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【 5本角 】
本隊襲来
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ごく普通のアサルトライフルを放り投げる。
口径は7.7ミリ。引き金には結ばれたピアノ線。
出発した時から用意してあったものだが、すみません教官。
これ、いざという時にトラックごと敵を吹き飛ばすためでした。
奴の近くまで行ったところでピアノ線を引く。
普通はこんな事をしても引き金は引けない。単に銃が戻って来るだけだ。
だけど俺には見える。ピッタリ引き金とピアノ線が水平になるタイミングが。当然そこで引く。
しかしそこから発射された弾は奴には当たらない。
さすがにそんなに都合よくは並ばない。
だけどそれで良いんだ。弾なんて出ないから。
けれど、その事を奴は知らない。理解も出来ないだろう。
込めてあったのはひい爺さんの執念の結実である5052式歩兵小銃弾。
それも榴弾。当然神弾。
通常の銃で、こんなバカな弾は発射できない。
発射の為の炸薬に着火すると同時に、銃は木っ端みじんに砕け散る。
そのほんの僅かの差で、榴弾にも着火。弾頭もまた、コンマ1秒にも満たない時間で飛び散った。
俺からしてもまあマジで痛い。
だけどこの防弾スーツはさすがだ。この程度は問題ない。
それに、弾が届かないほど上空にいたのが仇になったな。
おかげで十分に爆発の威力は落ちていたよ。
だけど、神弾の炸裂を目の前でくらったお前はどうかな?
さすがにアレで倒れはしなかった。
人間でいう所の火傷程度って所か。
ただし軽度とはいえ全身火傷。しかも、自慢の複眼が相当に欠けているぞ。
「じゃあな」
2発は当たらない。そう簡単な相手じゃない。
だから3連射した。
躱そうとするが、完全に回避ルートは塞いである。
死なばもろともと考えたのか?
本来当たらない予定の1発まで被弾し、2つの穴を開けながら降下して来る。
しかしその体は砂で作ったボールを投げたかのよう。
その巨体を少し赤らんだ光の中に散らしながら、半分も届かずに消滅した。
「教官、始末はついた。航空援護を再会してもらってくれ」
次第に夕方が近づいている。さすがに日が落ちたら航空支援は厳しいだろう。
あの戦いがいつまで続くかは分からないが、用宗港の戦いは夜だった。連中に時間はない。
だが活動時間か数には限界がある。
その為にも、一刻も早い支援が必要だ。
「まだだ。左を見ろ!」
海岸?
言われた時はビーンを予想した。もしくはクラゲだな。
だがその緊張感のある声から、あの巨大なセンザンコウの可能性もあった。
しかしそこにいたのは、巨大な赤いアラルゴスと、その周囲でホバリングをしている20を越える小型の――いや、小型なんてものじゃないのが2匹。
8メートルクラスの巨体に真っ赤な体。そして特徴的な3本角。
瞼に焼き付いて離れない姿。
赤兜ではない。だが、その姿は当時のヤツそのものだ。
そして中央にいる奴は、見ただけで別格だ。
空が茜色に近くなってきたこのもあるが、まるで透明な宝石かのように輝く真紅の体。
15メートルを超すであろう異様な巨体。
何より特徴的な5本角。
今までの中央、左右に加え、額からトリケラトプスの様な2本の角が生えている。
「なるほど、成長するとそうなるってわけか」
さっきの奴は、おおかた群れの一部。
俺達の事は獲物を狩るための練習台でもしていたって所だろう。
だがこちらが狩る側だった。
あの音は仲間に助けを求める声か、それとも自分でやるから手を出すなという意味か。
だがどちらにしても、今はどうでも良い事だ。
「あれをどうにかしろって事だろ、教官。状況は理解した」
「……逃げても良いのだぞ。誰もお前を非難はすまい」
「逃げた先に、どんな生涯が待っているんだろうな」
考えるまでもない。今まで生きてきた人生よりも、もっと辛い地獄の日々だ。
何も出来なかった悔しさは今の力に変わった。
だけど何かが出来たのにしなかった後悔は、逆に力と気力を失わせる。
生きていればきっと? 何だよ。今のこのご時世で、何があるっていうんだ。
そのありもしない“きっと”を死ぬまで待ち続けるのか?
「全速で走れ!」
「その覚悟は受け取った」
同時に何かが開いた音がして、トラックの後ろから2本の炎と煙が吹き上がる。
突如始まる超加速。車体が浮きそうになるほどの勢いに負けて、荷台の後ろまで飛ばされる。
今までも限界かと思ったら――というより、今の速度を維持してくれと言ったつもりだったのだが、これは予想外だ。
「ハハハ、長くはもたんぞ!」
「バカヤロー!」
今までの速度を保ってくれればと思っていたのに、急加速で荷台の後ろまですっ飛ばされた。
背中を強打して行きが止まる。こんな状態で射撃なんて困難だ。しかも時間制限まで付けやがった。
大体、この程度の加速でも連中にとっては他愛もない。
相手は航空機を落とす奴等だぞ。
……と思ったが、ふと空を見たらそこには敵はいない。
そうだ、海岸から新たに来たんだ。
今の奴等に上空からの”目”は無い。
だけど俺には、トラックの装甲越しに動きが見える。
ここは速さだ。
丁度1発弾倉に徹甲弾が残っている。それに合わせて同じ弾のマガジンをはめる。
ただ――これが最後の徹甲弾のマガジンなんだよね。
7連射でトラックの装甲に穴が開くが、装甲なんてどれだけ穴が開いても壊れはしない。
逆にこちらに向かっていた7匹は確実に倒した。
ただ行きの久能海岸で撃ちすぎた。
今のマガジンは榴弾が1つで6発。それに新しく群馬から送ってもらった荷物にあった成形炸薬弾が1つ。同じく6発。
あとは牽制に投げたまま落ちている徹甲弾3発にポケットとポーチに予備の徹甲弾と榴弾が数発。
どう考えても足りない。
口径は7.7ミリ。引き金には結ばれたピアノ線。
出発した時から用意してあったものだが、すみません教官。
これ、いざという時にトラックごと敵を吹き飛ばすためでした。
奴の近くまで行ったところでピアノ線を引く。
普通はこんな事をしても引き金は引けない。単に銃が戻って来るだけだ。
だけど俺には見える。ピッタリ引き金とピアノ線が水平になるタイミングが。当然そこで引く。
しかしそこから発射された弾は奴には当たらない。
さすがにそんなに都合よくは並ばない。
だけどそれで良いんだ。弾なんて出ないから。
けれど、その事を奴は知らない。理解も出来ないだろう。
込めてあったのはひい爺さんの執念の結実である5052式歩兵小銃弾。
それも榴弾。当然神弾。
通常の銃で、こんなバカな弾は発射できない。
発射の為の炸薬に着火すると同時に、銃は木っ端みじんに砕け散る。
そのほんの僅かの差で、榴弾にも着火。弾頭もまた、コンマ1秒にも満たない時間で飛び散った。
俺からしてもまあマジで痛い。
だけどこの防弾スーツはさすがだ。この程度は問題ない。
それに、弾が届かないほど上空にいたのが仇になったな。
おかげで十分に爆発の威力は落ちていたよ。
だけど、神弾の炸裂を目の前でくらったお前はどうかな?
さすがにアレで倒れはしなかった。
人間でいう所の火傷程度って所か。
ただし軽度とはいえ全身火傷。しかも、自慢の複眼が相当に欠けているぞ。
「じゃあな」
2発は当たらない。そう簡単な相手じゃない。
だから3連射した。
躱そうとするが、完全に回避ルートは塞いである。
死なばもろともと考えたのか?
本来当たらない予定の1発まで被弾し、2つの穴を開けながら降下して来る。
しかしその体は砂で作ったボールを投げたかのよう。
その巨体を少し赤らんだ光の中に散らしながら、半分も届かずに消滅した。
「教官、始末はついた。航空援護を再会してもらってくれ」
次第に夕方が近づいている。さすがに日が落ちたら航空支援は厳しいだろう。
あの戦いがいつまで続くかは分からないが、用宗港の戦いは夜だった。連中に時間はない。
だが活動時間か数には限界がある。
その為にも、一刻も早い支援が必要だ。
「まだだ。左を見ろ!」
海岸?
言われた時はビーンを予想した。もしくはクラゲだな。
だがその緊張感のある声から、あの巨大なセンザンコウの可能性もあった。
しかしそこにいたのは、巨大な赤いアラルゴスと、その周囲でホバリングをしている20を越える小型の――いや、小型なんてものじゃないのが2匹。
8メートルクラスの巨体に真っ赤な体。そして特徴的な3本角。
瞼に焼き付いて離れない姿。
赤兜ではない。だが、その姿は当時のヤツそのものだ。
そして中央にいる奴は、見ただけで別格だ。
空が茜色に近くなってきたこのもあるが、まるで透明な宝石かのように輝く真紅の体。
15メートルを超すであろう異様な巨体。
何より特徴的な5本角。
今までの中央、左右に加え、額からトリケラトプスの様な2本の角が生えている。
「なるほど、成長するとそうなるってわけか」
さっきの奴は、おおかた群れの一部。
俺達の事は獲物を狩るための練習台でもしていたって所だろう。
だがこちらが狩る側だった。
あの音は仲間に助けを求める声か、それとも自分でやるから手を出すなという意味か。
だがどちらにしても、今はどうでも良い事だ。
「あれをどうにかしろって事だろ、教官。状況は理解した」
「……逃げても良いのだぞ。誰もお前を非難はすまい」
「逃げた先に、どんな生涯が待っているんだろうな」
考えるまでもない。今まで生きてきた人生よりも、もっと辛い地獄の日々だ。
何も出来なかった悔しさは今の力に変わった。
だけど何かが出来たのにしなかった後悔は、逆に力と気力を失わせる。
生きていればきっと? 何だよ。今のこのご時世で、何があるっていうんだ。
そのありもしない“きっと”を死ぬまで待ち続けるのか?
「全速で走れ!」
「その覚悟は受け取った」
同時に何かが開いた音がして、トラックの後ろから2本の炎と煙が吹き上がる。
突如始まる超加速。車体が浮きそうになるほどの勢いに負けて、荷台の後ろまで飛ばされる。
今までも限界かと思ったら――というより、今の速度を維持してくれと言ったつもりだったのだが、これは予想外だ。
「ハハハ、長くはもたんぞ!」
「バカヤロー!」
今までの速度を保ってくれればと思っていたのに、急加速で荷台の後ろまですっ飛ばされた。
背中を強打して行きが止まる。こんな状態で射撃なんて困難だ。しかも時間制限まで付けやがった。
大体、この程度の加速でも連中にとっては他愛もない。
相手は航空機を落とす奴等だぞ。
……と思ったが、ふと空を見たらそこには敵はいない。
そうだ、海岸から新たに来たんだ。
今の奴等に上空からの”目”は無い。
だけど俺には、トラックの装甲越しに動きが見える。
ここは速さだ。
丁度1発弾倉に徹甲弾が残っている。それに合わせて同じ弾のマガジンをはめる。
ただ――これが最後の徹甲弾のマガジンなんだよね。
7連射でトラックの装甲に穴が開くが、装甲なんてどれだけ穴が開いても壊れはしない。
逆にこちらに向かっていた7匹は確実に倒した。
ただ行きの久能海岸で撃ちすぎた。
今のマガジンは榴弾が1つで6発。それに新しく群馬から送ってもらった荷物にあった成形炸薬弾が1つ。同じく6発。
あとは牽制に投げたまま落ちている徹甲弾3発にポケットとポーチに予備の徹甲弾と榴弾が数発。
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