復讐の技を磨くため、俺は大都会静岡へと征く

ばたっちゅ

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【 来栖亜梨亜 】

静岡駅の出会い

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 いやいや、まあ待て。何かの見間違いか?
 炎に包まれていたのは遠くの市街地に落下したようだ。
 僅かに爆発も見えた。
 遠すぎてよく分からなかったが、なんとなく飛行機の様な気がした。
 よいうより、他にないだろう。
 事故か? いきなりスクープを目撃してしまったのか!?

 他にも灰色の翼竜のようなものが空を飛び、進行方向へと向かっていく。
 見ると、多数のビルに囲まれた地域だ。
 さすがは大都会。ビルが多すぎて、ここからでは駅が見えない。
 だけど予習はして来た。あの先に静岡駅がある。
 ――ってちょっと待て。一体何が起きているんだ?
 空を飛んでいるのは何だ? いや、それよりさっき落下したあれに乗っていた人は!?

「ピンポーン。こちらは群馬エクスプレス静岡行き。静岡駅に到着いたします。お降りの際は磁気シールドが一時的に解除されますが、現在ギラントの群れが静岡駅周辺で確認されています。地元警備隊が駆除を完了するまで、座先にて待機ください」

 だからギラントってなんだよ!
 訳が分からないと思っている内に、高架を走る群馬エクスプレスはビル街を抜け、静岡駅へと到着した。

 確かに沢山のビルに囲まれた凄いところだ。
 その中でも、途中その合間に白い駿府城が見えた。
 近代と古来の伝統。それが融合した良い都市に見える。
 いや見えた。
 しかし今はよく分からん。
 静岡駅のホームには人間の姿はまるでないが、代わりに巨大な翼竜の様な生き物が二足歩行で闊歩している。
 というか翼竜?
 自分で言っていて頭がこんがらがって来る。

 それは体高4メートルはある。
 首や尾まで伸ばしたらもっとだろう。
 腕の代わりにある翼やくちばしの様に伸びた口は確かに図鑑で見た翼竜の様だ。
 しかしあんなにワニみたいな顔をしていたのか? 大量の牙が飛び出しているぞ。
 それに何より鼻先から尾まで、背中に2列に並んだ無数の赤い目。
 ありゃなんだ?
 俺は夢でも見ているのか?
 それともおかしくなったのか?
 いやいや、落ち着け。こういう時は、状況を整理しろ。
 俺の名前は佐々森勇誠ささもりゆうせい
 渋川市立商業高等学校を卒業したばかり。歳は18。
 両親は佐々森高雄ささもりたかお佐々森郁美ささもりいくみ。姉は佐々森瑠衣子ささもりるいこ
 全員――……。

「いや、今はこらえろ」

 3年間面倒を見てくれたのはあず姉、けい、みねの3人。
 ここは群馬エクスプレスの中。場所は静岡駅。
 これから向かう所は静岡県立狩猟技能専門学校。
 俺をはそこで、銃の技術を磨き、更なる上の資格を取る。

 よし、正常だ。俺はおかしくなっていない。
 もう一回外を見る……なんか2匹に増えていた。
 いや匹でいいのか? 2羽?
 違うだろ。そんな事はどうでも良い。何だってんだ、この状況。

 とにかく外に出るか?
 近代的なホームはなんか無茶苦茶に壊されていて、まるで世紀末だ。
 このまま放置するわけにも……って、待て待て、それはダメだろう。
 さっきもアナウンスがあっただろう。ここで出てしまうと、一部とはいえ磁気シールドが切れてしまう。
 そもそも他の乗客に被害が――!

 いない!?
 車両には誰一人としていない。
 俺が外を見ている間に避難したのか?
 あんな物を見たらかなり騒いでも良さそうなのに、そんな事にも気が付かなかったのか。
 だめだ、俺。こんな程度の注意力で一体何が出来るっていうんだ。もっと心を鍛えないと。
 持ち込んだ銃を担ぎ、別の車両へ行く。やはり前だな、奴等もいたし。
 どう見ても飛ぶ相手に今の位置など関係は無いが、状況を考えたら他の客は反対側に逃げたはずだ。
 ドア1枚で全ての磁気シールドが解除されるわけじゃない。
 確かに相手の正体も分からない。だけど俺もこういう時の為に免許を持っているんだ。

 こうして列車の戦闘方面に走ったが、乗客が誰もいない。
 乗り込むときは結構いたはずだが、どうなっている?
 磁気シールドが解除された音は無かった。外に出たわけではない。
 なら奴らが入って……無いわ。それって解除されたのと同じ事だ。必ず警戒音が鳴る。
 チラホラと落ちている木の葉。これは柏の葉か?
 意味が分からない。

 そんな事をしながらも進むと、横からタタタ……タタタタタと軽快な音がする。
 あの音は知っている。自動小銃だ。
 一通りの武器は学校で教わったし、当然その中にあった。ポピュラーな武器だしな。
 見るとホームの反対側から女性が翼竜の様な生き物を売っている。
 今更確認する必要もないとは思っていたが、やはり駆除対象か。
 絶滅危惧種とか言われたらどうしようかと思ったよ。
 聞いたことは無かったが、アレが静岡の害獣なのだろうか。

 撃っているのは白髪の女性。歳は俺と同じか少し若いか? 何となく少女という感じがする。
 髪型はツーサイドアップで、しかも長い。狩りには不向きだろうに。
 服装は茶色いジャケットにマガジンやナイフの付いた、ごついベルト。
 ジャケットの上は開いており、中央にフリルの付いた白いシャツを着ている。
 ……それにしてもでかいな。完全に閉じていないのは、合うサイズが無いからか?
 なんて不謹慎な事を考えている余裕は無い!

 線路側の緊急開閉スイッチを押すと、ブザーと共に流れるアナウンス。

『緊急開閉装置が作動いたしました。ドア周辺の磁気シールドを解除します。降車後は係員の指示に従い、決して車両には触れないでください』

 そりゃ言われるまでもない。俺だって消し炭になるのは御免だ。
 注意をしながら外に出る――が、

「何をしているの! 民間人は車両に避難していなさい!」

 そういいつつも素早くマガジンを変え、背後から飛来した翼竜を撃ち落とす。
 完全にノールックで撃ち抜いた。
 だが10発は当たったがまだ立ち上がる。こんな生物がいるとは世の中はまだまだ広いものだ。

「何をしているの! 早く非難して! 邪魔!」

 そう言いながらも、のそのそと起き上がる翼竜を更なる連射で排除をする。手慣れているな。
 しかし酷い言われようだが、多分立場が逆なら俺も同じことを言った。
 どう見ても、素人が出張っていい場面じゃない。
 確かに群馬エクスプレスなら磁気シールドで守られているから、流れ弾を気にする必要は無い。彼女も戦いやすかっただろう。
 むしろ、そこに障害物が出てきてしまったという感覚だろうな。
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