どちらと結婚するのですか

ざっく

文字の大きさ
11 / 35
第一章

真打?

しおりを挟む
 マリエと殿下が、大ゲンカを始めたのを横目に見ながら、帰ろうと思った。
 ここにいる必要はない。二度と来ることもないだろう。
そう思いながら、振り返ると、驚くほど近くに算術師がいた。
 ちょっと、体がびくってしてしまった。

 「アリティ様」
 「はい?」
 すごくびっくりはしたものの、しっかりと返事をした。

 「私と結婚してください」

 「……はい?」
 「よかった!では」
 満面の笑みで、私の手を取り、抱き寄せようとする算術師を、両手で阻止しながら叫んだ。
 「ちょ、ちょ!その、はいじゃない!待ちなさい!」
 「身分は大丈夫です。私は殿下の従兄弟ですので」

 今気にしなきゃいけないのは、身分とかじゃない!

 「知ってるけど、待ちなさいって!」
 理知的な青い瞳が覗き込むように、目の前に現れる。
 「先ほどの、麗しい姿に一目ぼれしてしまいました。しかも、大変優秀だ。手に入れたいと考えても無理のない話でしょう?殿下との婚約のお話もなくなったようですし、私と結婚しましょう。私には特にしがらみもないので楽ですよ?さあ、行きましょう」
 「どこに!?ってか、あんた公爵でしょ!?どこがしがらみがないって…・・・どこ触ってるの!」
 すでに、言葉を繕うこともできず、不埒な手を叩き落としてしまった。
 そんな抵抗をものともせずに、するんと、腰を抱き寄せられてしまう。
 「もう爵位も継いでるし、地位も権力も持ってるから。結婚にあと必要なのは既成事実くらいですね」
 「ちょーっ!抱き上げないで!止めなさい!ディシー・・・」
 近くにいた近衛に助けを求めようとすれば、
 「おっと、もう他の男の名前を呼ぶ気ですか?潰しますよ?」
 低い声が耳元で囁いた。
 冗談っぽくない、真面目な声で。

 「怖いこと言わないで!無理――!」
 マジ泣きすれば、「どうしよう、そんな顔も可愛いなんて」と、気持ち悪いことをつぶやいていた。
 危ないやつがいる!

 「大丈夫です。しっかりと、愛しつくしましょう。声も出ないほどにどろどろに」
 開き直った!
 って、本当に無理だからっ……!

 「いやあああぁ」

 腰を抱きかかえられたまま、私は殿下の私室を後にした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

処理中です...