アークティカの商人(AP版)

半道海豚

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第5章 解放編

第44話 油田

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 この世界では、蒸気機関が多用されている。鉄道は非常に少ないが、小型乗用車から大型牽引車まで、蒸気レシプロ機関で駆動する。
 船舶も商船から軍艦まで、蒸気レシプロ機関だ。軍艦の場合、艦橋直後にマストがあり、帆走できるようになっている。これは、機関が損傷しても行動不能にならないための、補助的動力だ。
 意外かもしれないが、小型蒸気乗用車は道路状態さえよければ時速100キロ以上出せる。
 もっとも、高速を出せる道路は極めて少ない。この世界の道路事情は劣悪だ。
 蒸気牽引車のパワーは強く、標準的大型なら積載量2トンのトレーラーを7輌も連結できる。
 蒸気タービン機関は、おそらくアークティカ以外にはない。ガソリンやディーゼルなどの内燃機関もない。
 ただ、南の国では、焼玉エンジンを使っている。石油エンジンもある。私が知らないだけで、高性能内燃機関は存在するかもしれない。
 アークティカが作ったのだから、他国ができないと断じる根拠はない。
 それと“南の国”と呼んではいるが、赤い海南岸から500キロ以上南にあ人は住んでいない。
 南に国はない。ならば、南の国はどこにあるのか?

 アークティカでは、植物由来の原料から加工精製したガソリンやディーゼルエンジンの燃料を輸入いる。輸入量は、特にガソリンの絶対量が少ない。
 ガソリン供給の問題を解決しないと、神聖マムルーク帝国の軍門に降るしかない。
 赤い海対岸のバタには未開発の油田がある。赤い海北岸にも石油が自噴している土地がある。
 アークティカ領内では、未発見だ。あるかもしれないし、ないかもしれない。
 植物由来の燃料だけでは、アークティカの必要量を賄えない。それに、燃料は輸入品。どうにかしないと貿易収支は悪化の一途となる。

 2機のヘリコプターを搭載した揚陸強襲艦ミストラルは、アレナス港の岸壁に接岸している。
 飛来したMi-8は非武装の民間機で、12人が乗っていた。うち、6人が異界人。6人は幼児で、ナドヌーの行政府関係者の子供たちとの説明だった。
 親と一緒に死なせるには哀れな年齢とのことだった。ならば、5歳以上の子供は両親と運命をともにしたということだ。
 この世界の人の生命は軽すぎる。

 異界人の内訳だが、カザフ人のパイロット、ウクライナ人の石油化学関係者が4人。5人は、この世界に一緒にやって来た。
 トルコ系の女性地質学者が1人。彼女は、1人でこの世界に迷い込み、奇跡的に生き残った。転移の1週間後に偶然、カザフ人、ウクライナ人グループと出会ったらしい。

 ここまでが、事情聴取の概略。

 地質学者ハリカによれば、バタの油田は使い切れないほどの埋蔵量だという。
 彼女は、アークティカが神聖マムルーク帝国の前身である奴隷商人と東方騎馬民に蹂躙される前、アークティカ南部沿岸で地質調査を実施している。
 彼女によれば、有望な産油候補地は2カ所。小規模な油井と精製設備ならば、時間をかけずに作れるらしい。
 ハリカはこの世界の言葉を流暢に話し、チルルはハリカから直接報告を受けている。

 私とシビルスは、バタの問題に着手していた。バタの将兵家族の居所を突き止め、逃がす算段だ。
 私はメルトを伴って、密かに赤い海西岸に渡った。

 赤い海西岸には、多くの街がある。人口も多く、よく発展している。交通は陸上よりも海上の利用が多い。航路は複雑で、大小の船舶が往来する。
 メルトは「サムール川以北のほうが安全だ」と言い、私は彼の意見に従いバタの北230キロにあるテルヘトという中堅の街を上陸地に選んだ。
 表向き、赤い海西岸における神聖マムルーク帝国やダールの影は薄いが、どこの街でも深く広く影響が及んでいる。
 国や街の上層部から末端の官憲まで、賄賂という甘い蜜で懐柔し、蜘蛛の巣に絡まる蛾のようにがんじがらめにされる。
 そして、法治は消え、賄賂と情実が支配する人治となる。法は民衆を守らなくなり、権力者が跋扈する。権力者とは、帝国やダールの傀儡だ。

 テルヘトもそんな街で、メルトによれば「殺人も金でもみ消せる」のだそうだ。「役人は上から下まで、完璧に腐っている」と。
 私とメルトは、乗り合い蒸気車で北の隣国パノリアに向かい、パノリアの小港から蒸気船に乗ってテルヘトに渡った。
 剣を帯びてはいるが、懐に拳銃を入れている。帯刀は目立つ日本刀風ではなく、ありきたりの両刃直刀にした。

 テルヘトの街に入るには、金が要る。門衛に賄賂を払わないと、危害を加えられるらしい。賄賂の支払いを拒否した貴人の女性が暴行され、この暴挙を官憲に訴えてさらに暴行されるなど、ごく普通らしい。
「盗賊の砦より法のない街」だそうだ。
 メルトは海岸を南に向かい、街の南郊に出て、南に向かう隊商を探す。
 便乗させてもらうためだ。彼は「まともな隊商は、テルヘトを迂回する」とも。

 私とメルトは、南20キロ強のサムール川北岸まで、織物業者の貨車に乗せてもらう。
 艀でサムール川を渡り、南岸でメルトは小型牽引車とトレーラーごと積荷を買い取った。荷台にはワイン樽が6。
 ワイン輸送を装って、給油と給水を繰り返して、バタを目指す。
 バタは封鎖されているが、入口までは行ける。誰何されるだろうが、「アークティカから来た」と告げてどうなるか。
 いきなり、殺したりはしないだろうが、行き当たりばったりであることは確かだ。

 190キロを11時間かけて走る。残り10キロを残して、行商人が集まる野営地でキャンプを張る。
 焚き火がもの悲しい。赤い海西岸は、日を追って荒れていく。特に人の心が……。
 キャンプでは、数組の行商人から「ワインを分けて欲しい」と頼まれたが、彼らとの接触はそれだけだった。

 メルトは耐えられなくなったのか、大ジョッキほどの陶製カップ2つにワインを注ぐ。
「どう?」
 私は酔いたくなかった。緊張しすぎているのだ。死ぬのは怖い。死にたくはない。
 それは、メルトも同じだ。その恐怖から逃れるため、彼は酔いたいのだ。
 私はワインを受け取った。
 メルトがビールのようにワインを飲む。手で、唇を拭う。
「フェイトから聞いたんだが、ミストラルに積まれていた飛行機は謎だらけなんだって?」
 メルトの疑問は、私がイファの航空隊員に話した内容と関係がある。
「ミストラルには、いろいろなものが積まれていた。積荷には3種類ある。
 飛行甲板上の10機。
 航空機格納庫の物資。
 舟艇格納庫の大発と戦車。
 この3つには関係がないと思う。
 航空機格納庫の物資だが、いろいろある。ホ5という航空機用20ミリ固定機関砲とその弾薬。ハ112-Ⅱという1500馬力の航空機用エンジン。エンジンと同じ数のプロペラ。機関砲とエンジンは新品だ。
 この2つは、どこかに輸送しようとしていたのだろう。
 海軍の九一式航空魚雷。飛行甲板の一番大きい飛行機に積むための兵器だ。飛行機から投下すると、水中を高速で進むんだ。目標に衝突すると、爆発する。
 飛行機に積む250キロ、120キロ、60キロの各種爆弾。
 魚雷や爆弾は飛行甲板の10機用だと思う。
 そのほかにも航空機の部品などがある。
 分解された飛行機が1機。主翼の形から、二式単座戦闘機“鍾馗”という名の戦闘機であることは確かだ。
 残念だが、エンジンとプロペラがない。
 もう1機、スクラップの戦闘機がある。
 ミストラルの艦首側飛行甲板に塗装で修理してあるが大きな傷がある。この戦闘機が胴体着艦して、付けた傷だろう。
 海軍の“紫電”という陸上戦闘機だ。着艦フックがないのに、ミストラルに降りたんだ。左主翼が折れ、胴体後部が曲がっている。プロペラ・ブレードも曲がったが、エンジンは使える。
 型式は主翼下に機関砲のポッドがあるから一一型甲だ。機関砲は九九式二号三型という100発をドラム弾倉から給弾するタイプだ。
 この機関銃を取り外して、艦首側に据え付けていた。機体を残していたのは、部品取りのためだろう。
 ミストラルは、どうも歴戦の船だったらしい。指揮官、船長は臨機応変な人物だったようだ。
 舟艇格納庫の舟艇と戦車は、この船の本来の任務のためだった。
 だが、途中で作戦が中止され、別の用途に使われることになった。
 それが、飛行甲板の10機の輸送だ。作戦の転換は急で、舟艇格納庫の車輌は降ろす時間がなかったか、降ろす場所がなかったんだ」
 メルトは黙って聞き、ひたすらワインを飲む。私も一口飲む。
「甲板の飛行機は3種類。
 大きい双発機は、開発番号キ109という巨大な戦闘機だ。四式重爆撃機“飛龍”という双発爆撃機を改造した戦闘機だ。機首に75ミリ高射砲を積んでいる。
 だが、甲板の機体は“飛龍”の機首だけをすげ替えただけの機体に見える。防御機関銃、燃料タンクは改造されていない。爆弾倉は改造された形跡があるが、機体は実質、爆撃機のままだ。
 開発番号キ102は、双発の戦闘機または戦闘爆撃機だ。
 キ102甲は高高度戦闘機、キ102乙は57ミリ機関砲を機首に搭載する対地攻撃機。
 甲板のキ102は37ミリ機関砲装備の甲型だが、高高度を飛行するためのターボチャージャーがエンジンに装着されていない。
 そういう試験機があったという記録はあるが、それだけじゃない。胴体下面と主翼下に爆弾架がある。
 対地攻撃機だよ。排気管はロケット効果のある単排気管に改造されている。これだけで、時速20キロから30キロは速くなる。
 キ102は二式復座戦闘機“屠龍”から発達した2人乗りの飛行機だ。
 フェイトたちは、キ109を大きいドラゴン、キ102を小さいドラゴンと呼んでいる」
 私は一気にワインを飲み干し、メルトに誘われるままカップを渡す。メルトはトレーラーの荷台まで歩き、樽の蛇口からワインを注ぐ。
 私はカップの重さを感じ微笑んだ。
「最後は単発機だが、四式戦闘機“疾風”だ。だが、正規の機体じゃない。エンジンは、高高度性能に優れた2段3速スーパーチャージャー付きで、インタークーラーと強制冷却ファンを備えたハ145。
 燃料はキャブレターではなく、インジェクションで供給される。シリンダーごとに燃料の混合比がばらつく欠点が解消されるし、強いマイナスGでも息切れしない。シリンダーではなく、マニホールドに噴射する低圧タイプだが、それでも燃料噴射には違いない。
 2000馬力を発揮する。
 武装は、機首と両翼に20ミリのホ5機関砲を4門装備している。ホ5はエリコン系と比べれば弾頭重量は軽いが、発射速度が速い。
 強力な戦闘機だ」
 メルトは、核心が知りたかった。
「帝国に勝てるか?」
 私は笑った。
「いいや、無理だ。
 帝国との戦争は、武器の優劣でどうにかなる程度の戦いじゃない。
 だが、使いようによっては、大きな戦いを避けられる可能性がある」
 メルトが2杯目を飲み干す。腰を上げ、トレーラーまでゆっくりと歩き、樽からカップにワインを注ぐ。
 私もカップを差し出し、メルトが蛇口からワインを注ぐ。
 メルトが焚き火の前に座る。
「フェイトから聞いたんだが……」
 飛行機に関する限り、メルトの情報源はフェイトしかないらしい。
「バーニーは、ダールはフォッカーよりも高性能な飛行機を作っていると……。
 だとすると、ダールと戦うことになったら……」
 同じ問いは、スコル、ジャベリン、チルルからもあった。
 バーニーの発言は、アレナス、イファ、ルカナを恐怖に包んだ。
「バーニーは、確かにダールは戦闘機を作っている、との意見を持っている。
 おそらく、それは正しい。
 バーニーはヤコブレフYak-9というソ連製戦闘機のレプリカだとの意見だが、私は違うと思う。
 バーニーによれば、アメリカ人たちは4機の戦闘機でこの世界にやって来たそうだ。
 ヤコブレフYak-9、ラーヴォチュキンLa-9、グラマンF8Fベアキャット、フォッケウルフFw190。
 Yak-9は液冷エンジン機で、冷却にはラジエーターが必要だ。エンジンの製造も手間がかかる。
 我々がフォッカーD.XXIのリエンジニアリングで、一番苦労したのはオイルクーラーの開発だった。
 連中も同じ苦労をするはずだ。
 ベアキャットは18気筒エンジンで、作るには敷居が高い。
 現実的なのは、シュヴェツォーフASh-82FN空冷星型14気筒だろう。フォッケウルフのオリジナルは、空冷星型14気筒のBMW801を搭載していたが、レプリカはシュヴェツォーフASh-82FNを使っていたようだ。
 このエンジンのほうが、直径が小さく、パワーがある。
 シュヴェツォーフの製造を試みながら、ラーヴォチュキンかフォッケウルフの機体を製造しようとするんじゃないか。
 シュヴェツォーではベアキャットには非力だし……」
 メルトが興味なさそうに尋ねる。
「どっちかな?」
 私には確信があった。
「設計年次が古いフォッケウルフ。
 作りやすいからね。
 Fw190にASh-82FNの組み合わせは、厄介だ」
 メルトは視点を変えた。
「アークティカはどうしたらいい?」
 私は現実を見ていた。
「どんな機種であっても、飛行機が作れるとしたも少数だ。
 10機とか20機、最大でも100機。
 そのレベルなら、アークティカでも何とかなる。
 WACOを作り、フォッカーを作った。
 我々のほうが経験を積んでいる。
 パイロットの養成も進んでいる。
 Fw190と戦える戦闘機を作ればいいんだ」
 メルトは不安そうな目をする。
「その時間はある?」
 私はメルトの目を見る。
「明日、その時間を作りに行く」

 バタは赤い海に突き出た半島にある。南は白い海とつながる海峡。半島の付け根には南北に細長い湖がある。東側湖岸は湿地。バタへの通路は、半島北側の海岸と湖北端とに挟まれた狭い地峡だけ。
 バタは、半島付け根の南側、海峡に面している。
 半島の先端北側に、ムスカイという街があった。この街はバタのベッドタウンのような位置付けで、完全な住宅街だった。商店はあるが、工場や軍事施設はない。
 そのため、破壊されはしなかった。
 この街に、チュレンとバルカナの守備隊の家族が住まわされている。塀はないが、収容所だ。街の外には出られないし、彼らに自由はない。
 脱出は可能だろうが、逃げてどこへ行く。小船を盗んでも、対岸には渡れない。最短でも200キロもある。

 チュレンとバルカナの守備隊には、共通点がない。チュレンの守備隊は西方から連れてこられた。バルカナの守備隊は北西から。
 どちらも家族を人質にされ、身動きできない。チュレンの守備隊は2年前から、バルカナの守備隊は1年半前にやって来た。
 どちらもアークティカとの縁はなく、故郷から強制的に家族同伴で移動させられている。ただし、家族とは絶対に住まわせない。
 バタの守備隊も同じ。彼らの家族も別な場所に捕らわれている。
 バタは要衝であることから、精鋭とされる北方の兵が連れてこられた。チュレン、バルカナとは異なり、バタ守備隊将兵の家族は居所を知らせられず、帝国兵が監視しているとされる。

 バタへの道は無人だ。バタの守備隊には、帝国の輸送船が物資を補給しており、彼らが外来の商人から物品を買うことはない。
 商人がバタを素通りすることを知っており、私たちが近付いた場合、どういう対応をするのか予測できない。

 半島への入口には造作のよくない木製の柵があり、ゲートも木製だった。
 門衛が4人おり、ゲートの遙か手前で停止させられた。銃口を下げているが、いつでも発射できるように両手に持っている。
 私とメルトは、蒸気車のオープンの運転台に座ったままだ。
「物売りに用はない。
 立ち去れ」
 メルトは本題を伝える。
「アークティカから来た。
 責任者に会いたい」
 門衛は無言。若い門衛を呼び、半島内に走らせた。若い門衛は柵内に入ると、馬に乗った。馬を移動手段に使っているようだ。

 ゲートの外で1時間30分待たされる。ゲートからバタの中心まで、30キロほどある。
 南から銃を持った兵士6が馬で現れた。
 古めかしいAK-47を持つ兵が「ついてこい」と促す。
 異界物であることは確かだが、所有者が異界人である可能性もある。彼以外は、単発ライフルのようだが、前装式か後装式かははっきりしない。
 バーニーによれば、異界人がこの世界の銃を改造して後装式にしているとの噂がある。この世界では、パーカッション式、フリントロック式、マッチロック式(火縄銃)が混在している。
 銃身も滑腔銃身もあればライフルもある。銃そのものが異界人由来である可能性が高い。小銃の口径も50口径(12.7ミリ)から22口径(5.56ミリ)まで多種多様。
 見かけの新旧で、性能を判断できない。見かけはマッチロックなのに、銃身にライフル、後装に改装されていることもある。

 私とメルトは、破壊された劇場に案内された。
 壁は残っており、屋根は木材と帆布で補修してある。
 舞台の縁に片膝を抱えて座っているジャケット風の革鎧を着た男が、微笑んでいる。
 扇形で階段状になっている劇場の客席の最上段の入口から入り、私とメルトとの前後にバタの守備兵が付き、ゆっくりと舞台に向かって降りていく。
 劇場内は照明はないが以外と明るい。天井の半分が帆布で、太陽光を通すからだ。

 齢60を過ぎているであろう、白髪で短い白髭の男は微笑んでいた。
「アークティカから来たとか?」
 メルトを制して、私が答える。
「アークティカ、イファの住人でシュン……」
 男は、舞台から降りる。動きは若い。
「大物のお出ましだ。
 これは驚いた。
 あなたの顔を知っているよ」
 私のほうが驚く。
「会ったことがあるか?」
 男は声を上げて笑う。
「いいや、部下が何度もアークティカに渡っている。
 その部下は、アークティカの要人の似顔絵を描いた。
 ほぼ全員の似顔絵がある」
 私は若干不安になる。
「その似顔絵は、帝国に渡っているのか?」
 男は下を向く。
「命じられたことはするが、それ以外は何もしない」
 私は驚く。
「ほう、面従腹背、か?」
 男が顔を上げる。
「いいや、命令には忠実だ。家族の生命がかかっているからね。
 だが、命令外は何もしない。家族の生命がかかっているからね。皇帝の機嫌を損ねたらたいへんだ」
 私は話題を変える。
「ここに来る途中、AK(アーカー)を見た。
 ベルトの銃はトカレフだろう。
 異界人か?」
 男は、私を真っ直ぐ見ている。
「イワンだ。
 ナホトカから来た」
 私は大きく息を吐いた。
「偽名か?
 だが、極東から、は信じよう」
 イワンと名乗る男は、手を差し出した。私は握手に応じた。
 イワンが天井を見る。
「意外と明るいだろう。
 結構快適なんだ。この劇場は……。
 この世界に来て、20年になる。
 一番若かった水兵も40を超えた」
 私は、あまり興味のない質問をした。イワンとは、これ以外に共通の話題がないからだ。
「どうやって来た?」
 イワンは、同じ質問に何度か答えていた。
 直近では、ダールのアメリカ人から問われていた。
「ナホトカからウラジオストクへ潜水艦で向かっていた」
 私は潜水艦に興味を持った。
「いつ頃?」
 イワンは躊躇わずに答える。
「1989年、退役した641型(フォックストロット級)を解体するために移動させていたんだ。
 たった数十キロの移動だったが、ここに来てしまった。
 あなたは、どこから?」
 私も秘密にする理由はない。
「東京から」
 イワンが驚いた様子を見せる。
「トーキョーの緯度は?」
 私も意外な質問に驚く。
「北緯35度付近じゃないのかな?」
 イワンが頷く。
「北緯35度よりも南から、この世界にやって来た異界人はいない。
 私が知る限りは……」
 この情報は初めてだ。
「そうなのか?」
 イワンは自信ありげだった。
「あなたに会うまで、ロサンゼルスが最南だった。北緯35度付近だ。
 最南にトーキョーが加わった」
 私は本来の興味に話題を変える。
「潜水艦は?」
 イワンは首を振った。
「641型は何年も前に退役していて、潜水どころか、水上航行も怪しい状態だった。
 それでも3基あるディーゼルのうち、1基をどうにか修理して、3ノットでウラジオストクに向かっていた。
 で、この世界の山の斜面に出た。
 まったくの内陸だった。
 艦は、左に横転した。
 32人が乗っていたが、5人が軽傷を負っただけですんだ。
 低速だったからね……。
 それからはたいへんだったよ。
 この世界で生きていく算段をしなくてはならなかったから……。
 そっちも同じだろ?」
 私もこの世界にやって来た当初のことを思い出していた。
 しかし、私よりは条件がよかったはずだ。1人ではなかったし、乗っていたのは船、しかも軍艦だ。
「たいへんだったのはよくわかるし、判断を誤れば生きてはいけなかった。
 だが、私よりは条件がよかったと思う。戦闘艦に乗っていたのだから、武器も積んでいただろうし……」
 イワンは話題を変えた。
「朝飯は?」
 私が「食べた」と答えると、イワンは「そうか」と答え、話題を元に戻す。
「退役直後の船ではなかった。浮いているだけ、浮いているのが不思議なくらいだった。
 極東のソ連海軍は混乱の極みにあった。予算はなく、我々の給与は遅れていた。
 船には何もなかった。
 食料、水、武器、一切がなかった」
 私は絶句した。一切の物資を持たない32人が生き延びられる世界じゃない。
 私の表情が変わったことを見て取った、イワンは私に同意するように頷く。
「横倒しになった潜水艦内を、何かないか探し回った。
 海軍の混乱は、我々に味方した。
 自動小銃が2挺と、拳銃が5挺残っていた。弾も十分ではないが、あった。
 持てるものだけを持って、全員で南に向かったんだ。
 最初に出会った人は、ライ麦を育てている農民だった。
 彼の曾祖父は異界人だったそうだ。
 彼に助けてもらった。
 幸運だった」

 若者が劇場に入ってきた。
「父上!」
 イワンが手招きし、若者を舞台前に呼ぶ。
「息子だ。
 18になる。
 16の娘は母親と一緒だ」
 私は本題に入るべきだと考えた。
「妻子の居所を知っているか?」
 イワンが首を振る。
「いいや。
 指定された場所で、30分ほど会うだけだ。
 収容されている場所は街で、赤い海からあまり離れていないこと以外、わかってはいない。妻たちは、目隠しの袋を頭から被らされて連れてこられる」
 私は息を吐いた。
「正確な場所は不明だが、ラシュットの北、ダレアンザという街区の、川と水路に囲まれた一画のどこかだ。
 詳細な場所を、調べている」
 若者が父親に尋ねる。
「この方は?」
 イワンは答えを逡巡した。
「アークティカの客だ」
 若者が腰の剣を抜きかけ、父親が息子の肩を押さえる。
「敵ではない。
 味方かどうかは、わからぬが……」
 若者の動揺が空気を振動させて伝わる。
 私は、神聖マムルーク帝国の治世に同化し始めている若者を見て、この先の説明を躊躇った。しかし、話さないわけにはいかない。
 舞台の近くには、何人かの男が集まっている。出で立ちは、ジャケット風の革鎧とマント。マントは防寒用だ。野外では寝具にもなる。
「チュレンとバルカナの囚われ人を、家族の元に返して欲しい。
 その交換条件として、あなたたちの家族を収容所から連れ出す。
 そして、バタに連れてくる」

「それはダメだ!」
 60近い小柄な男が、私の提案を否定する。
 私は、男を見る。異界人の面影が残るが、すでにこの世界の住民となり、顔の造作が変わっている。
 イワンが紹介する。
「機関長のヴァシリーだ」
 ヴァシリーは、表情の豊かな男だ。
「私のかみさんは、20も年下なんだ。娘みたいにかわいいが、しっかり者だ。
 娘は、18と16。帝国兵に何をされるのかと思うと、気が狂いそうになる。
 ここにいるのは、本来は農民や鍛冶屋や商人だ。兵士じゃない。
 たいした武器もない。
 ここに妻子を連れてこられても、守れない。安全な土地に連れていって欲しい。
 我らの妻子を救い出し、安全な土地まで運んでくれたら、どんな要求にも応じる。
 我らの艦長イワンも同意するはずだ」
 ヴァシリーの考えは当然だと思う。ダールは明確にバタを狙っている。正確には、バタの石油を……。
 私はヴァシリーに尋ねてみた。
「あなたはダールの指導部と会ったか?」
 ヴァシリーは私の不安を見抜いた。
「会ったとも。
 ロシア人とアメリカ人だ。
 異界人は、異界人同士でも無条件にシンパシーを感じるわけじゃない。
 同じ国から、であっても。
 むしろ、同じ時代だ。
 19世紀初頭のロシア人と、20世紀末のソ連人じゃ、話が合わない。
 時代が違う、あのアメリカ人たちの心情も理解できない」
 確かにその傾向はある。同国人よりも同時代人のほうが、コミュニケーションがとりやすい。
 イワンが交渉を本流に戻す。
「我々の家族を救出できたなら、チュレンとバルカナの収容者を解放する。
 チュレンとバルカナの中間にテルミラという小さな街がある。ゴル湾に面していて、小さいが良港がある。
 この街に家族を連れていって欲しい。
 そして、その街を我々にくれ」
 私は慌てた。テルミラという街を知らない。メルトが耳打ちする。
「テルミラは、チュレンやバルカナほど大きくはありませんが港町です。いまは無人です」
 私は即答は避けたかった。チルルやリケルと相談する必要がある。
 だが、メルトはそう考えなかった。
「みなさんの提案は受け入れるよう、アレナス地方行政府長官を説得する。
 私はメルト。帝国への“最後の突撃”に参加して生き残ったものだ」
 私も同意する。
「次回から、このメルトがみなさんとの交渉を担当する。
 みなさんをアークティカに迎えられるよう、最大限の努力をする」

 チュレンとバルカナとの交渉、調略はリケルが担当した。
 チュレンとバルカナは、ひとくくりにはできない。アークティカにやって来た経緯が違うし、故郷も離れている。

 アレナス地方行政府庁舎の会議室には、チルル、リケル、スコル、ジャベリン、メルト、そして私がいた。
 私の「バタは家族の救出を条件に、アークティカへの移住を希望した」の説明にチルルが慌てるが、リケルは想定していたように顎を掻く。
「チュレンとバルカナも同じようなことを言っている。
 バタの家族を解放されたとしても、逃げ場はないと……。
 それと、バタの連中は、チュレンとバルカナの家族を丁重に扱っているようだ。
 バルカナは現状を良としている。
 チュレンは少し違う。
 家族を解放し、家族ともども生命を保障するなら、投降してもいいと。
 チュレンは、バタにダールが侵攻する可能性を危惧している。
 チュレン守備隊の装備は標準的なのだが、異界の技術に詳しいんだ。仲間に異界人がいたわけでなく、どうも異界人がいる軍と戦ったことがあるらしい。
 よく研究している。
 我々のことも……。
 チュレンはアークティカの首都。
 守備隊は首都の明け渡しには同意している。だが、替わりの住地が欲しいそうだ。
 家族の解放がなったなら、アークティカに亡命したいと……。
 チュレンの守備隊は500ほど、家族は2000と想定している。
 バルカナは、ダールがバタに侵攻するなどまったく考えていなかった。
 バタが石油を求めていることも知らなかった。帝国とダールの関係が微妙であることも察知していない。
 バルカナの指導者は王だったらしい。王と王子、王の臣下が主導しているようだ。
 率直な感想としては、王と王子はあまり利口ではない。
 軍は2重構造になっている。将校たる王族と貴族階層、農民や街人だった一般兵。
 シェイプルという農民だった男が、一般兵のリーダーだ。
 この男は、アークティカとの交渉に応じると言っている。
 シェイプルもアークティカへの亡命を条件にしている。バルカナはアークティカに返すと……。
 代替として、内陸の農地が欲しいと……。
 耕作権のみなことは、了解している。
 十分に理解しているか、それは疑問だが……」

 アレナス造船所に立ち寄ると、シビルスが飛行機工場に案内してくれた。
 工場ではWACO複葉機とフォッカーD.XXIの製造が進んでいて、ミストラルの航空機格納庫にあった分解機と損傷機が運び込まれていた。
 工場では、ミストラルの航空機関系担当だったロシュディが働いていた。
 船舶工場では、機関長だったアンリ・ラフォンが活躍しているそうだ。言葉がわからないのに、身振り手振りで頑張っているらしい。
 シビルスが2機を説明する。
「中翼のほうだが、低翼よりも工業製品としてはよくできている。
 設計は巧みだし、工作もいい。だが、無駄が多い。
 低翼は全体的に単純だ。主翼のスパンが短く、面積も小さい。主翼の強度を上げる工夫がされていて、機体は単純だが頑丈だ。
 主脚はどちらも油圧で動くが、中翼は脚柱が伸縮するようになっている。低翼は単に90度回転するだけ。
 中翼のフラップには水銀柱が仕込んであった、たぶん圧力計だ。フラップを自動開閉する機構だと思う。
 低翼のフラップも変わっているが、イファにあるでっかい低翼と同じ機構だ。離着陸で使うのではなく、旋回半径を小さくする試みだろう。
 この2つを組み合わせると、自動開閉できる面白い装置ができるかもしれない。
 中翼の修理はたいへんだが、低翼は簡単だ。弾痕を埋める程度だからね」
 私は驚いた。
「弾痕?」
 シビルスが左の人差し指を示す。
「人の指が入るくらいの弾痕が主翼左翼端と、胴体にあった。
 操縦席背後に6ミリの装甲板が2枚あったけど、1枚は割れていた。
 この機は歴戦なんだ。パイロットは背中に機関銃弾を感じながら、生き残ったんだ。
 エンジンさえあれば、この機は再び空に上がれる」
 私は話題を変えた。
「積んでいたエンジンは使えそうか?」
 シビルスが話題を引き戻す。
「あのエンジンを、低翼に積もうと思う」
 シビルスが中翼と呼ぶ海軍の紫電、低翼と呼ぶ陸軍の二式単座戦闘機“鍾馗”は、ともに迎撃戦闘機だった。
 二式単座戦闘機の初飛行は1940年、紫電は1942年だ。航空機の開発が激烈な時代にあって、この2年の差は大きい。
 両機には共通点もある。二式単座戦闘機のエンジンハ109はあまり整備性のいいエンジンではなかった。
 紫電のエンジン誉二一型(陸軍名ハ45-12)は、安定した動作ではなかった。
 ハ45は、十分な整備、規定のオイルと燃料があれば、正常に動作した。実際、同じエンジンを搭載する四式戦闘機“疾風”には、飛行第47戦隊のように驚異的な稼働率を誇る部隊があった。
 エンジンに欠陥があるのではなく、整備体制や方法に問題があった。
 ミストラルに積んであった新品のエンジンは陸軍名ハ112-Ⅱ(海軍名金星62型)で、装備機は成功作が多い。
 だが、戦闘機に搭載された例は陸軍の五式戦闘機しかない。三式戦闘機Ⅱ型用液冷エンジンの生産が上手くいかず、機体だけが量産され、苦肉の策として空冷のハ112-Ⅱが搭載された。
 この五式戦闘機は成功作であった。
 第二次世界大戦時における日本製航空機用エンジンで、最も戦闘機に適していたのがこの系統だ。だが、装備機は400機弱しか生産されなかった五式戦闘機と、零式艦上戦闘機の少数だけだった。
 私はシビルスに私的意見を言った。
「低翼のエンジンはハ109という名で、直径1263ミリ、乾燥重量720キロだ。
 ミストラルに積まれていたエンジンは、ハ112-Ⅱで、直径1218ミリ、乾燥重量675キロ。ハ112-Ⅱは小柄で軽く、出力は同じ1500馬力。
 二式単座戦闘機の全備重量は2760キロ強と軽い。もし、ダールがフォッケウルフFw190の製造をしていたとしても、あの機体は4060キロ以上ある。エンジンを1700馬力のBMW801から1850馬力のシュヴェツォーフASh-82FNに換装したとしても、互角以上に戦える。
 生産できないか?
 エンジンのあるだけでも……。
 精鋭パイロットを集めて、防空隊を組織し、アークティカの空を守るんだ」
 シビルスが私を見詰める。
「ダールを恐れているのか?」
 私は、正直であった。
「ダールは怖い。
 帝国よりも……。
 壮絶な戦いになる」

 シビルスは、黙って頷いた。
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