も、記憶がないんだからどうしようもないじゃない」
「……その記憶が無くなってることが、既に誰かの仕業ってことは?」
思いつきをそのまま述べる。
「まさか」
そんな俺の言葉を桜は鼻で笑い、自信に満ちた口調で即座に否定した。
「あたしの記憶を誰かが消したんだとしたら、それはあたしと同じ能力を持つデモンってことになる。仲間同士でそんなことをするなんて、絶対にあり得ないわ」
「いや、わからんだろ。そっちの世界は詳しくないけど、仲間内で喧嘩になったとか、誰かが裏切って攻撃してきたとかさ」
そういうことが起きた可能性だって、ありそうな気がする。
「喧嘩くらいならわかるけど、それで仲間の記憶を消すような悪魔はいない」
そういうルールだから。
最後にそう付け加え、桜はリンゴジュースを一口喉に流し込んだ。
「ルール?」
当然意味がわかるはずもなく、俺はすぐに疑問符を投げかける。
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