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プロポーズ
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突然言われた言葉が理解できずに、クロードの顔をじっとと見つめた。
どれだけ見つめても、いつまでも凛々しい。
しかし、あんまり長い時間見つめすぎたのだろう。真面目な顔が困ったような顔になって、目をそらされた。
照れた顔まで男らしくて素敵とはこれいかに。
「あー……そんなに驚かないでくれないか。そういう、場だとわかっていたのではないのか?」
そういう、というのは、お見合いの場であるということだろう。
ということは、今の言葉は、気のせいではなくて、口説かれたのだろうか。
口説かれたどころか、結婚を前提にした言葉だということだろうか。
お見合いの席で、ともに暮らそうと言われるなんて、それ以外には考えられない。
さすがに、養女としてむかえたいという言葉でないことを祈る。
「クロード様は、私との結婚を考えることができますか?嫌々じゃなくて……ええと、すすんで?」
是非にと望んでくれるのかと聞いてみたかったが、望むとか是非にとかは、自分からは恥ずかしくて言えなかった。
メイシ―としては、嫌じゃないなら、ぜひ結婚してほしい。
このまま教会で暮らしていくこと以外は、田舎暮らしも店を持つことも、悠々自適な貴族夫人も考えられないなと思っていたのだ。
だけど、クロードの妻として迎えてくれるなら。
「できるに決まっているだろう。そんな風に愛らしい姿を見せられたら、メイシ―以外との結婚を考えることができない」
え、おおげさ。
ここまで大仰な言い方をされると、いっそお世辞もすがすがしい。
メイシ―はくすくすと笑い声をあげて頷く。
「ありがとうございます。私でよければ、引き取ってください」
少し卑屈な表現になってしまった。
そう思ったのはクロードも一緒のようで、驚いたように立ち上がる。
「今のは冗談でもお世辞でもない。メイシ―、君さえよければ、すぐに部屋を準備させる。ああ、2,3日客室で我慢してもらえるなら、もう今からでもここに住んでもらって……」
大きな体で長い手を広げながら説明する姿を、目を丸くして見ていると、彼の後ろからすっと侍従が近寄ってきた。
「落ち着いてください。驚いてらっしゃいますよ」
その声に、クロードの動きがぴたりと止まり、ぎくしゃくと腕が体の横に下ろされた。
そうして、うつむいて大きく息を吐いたかと思うと、テーブルを回ってメイシ―のそばまでやってきた。
ここまで、メイシ―はフォークを下すことも忘れて、彼の動きを見つめていた。
――なんて可愛い。
さすがに口に出してはいけないことだ。しかし、慌てた後にたしなめられて、言われたとおりに頑張って落ち着こうとしている姿が胸に来た。
ときめく心を鎮めようとしているのに、クロードはそんな暇は与えてくれないようだ。
座るメイシ―の前に跪き、彼女をまっすぐに見てくる。
大きな彼が跪くと、椅子に座るメイシ―と視線の高さは同じくらいになる。
整った顔が目の前にあることに、心臓があり得ない速さで動き始める。
「メイシー、愛らしいあなたに心を奪われてしまった。どうか、私と結婚してほしい」
真剣な表情でまっすぐに目を見つめながら言われた。
固まるメイシ―の手を取り……そこにフォークが握られていることに苦笑しながらも、フォークをそっとお皿の上に戻し、改めて手を握る。
「あなたを幸せにする許可をください」
口を開き……胸がいっぱいで声が出ない。
凛々しくて、可愛くて、素敵な方からの、これ以上ないプロポーズ。
この瞬間に心臓が止まっても、きっとメイシ―は幸せな生涯を生きたと思える。
でもでも、もっと幸せにしてくれるという。
不安そうにするクロードに、声が出ないので、コクコクと首を上下に振って、手をぎゅっと握り返した。
すると、ほっとしたようにクロードが微笑み、握った手に唇を落とした。
かっこよすぎるっ……!
麗しさが天井知らずだ。本気でこの瞬間にメイシ―の心臓を止めにきているのかもしれない。
座ってフォークを握りしめたままなどという失態を演じている。
この上、何も声を発さないなんてない。
というか、この気持ちを少しでもクロードに伝えたい。
彼の手を握る手に力を込めて、もう少し待ってほしいと引き留める。
クロードは分かってくれたようで、メイシ―の手を握ったまま、待ってくれている。
クロードは、握った手に力を込めてメイシ―に微笑んだりしてくれる。
それは、励ましてくれているのだろうか。ときめきが止まらずにさらに胸が痛くなるので逆効果ですが。
大きく息を吐いて、落ち着こうと心の中で自分に叱咤激励をしてみる。心の中なのに叱咤。これ如何に。なんていう関係ないことを考えて、ようやく落ち着く。
「はい。私にも、あなたを幸せにする権利をください」
涙を我慢しているときのような声になってしまったが、合格だ。
自分に甘い自分がさらに甘やかしたような点数だが、合格ということにしてほしい。
目の前のクロードの満面の笑みが、きっと何もかも吹き飛ばしてくれる。
こうして、メイシ―とクロードは結婚することになったのだ。
結婚することを伝えると、教会の家族はとても喜んでくれた。
メイシ―が一日目で結婚を決めたと聞いて、みんな最初は心配そうにしていたが、メイシ―の浮かれように、ほっとしたように微笑んだ。
「どうしよう!とってもとっても素敵な人だったの!夢みたい!」
リラに訴えると、
「はあ。驚きましたが、メイシ―が望んだことなら、おめでたいことですね」
メイシ―がクロードと結婚するとは思っていなかったようで、目を丸くしながらお祝いの言葉をくれた。
故郷にも手紙で伝えると、幸せを祈っていると返事をもらった。貴族へ嫁ぐメイシ―へ、何もできないことへの謝罪とお祝いが書かれてあった。
もう会うことはないかもしれない家族だが、その手紙に、心が温かくなった。
周囲の人たちに盛大に祝福されながら、結婚式を迎えた。
どれだけ見つめても、いつまでも凛々しい。
しかし、あんまり長い時間見つめすぎたのだろう。真面目な顔が困ったような顔になって、目をそらされた。
照れた顔まで男らしくて素敵とはこれいかに。
「あー……そんなに驚かないでくれないか。そういう、場だとわかっていたのではないのか?」
そういう、というのは、お見合いの場であるということだろう。
ということは、今の言葉は、気のせいではなくて、口説かれたのだろうか。
口説かれたどころか、結婚を前提にした言葉だということだろうか。
お見合いの席で、ともに暮らそうと言われるなんて、それ以外には考えられない。
さすがに、養女としてむかえたいという言葉でないことを祈る。
「クロード様は、私との結婚を考えることができますか?嫌々じゃなくて……ええと、すすんで?」
是非にと望んでくれるのかと聞いてみたかったが、望むとか是非にとかは、自分からは恥ずかしくて言えなかった。
メイシ―としては、嫌じゃないなら、ぜひ結婚してほしい。
このまま教会で暮らしていくこと以外は、田舎暮らしも店を持つことも、悠々自適な貴族夫人も考えられないなと思っていたのだ。
だけど、クロードの妻として迎えてくれるなら。
「できるに決まっているだろう。そんな風に愛らしい姿を見せられたら、メイシ―以外との結婚を考えることができない」
え、おおげさ。
ここまで大仰な言い方をされると、いっそお世辞もすがすがしい。
メイシ―はくすくすと笑い声をあげて頷く。
「ありがとうございます。私でよければ、引き取ってください」
少し卑屈な表現になってしまった。
そう思ったのはクロードも一緒のようで、驚いたように立ち上がる。
「今のは冗談でもお世辞でもない。メイシ―、君さえよければ、すぐに部屋を準備させる。ああ、2,3日客室で我慢してもらえるなら、もう今からでもここに住んでもらって……」
大きな体で長い手を広げながら説明する姿を、目を丸くして見ていると、彼の後ろからすっと侍従が近寄ってきた。
「落ち着いてください。驚いてらっしゃいますよ」
その声に、クロードの動きがぴたりと止まり、ぎくしゃくと腕が体の横に下ろされた。
そうして、うつむいて大きく息を吐いたかと思うと、テーブルを回ってメイシ―のそばまでやってきた。
ここまで、メイシ―はフォークを下すことも忘れて、彼の動きを見つめていた。
――なんて可愛い。
さすがに口に出してはいけないことだ。しかし、慌てた後にたしなめられて、言われたとおりに頑張って落ち着こうとしている姿が胸に来た。
ときめく心を鎮めようとしているのに、クロードはそんな暇は与えてくれないようだ。
座るメイシ―の前に跪き、彼女をまっすぐに見てくる。
大きな彼が跪くと、椅子に座るメイシ―と視線の高さは同じくらいになる。
整った顔が目の前にあることに、心臓があり得ない速さで動き始める。
「メイシー、愛らしいあなたに心を奪われてしまった。どうか、私と結婚してほしい」
真剣な表情でまっすぐに目を見つめながら言われた。
固まるメイシ―の手を取り……そこにフォークが握られていることに苦笑しながらも、フォークをそっとお皿の上に戻し、改めて手を握る。
「あなたを幸せにする許可をください」
口を開き……胸がいっぱいで声が出ない。
凛々しくて、可愛くて、素敵な方からの、これ以上ないプロポーズ。
この瞬間に心臓が止まっても、きっとメイシ―は幸せな生涯を生きたと思える。
でもでも、もっと幸せにしてくれるという。
不安そうにするクロードに、声が出ないので、コクコクと首を上下に振って、手をぎゅっと握り返した。
すると、ほっとしたようにクロードが微笑み、握った手に唇を落とした。
かっこよすぎるっ……!
麗しさが天井知らずだ。本気でこの瞬間にメイシ―の心臓を止めにきているのかもしれない。
座ってフォークを握りしめたままなどという失態を演じている。
この上、何も声を発さないなんてない。
というか、この気持ちを少しでもクロードに伝えたい。
彼の手を握る手に力を込めて、もう少し待ってほしいと引き留める。
クロードは分かってくれたようで、メイシ―の手を握ったまま、待ってくれている。
クロードは、握った手に力を込めてメイシ―に微笑んだりしてくれる。
それは、励ましてくれているのだろうか。ときめきが止まらずにさらに胸が痛くなるので逆効果ですが。
大きく息を吐いて、落ち着こうと心の中で自分に叱咤激励をしてみる。心の中なのに叱咤。これ如何に。なんていう関係ないことを考えて、ようやく落ち着く。
「はい。私にも、あなたを幸せにする権利をください」
涙を我慢しているときのような声になってしまったが、合格だ。
自分に甘い自分がさらに甘やかしたような点数だが、合格ということにしてほしい。
目の前のクロードの満面の笑みが、きっと何もかも吹き飛ばしてくれる。
こうして、メイシ―とクロードは結婚することになったのだ。
結婚することを伝えると、教会の家族はとても喜んでくれた。
メイシ―が一日目で結婚を決めたと聞いて、みんな最初は心配そうにしていたが、メイシ―の浮かれように、ほっとしたように微笑んだ。
「どうしよう!とってもとっても素敵な人だったの!夢みたい!」
リラに訴えると、
「はあ。驚きましたが、メイシ―が望んだことなら、おめでたいことですね」
メイシ―がクロードと結婚するとは思っていなかったようで、目を丸くしながらお祝いの言葉をくれた。
故郷にも手紙で伝えると、幸せを祈っていると返事をもらった。貴族へ嫁ぐメイシ―へ、何もできないことへの謝罪とお祝いが書かれてあった。
もう会うことはないかもしれない家族だが、その手紙に、心が温かくなった。
周囲の人たちに盛大に祝福されながら、結婚式を迎えた。
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