57 / 96
束の間の時間
束の間の時間
しおりを挟む
13
夕暮れの空をこんなにじっくりと眺めたのはいつ以来だろう。
ファミレスの窓から見える橙色の空は、たなびく雲を巻き込みゆっくりと夜の衣を纏う準備を始めていた。
あれから、桜並木の遊歩道を後にした俺と桜は、真っ直ぐショッピングモールへと移動した。駅のすぐ近くではあるが、例の本屋とは反対側の位置にある五階建ての建造物。
食品や衣類はもちろん、ゲームセンターや雑貨屋などのテナントも充実しており、暇を潰すにはもってこいの場所だ。
じっとしていても落ち着かないのがわかっていたから、適当にぶらつくことを自分から提案した。
特に断る理由もないという風に了承した桜と共にアンティークの小物を見ていたら、偶然有紀と出会った。彼女も暇潰しにショッピングをしに来ていたらしく、成り行きでそのまま一緒に行動することになった。
それからゲームセンターに寄り、桜と有紀が嫌がる俺を無理矢理プリクラコーナーに引きずり込もうとしているところに根崎が現れた。中学時代からの友人で、ゲーム仲間でもある彼は有紀とも面識がある。
クラスは違うが学校も同じであるため桜も知ってはいるが、この二人がまともに接するのは今日が初めてのはずだ。
有紀同様、成り行きで根崎も共に行動することになり、ボーリングをしようという根崎の提案で、ついさっきまで男女対抗のガチ勝負を繰り広げていた。
ルールが分からなかった桜が、球をピンに投げつけようとするのを死にもの狂いで押さえつけたこと以外は特に何事もなく、平穏な時間が過ぎてくれた。
『何だか、この世界のみんながやるお別れパーティみたいだね』
途中、はしゃいでいた桜がそんなことを呟き、複雑な気分を味あわされると同時に、これが桜が共に混じる最後の時間になるかもしれないのだと、妙に実感させられてしまった。
「どうしたの、雄治。夕空なんか眺めて、悩みごとかい?」
向かいに座る根崎の声で、思考が現実に戻る。スッと首を店内に戻すと、全員がこちらを窺っていた。
「別に、今日は出費がでかかったなと思ってさ。節約しようと決めた矢先でこれじゃあ、年末までに金貯まんねぇわ」
苦笑と一緒に肩を竦め、そう言って誤魔化す。この場で桜の事情を打ち明けたところで、プラスに働くことは何もない。馬鹿な冗談で片付けられるか、変な不信感を与えてしまうのが関の山だろう。
「年末?」
カレーを食べ終えていた根崎が、水に口をつけながら更に話を続けてくる。
「欲しいゲームがいくつか発売するんだよ」
「ああ、今年の冬は有名タイトルの新作ラッシュだもんね。俺もいくつか目をつけてるよ。アプリも含めて」
趣味の話題と知って、一気ににこやかになる根崎。
「でもさ、そんなに切り詰めて計画立てるんなら、いっそバイトでもしてみたら良いんじゃない? 今から探して始めれば、ゲーム代くらい結構余裕で貯まる気がするけど」
「バイトなぁ……。有りかとは思ってるけど、どうにも気が乗らないっつうかさ」
歯切れ悪くそう答えると、根崎は呆れたように頬を緩める。
バイトは面倒な反面、メリットは大きい。それは理解しているのだが、どうしてもやってみようかという踏ん切りがつかない。
「働いたら負けとか思ってるの?」
含み笑いを見せる友人へ、即座に首を振る。
夕暮れの空をこんなにじっくりと眺めたのはいつ以来だろう。
ファミレスの窓から見える橙色の空は、たなびく雲を巻き込みゆっくりと夜の衣を纏う準備を始めていた。
あれから、桜並木の遊歩道を後にした俺と桜は、真っ直ぐショッピングモールへと移動した。駅のすぐ近くではあるが、例の本屋とは反対側の位置にある五階建ての建造物。
食品や衣類はもちろん、ゲームセンターや雑貨屋などのテナントも充実しており、暇を潰すにはもってこいの場所だ。
じっとしていても落ち着かないのがわかっていたから、適当にぶらつくことを自分から提案した。
特に断る理由もないという風に了承した桜と共にアンティークの小物を見ていたら、偶然有紀と出会った。彼女も暇潰しにショッピングをしに来ていたらしく、成り行きでそのまま一緒に行動することになった。
それからゲームセンターに寄り、桜と有紀が嫌がる俺を無理矢理プリクラコーナーに引きずり込もうとしているところに根崎が現れた。中学時代からの友人で、ゲーム仲間でもある彼は有紀とも面識がある。
クラスは違うが学校も同じであるため桜も知ってはいるが、この二人がまともに接するのは今日が初めてのはずだ。
有紀同様、成り行きで根崎も共に行動することになり、ボーリングをしようという根崎の提案で、ついさっきまで男女対抗のガチ勝負を繰り広げていた。
ルールが分からなかった桜が、球をピンに投げつけようとするのを死にもの狂いで押さえつけたこと以外は特に何事もなく、平穏な時間が過ぎてくれた。
『何だか、この世界のみんながやるお別れパーティみたいだね』
途中、はしゃいでいた桜がそんなことを呟き、複雑な気分を味あわされると同時に、これが桜が共に混じる最後の時間になるかもしれないのだと、妙に実感させられてしまった。
「どうしたの、雄治。夕空なんか眺めて、悩みごとかい?」
向かいに座る根崎の声で、思考が現実に戻る。スッと首を店内に戻すと、全員がこちらを窺っていた。
「別に、今日は出費がでかかったなと思ってさ。節約しようと決めた矢先でこれじゃあ、年末までに金貯まんねぇわ」
苦笑と一緒に肩を竦め、そう言って誤魔化す。この場で桜の事情を打ち明けたところで、プラスに働くことは何もない。馬鹿な冗談で片付けられるか、変な不信感を与えてしまうのが関の山だろう。
「年末?」
カレーを食べ終えていた根崎が、水に口をつけながら更に話を続けてくる。
「欲しいゲームがいくつか発売するんだよ」
「ああ、今年の冬は有名タイトルの新作ラッシュだもんね。俺もいくつか目をつけてるよ。アプリも含めて」
趣味の話題と知って、一気ににこやかになる根崎。
「でもさ、そんなに切り詰めて計画立てるんなら、いっそバイトでもしてみたら良いんじゃない? 今から探して始めれば、ゲーム代くらい結構余裕で貯まる気がするけど」
「バイトなぁ……。有りかとは思ってるけど、どうにも気が乗らないっつうかさ」
歯切れ悪くそう答えると、根崎は呆れたように頬を緩める。
バイトは面倒な反面、メリットは大きい。それは理解しているのだが、どうしてもやってみようかという踏ん切りがつかない。
「働いたら負けとか思ってるの?」
含み笑いを見せる友人へ、即座に首を振る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる