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第一章
公式記録
「待て、アベル!その宣言は記録するな!頼む、アリティ、話を聞いてくれ!」
書記官が持ち上げる石板を押しとどめながら、殿下が割り込んできた。
「違うんだ。アリティ、私はあなたと婚約するつもりでいる。もちろんだ」
今更感の漂う空気が読めないようで、殿下は、そっと、私の手を持ち上げた。
にっこりと、今日初めての笑顔を向けられ、その返事として、しらっとした視線を殿下に向けた。
違うって、何が違うと言う気だろう。
「何か、誤解があるようだ。アリティ、分かってくれるだろう?」
首を傾げて、顔を覗き込んでくる顔は、整って、美しいと形容できるものだ。
サラサラの金髪が、頬に落ちて、翳りを帯びた表情になる。
長身を折り曲げるようにして、手を取られると、一つの絵のようで、うっとりしそうだ。
この状況でなければ。
マリエに視線をやると、大きな口を開けながら何か抗議している様子が見える。
黙らせおいてよかった。
手を殿下の手の中から抜き取り、そのままマリエの手を握りこむ。
左手を持ち上げ、大きな石を見せつけるように高く持ち上げた。
「では、この令嬢がこの指輪をはめているということは、令嬢がこれを盗んだということですか」
王妃に贈られるべき、指輪。
王族の、王妃たるしるしを盗むなど、重罪。判明すれば、よくて生涯幽閉だろう。
そもそも、この指輪を、一貴族が手にできるはずもない。
まだ、王太子たる殿下が、何故この指輪に手を付けられるのか分からないけれど、母親に借りてきたのだろうか。
「この部屋に入り込んだのは、この令嬢の独断。近衛はそれを止めることさえできなかったと」
「あ・・・ああ、そうだ」
本当に、この殿下は表情を隠すのが下手くそだ。
「書記官」
「嘘でございます!」
自分を犠牲にしても令嬢を守ろうとしたアベルは、令嬢を切り捨てようとした殿下を裏切った。
今の書記官は、偽ることができないため、今の言葉は真実だ。
忠誠を誓うべきはどちらかと問いたくなる行動だが、今の状況的には満点だ。
「記録を」
「はいっ」
待てっと、未だにしつこい殿下の言葉が聞こえたが、アベルの行動は早かった。
「アベル=フルーレが、記録する」
書記官が石板を掲げると、石板が光り、光の屑が文字になって石板に集まっていく。
書記官に許された、公式記録方法だ。
「私の宣言も記録されていますか?」
「はい」
「上出来です」
ほっと一息ついて、にっこりと笑った。
書記官が持ち上げる石板を押しとどめながら、殿下が割り込んできた。
「違うんだ。アリティ、私はあなたと婚約するつもりでいる。もちろんだ」
今更感の漂う空気が読めないようで、殿下は、そっと、私の手を持ち上げた。
にっこりと、今日初めての笑顔を向けられ、その返事として、しらっとした視線を殿下に向けた。
違うって、何が違うと言う気だろう。
「何か、誤解があるようだ。アリティ、分かってくれるだろう?」
首を傾げて、顔を覗き込んでくる顔は、整って、美しいと形容できるものだ。
サラサラの金髪が、頬に落ちて、翳りを帯びた表情になる。
長身を折り曲げるようにして、手を取られると、一つの絵のようで、うっとりしそうだ。
この状況でなければ。
マリエに視線をやると、大きな口を開けながら何か抗議している様子が見える。
黙らせおいてよかった。
手を殿下の手の中から抜き取り、そのままマリエの手を握りこむ。
左手を持ち上げ、大きな石を見せつけるように高く持ち上げた。
「では、この令嬢がこの指輪をはめているということは、令嬢がこれを盗んだということですか」
王妃に贈られるべき、指輪。
王族の、王妃たるしるしを盗むなど、重罪。判明すれば、よくて生涯幽閉だろう。
そもそも、この指輪を、一貴族が手にできるはずもない。
まだ、王太子たる殿下が、何故この指輪に手を付けられるのか分からないけれど、母親に借りてきたのだろうか。
「この部屋に入り込んだのは、この令嬢の独断。近衛はそれを止めることさえできなかったと」
「あ・・・ああ、そうだ」
本当に、この殿下は表情を隠すのが下手くそだ。
「書記官」
「嘘でございます!」
自分を犠牲にしても令嬢を守ろうとしたアベルは、令嬢を切り捨てようとした殿下を裏切った。
今の書記官は、偽ることができないため、今の言葉は真実だ。
忠誠を誓うべきはどちらかと問いたくなる行動だが、今の状況的には満点だ。
「記録を」
「はいっ」
待てっと、未だにしつこい殿下の言葉が聞こえたが、アベルの行動は早かった。
「アベル=フルーレが、記録する」
書記官が石板を掲げると、石板が光り、光の屑が文字になって石板に集まっていく。
書記官に許された、公式記録方法だ。
「私の宣言も記録されていますか?」
「はい」
「上出来です」
ほっと一息ついて、にっこりと笑った。
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