アベル君のおつかい

蜻蛉

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森の中へ

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アベル君は森を目指して元気に歩いて行きます。森に続く道は、川沿いの一本道です。迷う心配はありせん。
アベル君が歩いていると、一人のおじさんが川で魚釣りをしていました。おじさんはアベル君に気がつくと言いました。

「おやおや、おはようアベル君。今日は一人で遊んでいるのかい?」

釣りをしていたのは、村で道具屋さんをしているおじさんでした。アベル君はおじさんに言いました。

「ううん、町までおつかいに行くところなんだ!」

おじさんは驚きました。

「町までおつかいに行くのかい?それは大変だね。アベル君一人で大丈夫なのかい?」

「うん!だってもう僕は5歳なんだもん!」

おじさんはアベル君の成長が自分の子供のことのように嬉しく思いました。おじさんはアベル君に言いました。

「偉いねアベル君は。よし、アベル君にこれをあげよう!」

そう言うとおじさんはポケットから銀色のメダルを取り出し、アベル君に渡しました。

「ありがとうおじさん!でも、これはなんのお金なの?」

「アベル君、それはお金じゃないんだよ。このメダルは『幸せのメダル』といって、持っているといいことがあるんだよ。」

それを聞いてアベル君はとても喜びました。

「わぁ!すごいね!僕大事にするよおじさん!」

おじさんは笑顔で頷きました。するとおじさんはなにかを思い出したように言いました。

「そうだアベル君、この後森を通るだろうから、注意しておくよ。もしも森の中でフードを被った女の子に会ったらすぐ逃げること、いいね?」

「どうしてなの?」

「その女の子は人間を食べちゃう怖いおばけだからさ。」

アベル君は驚きました。そんな恐ろしいおばけがいるなんて、はじめて聞いたからです。アベル君はすこし怖くなってしまいましたが、家で風邪をひいて寝込んでいるお母さんを思い出して、おばけなんかに負けるもんか!と心で叫びました。

「ありがとうおじさん!僕気をつけるよ!それじゃあまたね。」

アベル君はおじさんに手を振りながら、森の方へと歩き出しました。おじさんからもらったメダルをポケットに大事にしまって。

アベル君は川沿いの一本道をずんずん進んでいきます。しばらく歩いていると、森の入り口に着きました。おじさんから聞いたおばけの話を思い出して、不安になるアベル君でしたが、勇気を振り絞って森の道へと入っていきました。森の中に入ると、背の高い木々によって太陽の光が遮られ、薄暗く不気味な雰囲気に満ちていました。アベル君はすこし怖がりながらも、森の奥へと進んでいきます。

アベル君が歩いていると、遠くから何か聞こえてきました。アベル君は耳をすませてその音を聞いてみました。どうやらその音は、小さな女の子の泣き声のような音でした。アベル君は不思議に思って、音のする方へと進んでいきました。
泣き声のする方へ進んでいると、すこし開けた場所へ着きました。アベル君は驚きました。そこにはなんと狼のような耳と尻尾が生えた女の子が、動物を捕まえる罠にかかっていたのです。

アベル君は迷いました。おじさんからは、女の子に会ったら逃げなさい。逃げなければ食べられてしまうと言われいます。しかし目の前には足が罠に挟まれ、痛そうに泣いている女の子がいるのです。アベル君は考えます。大きな耳と尻尾を生やした女の子を助けるべきなのかを…。

続く




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