復讐の技を磨くため、俺は大都会静岡へと征く

ばたっちゅ

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【 用宗港決戦 】

開戦

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 場所も分からないし運転しているのも俺じゃない訳なので、状況は分からない。
 ただ暫く荷台で揺られていると、激しい銃声が響き渡る。
 更に空から響いて来る花火のような爆音。
 見ると、駅でギラントと呼ばれていた翼竜の群れが大量に飛来している。どう見ても千匹は下るまい。
 そこに向けて、無数の光が尾を引いて飛んでいく。あれは普通の銃みたいだな。
 たまに起こる爆発は対空砲だろう。
 この辺りにもビルがあり、幾つかにはそういったものが設置されている様子が見える。
 しかしあまり効いていないな。
 何とか有効なのは対空砲くらいか。あれでは撃つだけ弾の無駄だ。

「アレは無駄弾じゃないのか?」

「対空砲で殲滅するから、それまで降りてこないようにしているのよ」

「ああ、納得だ」

 要するに、射撃は威嚇か。
 確かに普通のライフルでも射程内なら倒せる相手だ。
 それに無駄と言っても、たまには当たっているのか落ちている奴もいる。

「あれなら俺たちの出番はなさそうだが、奴らを撃つのか?」

「あんなのは普通に対処できるわ。本命はこれからよ」

 その言葉が言い終わるか否かというタイミングで、突然の急ブレーキ。
 当然軽トラの荷台にシートベルトなんてものは無い。
 俺は勢いのまま、高円寺こうえんじの胸に顔からダイブしていた。
 今日2度目です。ありがとうございます。

「だ、大丈夫ですか?」

「ああ、助かったよ。ありがとう」

 本当に素晴らしいクッションでした。

「ケッ!」

 杉林すぎばやしはお気に召さないようだが、もちろんわざとじゃないぞ。
 とは言ってもそういう事を言いたいわけじゃないだろうな。俺以外は微動だにしなかったし。

「高円寺は広野海岸公園の後方に待機。俺も車両の護衛でここに残る。お前たちはそこを登って海へ行け。特に佐々森ささもりは初めてだろう。死なない程度に堪能たんのうしろ」

 堪能しろと言われても、多分そんな余裕はないぞ。
 既に先に飛び出た二人に遅れている。早く追い付かないとな。

 海岸公園下の道路には石垣があり、その端に階段がある。
 そこから登っていくと、月明かりに照らされた林の向こうに海が見える。
 と言っても、ここから海岸までは繋がっていない。
 前方の端は切り立った崖の様になっていて、かなり下に船の陸揚げ場があり、その右側が港だな。
 要は、ここはかなりの高台だ。
 そして横には相当に広いわりに、さほど奥行は無い。名前に反して、あまり公園という感じはないな。

 だがその向こうから、まるで空間から湧き出てくるようにオレンジの光と共に巨大な怪物が現れる。
 シルエット的には下半身が芋虫のケンタウロスだろう。
 体高は4メートルほどだろうか。顔の中央に単体の複眼。体に対して異様に長い、7本指の人間の腕が4本。
 下半身は芋虫で、もそもそと動く足がキモイ。それに意外と早そうだ。
 見ただけで不気味さと迫力に圧倒される。
 それが海岸公園の端から端まで次々と現れた。1体だけじゃないのかよ。
 というより、公園の奥行きが狭いだけにいきなり近い。20メートルも無いぞ。

 その上空では同じ様にオレンジの光に包まれた翼竜が湧き出している。
 どうやら出る時だけ、あの光に包まれるようだ。
 既に出て来た芋虫のケンタウロスは、既に生白い姿を現している。

 それにしても、本当に空間から突然に湧き出てきたように感じる。
 あれはどういう事だ?

「今連中が出て来たラインをちゃんと覚えてね。あそこから先の世界は幻。この世の記憶のようなものよ。その向こうは、奴らの巣。一度入ったらお終いよ。わたしたちは境界が見えるから良いけど、貴方は絶対に前に出てはだめよ」

「よく分からんが了解した。俺は元々狙撃手だからな。前に出るような戦いはしないよ」

 それ以前に、何も知らない状態で知っている人間の忠告を無視するほど馬鹿ではないさ。
 今は分からなくとも、説明なんて後で聞けばいい。
 というよりも、奴らが出て来た境界線を越えるという事は、奴らを突破するという事だ。
 馬鹿言っちゃいけない。誰がそんな事をするか。
 今考える事は、奴らが危険な害獣であるという事実だけ。
 どんな弾が有効かは分からないが、ここまでの話からこの二人が神弾を持っていない事は明らかだ。
 なら通常弾でいい。先ずはどんなものか試させてもらおう。
 ボルトを引き、薬室に弾を込める。

 だが狙いを付ける前に、背後からポンポンポンポンと軽い音が響く。
 いや、音は軽いが背後から飛来した物体は空中で分裂し、無数のクラスター弾が風切り音と共に公園を横一列に降り注ぐ。
 無数と言える程に炸裂する爆炎。鼓膜を破壊するような音。痛いほどの衝撃。吹き飛ぶ敵。
 高円寺こうえんじが持っていたウエポンラックはこれか。
 それにしたって――、

「戦争でもおっぱじめるつもりか」

「今まで何を聞いていたの!? もう戦争をしているのよ」

 そう言いながら、まだ次々と湧き出て来る敵を来栖くるす杉林すぎばやしが自動小銃で迎撃する。
 見た目以上に威力があるのか、それとも連中が見た目以上に脆いのか、熊よりも簡単に吹き飛ばされていく。
 まあ試すのは簡単だ。狙いを定め、撃ち抜く。
 目標は複眼の下、剥き出しの皮膚だ。
 動きは鈍い。それ以上に近い。
 弾は寸分たがわず首を撃ち抜き、その勢いで首は完全に吹き飛んだ。
 やはり脆い。こいつらは数だけか。
 だがあの長いリーチの腕。銃を使うには狭すぎるステージ。
 背後に階段はあるが、そこ以外は全方位石垣による崖。前は論外。結構タフな戦いになりそうだ。

 前衛の二人も応戦しているが、3人では面制圧が出来ない。
 左側からも次第に迫って来るし、右の用宗港にもちらほらと出現し始めている。
 囲まれたらアウトだな。
 そんな事を考えていると、背後から再び多弾頭弾が撃ち込まれたのだった。
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