どちらと結婚するのですか

ざっく

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第一章

可愛い婚約者

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「ディシール。あなたにはがっかりしました。ご自分の裁量がどこまでかも、理解していなかった、ということですか?」

 厳しく問えば、項垂れた頭から、声が届いた。
「返す言葉もございません」

視線を横にずらして、呆然と立ち尽くしている殿下を見る。

 「殿下、婚約者とのことですが」
 「あ、ああ・・・」
 歯切れが悪い。
 「そうです!婚約者なのに、許可がいるとおっしゃるのですか!?」
 『婚約者』という言葉が出てきただけで騒ぎ出す令嬢。
 うるさい。

 「シア、黙らせなさい」

 魔術師に視線もむけずに命じれば、沈黙の魔術が動く気配がした。
 驚いたように目をむくマリエが、魔術師に向く。
 「私がいるのです。当たり前でしょう。殿下が私に許可を得て、その上で入室を許可したならば、このような状態にはありません」
 王族とはいえ、侯爵たるわが家も、王家に連なるもの。
 それが同席していると言うのに、得体のしれない人間を勝手に招待するなど、侮辱ととらえられても仕方がないのだ。

 マリエが身についけている指輪に目を走らせれば、細い指に不釣り合いなほど大きな宝石の付いた指輪をはめていた。
 「殿下、婚約はどのように決定するか、ご存知ですか」
 「……知っている」
 ええ、知っているのは分かっていて、訊いた。
 「私との婚約はお嫌だったようで」
 「そんなことはっ……!」

 殿下が叫ぶ手には、計算を正しくした書類がある。
 私の価値が高まったということだろうか。
空々しくて、いっそ、笑える。

 王太子という立場にある殿下の婚約者となれば、将来は王妃となる。
 資質も、才能も、家柄も、民からの人気も必要となるのだ。
それを見極めるために、元老院が動く。
 一朝一夕に決定されるものではない。

 そのために、アリティも努力していた。
 婚約者として、認められるために。
 というか、資質、才能、家柄までは、アリティはクリアしていたので、問題は性格だったのだが。
 傲慢でワガママ。
 けれど、外で猫を被れるのだから、民からの人気も得られるだろうと判断されそうなところまでいっていると聞いていた。
 それゆえ、アリティのワガママは、王宮に押し掛けることさえ許されていた。

 このままいけば、ほぼ、確実にアリティが婚約者として立ち上がり、結婚までいくことだろう。

 それが、王太子は気に入らなかったのだろう。
 可愛い花嫁が欲しかったのか、マリエに気持ちが向かったのだ。

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