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【 用宗港決戦 】
乱入者
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弾ける炎と地面と敵。
しかし、何発かは確かに空間へと消えていく。
あの向こうはどうなっているのだろう?
興味はあるが、食堂で聞いた限りでは試す気はないな。
まあ詳しい資料なんかは生きて帰ったら読めばいいし、多分俺には関係ない。
それよりも今は目の前の敵に集中だ。
まだ動ける奴や新たに分け出て来た連中は来栖と杉林の自動小銃。それに俺の5052式歩兵小銃で対処する。
幸いな事に、公園の左側――海岸方面から現れた連中の殆どが、2回目の多弾頭弾で壊滅した。
何せあそこに集中したからな。ちゃんとわかっている所が嬉しい。
とはいえ――、
「遅れてごめんなさい。これから援護に入るわ」
持って来ていた装備の量で想像は付いたが、広域攻撃兵器はあれで打ち止めか。
さてどれだけ頑張れるかだが、それ以前に階段を登って来た高円寺が右手に持っている武器がごつすぎる。
何処から見ても対戦車ライフルだ。それも全長は2メートル越え。口径も20ミリだろう。
また見た目によらず、ごつい獲物だな。
ただそれよりも目を引くのが、持っている状態がワンハンド。しかも引き金に指が掛かっている。
まさかと思うがその状態で撃つつもりか――なんて思う事自体が甘かった。
登って来ると同時に群れに向かっていきなり発砲。
轟音で耳がキーンとなって音が消える。
しかし見た。見てしまった。
撃った衝撃によって、その双丘がそれぞれ別の生き物のようにブルンブルンと跳ね回る。
――神よ。
更に揺れが収まらないというのに、間髪入れずに2初目を発射。
動きはさらに複雑になり、その縦横無尽の動きが俺の脳を破壊する。
もう耳は聞こえないが、それ故に天上の高みに到着してしまったのだろうか――そう考えてしまう。
だがその途端に、俺の体は天上どころか地面に叩きつけられえていた。
どうやら来栖によって、強制的に地面に伏せられたようだ。
倒されたといった方が良いな。
そして反響するような声が聞こえる。
「馬鹿なの!? この距離であんな得物が来たら、見ないようにして姿勢を低くしなさい」
反響のせいで何と言っているかはよく分からないが、言わんとしている事は伝わって来たよ。
しかしあのライフル、構造としては俺の5052式歩兵小銃と似通ってたところがある。
発射と同時に、爆炎がかなり全前方まで噴き出した。
無反動砲に近いが少し違う。通常の装薬で撃ち出した後、同時に弾薬後部の推進ロケットに点火。そのまま飛んでいくのだろう。
暗闇だが、奴等が出てくる光と口径の大きさで一瞬見えた。
あの対戦車ライフルにはライフリングが無い。間違いないだろうな。
というか何が後方支援だ。
確かにアレなら数キロ先でも狙えるが、この状態では俺たちと変わらないぞ。
だが威力はさすがに桁違いだ。
実は俺も似たような弾を持っているが、彼女の対戦車ライフルは威力の関係か時限信管式だ。
数体の敵を突き抜けた衝撃波だけで粉砕した後、正面に撃った弾は見えない世界へと吸い込まれて消えた。
ただもう一発。まだ多弾頭弾によって燃え盛る林側に撃った弾は、数百メートル進んでから大爆発を起こしていた。
ただあの威力だ。当然弾数は少ないし取り回しにも難がある。
本人は後方支援と言っていたが、ある意味正しかったか。
そして、それは俺たちが彼女の前衛にならなきゃいけないって事だな。
だがその破壊力により相当数が減った。
上空から現れる翼竜はどうしようもないが、公園全体現れる不気味な連中はかなり減って来た。
確かに高円寺の火力は派手だが、自由度の高い来栖と杉林の自動小銃はやはり効率がいい。
出てくる連中の攻撃を最前線で避けながら、流れるような動きで――そして最小限の弾丸で倒していく。
――来栖の動きは見ていたが、杉林もやるものだ。
そう感心しながらも、こちらも横を抜けていこうとするやつらを端から狙撃していく。
しかしアレだな、あの上を見る限り近接戦は分が悪そうだ。それに思った通り、意外と足が速い。
ただしあくまで”意外と”というレベル。鹿と比べたら止まっているのと変わらないし、実際に方向転換をしようとするとほぼ停止する。
今回はどんな危険があるか分からないから神弾ともう一つも持ってきたが、これからは通常弾で良さそうな気もして来た。
実際、この用宗港の戦いは大体片が付いたように思う。
新たに現れる4本腕の芋虫共は大幅に数を減らし、もう前衛二人の自動小銃だけで対応できている。
相変わらず空からあの不気味な翼竜が出ては来るが、普通の銃を対空に使っても、有効射程はせいぜい100メートル。
俺のライフルでも、200メートル行くかどうか。
対空に使えるのは高円寺の対戦車ライフルくらいだが、こちらは命中に難ありだ。
やはりあちらは専門家に任すしかないね。
気を抜くわけではないが、やはり楽なものだ。
と考えつつも、俺は間違いなく気を抜いていた。
周りが強すぎたからとか、離れしていなかったとかは言い訳にはならない。
ブンッ! という特徴的な羽音。
同時に燃え盛る穂脳の森を突っ切って、それは来た。
最初に狙われたのは来栖。
しかし俺は、音と同時に銃口を進路上に向けていた。
姿は見えなかった。だけど、羽音と木々を破壊する音が偏差の位置を教えてくれる。
とはいえ――、
轟音と共に通常弾を発射。飛び出て来たのは3.5メートル程のアラルゴス。
ああ、分かっているさ。分かっているけど撃たない訳にはいかない。
撃つと同時にきっちり命中する。
距離は僅か10メートルほど。本来な近すぎて、逆に当てるのも難しい。
一直線に飛来したので綺麗に当たったが、これでは致命打にはならない。
向こうは少し軌道が変わっただけだ。
化け物め。
しかし、何発かは確かに空間へと消えていく。
あの向こうはどうなっているのだろう?
興味はあるが、食堂で聞いた限りでは試す気はないな。
まあ詳しい資料なんかは生きて帰ったら読めばいいし、多分俺には関係ない。
それよりも今は目の前の敵に集中だ。
まだ動ける奴や新たに分け出て来た連中は来栖と杉林の自動小銃。それに俺の5052式歩兵小銃で対処する。
幸いな事に、公園の左側――海岸方面から現れた連中の殆どが、2回目の多弾頭弾で壊滅した。
何せあそこに集中したからな。ちゃんとわかっている所が嬉しい。
とはいえ――、
「遅れてごめんなさい。これから援護に入るわ」
持って来ていた装備の量で想像は付いたが、広域攻撃兵器はあれで打ち止めか。
さてどれだけ頑張れるかだが、それ以前に階段を登って来た高円寺が右手に持っている武器がごつすぎる。
何処から見ても対戦車ライフルだ。それも全長は2メートル越え。口径も20ミリだろう。
また見た目によらず、ごつい獲物だな。
ただそれよりも目を引くのが、持っている状態がワンハンド。しかも引き金に指が掛かっている。
まさかと思うがその状態で撃つつもりか――なんて思う事自体が甘かった。
登って来ると同時に群れに向かっていきなり発砲。
轟音で耳がキーンとなって音が消える。
しかし見た。見てしまった。
撃った衝撃によって、その双丘がそれぞれ別の生き物のようにブルンブルンと跳ね回る。
――神よ。
更に揺れが収まらないというのに、間髪入れずに2初目を発射。
動きはさらに複雑になり、その縦横無尽の動きが俺の脳を破壊する。
もう耳は聞こえないが、それ故に天上の高みに到着してしまったのだろうか――そう考えてしまう。
だがその途端に、俺の体は天上どころか地面に叩きつけられえていた。
どうやら来栖によって、強制的に地面に伏せられたようだ。
倒されたといった方が良いな。
そして反響するような声が聞こえる。
「馬鹿なの!? この距離であんな得物が来たら、見ないようにして姿勢を低くしなさい」
反響のせいで何と言っているかはよく分からないが、言わんとしている事は伝わって来たよ。
しかしあのライフル、構造としては俺の5052式歩兵小銃と似通ってたところがある。
発射と同時に、爆炎がかなり全前方まで噴き出した。
無反動砲に近いが少し違う。通常の装薬で撃ち出した後、同時に弾薬後部の推進ロケットに点火。そのまま飛んでいくのだろう。
暗闇だが、奴等が出てくる光と口径の大きさで一瞬見えた。
あの対戦車ライフルにはライフリングが無い。間違いないだろうな。
というか何が後方支援だ。
確かにアレなら数キロ先でも狙えるが、この状態では俺たちと変わらないぞ。
だが威力はさすがに桁違いだ。
実は俺も似たような弾を持っているが、彼女の対戦車ライフルは威力の関係か時限信管式だ。
数体の敵を突き抜けた衝撃波だけで粉砕した後、正面に撃った弾は見えない世界へと吸い込まれて消えた。
ただもう一発。まだ多弾頭弾によって燃え盛る林側に撃った弾は、数百メートル進んでから大爆発を起こしていた。
ただあの威力だ。当然弾数は少ないし取り回しにも難がある。
本人は後方支援と言っていたが、ある意味正しかったか。
そして、それは俺たちが彼女の前衛にならなきゃいけないって事だな。
だがその破壊力により相当数が減った。
上空から現れる翼竜はどうしようもないが、公園全体現れる不気味な連中はかなり減って来た。
確かに高円寺の火力は派手だが、自由度の高い来栖と杉林の自動小銃はやはり効率がいい。
出てくる連中の攻撃を最前線で避けながら、流れるような動きで――そして最小限の弾丸で倒していく。
――来栖の動きは見ていたが、杉林もやるものだ。
そう感心しながらも、こちらも横を抜けていこうとするやつらを端から狙撃していく。
しかしアレだな、あの上を見る限り近接戦は分が悪そうだ。それに思った通り、意外と足が速い。
ただしあくまで”意外と”というレベル。鹿と比べたら止まっているのと変わらないし、実際に方向転換をしようとするとほぼ停止する。
今回はどんな危険があるか分からないから神弾ともう一つも持ってきたが、これからは通常弾で良さそうな気もして来た。
実際、この用宗港の戦いは大体片が付いたように思う。
新たに現れる4本腕の芋虫共は大幅に数を減らし、もう前衛二人の自動小銃だけで対応できている。
相変わらず空からあの不気味な翼竜が出ては来るが、普通の銃を対空に使っても、有効射程はせいぜい100メートル。
俺のライフルでも、200メートル行くかどうか。
対空に使えるのは高円寺の対戦車ライフルくらいだが、こちらは命中に難ありだ。
やはりあちらは専門家に任すしかないね。
気を抜くわけではないが、やはり楽なものだ。
と考えつつも、俺は間違いなく気を抜いていた。
周りが強すぎたからとか、離れしていなかったとかは言い訳にはならない。
ブンッ! という特徴的な羽音。
同時に燃え盛る穂脳の森を突っ切って、それは来た。
最初に狙われたのは来栖。
しかし俺は、音と同時に銃口を進路上に向けていた。
姿は見えなかった。だけど、羽音と木々を破壊する音が偏差の位置を教えてくれる。
とはいえ――、
轟音と共に通常弾を発射。飛び出て来たのは3.5メートル程のアラルゴス。
ああ、分かっているさ。分かっているけど撃たない訳にはいかない。
撃つと同時にきっちり命中する。
距離は僅か10メートルほど。本来な近すぎて、逆に当てるのも難しい。
一直線に飛来したので綺麗に当たったが、これでは致命打にはならない。
向こうは少し軌道が変わっただけだ。
化け物め。
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