この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

文字の大きさ
23 / 425
【 出会いと別れ 】

天幕 前編

しおりを挟む
 ”キャーーーーーーーーーーー!”

 声の無い悲鳴が上がり、自然と腹が凹み、心臓他の臓器が全部口から飛び出したような錯覚を覚える。

「あははぁ、冗談よぉ~。びっくりした?」

 背後から緑の髪の魔法使いエンバリ―が現れる。
 あんた王様と一緒に行ったんじゃなかったのかい!
 眼だけで抗議するが、当然ながら聞いちゃ――いや、見ちゃいない。

「コンセシール商国の最高意思決定評議会からの通達よ。貴方も、これからはこちらですって」

 そう告げられると、二人は急いで懐から金属板を取り出す。

 あれ?  青い鎧を着ていた青年は自然に金属板の下部分を隠しているが、亜麻色の少女は親指と人差し指でちょこんと摘まんでいるだけで裏面は見放題だ。それに――書いてある内容が違う。

 正確には青い鎧を着ていた青年が隠している部分には別の文言が描かれていた。
 まあ他言無用。命を掛けてまで理由を聞くつもりは無かった。


 金属板に刻印されていた文字は、別の文字に変化していた。
 ”コンセシール商国アルドライド商家42-941-10-40-1-71-0。侵攻軍最高意思決定評議委員長。階位6”

 肩書など随分簡単に変わるものだとリッツェルネールは思うが、システムとはこんなものだとも思う。

 前回の侵攻軍最高意思決定評議委員長はエンゼラス・ファートウォレル。
 アルドライド商家、アンドルスフ商家に並ぶ三大商家ファートウォレル商家の血族。
 我らの頂く3つ星の一つだ。
 確かその地位になったのは1か月ほど前で、その時にはこちらも祝辞を送ったものだが……そうか、死んだのか――それしか感慨は湧かなかった。

 特定の誰かが死んだらといって、空白になるだの全てが終わるだなんて事は無い。社会がそれを許しはしない。
 空白になった席はすぐに誰かが埋め、その業務を引き継ぐのだ。そしてそれが、ついに自分に回ってきた……ただそれだけの事でしかない。

「君はどうだい?」

「階位8に上がりましたよ。遂に議員資格を取得です」

 メリオに尋ねると、そう嬉しそうに答えた。




 ◇     ◇     ◇




 天幕に入ると、そこには近隣に展開していた各国の代表や代理人が集まっていた。
 中央には長いテーブルが置かれ、奥に一脚、左に3脚、右に4脚のイスが配置されている。
 そこに座る4人の国王、一人の公爵、一人の司祭、そして一人の大臣が、この地域近隣の攻略を受け持っている最重要人物達だ。

 一番奥、中央に座るのはディランド連合王国国王カルター・ハイン・ノヴェルド、ティランド。
 我らが元首でもある。
 
 その一つ手前、右にはゼビア王国代理のクランピッド・ライオセン大臣。
 左にはユーディザード王国国王マリクカンドルフ・ファン・カルクーツ。

 その手前の右にはディランド連合王国所属、マリセルヌス王国国王ロイ・ハン・ケールオイオン。
 同じくディランド連合王国所属、ハーノノナート公国大公ユベント・ニッツ・カイアン・レトーが左に座る。

 更に手前右にはナルナウフ教団司祭サイアナ・ライナア。
 そして左側はスパイセン王国国王シコネフス・ライン・エーバルガット。

 自分はナルナウフ教団司祭サイアナ・ライナアの隣に席を設けられていた。

 ――コンセシール商国は正式にはディランド連合王国属国コンセシール商国、正式に連合に加盟していない属国だ。妥当なところだろう……。

 自分より下位に座るものは無いが、天幕の中には各国の将軍が数人控えている。
 本来であればリッツェルネールは彼らより格下で、ここに座るような立場にはない。それが認められたという事は、それだけ魔王討伐に参加し生き残ったことが大きかったのだろう。
 リッツェルネールは座りつつ、改めて集まったメンツを見渡す。

 ――もうこれしか残っていないのか……。
 
 前世紀、黒き永遠を打倒する前進歴997年5月1日、魔族領大進行決議が世界連盟で発足した。
 そこからは食料を備蓄し、なおかつ人口制限を部分解除するという無茶な政策が取られた。
 国家同士は持て余す人口を選別するような戦争を繰り返しつつも徐々に纏まり、碧色の祝福に守られし栄光暦155年1月1日、遂に全人類総力を投じての魔族領への大侵攻が開始された。
 
 出陣式の際にはまた意思決定評議委員の一人であったリッツェルネールは、首脳の集まるような場には参加していない。しかし当時は、城の大ホールからもあふれるほどの人がいたという。
 まだまだ人類は十分な人口を保持している。だが、第一次から第八次までの侵攻戦で、優秀な人間達は次々と死んでいった。今は何処も、国内での立て直しを図っている時期だ。
 
「まずは恐悦至極でございます、カルタ―国王陛下。そしてリッツェルネールコンセシール商国侵攻軍最高意思決定評議委員長殿」

 身長185センチ、白灰の長髪に深い緑の目。彫りの深い顔立ちに長身だが16歳程度に見える若い顔、痩せたひ弱な体、その外見からは似つかわしくない羊の毛のような豊かな髭を蓄えた、“有能ではないが無能でもない”の異名を持つスパイセン王国のシコネフス王が戦勝のあいさつを行うと、他の面々も一斉に立ち上がり口々に謝辞を述べる。

 だが当のカルターは、煩わしいと言わんばかりに手を挙げて制すると、
 
「よい――それよりもだ、我々が炎と石獣の領域に突入している間に何があった」

「はっ! 国王陛下! それにつきましては私から報告させていただきます!」

 身長160センチと小柄ながら、幅広で筋肉質。甲虫を思わせる厚い赤紫の全身鎧に、一本角の兜を左手で小脇に抱えている。
 団子の様な顔に赤い短髪。一言で表すのなら『丸』、そんなイメージの男だ。黄色い真摯な瞳からは、まさに忠臣といった印象を受ける。
 カルタ―の後ろに控えていた、ティランド連合王国軍のミュッテロン将軍だ。

「既に先にいらした皆様に報告したように――」
 
 長々と調査結果を報告したが、要点は部隊の壊滅と原因不明の2点だけである。
 総司令部跡地の惨状は見てのとおりであり、他の4つの司令部もまた同様にやられていた。
「おそらく魔族の仕業でしょう」――最後はこう結んだが、これは人類がどうしようもない現状になった時に使う定例句みたいなものだ。

 リッツェルネールとしては、そんな報告を受けるくらいならカンザヴェルト分隊長から自国の軍勢の状態を一刻も早く聞きたいものだと思う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...