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クリスマス(良平2)
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幼馴染のやっている居酒屋についた。
実は、来るのは初めてだ。
大体、外見から異常に洒落ていて、あまり外に出ない・・・・・・新菜に言わせれば引きこもりの俺には非常に入りにくい店だからだ。
入口で名前を言うと、カウンター席に通された。無理矢理取った割に、他からちょっと離れて、静かでなかなかいい席だ。
そう思いながら座った途端、厨房から修也が出てきやがった。
店長、忙しいんだろ、出てくんな。
睨み付けているのに、気がついていても素知らぬ顔で話しかけてきやがった。
席を確保してくれたことは助かる。だから、ゲームアイテムでもやるから、出てくるな。
「初めまして。中山 修也です。良平の幼馴染でね、ここの店長やってます」
完璧無視か。
「君が、かっわいい、妹ちゃんかあ!いやあ、妹ができたとは聞いていたけど、いくら好みでも、いきなりひと回り下の妹に手を出すとは思わなかったよ!」
好みだとか、いらんことをバラすな!
いや、『噂のエロい』などと言われなかっただけ良い・・・のかもしれない。
新菜が呆然と修也を見上げていた。
俺とキャラが全く被らないとでも思っているんだろう。いや、実際被らないが。
こいつ、こんななりしてゲーマーだぞ。かくれオタクだぞ。
だけど、この場でバラすと、こっちまで痛い目に遭うので適当に誤魔化した。
飲みながら、妙にそわそわしていると思っていたら、やっぱり、
「ね、良平さん、私のこと好みだったの?」
などと新菜が聞いてきた。
瞬間、むせた。
ああ、聞かれるかもしれないと思っていたよ。だけど、スルーしていたじゃないか。聞かなかったことにしてくれると思っていたよ。
「だって、聞きたい」
「・・・・・・教えない」
「なんでっ」
「・・・・・・ロリコンだと思われるから」
くっそ、顔が赤くなっているのが分かる。なんだってこんな場所で、再婚のついでにできたひと回り下の妹が好みだったと友人に話していたことまでバレなきゃならんのだ。
格好悪すぎる。
ちらりと横を見ると、新菜は真っ赤な顔をして、満面の笑みを浮かべていた。
「嬉しい」
そう言って、新菜がすり寄ってきたので、まあ、修也は許してやってもいい。
腕が新菜の胸に挟まれて大変気持ちが良かったし。
会計の時、普通にカードを出して清算をすると、また新菜がアタフタとし始めた。
「だから、普通に使っているだけだから、高額じゃないよ」
クレジットカードを使うのが慣れないらしく、新菜は慌てる。
「でも、でもっ!割り勘ができない!」
いや、イブに、恋人に、しかも随分な年下に出させないから。
「あ、でも半額現金で渡せばいいのか」
そんな余計なことに気がついて財布を握りしめるから、手を引いてさっさと店を出た。
「ああ!いくらだったか分からない!」
「気にしなくていいと言っているのに」
手をつなぎながら見下ろすと、不安そうな表情をした新菜がいた。
「金の切れ目が縁の切れ目だっていうもん。最初からおごられっぱなしはダメだよ。長く一緒にいられない」
お金がないから会えないとかなったりするらしい!と叫ぶ新菜に、笑いがこぼれる。
妙な18禁を読んでいるかと思えば、そういうお悩み相談系も読んでいるのだろうか。
新菜は気がついているのだろうか。
『ずっと一緒にいたい』『いつも会いたい』と、言っていることに。
真剣な新菜の表情に気がついていないんだろうなと思って、指摘するのはやめておく。
そういうのを、新菜が考えて発言するようになったらもったいないから。
「俺の家にスープ作りに来てた時の材料は、誰が出してた?」
突然変わった話題に、目をぱちくりさせながら新菜が答えた。
「え、野菜はおばあちゃんからだよ?」
「ウインナーとか、コンソメとかは違うだろう?」
そうそう、しかも米もだ。
そういえば、補充したことがない。うちにもともとあったものが、そんなにもつはずがない。
「そ、そうだけど・・・千円もかかってない」
「一度ではな。でも、それを何度も金も出さずに頼んできたやつの財布の心配なんてする必要はないよ」
申し訳ないが、それに気がついたのは、本当に最近だ。
付き合い始めて、料理を頻繁に、さらに一緒に食べたりするうちに、ふと見ると、鍋が増えていた。
ああ、新菜が買ってきたのか・・・と思って、愕然とした。
今までの材料は?・・・・・・と。
気がつかないなんて、馬鹿だろう。
言われずとも気がついて、金は出すべきところだった。
無償でご飯作ってくれている人間に自腹まで切らせてるって、何てやつだと思う。
驚いた顔をした新菜の頬にキスをして言う。
「今まで使った金、10倍で取り返してやるくらいに考えていいのに」
「そっ・・・そんな!気にしてないのに!」
「だから、俺も俺が払う分は気にしてない。でも、新菜が今まで使った金は気になる」
9時過ぎか・・・まだ早いなと思って、駅に向かった。
新菜は真っ赤な顔で、俯いたまま、
「ごちそうさまでした」
と呟いた。
奢るのは別にいいのだけれど・・・このかわいい新菜は、他の人間に奢られても出てくるのかとちょっと心配になった。
実は、来るのは初めてだ。
大体、外見から異常に洒落ていて、あまり外に出ない・・・・・・新菜に言わせれば引きこもりの俺には非常に入りにくい店だからだ。
入口で名前を言うと、カウンター席に通された。無理矢理取った割に、他からちょっと離れて、静かでなかなかいい席だ。
そう思いながら座った途端、厨房から修也が出てきやがった。
店長、忙しいんだろ、出てくんな。
睨み付けているのに、気がついていても素知らぬ顔で話しかけてきやがった。
席を確保してくれたことは助かる。だから、ゲームアイテムでもやるから、出てくるな。
「初めまして。中山 修也です。良平の幼馴染でね、ここの店長やってます」
完璧無視か。
「君が、かっわいい、妹ちゃんかあ!いやあ、妹ができたとは聞いていたけど、いくら好みでも、いきなりひと回り下の妹に手を出すとは思わなかったよ!」
好みだとか、いらんことをバラすな!
いや、『噂のエロい』などと言われなかっただけ良い・・・のかもしれない。
新菜が呆然と修也を見上げていた。
俺とキャラが全く被らないとでも思っているんだろう。いや、実際被らないが。
こいつ、こんななりしてゲーマーだぞ。かくれオタクだぞ。
だけど、この場でバラすと、こっちまで痛い目に遭うので適当に誤魔化した。
飲みながら、妙にそわそわしていると思っていたら、やっぱり、
「ね、良平さん、私のこと好みだったの?」
などと新菜が聞いてきた。
瞬間、むせた。
ああ、聞かれるかもしれないと思っていたよ。だけど、スルーしていたじゃないか。聞かなかったことにしてくれると思っていたよ。
「だって、聞きたい」
「・・・・・・教えない」
「なんでっ」
「・・・・・・ロリコンだと思われるから」
くっそ、顔が赤くなっているのが分かる。なんだってこんな場所で、再婚のついでにできたひと回り下の妹が好みだったと友人に話していたことまでバレなきゃならんのだ。
格好悪すぎる。
ちらりと横を見ると、新菜は真っ赤な顔をして、満面の笑みを浮かべていた。
「嬉しい」
そう言って、新菜がすり寄ってきたので、まあ、修也は許してやってもいい。
腕が新菜の胸に挟まれて大変気持ちが良かったし。
会計の時、普通にカードを出して清算をすると、また新菜がアタフタとし始めた。
「だから、普通に使っているだけだから、高額じゃないよ」
クレジットカードを使うのが慣れないらしく、新菜は慌てる。
「でも、でもっ!割り勘ができない!」
いや、イブに、恋人に、しかも随分な年下に出させないから。
「あ、でも半額現金で渡せばいいのか」
そんな余計なことに気がついて財布を握りしめるから、手を引いてさっさと店を出た。
「ああ!いくらだったか分からない!」
「気にしなくていいと言っているのに」
手をつなぎながら見下ろすと、不安そうな表情をした新菜がいた。
「金の切れ目が縁の切れ目だっていうもん。最初からおごられっぱなしはダメだよ。長く一緒にいられない」
お金がないから会えないとかなったりするらしい!と叫ぶ新菜に、笑いがこぼれる。
妙な18禁を読んでいるかと思えば、そういうお悩み相談系も読んでいるのだろうか。
新菜は気がついているのだろうか。
『ずっと一緒にいたい』『いつも会いたい』と、言っていることに。
真剣な新菜の表情に気がついていないんだろうなと思って、指摘するのはやめておく。
そういうのを、新菜が考えて発言するようになったらもったいないから。
「俺の家にスープ作りに来てた時の材料は、誰が出してた?」
突然変わった話題に、目をぱちくりさせながら新菜が答えた。
「え、野菜はおばあちゃんからだよ?」
「ウインナーとか、コンソメとかは違うだろう?」
そうそう、しかも米もだ。
そういえば、補充したことがない。うちにもともとあったものが、そんなにもつはずがない。
「そ、そうだけど・・・千円もかかってない」
「一度ではな。でも、それを何度も金も出さずに頼んできたやつの財布の心配なんてする必要はないよ」
申し訳ないが、それに気がついたのは、本当に最近だ。
付き合い始めて、料理を頻繁に、さらに一緒に食べたりするうちに、ふと見ると、鍋が増えていた。
ああ、新菜が買ってきたのか・・・と思って、愕然とした。
今までの材料は?・・・・・・と。
気がつかないなんて、馬鹿だろう。
言われずとも気がついて、金は出すべきところだった。
無償でご飯作ってくれている人間に自腹まで切らせてるって、何てやつだと思う。
驚いた顔をした新菜の頬にキスをして言う。
「今まで使った金、10倍で取り返してやるくらいに考えていいのに」
「そっ・・・そんな!気にしてないのに!」
「だから、俺も俺が払う分は気にしてない。でも、新菜が今まで使った金は気になる」
9時過ぎか・・・まだ早いなと思って、駅に向かった。
新菜は真っ赤な顔で、俯いたまま、
「ごちそうさまでした」
と呟いた。
奢るのは別にいいのだけれど・・・このかわいい新菜は、他の人間に奢られても出てくるのかとちょっと心配になった。
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