12 / 17
なんとか言ってくれ
しおりを挟む
さっきまで私を見つめていたサランダの視線は、床に落ちて微動だにしなくなっている。
――本当の姿じゃない。
俄かには信じがたい。
しかし、先ほどナナが二度も変身する姿を見てしまった後だ。
サランダが人間の街に来るために変身していたっておかしなことではないのだ。
「リューやナナがあんな態度だったのは、俺が人間のふりをするように言ったからだ」
小さく謝る声が聞こえた。
最初からリューという人からは嫌われているとしか思えなかった。
初対面なのにと思っていたが、そんな理由があったとは。
「側近の姿も受け入れられないような人間を、妻にしようとしている俺への当てこすりだな」
受け入れられないと言った覚えがない。
「どんな姿をしているのか知らないうちから?」
サランダは申し訳なさそうに頷く。
「多分……怖がると思った。ナナは髪の毛が動くし、リューは全身が緑になるんだ!」
全身が緑……なかなか想像がつかないが、あの堅苦しそうな顔が緑色になるということか。笑わないように気を付けよう。
私の表情から何かを悟ったのか、サランダは大きく息を吐いて疲れたように椅子に座りこんだ。
ゆっくりと目の前に置かれたカップを持ち上げ、ちびちびとすすっている。
私は、サランダが何か言うまで待つことにする。
どれくらい経ったのか……お茶を飲み干したサランダが、真っ直ぐにこちらを見た。
「俺の、本当の姿を見て……受け入れて欲しい」
サランダは真剣に見つめてくるが、そう簡単に良いよとは言えない。
「見てみないと、受け入れられるかどうか、分からないよ」
例えば、恐竜だったりヘビだったりすると、ちょっと大きさ的に無理があるのではないだろうか。はたまた、全身が目玉だらけだったり、ドロドロだったりの場合は、それがサランダだと認識していても厳しいかもしれない。
「……そうだよな」
眉間にしわを寄せて、苦しそうな顔をするが、決意は揺らがないようで、サランダは静かに立ち上がって、一歩私から離れた。
サランダが目を閉じると、彼の頭に、羊のような角が生えてきて、首筋に、黒い毛が生えた部分があらわれる。
少しだけ、体が大きくなっただろうか。着ていた旅装が黒い軍服のような服に変わった。
「…………」
「…………」
「リンカ」
「はい」
「何とか言ってくれ」
「はい?」
「どうだ?この姿は……受け入れら……」
「――もう終わり!?」
サランダの言葉を驚きすぎてぶった切ってしまった。
「え、変わってない。顔そのままだし、脱いだら毛むくじゃら?」
あんなに悲壮な決意を持つほどの変化はない。むしろ、ナナの方が変わりようがすごかった。あれを見せられた後のサランダでは、どうにも、プロの手品師の後に小学生の手品を見せられた気分だ。
「いや、毛は……まあ、生えているところもあるが、この首のところのように一部分だな」
「ええ~……。なんか、期待外れ」
あれだけ引き延ばすような内容ではなかった。
「期待外れってなんだ!?角が生えたんだぞ?」
「毛むくじゃらになるとか、もっと大きくなるとか。羽が生えて四つ足になるとか……ないかなあ」
こう、これは受け入れられるギリギリだとかいう葛藤させるものが何もない。
どうしても目玉を増やして欲しいわけではなかったが、どこに悩む要素があるのか。
「……そういうやつもいるけど、俺は人型なんだ。……しっぽはある」
サランダの背後から、ちょろんと黒いトカゲのような尻尾が出てきた。
「一本だけ?」
「なぜ、複数本しっぽが出てくると思うんだ」
呆れたように行ってから、サランダは天井を見上げ――急に笑い出した。
「そうか、期待外れか。はははっ」
そして、私に向かって両手を伸ばす。
体がふわりと浮いて、私は座った姿勢のまま、サランダの腕の中に納まった。
突然、魔法を見せられて驚く私の顔を覗き込んで、サランダは首をかしげる。
「リンカ。抱きたい」
――本当の姿じゃない。
俄かには信じがたい。
しかし、先ほどナナが二度も変身する姿を見てしまった後だ。
サランダが人間の街に来るために変身していたっておかしなことではないのだ。
「リューやナナがあんな態度だったのは、俺が人間のふりをするように言ったからだ」
小さく謝る声が聞こえた。
最初からリューという人からは嫌われているとしか思えなかった。
初対面なのにと思っていたが、そんな理由があったとは。
「側近の姿も受け入れられないような人間を、妻にしようとしている俺への当てこすりだな」
受け入れられないと言った覚えがない。
「どんな姿をしているのか知らないうちから?」
サランダは申し訳なさそうに頷く。
「多分……怖がると思った。ナナは髪の毛が動くし、リューは全身が緑になるんだ!」
全身が緑……なかなか想像がつかないが、あの堅苦しそうな顔が緑色になるということか。笑わないように気を付けよう。
私の表情から何かを悟ったのか、サランダは大きく息を吐いて疲れたように椅子に座りこんだ。
ゆっくりと目の前に置かれたカップを持ち上げ、ちびちびとすすっている。
私は、サランダが何か言うまで待つことにする。
どれくらい経ったのか……お茶を飲み干したサランダが、真っ直ぐにこちらを見た。
「俺の、本当の姿を見て……受け入れて欲しい」
サランダは真剣に見つめてくるが、そう簡単に良いよとは言えない。
「見てみないと、受け入れられるかどうか、分からないよ」
例えば、恐竜だったりヘビだったりすると、ちょっと大きさ的に無理があるのではないだろうか。はたまた、全身が目玉だらけだったり、ドロドロだったりの場合は、それがサランダだと認識していても厳しいかもしれない。
「……そうだよな」
眉間にしわを寄せて、苦しそうな顔をするが、決意は揺らがないようで、サランダは静かに立ち上がって、一歩私から離れた。
サランダが目を閉じると、彼の頭に、羊のような角が生えてきて、首筋に、黒い毛が生えた部分があらわれる。
少しだけ、体が大きくなっただろうか。着ていた旅装が黒い軍服のような服に変わった。
「…………」
「…………」
「リンカ」
「はい」
「何とか言ってくれ」
「はい?」
「どうだ?この姿は……受け入れら……」
「――もう終わり!?」
サランダの言葉を驚きすぎてぶった切ってしまった。
「え、変わってない。顔そのままだし、脱いだら毛むくじゃら?」
あんなに悲壮な決意を持つほどの変化はない。むしろ、ナナの方が変わりようがすごかった。あれを見せられた後のサランダでは、どうにも、プロの手品師の後に小学生の手品を見せられた気分だ。
「いや、毛は……まあ、生えているところもあるが、この首のところのように一部分だな」
「ええ~……。なんか、期待外れ」
あれだけ引き延ばすような内容ではなかった。
「期待外れってなんだ!?角が生えたんだぞ?」
「毛むくじゃらになるとか、もっと大きくなるとか。羽が生えて四つ足になるとか……ないかなあ」
こう、これは受け入れられるギリギリだとかいう葛藤させるものが何もない。
どうしても目玉を増やして欲しいわけではなかったが、どこに悩む要素があるのか。
「……そういうやつもいるけど、俺は人型なんだ。……しっぽはある」
サランダの背後から、ちょろんと黒いトカゲのような尻尾が出てきた。
「一本だけ?」
「なぜ、複数本しっぽが出てくると思うんだ」
呆れたように行ってから、サランダは天井を見上げ――急に笑い出した。
「そうか、期待外れか。はははっ」
そして、私に向かって両手を伸ばす。
体がふわりと浮いて、私は座った姿勢のまま、サランダの腕の中に納まった。
突然、魔法を見せられて驚く私の顔を覗き込んで、サランダは首をかしげる。
「リンカ。抱きたい」
55
あなたにおすすめの小説
【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました
さち姫
恋愛
妹に、お姉様を頂戴と言われた。
言っている意味わかる?
お姉様はあげられないよ?
え!?
お父様と、お母様は、納得している?
はあ。
馬鹿ばかしくて、付き合ってられない。
だったら、好きにして。
少ししか手直しかしてませんので、読んだこととある方はすみません
唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー
ドルイデスは忌み子将軍に溺愛される
毒島醜女
恋愛
母の死後引き取られた叔父一家から召使として搾取され、手込めにされそうになった少女、羽村愛梨。
馴染みの場所であった神社に逃げると、異世界にいた。「神樹により導かれたのね」とドルイデスと呼ばれる魔女が愛梨を拾った。異世界に救われ、ドルイデスから魔法を教わりながら田舎で過ごしていく。現世では味わえなかった温かな人の温もりに、もう何も望むまいと思っていた。
先代のドルイデス=先生が亡くなり、村の外れで静かに暮らすアイリ。
そんな彼女の元に、魔獣討伐で負傷した将軍、ウルリクが訪ねてくる。
離れで彼を看病していくうちに、不器用で、それでいて真っすぐな彼に惹かれていくアイリ。
こんな想いを抱く事はないと、思っていたのに。
自分の想いに嘘がつけず、アイリはウルリクに縋りつく。
だがそれは、ウルリクにとって願ってもない頼みであり、もう決して逃れる事の出来ない溺愛の始まりであった…
姉の結婚式に姉が来ません。どうやら私を身代わりにする方向で話はまとまったみたいです。式の後はどうするんですか?親族の皆様・・・!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
家の借金を返済する為に、姉が結婚する事になった。その双子の姉が、結婚式当日消えた。私の親族はとりあえず顔が同じ双子の妹である私に結婚式を行う様に言って来た。断る事が出来ずに、とりあえず式だけという事で式をしたのだが?
あの、式の後はどうしたら良いのでしょうか?私、ソフィア・グレイスはウェディングドレスで立ちつくす。
親戚の皆様、帰る前に何か言って下さい。
愛の無い結婚から、溺愛されるお話しです。
あなたは私を愛さない、でも愛されたら溺愛されました。
桔梗
恋愛
結婚式当日に逃げた妹の代わりに
花嫁になった姉
新郎は冷たい男だったが
姉は心ひかれてしまった。
まわりに翻弄されながらも
幸せを掴む
ジレジレ恋物語
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。
しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。
そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。
王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。
断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。
閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で……
ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。
旦那様が素敵すぎて困ります
秋風からこ
恋愛
私には重大な秘密があります。実は…大学一のイケメンが旦那様なのです!
ドジで間抜けな奥様×クールでイケメン、だけどヤキモチ妬きな旦那様のいちゃラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる