桜の喪失を救うために

雪鳴月彦

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桜の真実

桜の真実

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 ほんの数秒、無言で見つめ合う。

 そして。

「……でもそれは、あくまできみの記憶の中だけの話だ」

 パチンと、片桐が指を鳴らす音が響く。

 直後、頭上で金属が擦れるような微かな音が聞こえた。何の音かと、その正体を確かめようと上空を見上げる暇もなく――。

「――っ!」

 まるで体当たりでもするかのような勢いで、桜はまたしても俺を掴み横へと跳んだ。

「うおぉぉ!? ちょっ――桜!」

 跳躍した桜は、そのまま手摺を飛び越え真下へと落下していく。

 今まで自分たちが立っていた場所が、視界から隔離される。

 何かを叩きつけるような破壊音が聞こえたが、確認ができない。ただ、あの場に留まっていたらやばいことになっていたのであろうことは、直感的に想像できた。

 衝撃を殺すようにして、桜が着地。

 そのまま疾走しなるべく広い空間を確保すると、俺を離すことなく振り返り相手を見上げる。

 再び翼を広げた翼竜が、優雅な動作で下降してくる。

 そして、もう一体。

「あれは何だ?」

 はっきりと認識することはできないが、屋上に得体の知れないものが立っていることに気づいた。

 身長は高い。二メートルは越えているだろう。基本的な姿形は人間と一緒ではあるのだが、どこか違和感がある。

 と、その影は突然高く飛び上がると、翼竜の後へ続くようにして俺たちの真正面へと落下してきた。

 ガシャリという金属音が、今度ははっきりと耳に届く。

「……嘘」

 新たに現れた者の正体を視認して、呆然とした呟きを桜がこぼした。

「あれも知ってるのか?」

 目線だけを向け、問う。

 身体中を銀の鎧で包み、両手にはそれぞれ剣と盾を握る、中世ファンタジーにでも出てきそうな出で立ちの敵。ゲームに出てくるような騎士と言えば、そのまま通じるような容姿だ。

「ガーディアン……」

 そんな新手の刺客から目を逸らさぬまま、桜がそう答えてきた。

「ハデスを統べる魔王の護衛部隊……。どうしてあんなのまで出て来るの?」

「魔王の護衛部隊?」

「雄治、ごめん。ちょっと思ってたよりやばいかも……」

 そう言ってくる声は、若干強張っているように感じる。

 聞いたことのない言葉が新しく増えて頭の中にまた疑問が生まれるが、それらにいちいち説明を求めている場合でもない。

「強いのか、あいつ?」

 とりあえず、それだけを確かめる。

「戦ったことないけど、かなり強いって噂はあった。相手に一撃を当てることすら許さないで殺しちゃうとか、そんな話しか聞いたことないくらい」

「……駄目だろそれ」

 つまりは最強の騎士、と言ったところか。

 ――翼竜に続いて、またとんでもないものを呼び出してくれたもんだ。

 正直、昨夜の狼男が可愛く思えてきてしまう。

「おい、てめえ……、いい加減正体ばらせよ。何者なんだ? 何で異世界から次々に化物を呼び出せる? それも、桜が暮らす世界の奴らばかりをよ」

 またしても翼竜に身を守らせている片桐を睨み付け、俺は声を張り上げた。

「言ったはずだよ。僕はこの世界の人間さ。嘘はついてない」

 いちいち余裕ぶった態度が癪にさわる。イラつく気持ちを自制しながら、俺と桜は次の言葉を待つ。
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