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第1章
第一一話 北方調査
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俺たちにとって、この時期の重大事は二号車の修理だった。穴の空いたラジエーターを交換できれば、問題なく動くし、前席左右の割れた窓ガラスは、板でも貼れば応急処置になる。
カーダングの南郊外で小さな部品屋を営むディーノは、五年前にこの世界にやって来た。大変な苦労の末、どうにか廃材部品の販売という生活の糧を見つけていた。
彼は、ユウナちゃんと同年齢の女の子を育てていた。生活は、どう見ても楽ではない。たぶん、食べ物にも窮している。
俺と斉木が屋外に並べられたわずかな機械部品を物色しながら、日本語で話をしていると、彼は「日本人か?」と英語で尋ねてきた。
俺と斉木は驚いた。
斉木が「そうだ」と答えると、彼も驚いていた。
俺と斉木は、この世界の人々、この世界で世代を重ねた人々を信用していいものか、判断できずにいた。見かけは親切だが、それが本心なのかどうか……。
混乱の二年間で養われた猜疑心と、カンのようなものが、警戒心を増幅している。
五年前、元の世界の俺たちより四四時間前に〝ゲート〟に突入したディーノは、グループの全滅を経験していた。
その程度は話すが、多くは語らない。女の子の表情も暗い。
我々は情報を欲しており、彼と年齢が近い斉木と能美が回数を重ねて、ディーノのバラックを訪ねた。
ディーノは観光で、日本を訪れたことがあるそうだ。日光の話を何度もするが、この五年間のことは語らない。
斉木と能美による六回目の訪問の際、ディーノは二人の顔を見ると同時に「何でもするから、助けて欲しい。かくまってくれ!」と懇願した。
ディーノの切迫した表情に異常を感じた斉木と能美は、ディーノと女の子をエノクの後部座席に乗せて、即座にキャンプに戻ってきた。
女の子は額に怪我をしていて、能美が手当てをしたがったが、斉木はエノクを停車しなかった。それは、賢明な判断だった。
ディーノの存在は、キャンプでは共有された情報であった。だから、二人が現れても、驚きはなかったが、二人の痩せた身体には、ある種の異様さがあった。俺も、女の子とユウナちゃんの体格の差に慄然とした。
すぐに粥が用意され、二人は黙々と食べていた。
女の子は清潔ではあったが、衣服は古く粗末だった。着替えが用意され、傷の手当てと、診察も行われた。
斉木が、能美が医師であり、納田が看護師であると告げると、ディーノは泣いて感謝の言葉を口にした。
ディーノは、ルサリィを警戒した。だが、テュールとマーニを見て、少し考えを変えたようだ。
女の子の名はシルヴァ。一三歳。北欧系の顔立ちで、金髪。この世界の人たちとは、風貌が違う。ディーノは祖父で、父母と弟、そして祖父とともに、この世界にやって来た。
ディーノによれば、家族では彼とシルヴァだけが生き残ったそうだ。
シルヴァが、街の子供たちに石を投げられ、「じじいは殺され、お前は白魔族に売られる」と言われたそうだ。
ディーノは、それを子供の脅しではなく、真実と受け取っていた。逃げたくても、クルマも銃もなく、途方に暮れているところに、斉木と能美がやって来た。
ディーノが斉木と能美に助けを求めたのは、咄嗟の判断らしい。
ユウナちゃんは、シルヴァをテントの一つに連れて行った。そのとき、シルヴァは怯えていたが、ちーちゃんとマーニ、ケンちゃんとワン太郎が加わって、こわばりながらも笑顔を見せていた。
ディーノは多くを語ろうとしない。
だが、ラジエーターの所在を教えてくれた。
ディーノたちはクレーンヘリを使う大がかりな方法で、鍋から車輌を搬出し、北に向かった。道中ドラキュロに襲われ、鍋の北、走行距離二五〇キロ付近で包囲され、全滅したという。
そこに四〇から五〇台の車輌が残置されている。北の平原を南から北に流れる川沿いに走れば、必ず見つけられるらしい。東岸に石造りの村があり、そこが最終地だったそうだ。
我々の意思決定は全体会議で決められる。互いの行動は制限しないし、個々の意思は尊重される。
だが、この状況下では集団での行動が身を守る最善の策であることは、誰もが理解していた。
今夜の歩哨は、片倉と斉木だ。二人は無線で、会議の状況をモニターしている。会議には、当然の権利として、ディーノとシルヴァも出席し、能美が通訳をする。テュールとマーニへの通訳はルサリィ、ルサリィへの通訳は相馬が担当。
俺が「二号車を直したい。ラジエーターを確保するため、北の草原に行きたい」と希望した。
相馬が、「北方への探検は必要だし、その事前調査としては意味がある」と賛成する。
だが、「北へは行けないでしょう」と金沢。「そうですね」と金吾が金沢に同意。珠月が「でも、二号車が修理できないと、私たちはどこにも行けない」と意見を述べる。
金吾が「二号車は放棄を考えたほうが……」と自説を譲らないと、納田が「前輪が駆動しないダンプローダーは、これ以上進めないでしょ。いまでもクルマが少ないのに、修理できるものを捨てていては、すぐに行き詰まっちゃうよ」と金吾に反対する。
ディーノが「北に進むと、山岳地帯に行き当たり、その先はクルマでは進めない」といった。そして、「追い詰められて、逃げ込んだ無人の村で、すごい数の動物に襲われたんだ……」と当時の状況を話した。目には涙があった。
金沢が「北方大山脈がアルプスだという確率は何パーセント?」と誰にも答えられない質問をする。
ディーノが「一〇〇パーセント、だと思う……」と自信なげにいう。全員がディーノに注目する。
「山容は少し違うようだけど、北にモンブラン山が見えた……。真っ白だったよ。巨大な氷河湖があって……」
「それは、確認の必要があるね」と、無線から斉木の声が聞こえてきた。
モンブラン山の確認とラジエーターの確保を目的とした、北方探査が決定した。
もう一つ大きな問題がある。ディーノが語った、白魔族との交易〝品〟のことだ。中央平原の人々は、白魔族と交易しているらしい。そのための唯一の商品が、人間の子供だという。白魔族は、定期的に人間の子供を買いに来る……と、ディーノはいった。
そして、孤児や親の保護力の弱い一二歳以下を対象にした〝子供狩り〟が始まっていると。デリング一家がテュールとマーニを拘束しようとしたのも、これが原因の一つかもしれない。
中央平原の人々は、工業製品をほとんど作れない。すべては、白魔族から買っている。そして、白魔族が欲するものが、人間の子供。子供をどうするのかは、一切不明。家畜として働かせるとも、食うともいわれている。
白魔族は、鬼神族や精霊族と異なり、人間を野生動物と同程度に認識しているらしい。また、白魔族は好戦的でもあるようだ。
しかし、ディーノ自身も白魔族について、「よく知らない」と語る。
どちらにしても我々の子供たちが、〝子供狩り〟の対象になり得る。
防衛体制を固める必要がある。
北方調査の準備は、翌日早朝に始まり、その翌日には開始されることが決まった。
使用する車輌はスコーピオン軽戦車。参加は、俺(半田)、金吾、相馬の三人。
他のメンバーは、我々のキャンプに籠もって、俺たちの帰りを待つ。
キャンプは、回収した流木で、南と西に柵を築き、柵の内側には土塁がある。簡単には侵入を許さない。ドラキュロ対策ために作った防御柵だが、人間相手にも十分役立つ。
当然、夜襲を警戒していたし、攻撃を受ければ容赦なく反撃するつもりでいた。
俺たちは、ボンベ内に圧力をかけ、内部のガソリンを噴射する火炎放射器まで作ってあった。
北への出発を控えた前日の夕方、一〇代の男女がキャンプの入口にやって来た。
男が「どんな仕事でもします。砦に入れてください」と懇願する。
金吾と金沢、ルサリィが近付いて話を聞くと、妹が連れて行かれそうだという。
柵の内側に入れ、土塁との間の広場で事情を聞く。
男女は中央平原西部域の出身で、兄妹でこの付近に逃げてきた難民だそうだ。湖の北岸に兄妹のキャンプがあるという。だが、難民グループに対して一二歳以下の子供一〇人の供出を、カーダングの有力者から要求され、難民側は一四歳にしては小柄な妹を候補にしたらしい。
そして、二人で逃げてきた。
刃物を含めて武器らしいものは一切なく、ウマにも乗っていなかった。我々は、一応保護することにした。
ただし、ログ小屋に半監禁とすることを了解させた。二人は怯えていたが、我々も怖いのだ。
翌日の日の出前、俺たち三人は北に向かって出発した。金吾が砲身に直角に交差するステーを取り付け、それに四連のライトを付けてくれた。砲塔と連動して三六〇度旋回し、俯仰の照射もできるのだが、主砲が撃てない。主砲を発射する予定はないが。
ディーノが参加したグループは、平和を愛する人々で、争いを求めないことから、武器はなかったそうだ。ディーノたちは大量の物資を持っており、建設機械も多数あった。しかし、戦車や装甲車といった戦闘車輌はもちろん、野生動物から身を守るための銃器も欠いていたらしい。
ディーノたちのグループの作業途中で〝ゲート〟から現れて参加したグループには、軍隊もどきの武装集団もいた。多数の装甲車を目撃したそうだ。
彼らが期待した平和は、未来の世界にはなかった。新世界を支配するドラキュロには、人間は餌でしかなく、平和を愛する心などまったく存在しなかった、というわけだ。
北の山脈を登り、ヘリコプターの横を通り過ぎ、南の峠に至った。ここまでは、完全ではないが調査している。
ドラキュロはいるが、こちらが高速で移動するので、追いかけてはこない。
南の峠の下りは九十九折りで、速度は出せないが、岩場のためか、ドラキュロの姿がない。
峠を降りるのに半日かかった。
川の東岸に出るのに四時間かかる。すでに日没に近い。
今夜はハッチを閉じて、戦車の中で寝る。排泄と給油以外は車外に出ない。そのために、男だけのチームにしたのだ。ジェリカンは一〇缶携行している。
川の東岸を北に進む。西の山脈から川に注ぎ込む小河川は多いが、東側の平原には小川や池はまったくない。乾燥していて、丈が一メートルほどの草と、わずかな低木しかない。
戦車だけの旅は身軽だ。一時間に三〇キロは進める。今日の夕方には、遺跡のような村に着くだろう。
目の前に突然、パネルトラックが飛び込んできた。危うく側面に衝突するところだった。
トラックは半没していて、荷台半分より下が地中にある。車輪は完全に埋まっている。
その後も、ディーノのグループと関係があると思われる車輌が、多数放棄されていた。車輌は点々と北に向かっており、死体なき死者の行進のようであった。
実に気の滅入る光景だ。
夕方、ようやくそれらしい石造りの村に達する。平地に造られたマチュ・ピチュのようだ。
この付近は寒冷で、草の丈が低く、見晴らしがいい。地面は北に向かって、やや登っている。村の北方数キロに氷河湖らしい水面が見える。
村は高さ一・五メートルほどの石の壁で囲まれていて、草は生えているが荒れた雰囲気ではなかった。ただ、静かで、冷涼な空気と相まって、緊張を強いる。
村の内側と外壁の周囲に、クルマが点在している。クルマの表面には厚く砂が積もっていて、車内はうかがえない。多くは民間の小型四輪駆動車だ。トラックは極端に少ない。
その少ないトラックを調べる。目的はラジエーター。
相馬が石壁の上で、周囲を警戒する。ドラキュロの姿はないが、連中が俺たちに気付けば音もなく集まっているので油断できない。
金吾が、「半田さん、これ装甲トラックですよ」と小声で言う。見かけはパネルバン風のオフロードトラックだが、確かにキャビンの鉄板が厚い。塗色は白で、見かけはただの小型キャブオーバートラックなのだが……。
金吾が、「これ、ESKムンゴが原型の貨物トラックぽいですよ」と説明するが、俺にはよくわからない。車体長は二トントラックよりやや短く感じるが、前輪車軸にデフがあることから、四駆であることに間違いはない。
荷台の幌は風で飛ばされたのかなくなっているが、断面が四角いロールバー風の幌骨は残っている。缶詰やレトルト食品が散乱している。ダンボール箱の残骸がわずかに残る。雨に打たれてダンボール箱が崩れ、太陽に照らされてダンボールが乾き、風に飛ばされた後、中身だけが残ったのだ。キャビンには誰も乗っていない。
もう一台、ワンボックスタイプの同型がある。この車輌は黒く塗装されていた。比較的大きな窓があり、それが防弾ガラスであることが一目でわかる。
車体後部には、防弾ガラスがはめ込まれた観音開きのドアがある。
防弾ガラスを手でぬぐい内部を覗く。暗いが、誰も乗っていないようだ。
金吾が後部乗降ドアを開けて、車内を観察するためにバンパーに乗る。車内の豪華さに呆れる。まるで、リムジンだ。シートは左側面にソファーが、右側面にはバーカウンター風のテーブルがある。車体の右側面にスライド式の乗降ドア。後部の乗降ドアは緊急脱出用か荷物の出し入れ用らしい。車体後部にも豪華なシートが置かれている。
運転席側に回ると、シートが豪華なだけで、ダッシュボード周りはごく普通。トランスミッションはマニュアルで、ハイ/ローのトランスファーがある。四駆と二駆の切り替えがない。フルタイム四駆のようだ。
エンジンの位置を確認し、ラジエーターの取り外しを考えるが、少し難しそうだ。キャブオーバー車よりも、ボンネット型のほうが作業は容易だ。
金吾がエンジンルームを点検している。
俺は金吾から離れ、欧州製のジープ型四駆車に近寄る。
四ドア+リアハッチだが、リアハッチと運転席側のドア開いており、車内には誰もいない。乗ってはいたのだろうが、ドラキュロに持っていかれたのだろう。
ボンネットを開けると、簡単に取り外せそうな立派なラジエーターがある。
俺は、金吾と相馬に作業を始めると告げ、軽戦車から工具を持ち出した。
相馬は、ドラキュロの姿を見ていないと、手信号で報告する。
金吾が近寄り、作業を手伝う。金吾も俺も銃を背負い、腰の拳銃は薬室に装弾し、いつでも戦える準備をしている。
金吾が「あのクルマ動きますよ。エンジンオイルに粘りがあるし、ミッションやデフのオイルもそれほど劣化していないでしょう。
タイヤに空気を入れて、セルさえ回れば動くかも」と俺に小声で伝える。
俺は「もう一台はどう?」と尋ねる。金吾は「調べます」と答え、俺の隣から去った。
相馬が走ってくる。俺と金吾が緊張する。金吾は背負っていた銃を構える。
相馬が俺に近付いてくると、金吾も戻ってきた。
「向こうに面白いものがあります。作業の後で!」と言って持ち場に戻る。
金吾が一瞬スキップをするように走り、もう一台の平ボディ装甲トラックに向かう。
ラジエーターを外すのに一時間三〇分もかかった。静かに作業しているが、ドラキュロに気付かれる可能性が高い。一〇〇〇年前の調査によれば、連中は視覚・聴覚・臭覚に優れているらしい。
俺が取り外し作業を終え、ラジエーターを軽戦車の砲塔に縛り付け終わると、今度は俺が周囲警戒にあたる。相馬は大きめのマイクロバスらしい中型車に向かう。
そして、何かを確認したのかすぐに戻ってきた。
「オムスビが着いています。大型車用のオムスビです」
オムスビとは、一号車に取り付けてある三角形の履帯のことだ。タイヤと交換して、圧倒的な走破性を得られる。
金吾も来た。「バッテリーを交換しました。エンジンをかけてもいいですか?」と問う。
どんなエンジン音か不明だし、マフラーでも破ければ、とんでもない音が響く。ドラキュロを呼びかねない。
俺は、「相馬さんがオムスビを見つけた。それを外そう」という。「外しても戦車には積めないから、持って帰れませんよ」と金吾。
「トレーラーは……」と相馬が周囲を探すが、都合よく便利なものは落ちていない。
金吾が、「トラック直しましょうよ」とたたみかける。相馬もそちらに傾いている。
ニワトリが先か、タマゴが先か。オムスビの取り外しが先か、それを積むトラックの修理が先か。俺は、首を縦に振った。
トラックが先になった。
トラックのバッテリーは、自動車用リチウムイオン型で、セルを回せば始動する可能性もあった。だが、エンジン内の潤滑のために一度はゆっくりとピストンを上下させたい。それに、古い燃料は抜いたほうがいい。
燃料タンクのドレンプラグを外して、燃料を抜き取り、フューエルフィルターを外して、そこの燃料も捨てた。
すべて地面への垂れ流しで、環境汚染が甚だしい。だが、いまは命がけ。寸刻を争う。
フューエルフィルターを戻し、燃料タンクのドレンプラグを閉め、そして予備用に持ってきたジェリカンから軽油を入れる。
金吾と相馬の動きがいい。手早い。
イグニッションはキーレスで、軍用車と同じ方式。ONにすると赤いランプが付いた。電気系は生きている。
イグニッションを切る。そして、軽戦車で牽引する。三速にギアを入れることで、クランクシャフトが動いて、ピストンを上下動させる。本当はグロープラグを外して、圧縮させないほうがいいのだが、そんな時間はない。
俺たちはドラキュロの群れの只中にいるのだ。
相馬がタイヤを点検する。目視では、ひび割れはない。
周囲を一回りして、ピストンの運動は終わり。
次に、油圧式フットポンプでタイヤにエアを送り込む。これは重労働だ。発電機を必要とする電動ポンプはキャンプに置いてきた。
途中で金吾が変わる。相馬と金吾で、どうにか通常の圧まで入った。
セルを回すと、エンジンが始動した。吹かしたいが、金吾は軽くアクセルを踏むだけにとどめる。
相馬が荷台の観音扉を開け、どこで見つけてきたのか、スコップで荷台の積荷を捨てている。
周囲にドラキュロの姿はない。
異常なほど、喉が渇く。
すでに正午を過ぎているが、喉は渇くが腹は減らない。
一刻も早く、この地を去りたい。
金吾が、「もう一台直しましょう。これが動いたんだから……」といい出した。意外にも相馬が同調する。
「装甲トラックに装甲ワゴンがあれば、二号車は放棄していいかも、ですね」
確かに一利ある。
今回はタイヤの空気入れから始まった。これは静かな作業だからだ。四本に四五分を費やした。古い燃料を捨て、新しい燃料を入れる。同じように牽引し、ピストンを上下させる。そして、今度は牽きがけでエンジン始動を試みる。
動いた。
装甲トラック、装甲ワゴン、軽戦車を、オムスビが付いているバスの近くに集結させる。
軽戦車の砲塔上で、相馬が見張り、俺と金吾でオムスビ外しを始める。適当なジャッキが見つからず、近くに放置されていたオフロード四駆からジャッキを拝借する。おそらく強度不足だろうが、少し持ち上がればそれでいい。
まず前輪から、そして後輪。オムスビはタイヤよりも重いし、タイヤのように転がして移動できない。
トラックの荷台に上げる作業は、三人がかりとなった。
三人は、すぐに各車に乗り込む。俺は軽戦車。相馬は装甲トラック。金吾が装甲ワゴンだ。
俺は砲塔のハッチを閉めることを忘れていた。運転席から這いだし、砲塔に登る。そして、ハッチを閉めていると、ドラキュロが一頭姿を現した。
こちらに突進してくる。
俺は運転席に滑り込み、ハッチを閉じた。息が荒く、心臓の音まで聞こえる。小便を漏らしそうだ。金吾と相馬は、食べ物を持っていない。水はわずかだ。
今回のもう一つの目的である、モンブラン山を確認するため、全速で追ってくるドラキュロを無視するように北に向かった。
氷河湖は美しかった。氷河は白く、水は青い。相馬が、「パタゴニアの氷河とは違いますね。ペリトモレノ氷河は、青と緑の間くらいの色だった……」という。独り言であり、俺たちに同意を求めてもいた。
「あれが、モンブランかな?」と問うと、二人は黙り込んだ。俺を含めて知らないのだ。
金吾が、「富士山ならわかるけど、浅間山であやしいっす」と受けた。
「映像に撮って帰ろう」と俺が促す。すでに、相馬がカメラを回している。
俺が軽戦車の上で警戒をしていると、金吾が折り畳みのバケツを持ち出して、氷河の水で洗車を始めた。埃が落ちて、白い車体が美しい。
相馬はガラス面の清掃にとどめた。
非常に寒い。気温計は摂氏二度を指している。息が真っ白だ。今夜はここに泊まる。寒いので、ドラキュロに襲撃される可能性は低い。
帰路は、車輌を見つけると、使える物資がないか調べながらとなった。ドラキュロがいれば、その場を立ち去り、いなければ簡単に調べる。釣果は少なく、タイヤチェーンが何組か確保できた程度だ。
積荷調査には時間がかかる。また、時間の無駄がほとんど。
これが最後と、無人のゲレンデワーゲンの車内を調べる。大きなスーツケースが後部座席にある。
普通は開けないが、開けてみた。大量のドル札と小ぶりな麻袋が四つ入っていた。ドル札に用はないが、麻袋の口を開ける。メイプルリーフ金貨がぎっしりだ。
これはもらっていこう。
金吾は、近くで半没しているランドローバーのピックアップの荷台を物色している。何かを見つけたようだ。装甲トラックの荷台に木箱を放り込んでいる。
俺も金貨の袋を荷台に置いた。
金吾に「それ、何ですか」と問われて、「金貨だ」と答える。「そっちは?」と問うと、「MG3です」と答えた。そして、「手伝ってください。カール・グスタフもあるんです」と、俺は何だかわからぬまま、金吾を手伝った。トラックの荷台には無線や登山で使うピッケルも積まれている。使えそうなものは何でもだ。
相馬が右手でサインを送ってきた。ドラキュラだ。
すぐに移動する。
三日をかけて、北の峠に至った。朝晩の通信で、キャンプに状況を伝えているが、キャンプは平穏のようだ。今日中に登り切り、夜間も走行して南の峠まで進むつもりでいた。
北の峠への上りに近付くと、先頭を走る金吾が何かを見つけた。
彼は視界のいい場所で止める。視界が悪いとドラキュロに忍び寄られるのだ。視界の良し悪しは生死に関わる。
俺たちは見るはずのないものを見ていた。
二人の人間?が、峠に至る斜面の途中で手を振っている。中腹ではなく、麓から少しだけ登ったあたりだ。一人はタオルのようなものを振り回し始めた。
しかし、声を発してはいない。聞こえるはずのない距離で、声を発することは無駄。その声はドラキュロを呼び寄せる。
人間らしき動物は、俺たちが気付いたことを確認した。
二人は女性だった。一人は三〇代、一人は一〇代か?
二人ともヨーロッパ系の顔立ちで、この世界の人間ではない。
一〇代は水平二連のショットガンを、三〇代は槍のようなものを持っている。
彼我の距離は五〇メートル。こちらは、三人とも重武装だ。
二人とも栄養状態が悪そうではないし、衣服がボロボロということもない。密林の王者のような状態ではない。
三〇代の女が何かをいった。三回目で、意味を解した。
「貴方たちは誰?」だ。
何と答えたらいいのか迷った。
金吾が、「日本から来た!」と答える。まぁ、その通りだ。
一〇代が、「日本って、オーストラリアの隣でしょ!」と。それはニュージーランドだ。
相馬が「君たちは!」と問う。
二人は顔を見合わせた。三〇代が、「一言じゃいえない!」と答えた。
間違ってはいても日本を知っているということは、この世界で世代を重ねた人ではない。
相馬が、「食べ物は持っているか!」と問う。三〇代が「あるわ!」と答える。嘘ではないだろう。
続けて、「イギリス人か!」と問うと、一〇代が「私はね!」と答える。
ドラキュロが姿を現す。
俺たちは各自のクルマに乗り、彼女たちは徒歩で斜面を登った。
洞窟と見紛う大きな岩の陰に、白色のオフロード四駆が隠されていた。俺たちが近付いていく。
彼女たちは、自分たちのクルマの前で待っていた。周囲に木々はなく、草はまばらで丈も低い。南側は絶壁、北側は断崖。車輌が通れる通路は通ってきた一本だけだ。
俺たちは車体で遮蔽し、そこで彼女たちと話を始めた。
三〇代が、「貴方たち人間?」と尋ねる。俺は、「同じ質問をしたい」と尋ね返した。
三〇代が、「北京オリンピックの男子一〇〇メートルの金メダリストは?」と問う。
相馬が、「ボルトだったかな?」と答えた。
三〇代が、「ごめんなさい。私は知らないの。北京って、日本の首都でしょ」といった。
相馬が、「北京は中国の首都。日本の首都は東京」と訂正する。
三〇代が、「本物の人間みたいね。善人か悪人かは別にして……」と応じる。その通りだ。
三〇代が「ベルタよ」と手を差し出し、相馬が「ソウマです」、金吾が「キンゴ」と名乗った。周囲に神経を集中していて、俺は名乗らなかった。
一〇代が「アビー」と名乗った。
アビーが「助けて欲しい。もう、二人ではどうにもならないの」と言った。
相馬が俺に「どうします」と問うが、俺はベルタに「クルマは動くのか?」と問う。
ベルタが「動かないわ……」と答え、「戦車で牽引するので、そのクルマに乗ってくれ」と言うと、アビーが「乗せてくれないの?」と尋ね返した。
相馬が、「運転中に後ろから襲われる可能性がある」と答えた。アビーが「私たちが信用できないの?」と尋ね、金吾が「当然でしょ」と即答する。ベルタはうんざりしたような顔をして、「当然よね」と俺たちに同意した。
軽戦車と彼女たちのクルマを牽引ロッドでつなぐ。
ここは危険だ。早く立ち去りたい。
先頭を軽戦車、次が装甲ワンボックス、最後尾が装甲トラックの順で、南の峠を目指した。
カーダングの南郊外で小さな部品屋を営むディーノは、五年前にこの世界にやって来た。大変な苦労の末、どうにか廃材部品の販売という生活の糧を見つけていた。
彼は、ユウナちゃんと同年齢の女の子を育てていた。生活は、どう見ても楽ではない。たぶん、食べ物にも窮している。
俺と斉木が屋外に並べられたわずかな機械部品を物色しながら、日本語で話をしていると、彼は「日本人か?」と英語で尋ねてきた。
俺と斉木は驚いた。
斉木が「そうだ」と答えると、彼も驚いていた。
俺と斉木は、この世界の人々、この世界で世代を重ねた人々を信用していいものか、判断できずにいた。見かけは親切だが、それが本心なのかどうか……。
混乱の二年間で養われた猜疑心と、カンのようなものが、警戒心を増幅している。
五年前、元の世界の俺たちより四四時間前に〝ゲート〟に突入したディーノは、グループの全滅を経験していた。
その程度は話すが、多くは語らない。女の子の表情も暗い。
我々は情報を欲しており、彼と年齢が近い斉木と能美が回数を重ねて、ディーノのバラックを訪ねた。
ディーノは観光で、日本を訪れたことがあるそうだ。日光の話を何度もするが、この五年間のことは語らない。
斉木と能美による六回目の訪問の際、ディーノは二人の顔を見ると同時に「何でもするから、助けて欲しい。かくまってくれ!」と懇願した。
ディーノの切迫した表情に異常を感じた斉木と能美は、ディーノと女の子をエノクの後部座席に乗せて、即座にキャンプに戻ってきた。
女の子は額に怪我をしていて、能美が手当てをしたがったが、斉木はエノクを停車しなかった。それは、賢明な判断だった。
ディーノの存在は、キャンプでは共有された情報であった。だから、二人が現れても、驚きはなかったが、二人の痩せた身体には、ある種の異様さがあった。俺も、女の子とユウナちゃんの体格の差に慄然とした。
すぐに粥が用意され、二人は黙々と食べていた。
女の子は清潔ではあったが、衣服は古く粗末だった。着替えが用意され、傷の手当てと、診察も行われた。
斉木が、能美が医師であり、納田が看護師であると告げると、ディーノは泣いて感謝の言葉を口にした。
ディーノは、ルサリィを警戒した。だが、テュールとマーニを見て、少し考えを変えたようだ。
女の子の名はシルヴァ。一三歳。北欧系の顔立ちで、金髪。この世界の人たちとは、風貌が違う。ディーノは祖父で、父母と弟、そして祖父とともに、この世界にやって来た。
ディーノによれば、家族では彼とシルヴァだけが生き残ったそうだ。
シルヴァが、街の子供たちに石を投げられ、「じじいは殺され、お前は白魔族に売られる」と言われたそうだ。
ディーノは、それを子供の脅しではなく、真実と受け取っていた。逃げたくても、クルマも銃もなく、途方に暮れているところに、斉木と能美がやって来た。
ディーノが斉木と能美に助けを求めたのは、咄嗟の判断らしい。
ユウナちゃんは、シルヴァをテントの一つに連れて行った。そのとき、シルヴァは怯えていたが、ちーちゃんとマーニ、ケンちゃんとワン太郎が加わって、こわばりながらも笑顔を見せていた。
ディーノは多くを語ろうとしない。
だが、ラジエーターの所在を教えてくれた。
ディーノたちはクレーンヘリを使う大がかりな方法で、鍋から車輌を搬出し、北に向かった。道中ドラキュロに襲われ、鍋の北、走行距離二五〇キロ付近で包囲され、全滅したという。
そこに四〇から五〇台の車輌が残置されている。北の平原を南から北に流れる川沿いに走れば、必ず見つけられるらしい。東岸に石造りの村があり、そこが最終地だったそうだ。
我々の意思決定は全体会議で決められる。互いの行動は制限しないし、個々の意思は尊重される。
だが、この状況下では集団での行動が身を守る最善の策であることは、誰もが理解していた。
今夜の歩哨は、片倉と斉木だ。二人は無線で、会議の状況をモニターしている。会議には、当然の権利として、ディーノとシルヴァも出席し、能美が通訳をする。テュールとマーニへの通訳はルサリィ、ルサリィへの通訳は相馬が担当。
俺が「二号車を直したい。ラジエーターを確保するため、北の草原に行きたい」と希望した。
相馬が、「北方への探検は必要だし、その事前調査としては意味がある」と賛成する。
だが、「北へは行けないでしょう」と金沢。「そうですね」と金吾が金沢に同意。珠月が「でも、二号車が修理できないと、私たちはどこにも行けない」と意見を述べる。
金吾が「二号車は放棄を考えたほうが……」と自説を譲らないと、納田が「前輪が駆動しないダンプローダーは、これ以上進めないでしょ。いまでもクルマが少ないのに、修理できるものを捨てていては、すぐに行き詰まっちゃうよ」と金吾に反対する。
ディーノが「北に進むと、山岳地帯に行き当たり、その先はクルマでは進めない」といった。そして、「追い詰められて、逃げ込んだ無人の村で、すごい数の動物に襲われたんだ……」と当時の状況を話した。目には涙があった。
金沢が「北方大山脈がアルプスだという確率は何パーセント?」と誰にも答えられない質問をする。
ディーノが「一〇〇パーセント、だと思う……」と自信なげにいう。全員がディーノに注目する。
「山容は少し違うようだけど、北にモンブラン山が見えた……。真っ白だったよ。巨大な氷河湖があって……」
「それは、確認の必要があるね」と、無線から斉木の声が聞こえてきた。
モンブラン山の確認とラジエーターの確保を目的とした、北方探査が決定した。
もう一つ大きな問題がある。ディーノが語った、白魔族との交易〝品〟のことだ。中央平原の人々は、白魔族と交易しているらしい。そのための唯一の商品が、人間の子供だという。白魔族は、定期的に人間の子供を買いに来る……と、ディーノはいった。
そして、孤児や親の保護力の弱い一二歳以下を対象にした〝子供狩り〟が始まっていると。デリング一家がテュールとマーニを拘束しようとしたのも、これが原因の一つかもしれない。
中央平原の人々は、工業製品をほとんど作れない。すべては、白魔族から買っている。そして、白魔族が欲するものが、人間の子供。子供をどうするのかは、一切不明。家畜として働かせるとも、食うともいわれている。
白魔族は、鬼神族や精霊族と異なり、人間を野生動物と同程度に認識しているらしい。また、白魔族は好戦的でもあるようだ。
しかし、ディーノ自身も白魔族について、「よく知らない」と語る。
どちらにしても我々の子供たちが、〝子供狩り〟の対象になり得る。
防衛体制を固める必要がある。
北方調査の準備は、翌日早朝に始まり、その翌日には開始されることが決まった。
使用する車輌はスコーピオン軽戦車。参加は、俺(半田)、金吾、相馬の三人。
他のメンバーは、我々のキャンプに籠もって、俺たちの帰りを待つ。
キャンプは、回収した流木で、南と西に柵を築き、柵の内側には土塁がある。簡単には侵入を許さない。ドラキュロ対策ために作った防御柵だが、人間相手にも十分役立つ。
当然、夜襲を警戒していたし、攻撃を受ければ容赦なく反撃するつもりでいた。
俺たちは、ボンベ内に圧力をかけ、内部のガソリンを噴射する火炎放射器まで作ってあった。
北への出発を控えた前日の夕方、一〇代の男女がキャンプの入口にやって来た。
男が「どんな仕事でもします。砦に入れてください」と懇願する。
金吾と金沢、ルサリィが近付いて話を聞くと、妹が連れて行かれそうだという。
柵の内側に入れ、土塁との間の広場で事情を聞く。
男女は中央平原西部域の出身で、兄妹でこの付近に逃げてきた難民だそうだ。湖の北岸に兄妹のキャンプがあるという。だが、難民グループに対して一二歳以下の子供一〇人の供出を、カーダングの有力者から要求され、難民側は一四歳にしては小柄な妹を候補にしたらしい。
そして、二人で逃げてきた。
刃物を含めて武器らしいものは一切なく、ウマにも乗っていなかった。我々は、一応保護することにした。
ただし、ログ小屋に半監禁とすることを了解させた。二人は怯えていたが、我々も怖いのだ。
翌日の日の出前、俺たち三人は北に向かって出発した。金吾が砲身に直角に交差するステーを取り付け、それに四連のライトを付けてくれた。砲塔と連動して三六〇度旋回し、俯仰の照射もできるのだが、主砲が撃てない。主砲を発射する予定はないが。
ディーノが参加したグループは、平和を愛する人々で、争いを求めないことから、武器はなかったそうだ。ディーノたちは大量の物資を持っており、建設機械も多数あった。しかし、戦車や装甲車といった戦闘車輌はもちろん、野生動物から身を守るための銃器も欠いていたらしい。
ディーノたちのグループの作業途中で〝ゲート〟から現れて参加したグループには、軍隊もどきの武装集団もいた。多数の装甲車を目撃したそうだ。
彼らが期待した平和は、未来の世界にはなかった。新世界を支配するドラキュロには、人間は餌でしかなく、平和を愛する心などまったく存在しなかった、というわけだ。
北の山脈を登り、ヘリコプターの横を通り過ぎ、南の峠に至った。ここまでは、完全ではないが調査している。
ドラキュロはいるが、こちらが高速で移動するので、追いかけてはこない。
南の峠の下りは九十九折りで、速度は出せないが、岩場のためか、ドラキュロの姿がない。
峠を降りるのに半日かかった。
川の東岸に出るのに四時間かかる。すでに日没に近い。
今夜はハッチを閉じて、戦車の中で寝る。排泄と給油以外は車外に出ない。そのために、男だけのチームにしたのだ。ジェリカンは一〇缶携行している。
川の東岸を北に進む。西の山脈から川に注ぎ込む小河川は多いが、東側の平原には小川や池はまったくない。乾燥していて、丈が一メートルほどの草と、わずかな低木しかない。
戦車だけの旅は身軽だ。一時間に三〇キロは進める。今日の夕方には、遺跡のような村に着くだろう。
目の前に突然、パネルトラックが飛び込んできた。危うく側面に衝突するところだった。
トラックは半没していて、荷台半分より下が地中にある。車輪は完全に埋まっている。
その後も、ディーノのグループと関係があると思われる車輌が、多数放棄されていた。車輌は点々と北に向かっており、死体なき死者の行進のようであった。
実に気の滅入る光景だ。
夕方、ようやくそれらしい石造りの村に達する。平地に造られたマチュ・ピチュのようだ。
この付近は寒冷で、草の丈が低く、見晴らしがいい。地面は北に向かって、やや登っている。村の北方数キロに氷河湖らしい水面が見える。
村は高さ一・五メートルほどの石の壁で囲まれていて、草は生えているが荒れた雰囲気ではなかった。ただ、静かで、冷涼な空気と相まって、緊張を強いる。
村の内側と外壁の周囲に、クルマが点在している。クルマの表面には厚く砂が積もっていて、車内はうかがえない。多くは民間の小型四輪駆動車だ。トラックは極端に少ない。
その少ないトラックを調べる。目的はラジエーター。
相馬が石壁の上で、周囲を警戒する。ドラキュロの姿はないが、連中が俺たちに気付けば音もなく集まっているので油断できない。
金吾が、「半田さん、これ装甲トラックですよ」と小声で言う。見かけはパネルバン風のオフロードトラックだが、確かにキャビンの鉄板が厚い。塗色は白で、見かけはただの小型キャブオーバートラックなのだが……。
金吾が、「これ、ESKムンゴが原型の貨物トラックぽいですよ」と説明するが、俺にはよくわからない。車体長は二トントラックよりやや短く感じるが、前輪車軸にデフがあることから、四駆であることに間違いはない。
荷台の幌は風で飛ばされたのかなくなっているが、断面が四角いロールバー風の幌骨は残っている。缶詰やレトルト食品が散乱している。ダンボール箱の残骸がわずかに残る。雨に打たれてダンボール箱が崩れ、太陽に照らされてダンボールが乾き、風に飛ばされた後、中身だけが残ったのだ。キャビンには誰も乗っていない。
もう一台、ワンボックスタイプの同型がある。この車輌は黒く塗装されていた。比較的大きな窓があり、それが防弾ガラスであることが一目でわかる。
車体後部には、防弾ガラスがはめ込まれた観音開きのドアがある。
防弾ガラスを手でぬぐい内部を覗く。暗いが、誰も乗っていないようだ。
金吾が後部乗降ドアを開けて、車内を観察するためにバンパーに乗る。車内の豪華さに呆れる。まるで、リムジンだ。シートは左側面にソファーが、右側面にはバーカウンター風のテーブルがある。車体の右側面にスライド式の乗降ドア。後部の乗降ドアは緊急脱出用か荷物の出し入れ用らしい。車体後部にも豪華なシートが置かれている。
運転席側に回ると、シートが豪華なだけで、ダッシュボード周りはごく普通。トランスミッションはマニュアルで、ハイ/ローのトランスファーがある。四駆と二駆の切り替えがない。フルタイム四駆のようだ。
エンジンの位置を確認し、ラジエーターの取り外しを考えるが、少し難しそうだ。キャブオーバー車よりも、ボンネット型のほうが作業は容易だ。
金吾がエンジンルームを点検している。
俺は金吾から離れ、欧州製のジープ型四駆車に近寄る。
四ドア+リアハッチだが、リアハッチと運転席側のドア開いており、車内には誰もいない。乗ってはいたのだろうが、ドラキュロに持っていかれたのだろう。
ボンネットを開けると、簡単に取り外せそうな立派なラジエーターがある。
俺は、金吾と相馬に作業を始めると告げ、軽戦車から工具を持ち出した。
相馬は、ドラキュロの姿を見ていないと、手信号で報告する。
金吾が近寄り、作業を手伝う。金吾も俺も銃を背負い、腰の拳銃は薬室に装弾し、いつでも戦える準備をしている。
金吾が「あのクルマ動きますよ。エンジンオイルに粘りがあるし、ミッションやデフのオイルもそれほど劣化していないでしょう。
タイヤに空気を入れて、セルさえ回れば動くかも」と俺に小声で伝える。
俺は「もう一台はどう?」と尋ねる。金吾は「調べます」と答え、俺の隣から去った。
相馬が走ってくる。俺と金吾が緊張する。金吾は背負っていた銃を構える。
相馬が俺に近付いてくると、金吾も戻ってきた。
「向こうに面白いものがあります。作業の後で!」と言って持ち場に戻る。
金吾が一瞬スキップをするように走り、もう一台の平ボディ装甲トラックに向かう。
ラジエーターを外すのに一時間三〇分もかかった。静かに作業しているが、ドラキュロに気付かれる可能性が高い。一〇〇〇年前の調査によれば、連中は視覚・聴覚・臭覚に優れているらしい。
俺が取り外し作業を終え、ラジエーターを軽戦車の砲塔に縛り付け終わると、今度は俺が周囲警戒にあたる。相馬は大きめのマイクロバスらしい中型車に向かう。
そして、何かを確認したのかすぐに戻ってきた。
「オムスビが着いています。大型車用のオムスビです」
オムスビとは、一号車に取り付けてある三角形の履帯のことだ。タイヤと交換して、圧倒的な走破性を得られる。
金吾も来た。「バッテリーを交換しました。エンジンをかけてもいいですか?」と問う。
どんなエンジン音か不明だし、マフラーでも破ければ、とんでもない音が響く。ドラキュロを呼びかねない。
俺は、「相馬さんがオムスビを見つけた。それを外そう」という。「外しても戦車には積めないから、持って帰れませんよ」と金吾。
「トレーラーは……」と相馬が周囲を探すが、都合よく便利なものは落ちていない。
金吾が、「トラック直しましょうよ」とたたみかける。相馬もそちらに傾いている。
ニワトリが先か、タマゴが先か。オムスビの取り外しが先か、それを積むトラックの修理が先か。俺は、首を縦に振った。
トラックが先になった。
トラックのバッテリーは、自動車用リチウムイオン型で、セルを回せば始動する可能性もあった。だが、エンジン内の潤滑のために一度はゆっくりとピストンを上下させたい。それに、古い燃料は抜いたほうがいい。
燃料タンクのドレンプラグを外して、燃料を抜き取り、フューエルフィルターを外して、そこの燃料も捨てた。
すべて地面への垂れ流しで、環境汚染が甚だしい。だが、いまは命がけ。寸刻を争う。
フューエルフィルターを戻し、燃料タンクのドレンプラグを閉め、そして予備用に持ってきたジェリカンから軽油を入れる。
金吾と相馬の動きがいい。手早い。
イグニッションはキーレスで、軍用車と同じ方式。ONにすると赤いランプが付いた。電気系は生きている。
イグニッションを切る。そして、軽戦車で牽引する。三速にギアを入れることで、クランクシャフトが動いて、ピストンを上下動させる。本当はグロープラグを外して、圧縮させないほうがいいのだが、そんな時間はない。
俺たちはドラキュロの群れの只中にいるのだ。
相馬がタイヤを点検する。目視では、ひび割れはない。
周囲を一回りして、ピストンの運動は終わり。
次に、油圧式フットポンプでタイヤにエアを送り込む。これは重労働だ。発電機を必要とする電動ポンプはキャンプに置いてきた。
途中で金吾が変わる。相馬と金吾で、どうにか通常の圧まで入った。
セルを回すと、エンジンが始動した。吹かしたいが、金吾は軽くアクセルを踏むだけにとどめる。
相馬が荷台の観音扉を開け、どこで見つけてきたのか、スコップで荷台の積荷を捨てている。
周囲にドラキュロの姿はない。
異常なほど、喉が渇く。
すでに正午を過ぎているが、喉は渇くが腹は減らない。
一刻も早く、この地を去りたい。
金吾が、「もう一台直しましょう。これが動いたんだから……」といい出した。意外にも相馬が同調する。
「装甲トラックに装甲ワゴンがあれば、二号車は放棄していいかも、ですね」
確かに一利ある。
今回はタイヤの空気入れから始まった。これは静かな作業だからだ。四本に四五分を費やした。古い燃料を捨て、新しい燃料を入れる。同じように牽引し、ピストンを上下させる。そして、今度は牽きがけでエンジン始動を試みる。
動いた。
装甲トラック、装甲ワゴン、軽戦車を、オムスビが付いているバスの近くに集結させる。
軽戦車の砲塔上で、相馬が見張り、俺と金吾でオムスビ外しを始める。適当なジャッキが見つからず、近くに放置されていたオフロード四駆からジャッキを拝借する。おそらく強度不足だろうが、少し持ち上がればそれでいい。
まず前輪から、そして後輪。オムスビはタイヤよりも重いし、タイヤのように転がして移動できない。
トラックの荷台に上げる作業は、三人がかりとなった。
三人は、すぐに各車に乗り込む。俺は軽戦車。相馬は装甲トラック。金吾が装甲ワゴンだ。
俺は砲塔のハッチを閉めることを忘れていた。運転席から這いだし、砲塔に登る。そして、ハッチを閉めていると、ドラキュロが一頭姿を現した。
こちらに突進してくる。
俺は運転席に滑り込み、ハッチを閉じた。息が荒く、心臓の音まで聞こえる。小便を漏らしそうだ。金吾と相馬は、食べ物を持っていない。水はわずかだ。
今回のもう一つの目的である、モンブラン山を確認するため、全速で追ってくるドラキュロを無視するように北に向かった。
氷河湖は美しかった。氷河は白く、水は青い。相馬が、「パタゴニアの氷河とは違いますね。ペリトモレノ氷河は、青と緑の間くらいの色だった……」という。独り言であり、俺たちに同意を求めてもいた。
「あれが、モンブランかな?」と問うと、二人は黙り込んだ。俺を含めて知らないのだ。
金吾が、「富士山ならわかるけど、浅間山であやしいっす」と受けた。
「映像に撮って帰ろう」と俺が促す。すでに、相馬がカメラを回している。
俺が軽戦車の上で警戒をしていると、金吾が折り畳みのバケツを持ち出して、氷河の水で洗車を始めた。埃が落ちて、白い車体が美しい。
相馬はガラス面の清掃にとどめた。
非常に寒い。気温計は摂氏二度を指している。息が真っ白だ。今夜はここに泊まる。寒いので、ドラキュロに襲撃される可能性は低い。
帰路は、車輌を見つけると、使える物資がないか調べながらとなった。ドラキュロがいれば、その場を立ち去り、いなければ簡単に調べる。釣果は少なく、タイヤチェーンが何組か確保できた程度だ。
積荷調査には時間がかかる。また、時間の無駄がほとんど。
これが最後と、無人のゲレンデワーゲンの車内を調べる。大きなスーツケースが後部座席にある。
普通は開けないが、開けてみた。大量のドル札と小ぶりな麻袋が四つ入っていた。ドル札に用はないが、麻袋の口を開ける。メイプルリーフ金貨がぎっしりだ。
これはもらっていこう。
金吾は、近くで半没しているランドローバーのピックアップの荷台を物色している。何かを見つけたようだ。装甲トラックの荷台に木箱を放り込んでいる。
俺も金貨の袋を荷台に置いた。
金吾に「それ、何ですか」と問われて、「金貨だ」と答える。「そっちは?」と問うと、「MG3です」と答えた。そして、「手伝ってください。カール・グスタフもあるんです」と、俺は何だかわからぬまま、金吾を手伝った。トラックの荷台には無線や登山で使うピッケルも積まれている。使えそうなものは何でもだ。
相馬が右手でサインを送ってきた。ドラキュラだ。
すぐに移動する。
三日をかけて、北の峠に至った。朝晩の通信で、キャンプに状況を伝えているが、キャンプは平穏のようだ。今日中に登り切り、夜間も走行して南の峠まで進むつもりでいた。
北の峠への上りに近付くと、先頭を走る金吾が何かを見つけた。
彼は視界のいい場所で止める。視界が悪いとドラキュロに忍び寄られるのだ。視界の良し悪しは生死に関わる。
俺たちは見るはずのないものを見ていた。
二人の人間?が、峠に至る斜面の途中で手を振っている。中腹ではなく、麓から少しだけ登ったあたりだ。一人はタオルのようなものを振り回し始めた。
しかし、声を発してはいない。聞こえるはずのない距離で、声を発することは無駄。その声はドラキュロを呼び寄せる。
人間らしき動物は、俺たちが気付いたことを確認した。
二人は女性だった。一人は三〇代、一人は一〇代か?
二人ともヨーロッパ系の顔立ちで、この世界の人間ではない。
一〇代は水平二連のショットガンを、三〇代は槍のようなものを持っている。
彼我の距離は五〇メートル。こちらは、三人とも重武装だ。
二人とも栄養状態が悪そうではないし、衣服がボロボロということもない。密林の王者のような状態ではない。
三〇代の女が何かをいった。三回目で、意味を解した。
「貴方たちは誰?」だ。
何と答えたらいいのか迷った。
金吾が、「日本から来た!」と答える。まぁ、その通りだ。
一〇代が、「日本って、オーストラリアの隣でしょ!」と。それはニュージーランドだ。
相馬が「君たちは!」と問う。
二人は顔を見合わせた。三〇代が、「一言じゃいえない!」と答えた。
間違ってはいても日本を知っているということは、この世界で世代を重ねた人ではない。
相馬が、「食べ物は持っているか!」と問う。三〇代が「あるわ!」と答える。嘘ではないだろう。
続けて、「イギリス人か!」と問うと、一〇代が「私はね!」と答える。
ドラキュロが姿を現す。
俺たちは各自のクルマに乗り、彼女たちは徒歩で斜面を登った。
洞窟と見紛う大きな岩の陰に、白色のオフロード四駆が隠されていた。俺たちが近付いていく。
彼女たちは、自分たちのクルマの前で待っていた。周囲に木々はなく、草はまばらで丈も低い。南側は絶壁、北側は断崖。車輌が通れる通路は通ってきた一本だけだ。
俺たちは車体で遮蔽し、そこで彼女たちと話を始めた。
三〇代が、「貴方たち人間?」と尋ねる。俺は、「同じ質問をしたい」と尋ね返した。
三〇代が、「北京オリンピックの男子一〇〇メートルの金メダリストは?」と問う。
相馬が、「ボルトだったかな?」と答えた。
三〇代が、「ごめんなさい。私は知らないの。北京って、日本の首都でしょ」といった。
相馬が、「北京は中国の首都。日本の首都は東京」と訂正する。
三〇代が、「本物の人間みたいね。善人か悪人かは別にして……」と応じる。その通りだ。
三〇代が「ベルタよ」と手を差し出し、相馬が「ソウマです」、金吾が「キンゴ」と名乗った。周囲に神経を集中していて、俺は名乗らなかった。
一〇代が「アビー」と名乗った。
アビーが「助けて欲しい。もう、二人ではどうにもならないの」と言った。
相馬が俺に「どうします」と問うが、俺はベルタに「クルマは動くのか?」と問う。
ベルタが「動かないわ……」と答え、「戦車で牽引するので、そのクルマに乗ってくれ」と言うと、アビーが「乗せてくれないの?」と尋ね返した。
相馬が、「運転中に後ろから襲われる可能性がある」と答えた。アビーが「私たちが信用できないの?」と尋ね、金吾が「当然でしょ」と即答する。ベルタはうんざりしたような顔をして、「当然よね」と俺たちに同意した。
軽戦車と彼女たちのクルマを牽引ロッドでつなぐ。
ここは危険だ。早く立ち去りたい。
先頭を軽戦車、次が装甲ワンボックス、最後尾が装甲トラックの順で、南の峠を目指した。
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