復讐の技を磨くため、俺は大都会静岡へと征く

ばたっちゅ

文字の大きさ
40 / 58
【 三保松原の激戦 】

久能海岸

しおりを挟む
 言われた通り、ただひたすら真っ直ぐな道を進む。

「本当に物凄い直線だな」

 わりと本気で信じられない。ここまで平地が続くものなのか?

「驚いているところ悪いけど、そろそろ戦闘準備に入って」

「俺の場合は銃1丁だし支度は出来ているよ。それより三保松原まではまだ距離があるんじゃなかったか?」

「忘れたの? もうじき久能海岸に出るわ」

「海岸こそが奴等のテリトリーだと教えただろ、一般人」

 うん、杉林すぎばやしは目つきも口調も変わらないが、何の迫力も感じない。
 むしろ場が和んだよ、ありがとう、ポレンちゃん。

「なんか今すぐここから放り投げたい顔をしているな」

「気のせいだ。俺はいつだって真面目だからな」

 あの大笑いしていた人間のセリフとは思えないと3人の目が訴えているが、ここは無視しよう。
 それをよりも、遠くの空が緑色に染まっている。
 用宗港もちむねこうの戦いの時とは違う。
 同じなのは、全身に鳥肌が立つほどの緊張感。あそこには一体猪何頭分の害獣がいるのやら。

「各自戦闘準備!」

 見えてきた海岸線。以前と同じように空から現れる翼竜の群れ。そしてビーンとかいう、異様に長い手絵を持った芋虫の様な顔の真っ白いケンタウロス。
 それらが、まるで海岸はスクリーンだと言わんばかりに不自然に途中の空間から現れてくる。

「もうかよ。というかさ、この辺りの住人ってどうしてるんだ? 毎度毎度こんなんじゃ、生活なんて出来ないだろ」

「海岸線に近づかなければ出てこないわ」

「じゃあなんで海岸線なんて通るんだよ」

「それは三保松原が海岸にあるからで……」

 既に高円寺こうえんじは物騒なブツを開封していたが――、

「もっと内陸を移動してから海岸に出れば良かったんじゃないのか? これじゃあ俺たちが近くの人々の生活を脅かしただけだぞ」

「この周辺の住人は元々内地に引っ越し済みよ。言われるまでもなく、怖いじゃない。実際、人間がいなくたって出て来る事はあるんだから」

 いわれてみれば確かにそうだ。

「あれ? だけど以前の用宗港周辺の家には明かりがついていた気がしたが」

「アレはダミーよ。前に話したと思うけど、アイツらの怖さはいつの間にか巣を作っている事なのよね。だからどんな所にでもセンサーは付けてあるけど、よく出る所にはああやって人が住んでいるように見せかけているの」

「その心は?」

「中に入ったら大爆発する仕掛けよ」

 聞いておいて良かった。
 もし迂闊に1人で尋ねたら、俺が木っ端みじんに吹き飛ぶところだった。

「それじゃあ、始めるわ」

 その言葉と同時に、トラックの荷台から大量のロケット弾が打ち上げられる。
 それはまるで花火委の様だ――って、そんなに綺麗なものじゃないけど。
 ただ空中で分解し、落下したクラスター爆弾の爆発は美しい。
 いやこっちもそんなに暢気なものじゃないけど。
 なにせロケットで撃ち出されているから、綺麗な円形に落ちるわけじゃない。
 それはまるで楕円に広がる炎の蛇。
 時間差で落下した多数の弾頭は、爆発と同時に更なる爆薬を放出し、無数の爆発を連鎖させる。
 そんな物を何発も撃ち出しているのだから、見事なほどに海岸線は炎に包まれた。

 連中はそれほどタフじゃない。それは前回の戦いで十分に見ている。
 あの爆炎の中を抜けてくる奴や存在しない。
 ただ問題があるとしたら――、

「最後の1発です」

 さすがにこっちの火力がそれほど多くは無い所だ。
 トラックには荷台の多くを占めるほどに多数のロケット弾が積まれていたが、それでも12発。
 狩りと考えれば山一つを一掃するのに十分な量だが、走りながら撃っているわだしな。それにこの海岸は広い。
 幸いにもまるで人工物かのように綺麗な一直線の海岸なのが幸いし、数キロの敵は一掃できた。
 確かに、俺たちが通り過ぎた後には焼け野原しか残っていない。
 新たなビーンが現れる形跡はない。
 本当に、人を感知している訳か。
 ただ目的地までは10キロ。前方の奴も問題だが、後ろの逃した奴も厄介だぞ。
 アイツらは人がいなくなっても素直に帰るわけじゃない。
 あのあたりの家が全て爆発するのだろうか?

「心配は分かるけど、そろそろ心強い援軍が来るわ」

 そう言いながら、来栖も高円寺も杉林も銃撃をやめない。それも実に確実な射撃だ。改めて、心強いよ。
 というか、杉林はあんな体になってもしっかり銃は使えるんだな。
 元々反動の少ない小型のライフルとマシンガンを使っていたが、今も同じ装備だ。
 体格からすると、さすがに違和感しかねえ。
 それと初めて会った時から分かっていたが、装備は女性用。こいつは紫のジャケットを着ている以外、他と大差ない。
 使っている武器などによってベルトの装備が変わる程度だ。
 というか、よくこいつが承諾したな。
 特にスカートとか、俺が女性になっても穿く自信はないぞ。

 なんて考えている間も、俺だって動いている。
 右の海岸線から来る奴は高円寺と杉林に任せ、俺と来栖は前の道路に出てきた相手を一掃して進路を確保する。

 杉林はともかく、火力の高い高円寺が横を担当しているのは弾頭の関係だな。
 今はいつものではなく、途中で分裂する、ある意味ショットガンタイプだ。
 まあ構造は全然違うが、見た目と効果が同じなのだからそれで良いだろう。
 ただ問題は後ろ――と思っていたが、こちらもこちらでそれどころではない。
 道路に登って来たところを確実に仕留める。
 しかしやはり数が多い。とてもじゃないけれど、全方向への対策は無理だ。
 その時――背後が光った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...