復讐の技を磨くため、俺は大都会静岡へと征く

ばたっちゅ

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【 三保松原の激戦 】

現れた巨獣

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 背後の光と共に遅れてくる爆音と爆風。
 そしてつい最近聞いたエンジン音。
 あれは――!?

 上空を2機のセスナが追い抜いていく。
 黄色と赤。見忘れるわけがないというか、組み立てを手伝わされてつい昨日見送ったあの機体だ。
 しかし先の爆音は? 爆弾?

「集中しろ、一般人!」

 そりゃ分かっているし手を止めたつもりもない。
 しかしさすがに分かるもんだな。
 確かに俺も撃ち方を見れば心理状態は分かるが。

『こちらCK―01、地上聞こえるか?』

 運転席の通信機か。
 案外こちらにもはっきり聞こえるようになっているんだな。
 という過去の声、あの残念イケメンの方だな。

「こちらはサンダース大宮だ。協力感謝する」

「完璧なタイミングでの到着ね」

 あの支援が前提だったのか。

『これより前方の敵を掃討する』

 その通信と同時に、2発のロケットらしいものが白い尾を引きながら地面に着弾した。
 同時に起こる炸裂と、勢いを殺さず突き進む火柱。

「ナパーム弾じゃねえか!」

「連中には有効なのよ」

「というか前! 前!」

「どうという事は無い。安心しろ!」

 教官のその言葉と共に、武装トラックが炎の中に突入する。
 そしてさらに前方に撃ち込まれるナパーム弾。

「熱い! 死ぬ、死ぬ!」

「この位じゃ死なないわよ」

 まあ確かに死ぬような熱だったら火薬類は全部捨てないといけない。
 ただそれより、再び起こる爆発と出現する炎の道。

「あれ何発持って来ているんだよ!」

「装弾数は12発ね」

「結構詰め詰んだな」

「見た目はセスナだが、目標にしたのはサンダーボルトだからな。機銃はお粗末なものになってしまったが、搭載力は申し分ない」

「それは何か映画で見たな。A―10って奴だろ? ただあれはジェット機だったが、こちらはプロペラ機の様だが」

「ふふ、それは違うサンダーボルトですよ」

「P―47の方だ。これだから一般人は」

「まあ確かに一般人はそんなもん知らんわ」

「第二次世界に作られたアメリカの戦闘爆撃機よ」

「日本が機動力だの色々捨ててなんとか800キロ爆弾を搭載している時に、2トン近い積載量を持った戦闘機だ」

「航続距離を減らせば3トン以上積めますね」

「それってもう爆撃機って言わないか?」

「確かに純粋な戦闘機としてはP―51のマスタングが主力となりましたが、戦闘機としても十分に高い能力を持っていたんですよ。それに搭載能力が凄かったので、ロケット弾や爆弾を大量に搭載しての攻撃も行っていました」

「それで戦闘攻撃機か」

 なんとなく、俺が知るA―10とイメージが被るな。今度調べてみよう。
 ここを無事突破したらだが――、

「いつあの攻撃は止まるんだよ!」

 まだ夕刻前だが世界は真っ赤。主に火のせいでというか全部火のせいで。

「ここまでの弾数は12発どころじゃないぞ」

「そりゃあ、2機とも来ているもの」

「ナパームロケットの他に、本家のナパーム弾も積んでいますし」

「むしろそれが本命だろうが、少し考えれば分かるだろ一般人」

 平然と当たり前だろ的に言う所がなんか怖い。
 兵器の事なんて自分の銃以外は猟銃と基礎知識位しか知らねーよ。

「ここは静岡空港に近いですし、その分だけ搭載している兵装も多いんですよ。それに取り付けまで含めても、40分あれば往復できます。空中からの援護は心強いですよ」

 まあ高円寺こうえんじのいう事はもっともだ。
 直線から90度曲がってまた直線。障害物も無ければ減速も最小限。
 しかもこの海岸の道は人を気にする必要なく空からの援護が出来る。
 素人の俺でも、このルートを選んだ意味が分かってきた。

 それに何発かはアスファルトをドロドロに溶かして燃え盛っているが、大体は海岸線の出現地帯を狙っている。
 そういえば、俺と違ってタイプなんたらは境界線が見えるのだったな。便利なものだ。

『こちらCK―1、CK―2、補給のために一時帰投する。検討を祈る』

「援護に感謝する。もう目的地は見えて来た。ここからは――」

 教官の声を遮った衝撃。一体何が有ったのか、その時の俺には理解が出来なかった。
 ただ全身がバラバラになるような感覚と、重力を失った不思議な喪失感。
 体は痛くは無かった。頭は状況を理解しようとフル回転していた。
 トラックが何かに衝突した。そして俺は今、勢いのまま弾き飛ばされている。
 そんな状態でも、銃と弾丸の入ったバッグだけは何故か無意識の内に掴んでいた。

 ――なんだ、アレは!?

 それは一緒に荷台に乗っていたメンバーだけでなく、帰還しようとしていた2機のセスナからも確認出来た。
 体長は少なく見積もっても50メートル。
 大きさからして、境界線から出た時にはもう避けられない位置にいたのだろう。
 衝突したトラックは潰れて炎上している。

 その巨体の主は、頭の先端に一角獣の様な直線的な長い角を持つセンザンコウと形容するべきか。
 ただ、それを正しく認識できたのはセスナの二人だけだ。




 ――クソ、意味が分からねえ。教官はどうなったんだ!? なんて考えるまでもない。
 今は眼前に迫る巨大な鱗。とにかく巨大な生物だ。ただそれが分かったところでどうなるよ。
 最後まで諦める気はないが、この勢いだ。足か片腕、どちらかは犠牲にしなければ生きて着地することは出来そうにない。
 ……まあ足だな。
 それでもあの鱗の間に挟まったら折れる程度では済まないだろう。
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