この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 出会いと別れ 】

外の世界へ 後編

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「そうか、ようやく結婚するのか。まあおめでとうだな」

 カルターはこの二人がとっくに結婚し、子供を設けたからここへ来たのだと思っていた。
 リッツェルネール・アルドライト276歳、メリオ・フォースノー241歳、二人とも細身であり、この世界においてはお世辞にも美男美女とは言えない。だがアルドライト商家はコンセシール三大商家の一つ。フォースノー家もコンセシール七商家の一つであり、二人とも容姿で結婚を選ぶような血族ではない。
 それが200歳を超えても子無しというのは、容姿の難を差し置いても異常な事だった。

「本国の承認は受けてないけど、もう決めたんだ。それに僕が貰わないとメリオはずっと独りだからね」

 そう言ったリッツェルネールの腕を、メリオがニッコリしながらギリギリと捻り上げる。

「い、いたっ、痛いよメリオ」

「尻に敷かれそうで何よりだな。おめでとうさん」

 魔王を倒した今、おそらく二人の兵役は解除されるだろう。そして魔王討伐に参加し生存した功を考えれば、直系血族が200人程を超えない限り再び兵役に戻る事は無いと思われる。
 だが自分はティランド連合王国の王として、死ぬまでの最後の短い時間をここで過ごす。
 別れの時は近づいていた。



 ――なるほどね……。

 会話の合間にリッツェルネールは下の様子を確認する。
 溶岩域は麓まで完全に飲み込み、溝を超え少し進んだ所で止まっている。おそらくあの位置が『領域の境界線』か。

 そしてさらに2キロを進むとかつての総司令部後上空を通過する。
 そこはかつては草が疎らな荒れ地であった。が、今では大小様々な――30メートル程から数メートルの石の杭が隙間なく、様々な角度に、まるでウニの体皮のように地面から湧きだしている。
 その先端に突き刺さっているのは人であったり軍馬であったり浮遊式輸送板であったりと様々だ。

 全滅か――これではどうしようもない。仮に自分がいたとしても同じであっただろう。
 小さく黙祷を捧げ、リッツェルネールはカルターやメリオとの他愛もない談笑に戻った。



 そこから更に10キロ程を進んだ所でようやく浮遊式輸送板は停止する。
 相和輝義はあいわよしきすでにヘトヘトになって、じりじり焼かれるがままに大の字になって寝転がっていた。

 ――もう動けねぇ……。

 そうやってぐでーっと寝転がっていると、前方から大音響の声が響き渡る。

「カルター国王陛下のご帰還とぉぉぉぉぉ~~! 人類の勝利にいぃぃぃぃぃ~! 敬 礼!」

 その号令共に、空気を震わすバシッ! という音が風のような勢いで相和義輝(あいわよしき)の体を通り過ぎていく。
 なんだ!? 立ち上がり向いた先――そこには赤紫の鎧を着た、何千何万という兵士達が整然と並んでいた。

 王様は右手を上げると――、

「ご苦労!」

 そう言って右手で左胸をバシッと叩く。

「カルター王に栄光あれ―!」
「人類の勝利に祝福をーー!」

 兵士達の歓声が響く中、カルター王はその中へと悠々と歩いていく。

 ――ああ、本当に王様だったんだな……。

 別に疑っていたわけではない。ただ、今までの距離が近すぎたのだ。
 今のこれが、彼と自分との本当の距離なのだろう。
 二度と話す事は無いであろう王様を、自分なりに右掌を左胸にあてる、彼らの敬礼で見送った。

「やあ、ちょっといいかい?」

 そう――青い鎧を着ていた青年が声をかけてくる。

「あ、ハイ……大丈夫です」

 この青い鎧を着ていた青年――確か名前はリッツェルネールだった気がするが、頭に霧のようなものがかかっていて、はっきりと記憶できない。
 温厚そうな仕草に甘いマスク。危ない処を助けてもらった恩もあるが、なぜかは解らないが少し苦手意識を持っていた。決して、亜麻色の少女との事が羨ましかったわけではない。

「僕達もここでお別れだ。自分たちの所に戻らないといけないからね。その前にちょっと聞いておきたかった事があるんだ。なぁに、そんなに緊張しなくても大した事じゃないよ」

 そう前置きすると――、

「君には色々と質問して答えてもらったけど――なぜかな、君はここが何処なのか? と自分はこれからどうなるのか? を聞かなかったね。どうしてだい?」

 言われて少しドキリとする質問を投げかけてきた。
 ここが何処かを気にしなかったのは、本当にどうでも良い事だったからだ。
 これからどうなるのかを聞かなかったのもまた、同じ理由であった。

 元々相和義輝あいわよしきは環境の変化に動じない。たとえ沈む船の中にいても、いつもと同じ思考、同じ動きが出来る。もし彼の他者より優れた部分を一つだけ挙げろと言われれば、この人並外れた平常心になるだろう。

 だがそれでも、自分でもおかしいとは思っている。そのどうでも良さは、本当に自分の考えなのか?
 ここが夢や幻ではなく現実だと十分に理解している。だが、どこか心にしっかりとした落ち着きどころがない。まるで遠くから自分を眺めているような、そして心はフワフワと漂っているような、そんな奇妙な感覚をずっと感じている。

 だがそれをどう伝えたらいいのか。また、伝えていいものだろうか。
 悩んだ末――

「なんか混乱しちゃってて、考え付かなかったです」

 ――嘘をついた。

「嘘です」

 同時に、背後で女性の冷たい声が響いた。
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