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夜が明けて
夜が明けて
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片桐莱杜。
俺たちの前に突如現れ桜の消えた記憶の原因を知ると示唆した男は、別れ際にそう名乗った。
異世界ではなく、俺と同じこの世界に住む“人間”であるにも関わらず、桜の能力に影響されることなく、異世界のモンスターを召喚し、原理のわからない方法で狼男を消滅させた得体が知れない謎の男。
いったい、奴が何を企んでいるのかは今のところ検討もつかないが、桜にとってはかなり重要な人物であることだけは間違いなさそうだった。
「……」
枕元の時計は、既に朝と呼べる時間を刻み終え、今は十一時二十分を表示している。
昨夜、あれから家に戻ったのは二十三時半を少し過ぎた頃。
寝る前にシャワーでも浴びようかと思ったが、さすがにそんな精神的余裕はなくすぐにベッドへ倒れ込んだ。それから、寝つくまでに費やした時間はどれくらいだったか。
最後に携帯を確認した時で午前三時を回っていたのを覚えているから、最低四時間はぼんやりと天井を見つめていたことになる。
カーテンの隙間から差し込む光を見る限り、外は快晴だろう。本来ならテンションが上がるはずの休日の昼前だが、生憎気分は起き上がる気力も湧かぬくらいに最悪だった。
理由は単純。目覚めて早々思い出したのが、昨夜の出来事なのだ。夢であればと願いたいが、そんな妄想が通用しないことは自分でもよくわかっている。
狼男との死闘。片桐という謎の男。
その片桐が、桜の記憶を語る代償として告げた意味不明な条件。
真実と引き換えに、桜の命を抹消すること。
この悪意に満ちた条件を突きつける理由を問い質した俺に、片桐は笑いながらこう呟いた。
『個人的な好奇心というか……なんだろう、実験みたいなものだよ』
『実験?』
『サンプル調査と言うべきかな? いや、それじゃあ少しニュアンスが違うか……。まぁとにかく、次のステップへ向けてのデータを取るため、みたいに理解してくれれば』
『……全然意味がわからねぇよ』
『そんな睨まなくとも、明日の夜にきちんと彼女へ伝えるよ。廃墟に来ることと、自分の存在が消える覚悟をきめること。この二つの条件を守ればね』
俺から桜へ視線を移動させニコリと笑い、片桐は返事を待つことなくクルリとこちらに背を向けた。
『来るか来ないかはサクラの自由だ。怖気づいて来ないなら、それでも良い。その時は、きみが何も理解できぬまま消えていくだけの話だし』
『……』
なおも真意の読めない言葉を連ねる男を、桜はただじっと凝視する。
『ま、じっくり考えて行動すれば良いと思うよ。それじゃ、今夜はもうお開きだ。例の廃墟で待っているよ』
『あ、おい、待てよ……!』
呼び止める声に応じることもなく、片桐はヒラヒラと手だけを振ってそのまま暗闇の中へと消えて行った。
結局、相手の誘いに乗るのかどうか、その答えを桜が口にすることはなかった。
とりあえず明日までに考える、と珍しく真剣な面持ちで告げただけで、それ以降は男に関する話題を口にすることはなく。展開していた能力の解除とともに、俺たち二人は帰路へついた。
正直、男からの条件を突きつけられて桜がどう思い感じたのかはわからないし、どう対処するつもりでいるのかも俺にはわからない。
片桐莱杜。
俺たちの前に突如現れ桜の消えた記憶の原因を知ると示唆した男は、別れ際にそう名乗った。
異世界ではなく、俺と同じこの世界に住む“人間”であるにも関わらず、桜の能力に影響されることなく、異世界のモンスターを召喚し、原理のわからない方法で狼男を消滅させた得体が知れない謎の男。
いったい、奴が何を企んでいるのかは今のところ検討もつかないが、桜にとってはかなり重要な人物であることだけは間違いなさそうだった。
「……」
枕元の時計は、既に朝と呼べる時間を刻み終え、今は十一時二十分を表示している。
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最後に携帯を確認した時で午前三時を回っていたのを覚えているから、最低四時間はぼんやりと天井を見つめていたことになる。
カーテンの隙間から差し込む光を見る限り、外は快晴だろう。本来ならテンションが上がるはずの休日の昼前だが、生憎気分は起き上がる気力も湧かぬくらいに最悪だった。
理由は単純。目覚めて早々思い出したのが、昨夜の出来事なのだ。夢であればと願いたいが、そんな妄想が通用しないことは自分でもよくわかっている。
狼男との死闘。片桐という謎の男。
その片桐が、桜の記憶を語る代償として告げた意味不明な条件。
真実と引き換えに、桜の命を抹消すること。
この悪意に満ちた条件を突きつける理由を問い質した俺に、片桐は笑いながらこう呟いた。
『個人的な好奇心というか……なんだろう、実験みたいなものだよ』
『実験?』
『サンプル調査と言うべきかな? いや、それじゃあ少しニュアンスが違うか……。まぁとにかく、次のステップへ向けてのデータを取るため、みたいに理解してくれれば』
『……全然意味がわからねぇよ』
『そんな睨まなくとも、明日の夜にきちんと彼女へ伝えるよ。廃墟に来ることと、自分の存在が消える覚悟をきめること。この二つの条件を守ればね』
俺から桜へ視線を移動させニコリと笑い、片桐は返事を待つことなくクルリとこちらに背を向けた。
『来るか来ないかはサクラの自由だ。怖気づいて来ないなら、それでも良い。その時は、きみが何も理解できぬまま消えていくだけの話だし』
『……』
なおも真意の読めない言葉を連ねる男を、桜はただじっと凝視する。
『ま、じっくり考えて行動すれば良いと思うよ。それじゃ、今夜はもうお開きだ。例の廃墟で待っているよ』
『あ、おい、待てよ……!』
呼び止める声に応じることもなく、片桐はヒラヒラと手だけを振ってそのまま暗闇の中へと消えて行った。
結局、相手の誘いに乗るのかどうか、その答えを桜が口にすることはなかった。
とりあえず明日までに考える、と珍しく真剣な面持ちで告げただけで、それ以降は男に関する話題を口にすることはなく。展開していた能力の解除とともに、俺たち二人は帰路へついた。
正直、男からの条件を突きつけられて桜がどう思い感じたのかはわからないし、どう対処するつもりでいるのかも俺にはわからない。
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