この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

文字の大きさ
385 / 425
【 滅び 】

光と共に 後編

しおりを挟む
 一瞬の閃光、そして叩かれるような強い衝撃と音。何があったのか考えるまでもない。だがどうする事も出来ない。
 激しく渦巻く焼けた大気に翻弄され、ボンボイルの表皮が燃える。
 それ程の威力、今までの物よりも確実に上だ。新型という奴だな。
 そいつをここで失わせたことは大きい。その為にここまで来たと言っても過言ではないのだ。
 しかし安堵など出来ない。想定していたより大きな威力。それがもたらすものは、当然想定外の災害だ。

 ようやく収まった先に見えたのは、円形に焼けた真っ赤な大地と高々と登るキノコ雲であった。
 辺りはもう暗くなっている。その暗闇の中に輝く赤い光は、まるで地獄の窯の様にも見える。
 大地はマグマと化し、赤く光るキノコ雲から発する雷鳴が更なる不安をいやがおうにも煽る。

「エヴィア! ヨーツケールMK-II8号改!」

 揺り籠が使われる可能性は理解していた。
 当然、更なる改良型がある事も想像していなかったわけではない。
 そんなものを開発している時間など与えはしなかったが、そもそも完成品の後に何の研究もしていないなど考えてなどいない。
 それらを運ぶのが彼らの任務なのだろうが、おそらく追い詰められたら使ってくる。死なば諸共という奴だ。
 しかし使うには制限がある。そう、高度だ。あれは十分な衝撃を与えない限り起爆しない。だらか空から落とすのだ。

 ならばそれを阻止すればいい。
 細心の注意を払ってここまで誘導し、一斉に浄化の光レイを使って攻撃する。
 もし上空に留まれば、そのまま浄化の光レイで撃ち落とす。そして降下するのなら、揺り籠の脅威は無くなる。
 そして彼等は想定通り、揺り籠を落とすのではなく低空へと逃れた。
 そこまでは正しい。全て作戦通りだ。
 だが肝心なところを失敗していた。十分な高度が無ければ揺り籠は使えない……そう思い込んでしまっていた。

「とにかく探さないと。エヴィアは何処だ!? 無事なのか!? ヨーツケールは?」

「――おう……きこ――魔王!」

 今は忙しい。そう思うが、突然通信機から聞こえてきた声も無視できない。この声は――ユニカだ。

「どうした?」

「アン・ラ・サムが変なのを見かけたって。場所は魔族領よ。壁の北側」

「浮遊城ボルトニーカじゃないのか? それとも地上部隊――」

 いや、状況的になぜ地上部隊が魔属領に入る?
 確かに手薄ではあるが、それは相対的にという話だ。魔族領にも魔族――それも魔人がちゃんといる。実際、見つけてじゃないか。
 いやでもそれも変か。普通の地上部隊であれば、変なものというだろうか?
 今はそんなあやふやなものを気にしている場合では無いかもしれない。しかしこれは聞かなければいけない。そう本能が告げる。

「具体的にはどんなものだ?」

「ええと、300メートル近くて、船に近い形で、それで上には揺り籠が満載してあったって」

「300メートル級? それは浮遊城じゃないのか?」

 端折られていたが――いや、端折ったって事は、間違いなくこの世界の常識的な移動手段。それは疑いようもなく飛行機関だろう。それにそれだけの巨体……。

「それは浮遊城ではないずい」

 まるで察したように通信機に割り込んできた声。それはウラーザムザザだ。どうやら通信範囲に追い付いて来たらしい。

「ウラーザムザザ、詳しい事を教えてくれ」

「浮遊城とは仕組みも素材もちがうずる。あれに比べると、相当原始的ずな。浄化の光レイも搭載していないし、出来ないずら」

「いや、そういった事より……」

「人間は陸上戦艦と呼んでいるずぬ。重飛甲母艦よりは遅いずりが、浮遊式輸送板と同じくらいの速度は出せるずは」

「現在の位置は?」

「ケイ・ラグルの門を出て、まだそんなに移動してないって。目的地は多分だけど北の方かなって……」

 ――やられた。
 何処まで計算していたのだろうか。その門の周辺にいた魔人達は、全員浮遊城について行ってしまった。
 攻撃する魔人は勿論だが、他も物見遊山だ。あんな珍しいものに、興味を持たないはずがない。
 そして多くの魔族も――特に知恵のあるようなやつも全部一緒だ。

 他の壁の近い魔人や魔族は、全部南方へ移動済み。こちらはムーオスと、呼応して動いたティランド連合王国の抑えに回ったのだ。
 今あの周辺にいる魔族は、魔族とは名ばかりの肉食獣や毒虫くらいしかいない。
 そんな状況で、300メートル級の浮遊物体など止めようがない。

 諦めるのか……? いや、それはあり得ない。
 しかしここまで来てしまった。今から引き返して、果たして間に合うのか?
 エヴィアも探さなければいけない。ヨーツケールMk-II8号改の安否も気にかかる。
 一つの巨大国家を滅ぼし、億単位の人間を殺し、その結果がこれか?

 いや、まだ止まれない。止まってはいけない。
 魔王の上空、ほぼ真上にあった極彩色の雲に鮮やかな色が指す。それはほんの一角だが、暗闇の中に輝くそれはガス雲の向こうに透ける月の様。
 そこから魔力は渦を成し、真っ直ぐに魔王の元へと下り始めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...