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婚約破棄
完了
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父の言葉通りに、フィリアは犠牲となった。
全てを背負わされることになったのである。
まず、王城での夜会に到着した途端、フィリアたちは別室に通された。
そこには、国王と王妃、王太子が揃っていた。
そこで、国王から直々に婚約破棄について説明を受けたのだ。
この国は、食糧難なのだそうだ。
農村の状況や、工作物の少なさを懇々と説明を受けた。
残念ながら、国王は資料に目を落としながらだったが。
表情も変えずに淡々と聞くフィリアに、憎々しげな視線を投げかけてきたので、
「その資料の数字、昨年のものではありませんか?陛下、是非最新のものをご用意させてくださいませ」
にっこりと笑って気遣いですと言わんばかりに嫌味を放った。
これくらいしてやった方が、後の話に入りやすいだろう。
本当に、それくらいの気遣いだ。
「―――よく、このことについて理解しているようだな」
資料の提示を片手で留めて、国王がフィリアを見据える。
「まあ。そのようなおこがましいこと。そのように取られてしまうとは、失礼いたしました」
表情と仕草は完璧に悲しそうに見せて、フィリアは頭を下げる。
そうされてしまえば、国王はそれ以上言及することができずに、話を続けることにしたようだ。
「それで、隣国に援助を申し出なければならなくなった」
「まあぁ。隣国に……!」
フィリアは両手を口に当てて、大げさなほどに目を見開いた。
恐ろしくてたまらないという風に、フィリアは体を震わせる。
その様子を国王は満足げに見て、わざとらしい悲しそうな顔を作って見せた。
「それで、隣国…獣王国から国王の妻に王女を差し出せと要求があったのだ」
「王女様を!あのような野蛮な国に……!」
フィリアの口から思わずこぼれてしまった言葉に、国王は首を振って答える。
「そのように言わないでくれ。彼の国の支援が必要なのだ」
フィリアは、その言葉に従って両手を胸の前で握りしめ、こくりと頷いた。
その体は小刻みに震え、獣王国へ嫁ぐということがいかに恐ろしいものであるかを考えているように見えた。
「なんてお可哀想な王女様……」
涙ぐむフィリアを、我が意得たりと国王は見据える。
「良く言ってくれた!」
突然の大きな声に、フィリアの体は、びくりと揺れる。
目を丸くするフィリアを無視して、国王は話をつづけた。
「そう、王女が獣王国など野蛮な国など行けば、死んでしまう!だから―――フィリア、分かるね?」
フィリアは、国王が発する言葉を理解するのに時間がかかっている様子で、首を傾げ、視線をあちこちに彷徨わせた。
後方にいる宰相であるはずの父は、認知症であるためか、よく理解できていないようである。
それでも、分からないと言いたくないのだろう。分かったふりをして頷いている。
「でっ…でも、陛下、私は……っ」
フィリアが震えながらも反論するためにあげた声も、腕の一振りでかき消されてしまう。
「マティアスとの結婚だろう?心配するな。他の令嬢との婚約が本日成立する」
扉の傍に立っていた侍従が、国王の合図を受けて、扉を開けた。
そこには、まばゆいほどの純白の衣装を身につけたアリアがいた。
頬は嬉しさに紅潮し、瞳は感激で濡れて天使のような姿だった。
その姿に感動しためてぃあすにすぐさま手を引かれて、国王の後ろ、マティアスの隣の位置へと立つ。
「そんなっ……!?」
「フィリア、このことがなくても、私はお前と結婚するつもりは無かったよ」
首を振りながら、王太子本人に宣告されたフィリアは、ついには顔を覆ってしまった。
「嘘だわ」と呟きながら両手に顔をうずめて泣く姿は、同情心さえ沸き起こってくる。
しかし、これは政治なのだと、国王は最終宣告を下す。
「フィリア・オブラーティオ。獣王国へ嫁げ」
フィリアは、両手を顔から離したものの、顔をあげることはせずに、小さな声で呟いた。
「御心のままに」
震える声で言ってから、フィリアはそのまま屋敷へ帰ってしまった。
国王たちは、それを咎めたりはしなかった。
だから、婚約破棄も、王太子の新たな婚約成立もフィリアはその場にいなかった。
もちろん、フィリアが隣国へ嫁ぐことが発表される場にも。
それらが行われていたとき、フィリアは―――、
「やったあぁ!」
馬車の中で万歳をしていた。
全てを背負わされることになったのである。
まず、王城での夜会に到着した途端、フィリアたちは別室に通された。
そこには、国王と王妃、王太子が揃っていた。
そこで、国王から直々に婚約破棄について説明を受けたのだ。
この国は、食糧難なのだそうだ。
農村の状況や、工作物の少なさを懇々と説明を受けた。
残念ながら、国王は資料に目を落としながらだったが。
表情も変えずに淡々と聞くフィリアに、憎々しげな視線を投げかけてきたので、
「その資料の数字、昨年のものではありませんか?陛下、是非最新のものをご用意させてくださいませ」
にっこりと笑って気遣いですと言わんばかりに嫌味を放った。
これくらいしてやった方が、後の話に入りやすいだろう。
本当に、それくらいの気遣いだ。
「―――よく、このことについて理解しているようだな」
資料の提示を片手で留めて、国王がフィリアを見据える。
「まあ。そのようなおこがましいこと。そのように取られてしまうとは、失礼いたしました」
表情と仕草は完璧に悲しそうに見せて、フィリアは頭を下げる。
そうされてしまえば、国王はそれ以上言及することができずに、話を続けることにしたようだ。
「それで、隣国に援助を申し出なければならなくなった」
「まあぁ。隣国に……!」
フィリアは両手を口に当てて、大げさなほどに目を見開いた。
恐ろしくてたまらないという風に、フィリアは体を震わせる。
その様子を国王は満足げに見て、わざとらしい悲しそうな顔を作って見せた。
「それで、隣国…獣王国から国王の妻に王女を差し出せと要求があったのだ」
「王女様を!あのような野蛮な国に……!」
フィリアの口から思わずこぼれてしまった言葉に、国王は首を振って答える。
「そのように言わないでくれ。彼の国の支援が必要なのだ」
フィリアは、その言葉に従って両手を胸の前で握りしめ、こくりと頷いた。
その体は小刻みに震え、獣王国へ嫁ぐということがいかに恐ろしいものであるかを考えているように見えた。
「なんてお可哀想な王女様……」
涙ぐむフィリアを、我が意得たりと国王は見据える。
「良く言ってくれた!」
突然の大きな声に、フィリアの体は、びくりと揺れる。
目を丸くするフィリアを無視して、国王は話をつづけた。
「そう、王女が獣王国など野蛮な国など行けば、死んでしまう!だから―――フィリア、分かるね?」
フィリアは、国王が発する言葉を理解するのに時間がかかっている様子で、首を傾げ、視線をあちこちに彷徨わせた。
後方にいる宰相であるはずの父は、認知症であるためか、よく理解できていないようである。
それでも、分からないと言いたくないのだろう。分かったふりをして頷いている。
「でっ…でも、陛下、私は……っ」
フィリアが震えながらも反論するためにあげた声も、腕の一振りでかき消されてしまう。
「マティアスとの結婚だろう?心配するな。他の令嬢との婚約が本日成立する」
扉の傍に立っていた侍従が、国王の合図を受けて、扉を開けた。
そこには、まばゆいほどの純白の衣装を身につけたアリアがいた。
頬は嬉しさに紅潮し、瞳は感激で濡れて天使のような姿だった。
その姿に感動しためてぃあすにすぐさま手を引かれて、国王の後ろ、マティアスの隣の位置へと立つ。
「そんなっ……!?」
「フィリア、このことがなくても、私はお前と結婚するつもりは無かったよ」
首を振りながら、王太子本人に宣告されたフィリアは、ついには顔を覆ってしまった。
「嘘だわ」と呟きながら両手に顔をうずめて泣く姿は、同情心さえ沸き起こってくる。
しかし、これは政治なのだと、国王は最終宣告を下す。
「フィリア・オブラーティオ。獣王国へ嫁げ」
フィリアは、両手を顔から離したものの、顔をあげることはせずに、小さな声で呟いた。
「御心のままに」
震える声で言ってから、フィリアはそのまま屋敷へ帰ってしまった。
国王たちは、それを咎めたりはしなかった。
だから、婚約破棄も、王太子の新たな婚約成立もフィリアはその場にいなかった。
もちろん、フィリアが隣国へ嫁ぐことが発表される場にも。
それらが行われていたとき、フィリアは―――、
「やったあぁ!」
馬車の中で万歳をしていた。
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