どちらと結婚するのですか

ざっく

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第一章

ちょっと爆発

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 「な、何故、アリティ、私を好きだったろう!?」
 慌てながらも、笑顔を張り付けた殿下が、まだ食い下がってくる。

 「いいえ?」

 「え?」

 全員の言葉が重なって。まあ、気が合ってよかったこと。
 わざと、顎を持ち上げ、傲慢な態度で殿下を見据えた。
 そのままの態度で、はんっと、鼻を鳴らした。
 下品でも知るものか。

 「王太子妃なんて、好き好んでなるはずがないでしょ?監視されるし、窮屈だわ、一日中猫かぶってなきゃならないわ!褒められもしないのに、文句だけ言われて。あー、いや、絶対いや」
 思いっきりため息をつきながら、手を振って、馬鹿にしたように笑った。
「だけど、この家に生まれた責任ってものがあるわけよ。教育を受けてきて、その責任は嫌だから放棄しますなんて言えないものなの。権利があれば、それ以上の重さの義務を負うのは当然でしょう?」
 こういうことって、知ってる?小さな子に教えてあげるように、わざとゆっくりとしゃべった。
「それを一緒に乗り越えようという相手が、ちょっと可愛い子がいたから手を出してみるなんて阿呆だったら、もう目も当てられない。孤軍奮闘を、トップでしろって?無理だ~とか思ってたら、そっちから、いろいろ仕掛けてきてくれるなんて。願ったりだわ。やったあ!とか思っても仕方ないでしょう?そうよね?それにのっかって、婚約しません宣言しちゃったりするのは、私の腕だと思うのよね!出来がいいわ、私ってば!」
 ふふっと、最後だけ、可愛らしく笑った。
 これ以上ないくらい馬鹿にされているのに、目を丸くしたまま動かない殿下から視線を外し、同じく呆然としている書記官から石板を受け取って、魔術師に渡す。
 「司法院に送りなさい」
 「はい」
 間髪入れずに返事をする魔術師に笑顔を向けた。
 正気に戻った殿下が駆け寄ってくるけれど、近衛に視線をやれば、殿下をとどまらせてくれる。
 「公式記録を保存します」
 銀色の綺麗な光が舞って、石板がこの場から消える。

 銀色の光を最後まで見送って、被害者ともいえる令嬢へ視線を移した。
 「マリエ様」
 「は・・・い」
 魔術師は、別の魔術を使用したので、すでに沈黙の魔術は効力が切れている。

 どんな思惑だったのだろうか。
 誰が最初に画策したのかも、分からないけれど、浅はかすぎて、逆に心配になる。
 どう考えても、私によって計画が左右される、大博打なものだったはずだ。
 けれど、成功を疑いもせずに、殿下の私室など、逃れようのない場所で行うなど。
 その勇気に、今は祝福を贈ろう。

 「お幸せに」

 きれいに微笑んで見せれば、
 「えっ!?いや、ちょ・・・」
 「大丈夫ですわ。この部屋に、勝手に入ってきたことぐらい、揉み消します。指輪も、まあ、どうにかなるでしょう」
 幸い、殿下が持ち出した物だろうから、「彼女を繋ぎ止めておきたくて」くらい、大げさにアピールして見せればいい。
 大爆笑だ。
 マリエが、慌てて指輪を外して、殿下に返そうとしている。
 まあ、目の前で、自分一人に罪を被せられそうになったわけだし。
 堂々と別の女性を口説く姿を見せてしまったわけだし。
 殿下が残念すぎて、不安になる。

 けれど、他に婚約者候補はいない。
 マリエが名乗りを上げるのなら、それもいいだろう。

 近衛も、魔術師も、書記官も、その様子を呆れたように眺めていた。

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