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束の間の時間
束の間の時間
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自嘲するように薄く笑い、自分たちが囲むテーブルへ視線を這わせる。
夜月桜というイレギュラーが目の前に現れてまだ二ヶ月も経過していない。それでも、今や彼女はこの世界に溶け込んでいた。
能力により周りを操っているから、自然とそう感じる部分もあるのかもしれないが。
何にせよ――。
少しずつ日常になりかけていたこの光景は、きっともうすぐ終わりを迎える。片桐との対峙がどのような結末になるのか、自分には到底わからない。
無事に記憶を取り戻すのか、または敵の宣言通り消されてしまうのか。消されなかったとして、桜はこの世界に残るのかそれとも離れるのか。
どう転ぶにしても、全てが今まで通り過ぎるなんてことはあり得ないだろう。
直感みたいなものだが、そんな確信が胸の奥にある。
明日の今頃には、桜はこの世界からいなくなり、みんなの中にあった彼女に関する記憶も全て消え失せて、始めから何もなかったことになっているのかもしれない。
――最終的には、そうならなきゃいけないことなんだけどな……。
実際、自分だってそう思っていた。
訳のわからぬまま記憶探しに付き合わされ、手探りとも呼べない状態で動き回ってきた。その結果、異界の化物に遭遇し、更には得体の知れない奴とまで出会う羽目になり。
こんな奇天烈な展開は、さっさと片付いてくれた方が良いに決まっている。そのはずなのに、どこか寂しさを感じてしまうのも正直な気持ちだった。
気づかぬうちに情が移ってしまったかと、そんな思いつきに自嘲の笑みが深まる。
「……何でいきなりにやつくの?」
気味悪くでも映ったか、俺を見ていた根崎が不審そうに眉を寄せた。
「いや、別に。卑屈になってるだけだよ」
「は?」
おどけるようにして答えると、当然のように友人はぽかんと口を丸くさせ、それからほんの少し逡巡する素振りをして、改めて口を開いてきた。
「……悩みでもある?」
反射的にピクリと瞼が動く。そんな風に見られたかと内心毒づきながらも、俺はどうにか平静を装っておく。
「そりゃ、誰だって悩みはあるさ。まぁ、大したことじゃねぇよ。気にすんな」
仮にここで二人に相談したとしたら、いったいどんな反応を示すだろう。する必要はないと結論を下したばかりの事柄に、そんな疑問が浮かぶ。
桜によって記憶を改竄されている時点で、話す内容全てを鵜呑みにしてくれる可能性は皆無に等しい。
桜が悪い奴に狙われているとでも言えばそこは信用する望みは十分あるが、それを話して結局何かが進展するわけでもないのが現実だ。
大体、そんなことをしたら桜が良い顔をしないだろう。
――警察だって、役に立つとは思えねぇしな。
異世界の化物を操る奴がいると言って動く組織ではないし、事件が起きてからじゃなきゃまともに捜査だってしてくれない。
百歩譲って動いたとしても、勝てる保証すらない相手なのだ。
――打開策なんかあるわけない、か……。
桜自身がどうにかする以外、方法がない。結局はそこに行き着く。
彼女しか、この問題を解決することはできない。
「そろそろ出よっか。あんまり遅くなると、うちのお父さんうるさいから」
桜が料理を完食するのを確認すると、有紀が自分の時計を見ながら言ってきた。
夜月桜というイレギュラーが目の前に現れてまだ二ヶ月も経過していない。それでも、今や彼女はこの世界に溶け込んでいた。
能力により周りを操っているから、自然とそう感じる部分もあるのかもしれないが。
何にせよ――。
少しずつ日常になりかけていたこの光景は、きっともうすぐ終わりを迎える。片桐との対峙がどのような結末になるのか、自分には到底わからない。
無事に記憶を取り戻すのか、または敵の宣言通り消されてしまうのか。消されなかったとして、桜はこの世界に残るのかそれとも離れるのか。
どう転ぶにしても、全てが今まで通り過ぎるなんてことはあり得ないだろう。
直感みたいなものだが、そんな確信が胸の奥にある。
明日の今頃には、桜はこの世界からいなくなり、みんなの中にあった彼女に関する記憶も全て消え失せて、始めから何もなかったことになっているのかもしれない。
――最終的には、そうならなきゃいけないことなんだけどな……。
実際、自分だってそう思っていた。
訳のわからぬまま記憶探しに付き合わされ、手探りとも呼べない状態で動き回ってきた。その結果、異界の化物に遭遇し、更には得体の知れない奴とまで出会う羽目になり。
こんな奇天烈な展開は、さっさと片付いてくれた方が良いに決まっている。そのはずなのに、どこか寂しさを感じてしまうのも正直な気持ちだった。
気づかぬうちに情が移ってしまったかと、そんな思いつきに自嘲の笑みが深まる。
「……何でいきなりにやつくの?」
気味悪くでも映ったか、俺を見ていた根崎が不審そうに眉を寄せた。
「いや、別に。卑屈になってるだけだよ」
「は?」
おどけるようにして答えると、当然のように友人はぽかんと口を丸くさせ、それからほんの少し逡巡する素振りをして、改めて口を開いてきた。
「……悩みでもある?」
反射的にピクリと瞼が動く。そんな風に見られたかと内心毒づきながらも、俺はどうにか平静を装っておく。
「そりゃ、誰だって悩みはあるさ。まぁ、大したことじゃねぇよ。気にすんな」
仮にここで二人に相談したとしたら、いったいどんな反応を示すだろう。する必要はないと結論を下したばかりの事柄に、そんな疑問が浮かぶ。
桜によって記憶を改竄されている時点で、話す内容全てを鵜呑みにしてくれる可能性は皆無に等しい。
桜が悪い奴に狙われているとでも言えばそこは信用する望みは十分あるが、それを話して結局何かが進展するわけでもないのが現実だ。
大体、そんなことをしたら桜が良い顔をしないだろう。
――警察だって、役に立つとは思えねぇしな。
異世界の化物を操る奴がいると言って動く組織ではないし、事件が起きてからじゃなきゃまともに捜査だってしてくれない。
百歩譲って動いたとしても、勝てる保証すらない相手なのだ。
――打開策なんかあるわけない、か……。
桜自身がどうにかする以外、方法がない。結局はそこに行き着く。
彼女しか、この問題を解決することはできない。
「そろそろ出よっか。あんまり遅くなると、うちのお父さんうるさいから」
桜が料理を完食するのを確認すると、有紀が自分の時計を見ながら言ってきた。
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