アークティカの商人(AP版)

半道海豚

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第2章 帰還

第14話 異界人

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 イリアの家に着くと、すでにヴェルンドとイリアの夫エミール、そしてフェイトが酔っていた。イリアの息子クルトも起きており、母の帰りを待っていた。
 クルトは母に甘え、ミーナと少し遊ぶと疲れたのか寝てしまった。ミーナもほどなくして眠った。

 その夜は、かなり遅くまで話し込んだ。ヴェルンドの目がまどろみ始めた頃、エミールが「ドイツはどうなりましたか?」と聞いた。
 私は、一九四五年四月三〇日にヒトラーが自決、五月七日に連合軍に対してドイツ国防軍が無条件降伏したことを告げる。
 その後、ドイツは共産主義陣営の東ドイツと自由主義陣営の西ドイツに分断されるが、一九九〇年一〇月三日に統一されたことを伝える。
 二〇一三年のドイツは、ヨーロッパの主要な国として発展していることも付け加える。
 一九九三年には、マースリヒト条約が発効してEU(欧州連合)が誕生。ヨーロッパに単一の巨大な経済圏が生まれ、ドイツはその主要国であることも伝える。

 エミールが「あなたのお国は?」と尋ねたので、私は同じ年の八月一五日に連合軍に対して無条件降伏したと言った。
 同年三月一〇日に首都東京が空襲され壊滅、八月六日に広島、九日に長崎に原子爆弾が投下され両都市を合わせて数十万人が死亡・負傷したことも伝える。
 だが、日本は復興を遂げ、一時は世界第二位の経済大国であったことを付け加えた。
 また、二〇一一年三月一一日に大きな地震が発生し、東日本の沿岸部数百キロが甚大な被害を被り、死者・負傷者・行方不明者を合わせると二万数千人の被害があったことも忘れていない。
 さらに地震と津波によって原子力発電所が被災し、甚大な被害が発生していることも付け加える。

 マーリン、リシュリン、ヴェルンド、イリア、フェイトは、押し黙っている。
 リシュリンが「主殿のお国は、壊滅してしまったのか?」と尋ねたので、「そんなことで日本という国は滅びたりしない。世界第三位の経済大国だ」と答える。
 五人は大変驚き、マーリンは「アークティカも復活できるかな」と独り言のように尋ねた。私は「何事も諦めなければ、必ず成就する。そう思えばいい」と言った。
 マーリンは、少し悲しそうに笑った。

 翌日、エミールは朝から診療所に向かい、イリアは家事に奔走している。
 マーリン、リシュリン、ミーナの三人は、ラシュットの街に出て、キッカの父親が経営する造船所の正門前で、石鹸の販売をするので出かけた。
 私とヴェルンド、フェイトの三人は、エミールの許可を得た上で、マウルティアを調べることにした。

 私はフェイトの武器が気になっていた。全長が一メートルに満たないボルトアクションのカービンだ。

 大きな納屋の大きな観音開きの扉を開放して、外光と外気を導いて、マウルティアをよく観察する。
 フェイトは武器を手放さない。それはイリアも同じだ。伝令士という職業は、それほどに危険なのだろうか。そういう私とヴェルンドも拳銃は身につけている。
 唐突ではあったが、フェイトに「銃を見せてくれないか?」と尋ねてみた。
 フェイトは少し驚いたが、気安く「いいよ」とスリングで肩に掛けていた銃を私に手渡す。
 何となく気付いていたのだが、その銃のリアサイトの後方、薬室の直上に菊の紋章と「三八式」という文字が刻まれている。
 やはり、旧日本軍の三八式騎銃だ。
 フェイトに「弾はあるのか?」と尋ねると、五発がひとまとめになったクリップを三つ見せ、「これで全部だ」と笑った。
 フェイトに「我々の銃と交換しないか」と持ちかけると、彼女はにやりとして「リシュリンやマーリンと同じ銃と、弾一〇〇発でどうだ?」と交渉してきた。
 ヴェルンドに目配せすると、彼が「それは、損な取り引きではないですか?」と珍しく異議を唱える。
 その異論は当然で、私は一瞬本心を言うべきか逡巡した。だが、上手い嘘は思いつかない。
 真の考えを言う。
「この銃は、俺の国が昔の戦争で使った銃だ。三八式騎銃という、短銃身の軽便銃だ。騎兵だけでなく、砲兵や輜重兵も使った。
 弾薬は、六・五ミリの高初速・低反動弾だ。M1カービンの弾薬は拳銃弾から発展したもので、フルサイズの小銃弾ほどの威力はない。
 だが、この銃は、こんなに短い銃身から発射できるのに、弾薬はれっきとした小銃弾なんだ。
 アークティカに着いたら、まずやるべきことは小銃を揃えることだろう。少ない人数で大軍と戦うには強力な武器がいる。
 アークティカで再軍備するためには、大人、子供、老人、女性、銃を持てるものすべてが戦わないと、持ちこたえられない。
 そのときに使う銃として、この銃の弾薬は向いている。この銃と弾薬の製造をアークティカでしたい」
 装甲車の後部乗降ドアを開けて、兵員室に上がっていたヴェルンドは、大きく頷いた。
 そして、一番使い込まれたM1カービンをフェイトに見せる。
 するとフェイトは「もっときれいなのはないのか。リシュリンみたいなきれいな銃がいい」といって装甲車の兵員室に跳び乗る。
 武器の格納用木箱の蓋が開いていて、真新しいM1カービンが収まっていた。
 フェイトは、その銃を手に取り「これがいい」と言った。ヴェルンドが空の弾倉一つと三〇カービン弾五〇発の入った紙箱二個をフェイトに渡す。
 ヴェルンドが「弾倉には一五発入る」と言って、基本的な使い方を教える。
 フェイトはヴェルンドに三八式実包のクリップ三個を渡し、これで取り引きが終了した。
 ヴェルンドは、三八式騎銃と三八式実包を銃の格納用木箱にしまった。

 エミールのマウルティアは、ドイツ・フォード製の三トントラックの後輪を履帯に換えたものだ。よく手入れがされていて、グリスの切れはないようだ。
 また、手製の空気ポンプがあり、これで前輪にエアを入れていた。
 燃料さえあれば動く状態だが、エミールによれば三年前にはほぼ燃料がなくなり、数カ月に一度、短時間だけエンジンを始動しするようにしているとのことだ。
 車体は、肌色とも、黄色とも、どちらにも見える塗料で塗られている。

 キャビンの右側後方の給油口から、ソラト八五パーセント、オクテル一五パーセントの混合燃料を注ぐ。二〇リットルほど入れ、エンジンを始動してみる。
 フォードのV3000Sトラックをベースとしたマウルティアのダッシュボードは、素っ気ないほどシンプルで、フロアシフトの長いレバーが何ともクラシカルだ。
 バッテリーは相当前に機能を停止していて、セルモーターが動かないので、クランクを使って手動で始動しなければならない。
 それも面倒なので、装甲車でマウルティアを牽引して、引きがけすることにした。
 クルトが興味深げに、家の軒先から見ている。九歳の男の子にとっては、面白いショーだ。
 子供が迂闊に接近することを恐れた。
 フェイトにクルトのそばにいるように頼んだ。彼女は破天荒な女の子だが、こういった頼みは目的を瞬時に理解し、迅速に行動してくれる。
 装甲車とマウルティアをロープでつなぎ、装甲車でマウルティアをゆっくりと牽引する。
 ヴェルンドが装甲車を運転し、私がマウルティアに乗る。
 私は、マウルティアのイグニッションをONにして、ギアをセカンドに入れ、クラッチを踏んだまま牽引された。少しスピードが出たところで、クラッチをつなぐ。
 ボコ、ボコ、ド、ド、ドとエンジンの中でバルブとピストンが動き、やがてフォードV8、三・九リットルが鼓動を始めた。
 いったんクラッチペダルを踏み、再度足を離す。そこで、エンジンが完全に始動する。
 すぐにクラッチを切り、ギアをニュートラルにし、エンジンの回転が少し安定したところで、アクセルを踏み込んだ。一気に回転が上がり、マウルティアは生き返った。
 ヴェルンドが装甲車を停止し、私はマウルティアのブレーキペダルを踏む。
 クルトが大喜びしている。イリアも家を出て、こちらを見ている。笑顔だ。
 イリアとエミールを護ってきた鉄馬が生き返ったのだ。
 ヴェルンドが牽引ロープを外し、装甲車を納屋の横に止める。その隣にマウルティアを止めると、ちょっとした機械化部隊の趣になった。

 マウルティアは、第二次世界大戦時のドイツで、既存の量産型トラックを改造して造られた輸送用ハーフトラックだ。前輪がタイヤ、後輪が履帯で、自動車の運転のしやすさと戦車の不整地走行性能を両立した車輌だ。
 特定の車種を指す名称ではなく、三トンクラスではオペル製、フォード製、マルギス製がベースになり、後輪を履帯に換えられて、不整地走行能力を付与されていた。
 後輪が履帯になった以外は、何らの変更はなく、前輪に駆動力はなく、ボディに装甲もない。東部戦線の泥濘に阻まれて、輸送が思うに任せない状況下で考え出された物資輸送用トラックである。
 後輪代わりの履帯は、イギリス軍の全装軌式小型汎用装甲輸送車であるユニバーサル・キャリアの脚回りを移植している。
 エミールのマウルティアは、荷台の側あおり(荷台の側板)がキャビンの屋根の高さまである以外は、ごく普通のモデルだ。
 前輪のフェンダーがボンネットと分離しているクラシカルなスタイルで、フェンダー前面に分離してちょこんと付けられたヘッドライトが、さらに古風なイメージを与える。
 迷彩塗装はされておらず、車体色はドイツ陸軍の標準的なダークイエローだ。
 キャビンの上にはルーフキャリアが載っているが、どうも民生品の流用らしい。このクルマの本来の持ち主が、取り付けたような感じだ。
 荷台には幌がかけられているが、その材質はこの世界で調達したもののようだ。防水性のない厚手の綿製だ。幌骨はオリジナルのようだ。荷台側板との間に一五センチほどの隙間があり、適度に外気が入るようになっている。また、空のドラム缶が二本あり、補修塗装した形跡がある。
 戦場をくぐり抜けた車体にしては損傷がなく、全体的に状態のいいクルマだ。

 午後早くにエミールが診療所から帰ってきた。
 エンジンが始動しているマウルティアを見て、大変喜んでいたが、同時に手に入らぬガソリンのことを考えて、喜びはすぐに憂いに変わる。
 エミールが「ガソリンを分けてくれたのか。貴重なものをありがたい」と礼を言った。
 私は「いや、我々もガソリンの入手はできてない。代替燃料を使っている。ランタンに使うソラト八五パーセント、オクテル一五パーセントを混合して、オクタン価八五程度のガソリンの類似品を作って、それを使っているんだ」と教える。
「それで、エンジンは正常に動くのか。もし、そうならばマウルティアが使える。
 荷台の空のドラム缶は見ましたね。あれに入っていたガソリンを使い切ってからは、この地から動けなくなっていたんで……」
「キャブレターの調整はしておいたから、いつでも動ける。燃料タンクは満タンになっている」
 エミールは愛おしそうにマウルティアを撫で、エンジンが発する熱をボンネットの上に置いた手のひらで感じている。
 ヴェルンドがマウルティアのエンジンを切ると、フェイトに押さえられていたクルトが父親に走り寄ってきた。
 その様子をイリアが微笑みながら見ている。

 イリアが用意してくれた遅い昼食を食べながら、エミールの物語を聞いた。
「私は一九二三年にハンブルグで生まれたのですが、両親と妹は戦争中もそこに住んでいました。
 一九四一年の五月一一日に連合軍の空襲があり、そのときに家族は皆死にました。
 私はアーヘンの大学で医学を学んでいたので、一人助かりました。
 大学を休学して、軍に志願したんです。家族の敵をとりたいと思ったのが動機です。
 ところが、医学生だったので衛生兵にされて、銃を撃つことはなく……。
 東部戦線に送られ、ソ連軍と戦っていました。
 一九四三年の二月に、スターリングラードの戦いでドイツが負け、その余波なのでしょう、私がいた小隊も西に向かって後退を続けていました。
 三月に分隊の指揮を執っていた軍曹が負傷し、後方の野戦病院に送るために私が付き添うことになりました。
 病院までは一〇キロほどの道のりで、歩かせるわけにはいかず、さりとて救急車があるわけもなく、後方に下がるというマウルティアの荷台に乗せてもらうことにしたんです。
 それが、あのマウルティアです。
 便乗者はもう一人いて、武装親衛隊の大尉でした。かすり傷程度の怪我をしていただけで、戦場離脱の口実にしていたようです。
 運転手は古参の上等兵で、気遣いのある男でした。
 その一〇キロの道のりの途中で、この世界にやって来たんです。
 武装親衛隊の大尉が動揺し、結局、丸一日走り続けて、燃料切れになりそうになり、小高い丘の中腹で止まったんです。
 そのとき、荷台の後方で、運転手の上等兵が大尉に『このまま走り続けても仕方がないので、よく考えて行動しましょう』と言いました。私と軍曹もそれを聞いていました。
 すると、いきなり大尉が拳銃を抜いて上等兵を撃ったんです。
 それを見て、軍曹が私に『撃て』と言い、私が大尉を射殺しました。
 私と軍曹は、それまでに大尉の様子がおかしいことに気付いていて、いざというときはそうすることにしていました。
 戦場で精神を壊されることは、少なくないので……。
 上等兵は即死で、その場に埋葬しました。
 大尉は生きていましたが、あとのことを考えてとどめを刺しました。
 たいしたものは持っていませんでしたが大尉の装備を奪い、ドラム缶のガソリンから給油して、その場を離れたのです。
 軍曹は二日ほど生きていましたが、怪我が悪化して死にました。
 私が大尉を撃ったそのときに、イリアと出会ったんです。
 イリアも撃ちましたが、命中したのは私が撃った弾です。
 イリアと出会えて、幸運でした」
 私はエミールに武器の供与を申し出た。
「イリアのワルサーPPKを見せてもらったが、弾薬が欠乏しているようだ。必要なものがあればいってくれ」
 エミールは、部屋の片隅の粗末なソファーの下から木箱を引き出した。そのソファーは、木箱の存在を隠すために置かれているようで、少し不自然な位置にあった。
「私とイリア以外はこの中を見たものはいないのだが……」と言いながら、エミールが木箱の蓋を開けた。
 木箱には、チェコ製のブルーノZB26軽機関銃、ベルグマンMP18短機関銃、ワルサーP38自動拳銃、そして大量の弾薬が収められていた。
「このほかに、ご存じのワルサーPPKとモーゼルKar98kがあります。
 ベルグマンとP38の弾は豊富なんだが、両方とも壊れているんです。
 イリアに少ない弾しかないPPKを持たせたのは、それが理由です」
 ヴェルンドがエミールの許可を得て、P38を手に取る。
 ワルサーP38は、ドイツ軍制式の九ミリパラベラム弾を使用する軍用拳銃だ。ルパン三世の愛銃でもある。
 故障の原因は明白で、薬莢が薬室に張り付き、薬莢後部が破断している。
 エミールの話では、何度か直そうとしたが工具がなく上手くいかず、弾倉から弾を抜いて保管していたそうだ。
 ベルグマンは、第一次世界大戦期の短機関銃で、日本の海軍陸戦隊も使用していた。
 弾薬は、P38と同じ九ミリパラベラム弾だ。こちらの故障は不明で、コッキングレバーが動かない。
 どちらも、ヴェルンドが明日まで預かることにした。
 また、私はヴェルンドにモーゼルC96を持ってくるように言った。
 ヴェルンドが装甲車からC96を持ってきて、テーブルの上に置いた。
 C96のグリップには、大きく9の文字が彫られ、赤色で着色されている。いわゆるレッドナインだ。
 モーゼルC96は大型の軍用拳銃で、通常は七・六三ミリモーゼル弾を使用する。しかし、レッドナインはドイツ軍制式拳銃弾である九ミリパラベラム弾を使用するように仕様変更されたタイプだ。
 私が「この銃は、おそらく日本軍が中国軍から鹵獲し、それをアメリカ軍が鹵獲したものだと思う。
 弾がないので、我々が持っていても使い道はない。
 よかったら、使って欲しい。貴方の国が作ったものだし、銃も貴方たちに使って欲しいだろう」
 エミールは「ありがたい。本当に」と言った。
 ヴェルンドが「木製のホルスター兼銃床が壊れてしまっていたので、鉄パイプと鉄板で銃床を作ってみました」と金属製の部品を見せる。
 エミールがヴェルンドに「これならカービンとして使えるので、本当に助かります」と礼を言う。

 この世界で生きていくために絶対に必要なものが二つある。
 銃と金だ。この世界では、武器のないものは金を奪われ、金のないものは武器を買えない。
 暴力と財力以外に価値観を見いだせない世界。この世界は、そんな悲し一面を色濃く持っている。
 自分の身、自分の家族、自分が愛する人たち、それらを守るには、武器と財しかないのだ。老いたもの、幼きもの、財を失ったものに対して、公が手を差し伸べることはない。完全で、低レベルな弱肉強食の世界だ。

 マーリンは、そのことをよく知っていた。いまは銃で切り抜けているが、やがては金が必要になる。
 アークティカに戻れば、すぐにこの冬の食料調達という困難が待ち受けている。
 来年の春に蒔く種、実りの秋を迎えるまでの食料。仮に食料を調達できたとして、それを護るために武器がいる。解決しなければならない問題が山積しているのだ。
 だから、他国に売れる商品が必要だ。
 アークティカは穀倉地帯だ。だが、今年の秋に収穫できる作物はない。輸出はおろか、住民が食べる穀物すらない。穀物は他国から輸入しなければならない。
 輸入するには資金がいる。その資金をどうやって調達するのか。
 マーリンには、いくつかの考えがあった。その一つが石鹸の製造と輸出だ。
 マーリンは穀物を扱う商人の娘だ。父に同行して、各地の穀物商人との交易に立ち会っていた。商売には自信がある。
 だが、いまマーリンのその自信は崩壊寸前まで追い込まれていた。
 キッカの父親が提供してくれた場所は、本社西門近くの一角で、大通りに面し、市場も近く、市場に向かう買い物客と海岸付近の工場で働く人々が行き交う、商売には最適な場所であった。
 にも関わらず、客は誰も立ち止まってくれない。
 木製の事務机の上に白い布をかけ、その上に石鹸を並べて売ろうとしているのだが、そもそも石鹸が何かが通行人にはわからない。
 白い立方体の固形物があるだけで、何なのかさっぱりわからない。たまに、食べ物と勘違いする人がいたが、それだけだ。
 マーリンは、いままで扱ってきた商品との違いを思い知らされていた。麦や豆は、何に使うのか説明しなくてもわかる。そういう商品を扱ってきた商人が、何に使うのかわからない物品をどうやって売ればいいのか、思いつかないのだ。
 すでに露天に店を構えてから二時間が経過している。売れるどころか立ち止まった人が二人だけ。
 マーリンは心の中で「どうすればいいんだ!」と絶叫していた。
 リシュリンがおどおどしている。武人のリシュリンには、どうすることもできない。

 この危機を救ったのがミーナだ。
 ミーナは、キッカの父親が経営する造船所から、バケツを借りて水を汲み運ぼうとしている。
 その姿を見かねて、女性の事務員がミーナの替わりに水の入ったバケツを運んでくれた。
 人通りは多い。
 ミーナが叫んだ。
「皆ぁ、見てぇ~」
 通行人が驚いて、ミーナを見る。
「あのねぇ~」
 そういってから、車道に駐車している蒸気牽引車のピストン・ロッドを両手で握り、戻ってくる。
 通行人は、何事かと凝視している。
「お手々が汚れました!」といって、両手を見せ、その手をバケツに入れる。
「お水で洗ってもきれいになりません」
 ミーナの手は、黒ずんだオイルで真っ黒だ。さらに汚れた感がある。
 ミーナは石鹸をとった。
「この石鹸をお手々でこすって、くちゅくちゅすると、泡が出ます。
 泡がたくさんになったら、お水で洗います。
 ほらぁ~、きれいでしょ」
 ミーナのパフォーマンスに、通行人から「おぅ~」と言う歓声が上がる。
 身なりのいい初老の男が「一ついくらかね」とマーリンに尋ねた。マーリンは「バラの香り付きが小銀貨一つ、香りナシが銅貨二〇枚」と答える。
 すると、ミーナの手伝いをしてくれた女性が、「香りなしを一つ」といって、銅貨二〇枚をマーリンに渡した。
 中年の男が「これは使うと減るのかね?」と尋ねる。
 マーリンが「少しずつ減っていきます」と答えると、男は「では、次はいつ売りに来るのかね」と尋ねる。
 マーリンは「今年の冬には必ず」と言うと、その男が「香りなしを三つもらおう」と言った。
 最初に声をかけた初老の男が「では、残りの香りなしを一〇個」と言った。
 結局、香りなしだけがすべて売れた。客のなかには「香りありを香りなしの値段で売れ」と迫るものがいた。
 ミーナがデモで使った香りなし石鹸まで売れた。

 香りつきが売れ残っていたが、店じまいをして、イリアの家に戻ることにした。
 店じまいを終え、事務机とバケツをキッカの父親の会社に返却して、社員たちに礼を言い立ち去る。

 イリアの家に戻ってきたマーリンは、ぐったりと疲れていた。ミーナは元気いっぱいだ。
 ただ、マーリンは何かをつかんだようだ。ミーナは、マーリンとリシュリンに褒められて、はにかみながら喜んでいた。

 翌朝、早立ちをする我々の見送りに、キッカと母親が来てくれた。
 ミーナがキッカに売れ残りの石鹸を三個渡すと、キッカがミーナにリンゴ五個を渡す。リシュリンがイリアに石鹸を渡し、フェイトがマーリンに干し肉の袋を手渡す。
 ミーナがキッカとの別れが悲しくて、リシュリンにすがって泣いた。
 
 ラシュットを発ってから、ハボルを経由してルカーンに達するまで、海岸線に沿って四日で走りきった。
 ルカーンからアークティカ国境まで、三五キロしかない。
 国境を越えてからマーリンの村コルカまで、一五〇キロある。
 事実上、ルカーンが最後の補給地で、ここで燃料と食料を調達しなければならない。
 マーリンは、幼いときから何度もルカーンを訪れていた。そのため、マーリンを知る人々も多い。
 マーリンがルカーンに現れたとなれば、帝国側に動きが出る可能性が高い。
 それを避けるために、マーリンとリシュリンはルカーンの街に入らず、郊外の廃屋に身を隠した。二人は完全武装し、緊急時の移動にはDT125を使うことにした。

 私、ヴェルンド、ミーナの三人で、装甲車に乗ってルカーンの街に入ったのは、夕暮れ間近だった。
 街外れの給油・給水所で、ソラトとオクテルを満タンにし、市場で穀物、干し肉、干した鱒を兵員室が満杯になるまで買い込み、二人が潜む廃屋に戻ったのは、日没から一時間ほどが過ぎていた。

 そのまま夜の街道を走り、日付が変わる前に国境の村に着く。
 朝まで交代で歩哨に立ち、何事もなく夜が明けた。
 我々は、村人に見られることなく、日の出前に国境を越えアークティカ領に入った。

 国境を越えると、すぐに騎馬の追跡を受けた。最初は三騎、しばらくして五騎、やがて一〇騎が追跡してくる。
 アークティカの道は荒れていた。道は大草原の中を延びているのだが、意図的なのだろうか、岩や倒木が路上にうち捨てられている。
 我々は障害物を避けながら、場合によっては路外走行をして、無停止で進む。
 時速は二〇キロくらいの低速しか出せない。
 マーリンから、追跡してくるのは東方騎馬民であると聞いた。
 運転は土地勘のあるマーリンがしている。
 リシュリンはM2カービンの弾倉を調べ、ヴェルンドはM1918BARを用意している。私は、ルイス軽機を持ち出した。
 ここは遮蔽物がほとんどない、大草原である。射程が長い銃が有利だ。短機関銃は向かない。

 追跡する騎馬が二〇に達したとき、前方に一〇騎が現れた。
 そして一斉に撃ちかけてきた。
 助手席に座るミーナがフロントの装甲バイザーを降ろす。
 戦いは三〇秒ほどで終わった。リシュリンとヴェルンドの射撃で、追跡してきた二〇騎は全滅。前方の一〇騎は、ルイス軽機の掃射で八騎が倒れた。かろうじて逃げた二騎は、マーリンに追跡され、馬が疲れて倒れ、走って逃げても追われ、一人は抵抗し射殺。もう一人は捕虜となった。

 捕虜は怯えていた。尋ねることには、すべて答えた。彼らの言葉は訛りが強く、理解に時間を要するが、それでもアークティカに侵入している兵力がおおよそわかった。常時二〇〇〇はいるらしい。
 リシュリンが捕虜に「服を脱げ」と命じた。捕虜は怯えきっていた。リシュリンに剣を突き付けられ、脅され、全裸になった。靴も取り上げられた。
 そして「好きなところに行け。二度と戻ってくるな」と命じられ、泣きながら南に走っていく。
 この地方でも、昼間は恐鳥が獲物を探している。運がよければ助かるが、幸運の分け前はわずかしかない。

 コルカ村まで、あと五〇キロに迫ったところで、日没となった。
 この日は人里を避け、風光明媚な小さな湖の畔で、野営する。
 マーリンの心は複雑で、故郷に帰ってきたうれしさと、奴隷商人に捕らえられてからの自分の身に起きたことを重ね合わせ、故郷の人々が自分を受け入れてくれないのでは、という不安もあった。
 獣よけの焚き火は欠かせないが、焚き火をすれば人に知られる。獣よりも人のほうが怖い。人の接近はロロに探知してもらう以外にない。
 緊張の夜が始まった。

 装甲車の兵員室の七割ほどが食料で埋まっている。また、兵員室の屋根にも食料が積んである。
 ミーナを車内に寝かせるには、十分なスペースがなかったが、それでもミーナだけは装甲車の車内に寝かせた。
 マーリンは運転席、リシュリンは助手席で、仮眠をするように寝た。
 私、ヴェルンド、ロロは、車外で虫に悩まされながら不寝番をした。
 虫の数は多くない。また種類も少ない。数匹がしつこいだけだ。焚き火の火力を強めれば、虫はその中に飛び込むことがある。
 日付が変わった二時頃、マーリンとリシュリンが交代してくれ、私とヴェルンドは五時まで眠ることにした。

 朝五時、朝夕は秋の気配が濃くなり始めた季節、まだ完全には夜が明けていない。少し寒い。
 ロロが大きなあくびをし、前足を突っ張って伸びをしている。
 私は湖水で顔を洗おうとしていた。ヴェルンドは歯を磨いている。
 マーリンとリシュリンは身支度を終えており、朝食の準備をしている。
 四人とも拳銃と銃剣は携帯しているが、小銃と長剣は帯びていない。
 装甲車は湖畔と平行に止めている。装甲車から水際まで五メートルほど。焚き火は、装甲車の前方五メートルで、盛大に燃えている。

 これが油断というものなのだろう。
 ヴェルンドが狙撃された。焚き火のその先の至近からだった。
 ヴェルンドが倒れ、ほかの三人が拳銃を抜く前に、六人が斬りかかってきた。
 完全に不意を突かれた。
 私が一人を撃ち、もう一人に斬りかかられ、それを避ける際に転び、額を石に打ち付けた。
 意識が朦朧としたが、それでももう一人を撃った。
 マーリンは湖畔の木立の根に足を取られて、酷くひねり、立ち上がれないまま一人を撃った。負傷した敵にロロが襲いかかって、私がとどめを刺した。
 リシュリンは冷静で、瞬く間に三人を射殺する。
 襲ってきたのは、装備から判断して僧兵の部隊だ。二人の剣の柄に僧兵を表す龍の紋章がある。
 結局、リシュリンを除いて、全員が負傷し、特にヴェルンドは左肩に貫通銃創を負う。マーリンは酷い捻挫、私は額に裂傷。

 朝食は放棄して、リシュリンの運転でその場を離れる。
 一〇キロほど進んで装甲車を止めると、ミーナが泣いている。
 ヴェルンドは、太い血管を傷つけなかったようで、出血は止まりつつある。
 ミーナは、ヴェルンドの血の量を見て怯えていた。幸運にも弾はきれいに抜けていて、銃創は大きいが、骨にも損傷はない。
 マーリンの踝から先が酷く腫れていて、靴を履けるような状態ではない。骨は折れていないようだが、添え木を当てて固定する。
 私は左目がかすんでいて、額が痛いが、動けない状態ではない。出血はすぐに止まった。
 ヴェルンドの手当を待って、リシュリンはゆっくりと装甲車を移動させる。この場に留まることは危険すぎる。
 アメリカ軍の衛生兵のポーチが役に立った。ヴェルンドにモルヒネを打つとだいぶ楽になったようだ。

 さらに四キロほど走ると、道から外れた丘陵に豪農の屋敷というほどではないが、数件の大きな木造家屋が立ち並ぶ集落があった。周囲にはブドウ畑が広がり、人の手を加えられぬまま、その実は熟しつつある。
 リシュリンは、集落に向かう側道の直前で装甲車を止めた。
 マーリンが「この辺は、ワイン造りが盛んだったんだ」と寂しそうにぽつりと言った。
 リシュリンはマーリンの話には応えず「この集落で二~三日隠れよう」と提案する。
 一件の農家の納屋は、まったく損傷していなかった。大きな扉が開け放たれ、その中にあったであろう蒸気車は持ち去られていたが、木造の建屋自体は無傷だ。
 その中に装甲車を入れ、奥まった事務所のような小部屋にヴェルンドを寝かせ、モルヒネが効いているうちに手当を終えようと、リシュリンが傷口の縫合の準備を始めた。
 私とミーナで、ラシュットで新造したガソリンバーナーで湯を沸かし、リシュリンは針と糸の支度をする。
 マーリンは水に浸した布で脚を冷やしているが、腫れはますます酷くなっていた。踝から甲にかけて、紫色に変色している。
 装甲車に積んである水よりももっと冷たいものが必要だが、井戸はおそらく使えないだろう。帝国は、街を襲うと井戸に住民の死体を投げ込み、使えなくする。彼らの常套戦術だ。
 それでも、井戸だけは調べる価値はある。
 私とロロは、納屋のすぐ近くの井戸に向かった。
 井戸には風力で揚水するポンプが付けられ、直径二〇センチほどの鉄製パイプが地中に伸びている。
 こんな形式の井戸は、この世界で始めて見た。
 納屋に戻り、マーリンに井戸の様子を伝えると、地下水を汲み上げて作物に散水するための井戸で、アークティカでは珍しいものではないそうだ。深さ一〇〇メートルに達する井戸もあると言う。飲料水や温泉の掘削にも使われるらしい。
 木製櫓上部の風車とポンプの連結機構は、完全に破壊されていて、揚水は望めない。だが、基部の部品は壊されておらず、ポンプを動かせれば水が出る可能性がある。
 邪魔な残骸を取り除き、基部の直径一メートルほどの鉄製の滑車のような駆動部を手で回してみた。重くて簡単には動かないが、錆びて固着はしていない。
 滑車をよく見ると、二カ所に穴が開いている。周りを見ると、木製の握り手の付いた鉄製の棒が一本転がっている。
 そのハンドルらしき鉄棒を滑車の穴に差し込むと、きっちりとはまった。
 そのハンドルを回そうとすると、ちょろちょろと濁った水が出てきた。ただ、ハンドルは重く、簡単には回らない。
 まずは一回転と全力を出すと、以後はあまり力を必要としない。水はどんどん出てきて、すぐに透き通ってきた。ロロが蛇口に口を付けて飲んでいる。
 転がっていた木製のバケツに水を汲み、納屋に戻る。
 そのバケツにマーリンの脚を浸させ、とにかく腫れの熱を取ること優先させる。
 ヴェルンドの手当は終わっており、モルヒネが効いているのか眠っている。
 ミーナはリシュリンにしがみついていた。

 納屋に三日間、息を潜めて隠れた。ヴェルンドの出血は止まり、熱も下がっている。マーリンの足は紫色のままだが、腫れは幾分収まってきている。
 私の額の傷は腫れが酷くなってきていて、痛みも治まっていない。
 リシュリンは、このまま留まることのほうが危険が増すと判断していた。
 その判断は正しいだろう。
 四日目の朝、納屋を出て、マーリンの故郷コルカ村を目指した。

 予言の娘の凱旋帰郷は、勇猛な雰囲気とはかけ離れていた。
 私の油断によって、この事態を招いた責任を痛感している。
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