139 / 425
【 大火 】
ワイバーン 後編
しおりを挟む
ぎゅうぎゅうと群がって来るのはいいが、押しつぶされて骨がメキメキと悲鳴を上げる。
しかも熱い。これで悪気があれば魔人がすぐさま始末するだろうが、こいつらは懐いているだけだ。
俺の世界でも翼竜は人が騎乗した姿で描かれることが多いが、このわんこのような性格は異世界共通なのだろうか。
「すまないがお土産は無いんだ。今回も魔王魔力拡散機を使わせてくれ」
「いいよー、好きに使ってって」
「私らいらないしねー」
と言って離れていくと、次の灼熱の翼竜の群れがやってきて同じように挨拶する。魔王や魔人が珍しのだろうが、好奇心旺盛過ぎるのも考え物だ。
ようやく着いた目的の場所は灼熱の翼竜の巣の一角。
山の斜面に沿って斜めに抉り取った様な場所で、そこには他と同じ形状の柱が、半ばめり込んで埋まっていた。
床には大量の卵とその殻が散乱し、そして親よりもさらに好奇心旺盛な大量のミニ灼熱の翼竜。
孵っていない卵は無精卵ではなく、種族数が少なくなると孵化するそうだ。
ちゃんと本能で調節されている姿は素晴らしいと思う。人間もこうならどれほど楽か。
――だが、ここが一番厄介だ……。
灼熱の翼竜の子供達――と言っても俺よりもずっとでかいのだが――にもみくちゃにされがらも、何とか魔力を送って任務完了。ようやく一つ目が成功だ。
終わる頃には、汗だくに擦り傷だらけで満身創痍。用事が済んだら、さっさと退散するに限る。今回はゲルニッヒに付いてきてもらったので、簡単に治療が出来るのはありがたい。
「さて、もう一つの目的を果たす前に、さっさとここから逃げよう」
追いかけてくる子供達は、幸い巣の外で待ち構えていた親たちに容赦なく戻された。
子供とはいえ飛べるからな。親が居なかったら、領域の外まで逃げなければいけない処だ。
そしてこれがもう一つの目的。
「灼熱の翼竜達よ、すまないが練習に付き合ってくれ」
「いいよー、暇だし」
「久々に外に出ていいの? 出る出る!」
各領域は基本的に、その中だけで完結した世界だ。そして、ここでは彼らが食物連鎖の頂点に君臨している。
その最強生物が迂闊に外に出た場合、当然他の領域に影響を及ぼすだろう。下手をすると、亜人とかを餌にしかねない。
しかも飛べる上に、案外環境に左右されないタフさもある。正直許可したが最後、どこまで飛んでいくかが不安でもあった。
だが人間が来た時に慌ててやると、前回のような大失敗もあり得るのだ。だからこうして、シャルネーゼの探索も兼ねて実験に来たわけだ。
「ええと、先ず個体を一人選べばいいんだな?」
「ソウです。ソウして許可を出せば、ソノ種族全てが領域を自由に行き来デキマス」
わいわい集まる野次馬灼熱の翼竜の中から一体を選び、頭の中で許可を出す。
(お前達は自由にしていいぞ……)
音も無ければ光もしない。何か煙のようなものが出るわけでもない。しかもこちらには何の手ごたえも変化も感じないのだからやりにくい。
「どうだ? 自分では分かるか?」
「分かるー、分かるよー」
「おお―久々の自由だ。んじゃ行ってきまーす」
早速飛び去ろうとする灼熱の翼竜。いや待て待て!
「すまないがもう少し付き合ってくれ。今度は禁止の方だ」
「ええー!」
「やだ!」
不満たらたらで大騒ぎを始めるが、目的はあくまでも実験と練習だ。
今まで不許可で、しかも話が通じて、他の地域にも移動できる灼熱の翼竜だからこそ頼める事なので、ここは素直に従ってもらいたい。
「禁止も同じだったな……」
――お前たちは移動禁止だ……。
やはり何の反応も無いが、灼熱の翼竜達の様子からすると成功したのだろう
ぶんむくれて尻尾で地面をべしべし叩いたり、あーだこーだと文句を言いまくっている。
「大丈夫だから安心してくれ。だからもう少しだけ付き合ってくれよ」
ちゃんと最後に許可を出すことは決めてある。一度許可を出しておきながら、即禁止なんかしたら不満だけが溜まってしまうからだ。今後の友好関係を考えればそれは出来ない。
こちらの意図を感じ取り、スースイリアがパクっと俺の上半身を咥える。
これでもう灼熱の翼竜は見えない。
――魔王の魔力……この世界を管理するシステム……。
意識を広く、遠くまで流すように心の中で膨らめる。
まだ慣れていないのかはっきりとは感じない。だが周囲にある大きな命、それが灼熱の翼竜である事がなんとなくわかる。他にも様々な小さな命を感じるが、先ずは約束通りに――
(灼熱の翼竜を許可とする……)
「……どうだ?」
終わったのを確認すると、スースィリアがすぽっと外れる。
これで喜んで貰えればいいが……そう考えていたのだが、もはや周囲には一体もいない。
再び禁止されることを嫌がったのか、灼熱の翼竜達は遥か彼方へと飛び去ってしまっていたのだ。あいつら……。
しかし実際やってみると簡単だ。
前回失敗したのはシステムの不完全さもあるが、おそらく亜人3種類を全部まとめて一括で行ってしまった為だ。それで他にも影響が出たのだろう。
「ルリア―」
「ハイハイ、魔王様。何か御用ですの? 今ユニカさんの料理を見て色々覚えておりましたのに」
ホテルに置いてきたはずだが、呼べばちゃんと出てくる死霊メイド。
魔力で繋がっているかららしいが、便利な事はありがたい。首無し騎士も繋がっているはずなのだが、これは種族的なものか……。
「忙しいところ悪いが、死霊達を使って他の領域を見て来てくれ。また軍隊蟻みたくなっていたら今度は止めないといけないからな」
しかも熱い。これで悪気があれば魔人がすぐさま始末するだろうが、こいつらは懐いているだけだ。
俺の世界でも翼竜は人が騎乗した姿で描かれることが多いが、このわんこのような性格は異世界共通なのだろうか。
「すまないがお土産は無いんだ。今回も魔王魔力拡散機を使わせてくれ」
「いいよー、好きに使ってって」
「私らいらないしねー」
と言って離れていくと、次の灼熱の翼竜の群れがやってきて同じように挨拶する。魔王や魔人が珍しのだろうが、好奇心旺盛過ぎるのも考え物だ。
ようやく着いた目的の場所は灼熱の翼竜の巣の一角。
山の斜面に沿って斜めに抉り取った様な場所で、そこには他と同じ形状の柱が、半ばめり込んで埋まっていた。
床には大量の卵とその殻が散乱し、そして親よりもさらに好奇心旺盛な大量のミニ灼熱の翼竜。
孵っていない卵は無精卵ではなく、種族数が少なくなると孵化するそうだ。
ちゃんと本能で調節されている姿は素晴らしいと思う。人間もこうならどれほど楽か。
――だが、ここが一番厄介だ……。
灼熱の翼竜の子供達――と言っても俺よりもずっとでかいのだが――にもみくちゃにされがらも、何とか魔力を送って任務完了。ようやく一つ目が成功だ。
終わる頃には、汗だくに擦り傷だらけで満身創痍。用事が済んだら、さっさと退散するに限る。今回はゲルニッヒに付いてきてもらったので、簡単に治療が出来るのはありがたい。
「さて、もう一つの目的を果たす前に、さっさとここから逃げよう」
追いかけてくる子供達は、幸い巣の外で待ち構えていた親たちに容赦なく戻された。
子供とはいえ飛べるからな。親が居なかったら、領域の外まで逃げなければいけない処だ。
そしてこれがもう一つの目的。
「灼熱の翼竜達よ、すまないが練習に付き合ってくれ」
「いいよー、暇だし」
「久々に外に出ていいの? 出る出る!」
各領域は基本的に、その中だけで完結した世界だ。そして、ここでは彼らが食物連鎖の頂点に君臨している。
その最強生物が迂闊に外に出た場合、当然他の領域に影響を及ぼすだろう。下手をすると、亜人とかを餌にしかねない。
しかも飛べる上に、案外環境に左右されないタフさもある。正直許可したが最後、どこまで飛んでいくかが不安でもあった。
だが人間が来た時に慌ててやると、前回のような大失敗もあり得るのだ。だからこうして、シャルネーゼの探索も兼ねて実験に来たわけだ。
「ええと、先ず個体を一人選べばいいんだな?」
「ソウです。ソウして許可を出せば、ソノ種族全てが領域を自由に行き来デキマス」
わいわい集まる野次馬灼熱の翼竜の中から一体を選び、頭の中で許可を出す。
(お前達は自由にしていいぞ……)
音も無ければ光もしない。何か煙のようなものが出るわけでもない。しかもこちらには何の手ごたえも変化も感じないのだからやりにくい。
「どうだ? 自分では分かるか?」
「分かるー、分かるよー」
「おお―久々の自由だ。んじゃ行ってきまーす」
早速飛び去ろうとする灼熱の翼竜。いや待て待て!
「すまないがもう少し付き合ってくれ。今度は禁止の方だ」
「ええー!」
「やだ!」
不満たらたらで大騒ぎを始めるが、目的はあくまでも実験と練習だ。
今まで不許可で、しかも話が通じて、他の地域にも移動できる灼熱の翼竜だからこそ頼める事なので、ここは素直に従ってもらいたい。
「禁止も同じだったな……」
――お前たちは移動禁止だ……。
やはり何の反応も無いが、灼熱の翼竜達の様子からすると成功したのだろう
ぶんむくれて尻尾で地面をべしべし叩いたり、あーだこーだと文句を言いまくっている。
「大丈夫だから安心してくれ。だからもう少しだけ付き合ってくれよ」
ちゃんと最後に許可を出すことは決めてある。一度許可を出しておきながら、即禁止なんかしたら不満だけが溜まってしまうからだ。今後の友好関係を考えればそれは出来ない。
こちらの意図を感じ取り、スースイリアがパクっと俺の上半身を咥える。
これでもう灼熱の翼竜は見えない。
――魔王の魔力……この世界を管理するシステム……。
意識を広く、遠くまで流すように心の中で膨らめる。
まだ慣れていないのかはっきりとは感じない。だが周囲にある大きな命、それが灼熱の翼竜である事がなんとなくわかる。他にも様々な小さな命を感じるが、先ずは約束通りに――
(灼熱の翼竜を許可とする……)
「……どうだ?」
終わったのを確認すると、スースィリアがすぽっと外れる。
これで喜んで貰えればいいが……そう考えていたのだが、もはや周囲には一体もいない。
再び禁止されることを嫌がったのか、灼熱の翼竜達は遥か彼方へと飛び去ってしまっていたのだ。あいつら……。
しかし実際やってみると簡単だ。
前回失敗したのはシステムの不完全さもあるが、おそらく亜人3種類を全部まとめて一括で行ってしまった為だ。それで他にも影響が出たのだろう。
「ルリア―」
「ハイハイ、魔王様。何か御用ですの? 今ユニカさんの料理を見て色々覚えておりましたのに」
ホテルに置いてきたはずだが、呼べばちゃんと出てくる死霊メイド。
魔力で繋がっているかららしいが、便利な事はありがたい。首無し騎士も繋がっているはずなのだが、これは種族的なものか……。
「忙しいところ悪いが、死霊達を使って他の領域を見て来てくれ。また軍隊蟻みたくなっていたら今度は止めないといけないからな」
3
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる