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霞んだ景色
ハッピーエンド
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西田先輩は、隣に座るかと思ったら、ベンチに座る千尋の前にしゃがみこんだ。
こうなると、さすがに千尋が西田先輩を見下ろす形になって、初めて見る角度にわくわくしてくる。
「改めて。月曜日、悪かったな。新垣の待ち伏せかと思ったんだ。俺とは思わなかった」
・・・・・・目から鱗とはこういうことか。
そういえば、斎川君だって、最初に言っていた。「新垣の追っかけか」と。
西田先輩から話しかけられたとき、私は何をしていたっけ?プレゼントを後ろ手に隠して・・・・・・感じ悪かったんじゃない?
しかも、ショックすぎて、一言もしゃべっていない気がする。
後輩を思って、追っかけを撃退しようとしたというわけか。それなら、あの冷たい視線も納得がいく。
印象が悪すぎると、慌てて千尋は口を開いた。
「こちらこそ、すみません。私も何も言わなかったから・・・この間は、お礼をしようと思ったんです」
「お礼?何の?」
「眼鏡が壊れた時、家まで送ってくれたじゃないですか」
不思議そうな西田先輩に、もう忘れられたのかと、ショックを受けながら、思わず責めるような口調になってしまった。
しかし、そんな千尋の様子に特に気にした様子もなく石田先輩は首を傾げた。
「……いや、あの後全くそういうの無かっただろ。しょっちゅう部活に来てたのに」
「知ってたんですか!?」
「そりゃ、次の日から、絆創膏顔に貼った女がいれば気がつくよ」
「次の日!次の日からもう分かってたんですか!?」
驚く千尋に向けられる、呆れた視線が痛い。え、じゃあ、前日お世話になったのに、声さえもかけない失礼な女って立ち位置だったの?
「なに、バレてないとでも思ってたの」
「隠れながらこそこそと見学していたじゃないですか!」
気づいていたなら、声くらいかけてくれれば、千尋にだって覚悟が決められたのだ。
『けが、大丈夫か?』とか声をかけてくれさえすれば・・・、
「声かけようとしたら、全速力で逃げられたなあ。なるほど、隠れてたのか」
ひいぃぃ。そのこともあった!全部バレてるじゃないか。なんて最低な女だ。
「なんでこそこそする必要があったんだ?すぐ来ればいいのに」
「だって、大きな絆創膏ついてたし、変なメガネだったし」
「まあ、ケガをしたし、眼鏡だって割れたしな?」
「絆創膏が取れて、眼鏡もきれいになって、少しでもかわいくなってから、ご挨拶に伺おうかと・・・」
かわいくなってもこの程度ですがね!
自分で言っていて恥ずかしい!
「ああ、なるほど」
今までの千尋を思い返しているのか、上を向いて、何度か頷いていた。
何を、どの部分を思い返しているのでしょうか!
全くばれていないと思っていたので、思う存分見学しまくりましたが、どう思っていたんですか!?
問いただしたいけれど、同時に聞きたくもない。
もういい。恥ずかしすぎて死んでしまうに違いない。両手で顔を覆ってしまった千尋の両手を西田先輩が捕まえて、千尋の顔を覗き込んだ。
真っ赤になりすぎた顔が恥ずかしい。こんな間近に顔があることが珍しくて、顔をそらしたくない。だけど、そらしたくて仕方がない。
羞恥の涙がにじんできたときに真剣な・・・怒っているようにも見える顔で、西田先輩が言った。
「相川、付き合ってくれないか?」
――――どこに?
っていう古典的ギャグが頭を駆け抜けていった。
あれ、私がするはずだった告白はどこに行ったっけ?
口をぱかっと開けたまま、西田先輩の顔をぼんやり眺める千尋に、苦笑を返して、
「いきなりだし、返事は今じゃなくても・・・・・・」
「付き合います。付き合ってください!お願いします!」
離れそうになった手を逆に握りしめて、千尋は叫んだ。
何がどうなったかよく分からないけれど、好きで告白しようとした相手から告白されたことは理解した!
それだけで充分だ。
逃がさないように、力の限り大きな手を握りしめて、唇をかみしめる千尋を、嬉しそうに見て、西田先輩が言った。
「そうか。じゃあ、よろしく」
千尋も、感動で泣きそうになりながらも、こくこくと頷いて、笑った。
出会いは、眼鏡がない状態、そして始まりは、涙で霞んだ景色の中だった。
こうなると、さすがに千尋が西田先輩を見下ろす形になって、初めて見る角度にわくわくしてくる。
「改めて。月曜日、悪かったな。新垣の待ち伏せかと思ったんだ。俺とは思わなかった」
・・・・・・目から鱗とはこういうことか。
そういえば、斎川君だって、最初に言っていた。「新垣の追っかけか」と。
西田先輩から話しかけられたとき、私は何をしていたっけ?プレゼントを後ろ手に隠して・・・・・・感じ悪かったんじゃない?
しかも、ショックすぎて、一言もしゃべっていない気がする。
後輩を思って、追っかけを撃退しようとしたというわけか。それなら、あの冷たい視線も納得がいく。
印象が悪すぎると、慌てて千尋は口を開いた。
「こちらこそ、すみません。私も何も言わなかったから・・・この間は、お礼をしようと思ったんです」
「お礼?何の?」
「眼鏡が壊れた時、家まで送ってくれたじゃないですか」
不思議そうな西田先輩に、もう忘れられたのかと、ショックを受けながら、思わず責めるような口調になってしまった。
しかし、そんな千尋の様子に特に気にした様子もなく石田先輩は首を傾げた。
「……いや、あの後全くそういうの無かっただろ。しょっちゅう部活に来てたのに」
「知ってたんですか!?」
「そりゃ、次の日から、絆創膏顔に貼った女がいれば気がつくよ」
「次の日!次の日からもう分かってたんですか!?」
驚く千尋に向けられる、呆れた視線が痛い。え、じゃあ、前日お世話になったのに、声さえもかけない失礼な女って立ち位置だったの?
「なに、バレてないとでも思ってたの」
「隠れながらこそこそと見学していたじゃないですか!」
気づいていたなら、声くらいかけてくれれば、千尋にだって覚悟が決められたのだ。
『けが、大丈夫か?』とか声をかけてくれさえすれば・・・、
「声かけようとしたら、全速力で逃げられたなあ。なるほど、隠れてたのか」
ひいぃぃ。そのこともあった!全部バレてるじゃないか。なんて最低な女だ。
「なんでこそこそする必要があったんだ?すぐ来ればいいのに」
「だって、大きな絆創膏ついてたし、変なメガネだったし」
「まあ、ケガをしたし、眼鏡だって割れたしな?」
「絆創膏が取れて、眼鏡もきれいになって、少しでもかわいくなってから、ご挨拶に伺おうかと・・・」
かわいくなってもこの程度ですがね!
自分で言っていて恥ずかしい!
「ああ、なるほど」
今までの千尋を思い返しているのか、上を向いて、何度か頷いていた。
何を、どの部分を思い返しているのでしょうか!
全くばれていないと思っていたので、思う存分見学しまくりましたが、どう思っていたんですか!?
問いただしたいけれど、同時に聞きたくもない。
もういい。恥ずかしすぎて死んでしまうに違いない。両手で顔を覆ってしまった千尋の両手を西田先輩が捕まえて、千尋の顔を覗き込んだ。
真っ赤になりすぎた顔が恥ずかしい。こんな間近に顔があることが珍しくて、顔をそらしたくない。だけど、そらしたくて仕方がない。
羞恥の涙がにじんできたときに真剣な・・・怒っているようにも見える顔で、西田先輩が言った。
「相川、付き合ってくれないか?」
――――どこに?
っていう古典的ギャグが頭を駆け抜けていった。
あれ、私がするはずだった告白はどこに行ったっけ?
口をぱかっと開けたまま、西田先輩の顔をぼんやり眺める千尋に、苦笑を返して、
「いきなりだし、返事は今じゃなくても・・・・・・」
「付き合います。付き合ってください!お願いします!」
離れそうになった手を逆に握りしめて、千尋は叫んだ。
何がどうなったかよく分からないけれど、好きで告白しようとした相手から告白されたことは理解した!
それだけで充分だ。
逃がさないように、力の限り大きな手を握りしめて、唇をかみしめる千尋を、嬉しそうに見て、西田先輩が言った。
「そうか。じゃあ、よろしく」
千尋も、感動で泣きそうになりながらも、こくこくと頷いて、笑った。
出会いは、眼鏡がない状態、そして始まりは、涙で霞んだ景色の中だった。
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