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残った謎
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「―――さて」
立ち上がったリアム殿下を見上げて、アニータはそろそろ帰らなければならないと思う。
婚約破棄のことは誤解だったと兄たちに話すのは、大騒ぎした手前少し恥ずかしいが、それを上回りすぎる嬉しさがあるからいいだろう。
アニータもリアム殿下にならって立ち上がろうとしたところで、肩を押さえつけられた。
「兄上―――ライアン殿下に結婚のことを言われたのはいつだ?」
なんだかとっても真剣に聞かれた。
「あ、そうか。ライアン殿下の謎が残ってました」
婚約破棄が誤解だったと分かって、解決した気でいた。
そういえば、だったらライアン殿下は何故『結婚したくなったら』などと、そんなことを言ったのだろう?
リアム殿下と婚約破棄しなくてもいいのなら、ライアン殿下と結婚したくなるはずがない。
というか、ライアン殿下だって嫌だろう。
嫌っている令嬢と結婚だなんて。
なにをもってして、そんな決意をしたのか、皆目見当がつかない。
もしかしたら、彼もまた何か誤解をしているのかもしれない。
それならば、是非その誤解も解いて差し上げたいところだ。
そんなふうにアニータが一生懸命推理をしていると、リアム殿下が首を振った。
「謎じゃないから」
耳を疑った。
謎じゃない!?
まさか、リアム殿下はライアン殿下がそう言った理由が分かるのだろうか。
すごい!さすが王子殿下の優れた推理力という奴だろうかと、称賛しながらアニータは考える。
「いいから。いつ?」
おや。少しイライラしているような気がする。
不思議に思いながらも、アニータは素直に答えた。
「学院に視察に来られた時……いや、王妃陛下とお茶をしたとき……?いや、二人きりだった気がするから、孤児院への慰問のときかしら」
実を言うと、よく覚えていない。
妙なことを言うなと思ったことしか記憶にない。
「………何故、そんなに会っているんだ?」
ちょっと掴まれている肩が痛い。
リアム殿下、逃げないのであまり押さえつけないでくれますか。
「ライアン殿下が、よくご一緒したいと我が家にいらっしゃるんです」
「私はっ!?」
思わず出たというようなリアム殿下の声が漏れた。
「弟はとても忙しいからと、ライアン殿下がおっしゃいました」
リアム殿下が驚いている様子に、アニータも驚いた。
彼は、ライアン殿下の訪問を知っているものだと思っていた。
王子の動きというのはそれなりに大げさになるし、慰問などについて来てくだされば、報告だのなんだのと書類が必要だと父が言っていた。
そんな状態なのに、知らないわけがないと思っていたのだ。
だから、毎回ライアン殿下がいらっしゃるたびに、ライアン殿下ではなく、リアム殿下が来たりはしないのかと……遠回しに聞いてみたりはするものの、リアム殿下は忙しいとしか聞けない。
本当に、遠回しに言えているのかなんて、聞かないで欲しい。
リアム殿下リアム殿下と、いつも聞くと「私では気に入らないのか?」と睨まれたりするので、しつこくは聞けない。
そうやって睨まれてる時点で、結構しつこかっただろうことは気づかない方向で。
悔しそうな顔をするリアム殿下を見上げて、アニータは首を傾げた。
「そういえば、ライアン殿下は、私の事が大嫌いというわけではないのかなと思います」
最近、あの蔑むような視線を感じない。
妖艶仕様ではなく通常モードに戻っているからだろうか。
きらきらしい笑顔でよく微笑んでいる。
あまり近くで見ると目が悪くなりそうなので、離れて見ていた方がいいかもしれない。
義兄になるわけだし、仲良くなった方がいいよねと、軽い気持ちで言ったのに。
リアム殿下の眉間のしわが怖い。
「なんだと?」
「すみません。思い上がり甚だしいことを申し上げました」
即謝った。
ちょっと仲良くなったと思ったことを言っただけだったのに。
謝るアニータを睨み付けながら、リアム殿下は舌打ちをした。
「逃がしてやろうとも思ったんだが」
逃げる?
何から?
きょとんとしている間に、着たばかりのマントがはぎ取られた。
「ひえっ?」
何が起こったか分からないままに、ふいに肩を押されて、ころんと布団の上に転がってしまう。
同時に足も持ち上げられて、靴を脱がされた。
ごとごとっと、遠くに投げられたような音がした。
「少しは手をつけていないと奪われそうだ」
手をつける???
立ち上がったリアム殿下を見上げて、アニータはそろそろ帰らなければならないと思う。
婚約破棄のことは誤解だったと兄たちに話すのは、大騒ぎした手前少し恥ずかしいが、それを上回りすぎる嬉しさがあるからいいだろう。
アニータもリアム殿下にならって立ち上がろうとしたところで、肩を押さえつけられた。
「兄上―――ライアン殿下に結婚のことを言われたのはいつだ?」
なんだかとっても真剣に聞かれた。
「あ、そうか。ライアン殿下の謎が残ってました」
婚約破棄が誤解だったと分かって、解決した気でいた。
そういえば、だったらライアン殿下は何故『結婚したくなったら』などと、そんなことを言ったのだろう?
リアム殿下と婚約破棄しなくてもいいのなら、ライアン殿下と結婚したくなるはずがない。
というか、ライアン殿下だって嫌だろう。
嫌っている令嬢と結婚だなんて。
なにをもってして、そんな決意をしたのか、皆目見当がつかない。
もしかしたら、彼もまた何か誤解をしているのかもしれない。
それならば、是非その誤解も解いて差し上げたいところだ。
そんなふうにアニータが一生懸命推理をしていると、リアム殿下が首を振った。
「謎じゃないから」
耳を疑った。
謎じゃない!?
まさか、リアム殿下はライアン殿下がそう言った理由が分かるのだろうか。
すごい!さすが王子殿下の優れた推理力という奴だろうかと、称賛しながらアニータは考える。
「いいから。いつ?」
おや。少しイライラしているような気がする。
不思議に思いながらも、アニータは素直に答えた。
「学院に視察に来られた時……いや、王妃陛下とお茶をしたとき……?いや、二人きりだった気がするから、孤児院への慰問のときかしら」
実を言うと、よく覚えていない。
妙なことを言うなと思ったことしか記憶にない。
「………何故、そんなに会っているんだ?」
ちょっと掴まれている肩が痛い。
リアム殿下、逃げないのであまり押さえつけないでくれますか。
「ライアン殿下が、よくご一緒したいと我が家にいらっしゃるんです」
「私はっ!?」
思わず出たというようなリアム殿下の声が漏れた。
「弟はとても忙しいからと、ライアン殿下がおっしゃいました」
リアム殿下が驚いている様子に、アニータも驚いた。
彼は、ライアン殿下の訪問を知っているものだと思っていた。
王子の動きというのはそれなりに大げさになるし、慰問などについて来てくだされば、報告だのなんだのと書類が必要だと父が言っていた。
そんな状態なのに、知らないわけがないと思っていたのだ。
だから、毎回ライアン殿下がいらっしゃるたびに、ライアン殿下ではなく、リアム殿下が来たりはしないのかと……遠回しに聞いてみたりはするものの、リアム殿下は忙しいとしか聞けない。
本当に、遠回しに言えているのかなんて、聞かないで欲しい。
リアム殿下リアム殿下と、いつも聞くと「私では気に入らないのか?」と睨まれたりするので、しつこくは聞けない。
そうやって睨まれてる時点で、結構しつこかっただろうことは気づかない方向で。
悔しそうな顔をするリアム殿下を見上げて、アニータは首を傾げた。
「そういえば、ライアン殿下は、私の事が大嫌いというわけではないのかなと思います」
最近、あの蔑むような視線を感じない。
妖艶仕様ではなく通常モードに戻っているからだろうか。
きらきらしい笑顔でよく微笑んでいる。
あまり近くで見ると目が悪くなりそうなので、離れて見ていた方がいいかもしれない。
義兄になるわけだし、仲良くなった方がいいよねと、軽い気持ちで言ったのに。
リアム殿下の眉間のしわが怖い。
「なんだと?」
「すみません。思い上がり甚だしいことを申し上げました」
即謝った。
ちょっと仲良くなったと思ったことを言っただけだったのに。
謝るアニータを睨み付けながら、リアム殿下は舌打ちをした。
「逃がしてやろうとも思ったんだが」
逃げる?
何から?
きょとんとしている間に、着たばかりのマントがはぎ取られた。
「ひえっ?」
何が起こったか分からないままに、ふいに肩を押されて、ころんと布団の上に転がってしまう。
同時に足も持ち上げられて、靴を脱がされた。
ごとごとっと、遠くに投げられたような音がした。
「少しは手をつけていないと奪われそうだ」
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