この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 大火 】

魔王というシステム 後編

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「新しい魔王を召喚しないのか?」

 俺が死んでも新しい魔王を召喚すればいいだけだ。今までもそうしてきたのではないだろうか?

「今は不可能かな。召喚するためには、今の魔王が魔王の魔力ときちんと接続していないと駄目だよ。接続自体は千年くらいで完了すると思うけど」

「千年間は絶対に死んじゃいけないのか……いや、その先もまだ死ぬ予定はないけどな。それで管理するシステムってのは?」

「魔王の魔力は貴方自身デス。慣れてくれば、コノ星のありとあらゆる領域や生き物に対して、権限を行使デキマス。権限とは貴方が考えている移動の許可等デスネ。 同時に人類に対する嫌がらせでもありマスネ」

 また妙に不穏な単語が出てきたな。魔王と人類の確執はいったい何時から続いているのやら。

「詳しく頼む」

「領域は、世界を覆う魔王の魔力が循環する事で環境を保っているかな。でも解除しちゃうと循環は無くなるよ。今は太陽を隠しているから、領域以外の環境は良くならないね」

「マア、透明にする事も出来るのですケドネ」

 それは確かに大変だ。陽の光が少ないから、領域を解除された土地はあんなに荒れ地になっているわけか。
 それに透明に出来るって話は朗報だ。人類に対して、これ以上ない交渉材料になる。
 だがそれでは足りない……こちらにとってだ。

 環境が良くなれば、土地面積当たりの食料も増える。暫くは、戦争をするより安定した生活を望むだろう。だけど結局いつかは、人口と食料生産が釣り合ってしまう。そうなれば、また新しい土地を求めて攻めて来る……堂々巡りだ。

 攻めて来たら再び太陽を隠すぞーと言っても、人類は魔王を倒せば雲が消えると知っている。次は今まで以上に必死になるだろう。
 最終的に戦う状態に逆戻りなら、むしろ相手を増やした分こちらが大幅に不利になってしまうか。

 しかし、これだけのシステムの構築。思いついてポンと出来たわけじゃないだろう。
 世界には魔人しかいなかった時代もあるという。異世界からの生き物召喚も、それに至る道のりは相当大変だったはずだ。
 なのに今、その大切な生き物、それらが住む領域、そういったものが人間の手によって殺され、破壊されている。

 俺はこのホテルに来て早々、晩餐会で殺す覚悟をした。いや、改めて覚悟しなおしたと言って良いだろう。
 それは食べるために生き物を殺すってだけじゃない。この世界で本質的に生きていくために、人間と戦って殺すことも含まれる。
 だが魔人は? そもそも先代魔王は何をしていたんだ?

「どうして、ここまで放っておいたんだ?」

 魔王の意志が無ければ過度に干渉しない――それは言われている。だが破壊され過ぎてはいないか? 魔人にもよるだろうが、人間を殺す事にそれ程の躊躇ためらいがあるとは思わない。現にゲルニッヒは病気の元を蔓延させ、数百万人を殺しているではないか。

「ルリアも、それにレトゥーナ、オゼット。お前達は人間をどう思っているんだ?」

「わたくし達にとって人間はまぁ、食料と言いましょうか……」

「同じくですね」
「美味しいよね」

 ……こいつらに聞いた俺が馬鹿だった。

「エヴィア、ゲルニッヒ。魔人はどうなんだ? 過度に干渉しなくても、壁の内側くらいは魔人の力で守れたんじゃないか?」

「エヴィアは分からないかな。興味が無かったよ。人は生きたいように生きれば良いって誰かが言ってたよ」

 エヴィアは全く興味が無いというふうだ。魔人は興味が無い事はとことん興味ないからな。これが個性なのだろう。だがゲルニッヒは……。

「先代魔王の考えに関しては分かりマセン。私の中で、未だに答えが出ない問いでアリマス。ソシテ、このゲルニッヒという生き方には、人間を知る事が不可欠デス。反応を見るための刺激はシマスガ、何処かを守る……ソノような目的を持っての干渉は致しマセン、タダどのような思考が、ドノような行動を生み、何を残スノカ、ソレをカンサツ……ソウ、観察するだけデス」

 やはり基本的に放任なんだな……。
 しかし今後の事を考えると困ったものだ。壁ではないが、いっそ人間が易々と侵入できない様な厳しい領域で人類世界を囲ってしまう事も考えるべきか……そうだ!

「魔族領で解除された領域、あれを元に戻したかったんだ。どうすればいい?」

 ゲルニッヒの大豆の頭がくるくると回り、エヴィアは沈黙する。エヴィアのこの沈黙は思案している時の様子だ。我ながら、大分空気を読めるようになってきたと思う。
 しかしそこまで難しい事案か……。

「イエ、概ね3段階ありマスガ、最初はさほど難しくはありマセン。エヴィアなら可能デス」

「エヴィアが!?」

 それは意外な事だ。そんな雰囲気は……いや、知らないことを感じ取れるわけが無いのだが、それにしたって一言も言われたことが無い。

「エヴィアは領域の復元魔法を覚えているかな。でも、その為には魔王の魔力を大量に使うよ。少し残っている領域を元に戻すことはあまり大変じゃないけど、完全に解除された土地を一から新しく作るのは……」

 珍しくエヴィアが口ごもる。だが大丈夫だ、全部聞く覚悟は整っている。

「魔王の一部を使うよ。本当に本当の意味で、魔王の一部を使っちゃうよ」

「今一つ意味が分からないので、噛み砕いて教えてくれ」

「一度貴方の体に入った魔力を使うという事は、吸った息を吐くようなモノ。ソレに何の支障もありません。デスガ直接魔人が使うという事は、貴方の一部、ソレが何処かを選ばず使うという事デス」

「俺の記憶や精神が削れるって事か!?」

「そうなっちゃうかな。だから、あまり直接には使いたくはないよ」

 成る程ね……2段階目は結構勇気がいるな。
 ぼんやりと上を見上げると、死霊レイスのルリアが円を描く様に手を動かしている。あれは回せ……巻け……ああ、さっさと話しを終わらせろって事か。

 ここはルリアのホテルだしな。あまりサキュバスには長居して欲しくないんだろう。

「だいぶ話が脱線してしまったな、すまない。レトゥーナ、オゼット、他に何かあるか?」

「魔王様はお尻を攻めると、とても良い声を出すのですわ」
「他にも、縛られたり焦らされたりとかも有効だったわよ」

「お前ら俺にどんなプレイをしたんだよ!」

 サキュバス二人には、引き続き情報を探ってもらう事にした。次の魔力の支払いでは、絶対に意識を保っていよう。

 それと領域の3段階目、難しい方ってのは最初のハードルをクリアする決意が出来てからで良いだろうな。
 どのくらい持っていかれるのか分からないが、記憶や心か……欠片たりとも無くしたくはないのも事実だ。

「だいぶ遠回りになってしまったが、ゲルニッヒは他にも何か話がありそうだったよな」

「アア、ソウでした。ゼビア王国他数ヵ国が、ハルタール帝国に攻め込んだソウデス」
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